神経内科 山本康正
頭痛
まず片頭痛かどうかを考えます。若いころから頭痛持ちで、体動により増悪、過剰にまぶしく感じたり音が過敏に聞こえたりする場合です。また、片側の頭痛や目の奥が痛いなどとやや深刻に感じる場合がありますが、頭頸部の筋緊張で感覚神経が圧迫を受けておこる大後頭神経痛で、局所マッサージ等で改善します。しかしその他、くも膜下出血をはじめとする脳卒中や、脳腫瘍などの脳疾患が疑われる場合は画像診断が必須です。
めまい
多くは三半規管や前庭といった内耳由来です。回転性の他に、船に乗ったような、雲の上を歩いているような感じもあります。しかし、脳卒中によるめまいを忘れてはいけません。小脳や脳幹などの脳卒中によることが多く、言語のもつれ、しびれ、脱力、複視などの神経症状が伴うと脳卒中の可能性が極度に高まり(レッドカード)、血管の危険因子を多く持っている場合も要注意です(イエローカード)。低血圧による脳貧血や軽いてんかんでもめまい感として感じる場合があります。
しびれ
多くは末梢神経障害由来ですが、脳卒中などによって感覚路が障害されると脳由来のしびれがおこります。手足の先、手袋・靴下の部分がしびれる場合は多発性神経炎が多く内科的検索が必要です。頸椎症や腰椎症などで神経根が圧迫されておこるしびれ以外に、鎖骨・肋骨・頸筋などの間隙で神経が圧迫される胸郭出口症候群、肘の部分で圧迫される肘部管症候群、手首のところで圧迫される手根管症候群などの神経圧迫によるしびれ(絞扼性神経障害)も高頻度です。
脱力
脳卒中では片麻痺が多く、拡散強調画像(DWI)で細かい病変も描出されます(図1)。病変が小さく見えても、頸動脈の狭窄(図2)や心房細動などが原因になっていることもあり、原因により治療法も異なります。症状の軽さは必ずしも軽症を意味しません。四肢や両下肢の脱力では脊髄障害やギランバレー症候群なども疑われます。運動神経が選択的に障害され筋肉が痩せてくる筋萎縮性側索硬化症(ALS)は難病です。
失神
失神は、脳に血がゆきわたらない場合におこりますが、一時的に副交感神経が亢進して血圧が下がった場合、起立性低血圧という立位時に血圧が維持できない状態、脈が遅くなりすぎて一時心停止するような時におこります。そのほかに、てんかんによる場合が重要です。診断には脳波検査が必須です。
歩行障害
動作が緩慢で表情が乏しく、手足のふるえがみられたりするとパーキンソン病が疑われます。しばしば便秘や嗅覚低下などを伴います。脳で不足しているドーパミン系を補充しますが、パーキンソン症候群といわれる薬が効きにくい一群があります。その他、脊椎・末梢神経・筋疾患も原因となります。
もの忘れ
アルツハイマー型認知症が代表で、最近のことが記憶できないのが特徴です。アセチルコリン系薬剤を用います。その他、幻覚などを伴うレビー小体型認知症や性格変化や能動性の低下がみられる前頭側頭型認知症があります。ただ、ボーっとしているなどの症状が、脳深部の小梗塞による意欲低下であったり、痙攣のないてんかん(非けいれん性てんかん重積状態)であったりすることがあり専門的鑑別が必要です。また、高齢者で頭痛を伴う場合、慢性硬膜下血腫も要注意です。