西陣だより

摂食・嚥下障害とくすり

(この記事は2023年1・2月号の西陣病院広報誌『西陣病院だより』に掲載したものです)

薬剤部  薬剤師  池田 未久里

飲食の際によく「むせ込んでしまう」という経験はありませんか。今回はモノを飲み込む「嚥下と薬」のお話をします。

摂食・嚥下障害とは?

「摂食」は食事を摂ること、「嚥下」は飲食物を飲み込むことを指します。これら摂食・嚥下機能に問題が起こることを、摂食・嚥下障害と言います。
 加齢による舌やのどの筋力低下、唾液分泌量の低下、嚥下反射機能の低下などの理由で、摂食・嚥下障害が起きます。また、歯が欠損することで咀嚼能力が低くなり、加えて唾液分泌量が不足することにより、不十分な食塊のまま飲み込むことで誤嚥やむせを起こしやすくなります。

摂食嚥下機能に影響を与える薬

●鎮静作用をもつ睡眠導入薬や抗不安薬 
 食塊を動かす力の低下や、飲み込みのタイミングが失われやすくなる

●吐き気を止める薬
 嚥下・咳漱反射を低下させて誤嚥のリスクに影響を及ぼすことがある

●抗コリン作用をもつ薬
 唾液分泌を減少させ口腔の乾燥を起こし食塊形成に時間がかかり、食物を動かすことも抑制される

誤嚥性肺炎を予防するためには

 夜間に唾液分泌が止まり唾液の浄化作用が落ちると口腔内で細菌が急激に繁殖します。睡眠中に唾液が気道に流れ込む“不顕性誤嚥”があると、口腔内で繁殖した細菌が肺に入ってしまい、肺炎を引き起こしてしまいます。免疫力の落ちた高齢者では、口腔内に汚れがあり、日常的に誤嚥があると誤嚥性肺炎が起こりやすくなります。普段から免疫力を高めておき、細菌やウイルスと戦う力を備えておくことや、丁寧な歯磨きや義歯の手入れなどを行い口の中を清潔に保つことをお奨めします。

2023年01月01日