薬剤部 主任 牛嶋 麻紀
漢方薬とは?
生薬のうち薬として効くものを、いくつか組み合わせた薬のことです。
「生薬」とは植物を中心に、動物や鉱物を含め天然のものから作られた薬です。すべての漢方薬はこの「生薬」の組み合わせでできています。もともとは中国が数千年の年月をかけて生み出してきた生薬の組み合わせがあり、それを日本の風土、日本人の体質に合わせて独自に発展させて現在の漢方薬となりました。また「漢方」という名前は、江戸時代に日本で盛んになった西洋医学を「蘭方」と言ったことに対し、漢の時代に伝わった東洋医学として「漢方」と名づけたことに由来します。
伝統的な漢方薬は小さく刻んだ生薬を煎じてのむ煎剤ですが、現在、一般的に手に入るものは、ほとんどが煎じ薬を濃縮し、乾燥させ飲みやすくしたエキス剤(顆粒剤、錠剤、カプセル剤)です。
漢方薬を服用するとき、コップ1杯の白湯に溶かして服用すると、本来の形に近い味や香りを再現できます。みなさんのよく知っている「葛根湯」はかぜのひきはじめに処方されることが多いですが、葛根(カッコン)、麻黄(マオウ)、大棗(タイソウ)、生姜(ショウキョウ)、甘草(カンゾウ)、芍薬(シャクヤク)、桂皮(ケイヒ)などの生薬が含まれています。
それぞれの部位と薬効は?
● 葛根(葛の根)・・・・・・・・・・・・・ 発汗、解熱、鎮痙
● 麻黄(麻黄の茎、枝)・・・・・・・・・ 鎮咳、感冒、関節痛
● 大棗(なつめ実・果実)・・・・・・・・・ 胃腸、鎮痙、滋養
● 生姜(ショウガの根茎)・・・・・・・・ 健胃、感冒、冷え症
● 甘草(甘草の根)・・・・・・・・・・・・・・・ 緩和、鎮痛
● 芍薬(シャクヤクの根)・・・・・・・・・・・ 腹痛、婦人病
● 桂皮(樹皮)・・・・・・・・・・・ 芳香性健胃、発汗、解熱
です。この成分に含まれる葛根や生姜は食材としてもなじみのあるものですね。
桂皮(ケイヒ)はクスノキ科の幹の皮を乾燥させたもので、私たちにとてもなじみ深いものです。洋風のスイーツや、京都の八つ橋のフレーバーなどにも使われている「シナモン」や「ニッキ」といえばわかる方もいらっしゃると思います。この桂皮はお香にも使用されていて、日本人にとても好まれる香りだといわれています。
漢方薬はまずい、苦いというイメージが先行していますが、どの生薬が配合されるかによってひとつひとつ味も違います。体質に合っている処方、体が必要としている処方であれば、比較的服用しやすく、体質に合っていない処方であれば、服用しづらくなると考えられています。
服用しにくい場合、ヨーグルトや服薬ゼリー、水あめにまぜて飲むこともできますが、「濃いお茶」「ジュース」「牛乳」「アルカリイオン水」などは薬の吸収に影響し、効果に影響を及ぼすことがありますので、やめましょう。
漢方薬の成分の多くは、腸内細菌によって、効きやすい形に変えられて効果を表します。そのため、空腹時のほうが、速やかに腸内細菌のいる場所に到達できます。また、人によって腸内細菌の量が違うため、効果の発現の仕方にも個人差があります。漢方薬を飲み続けることで、その成分に作用する腸内細菌が増えてきて、次第に効き目が良くなってきます。
漢方ではどちらかというと、体質改善が得意分野なため、長期にわたって飲み続けることもあります。効き目がないからといってすぐにやめてしまわず、気長に服用を続けましょう。