(この記事は2022年11・12月号の西陣病院広報誌『西陣病院だより』に掲載したものです)
薬剤部 薬剤師 國枝 亜矢香
「せん妄」という言葉をご存知でしょうか。
普段生活をしている上ではなじみのない言葉ですが、今回はこの「せん妄」についてお話しようと思います。
せん妄とは
せん妄とは、簡単な言葉でいうと「体調が悪い時に起こる、一時的な意識と注意の障害」の事を指します。症状でいうと、「時間や場所の感覚が鈍くなる」、「昼夜逆転」、「話の辻褄が合わない」、「幻覚が見える」、「そわそわと落ち着きなく、騒いだり怒ったりする」などがあります。これらの症状はしばしば、認知症の症状と区別しづらいこともあります。しかし認知症と違い、せん妄は「一時的」なものであるため、全身状態を良くすることで改善する症状でもあります。
どのような人が起こりやすい?
その人にもともとある性質や全身状態によって、せん妄を起こしやすくなることがあります。
- 過去にせん妄を起こしたことがある
- 高齢(70歳以上)
- 認知症
- 高血圧、脳梗塞、脳出血、パーキンソン病などの疾患
- 飲酒の習慣がある
- 脱水、発熱
- 薬剤(睡眠薬、鎮痛薬、ステロイド、抗ヒスタミン薬、胃薬などの一部)
などなど…せん妄の直接的な原因となったり誘発したりする要因は挙げきれないほどたくさんあります。
せん妄は特定の人に起こる特別なものではなく、老若男女誰にでも起こる可能性があり、入院治療をされている患者さんのうち2〜3割に出現するといわれています。入院中はせん妄に対して一時的に薬を使うこともありますが、多くの場合、からだの治療をすすめていくことでせん妄も改善されます。自分で出来る予防策としては、時間感覚を保つためにカレンダー・時計を置くことや、日中にはカーテンを開け、午睡は30分以内にする、などがあります。
日常を思い出せるような、普段から身の回りに置いているものをご持参いただくのもおすすめです。