(この記事は2018年9・10月号の西陣病院広報誌『西陣病院だより』に掲載したものです)
腎臓・泌尿器科 医長 中村 雄一
高齢化に伴い、がん患者の数は年々増加しています。その中でも前立腺がんはこの10 数年で急増しており、2015 年には男性のがん罹患数の第1 位となりました。以前は高齢者に多いがんとして知られていましたが、最近では50 ~ 60 歳代で診断される方も増えています。
前立腺がんとは
前立腺は男性だけにある臓器で、膀胱の下にあり、精液の一部である前立腺液を分泌しています。前立腺がんは初期にはほとんど症状がありません。排尿に関する症状が診断のきっかけになることもありますが、それは前立腺がんと同時に存在する前立腺肥大症による症状であることが多いです。また、他のがんに比べて病気の進行が遅く、何年もかかってゆっくりと進行していくことが特徴です。
検査方法について
血液マーカーである前立腺特異抗原(PSA)が高い値であれば、精密検査を進めていきます。
精密検査では前立腺の触診や、MRIでの断層撮影を行います。それらの検査で前立腺がんの可能性が高いと考えた場合、前立腺の針生検を行います。針生検では麻酔を効かせた状態で前立腺に針を刺し、組織のサンプルを採取します。
実際の治療方法
主な治療方法は手術、放射線療法、内分泌療法の3つになります。
- 手術
初期のがんに対しては、完全に治すことを目標に手術を行います。当院ではおなかを切る開腹手術を行っておりますが、最近ではダヴィンチというロボット手術が主流になってきています。 - 放射線療法
放射線療法でも手術に匹敵する治療効果があるといわれており、手術をためらうようなご高齢の患者さんにはよい選択となります。最近では強度変調放射線治療(IMRT)が放射線治療の主流になっています。 - 内分泌療法
精巣や副腎で作られる男性ホルモンは、前立腺がんの増殖を促進する働きがあります。内分泌療法では、男性ホルモンの分泌や作用を抑える薬を使うことでがんの進行を抑えることができます。
以上のように、前立腺がんの治療には様々な選択肢があり、当院ではがんの悪性度や進行度、患者さんのライフスタイルも参考にしながら、一人一人に合わせた治療方針をご提案しています。