(この記事は2025年3・4月号の西陣病院広報誌『西陣病院だより』に掲載したものです)
薬剤部 大竹 優樹
心不全は全身に血液を送る心臓の機能が低下し、息切れや体のむくみを生じる病気で、高齢者のうち5人に1人がかかる一般的な病気です。一度発症すると再発を繰り返しながら心臓の機能が徐々に低下していく予後の悪い病気です。病状を進行させないよう、食事や体調管理とともに、薬を適切に服用する必要があります。
Fantastic4とは?!!
心不全の内服薬は主にFantastic4と呼ばれる、4種類の薬を併用し、心臓を守ります。
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- ARN(Iエンレスト)
血圧を下げ、体内に貯まる水分量を減らし、心臓への負担を軽くして心不全の悪化を抑制します。 - SGLT2阻害薬 (フォシーガ、ジャディアンス等)
腎臓でグルコースの積極的な排泄を促し、水分量の調節などによって心不全を改善します。 - β遮断薬(カルベジロール・ビソプロロール等)
心臓の過剰な収縮や心拍数を下げ、心筋の酸素需要を減らし、心臓の疲弊を抑えます。 - MRA(スピロノラクトン・ミネブロ等)
血圧を下げ利尿を促し心血管系の保護効果をもたらします。
- ARN(Iエンレスト)
この4剤を併用する治療法は、従来の治療法より生命予後が延伸するとされています。心不全の治療は薬が多くなる印象があるかもしれませんが、これら4剤を併用することが、病状を進行させないためには必要です。他にも利尿薬や血圧の薬が処方されることがあります。
薬の管理について
管理が難しいと感じた時は、服用回数を減らせないか、家族や介護者が服用に関わる場合は、その方たちが介入しやすい時間帯の用法に変更できないかなど、診察時に相談してみましょう。保険薬局では一包化や飲み忘れてしまった場合の残薬の整理、複数の医療機関で処方された薬の管理方法など相談してみましょう。心不全の治療は薬や食事など気を付けるべきことがたくさんあり、負担に感じられることもあるかと思います。病院で心不全手帳を受け取られた方は、心不全手帳・お薬手帳を保険薬局や訪問看護、デイサービスの方等とも共有して、体重や経過を確認してもらいましょう。たくさんの人と一緒に治療して心臓を守っていきましょう。
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