胃をできるだけ残す、体に優しい胃がん手術

外科医長
大橋 拓馬
胃がんの治療では、がんを取り除くだけでなく、手術後の生活の質(QOL)も大切です。当院では「根治性を保ちながら、小さい傷で、できるだけ胃を残す」方針で患者さんに適した治療を行います。また進行した胃がん、転移を伴う胃がんにも積極的な治療を行っています。
胃を温存する手術とは?
胃を切除すると、食事量の減少や体重減少が避けられません。特に胃全摘術では生活の質に影響を与えます。そこで当院では「小さい傷でできるだけ胃を残す」方針で治療を行います。通常なら胃全摘とされるケースでも、「胃亜全摘術」や「噴門側胃切除術」を腹腔鏡手術( 小さい傷の手術 )で行い、胃をできるだけ残す方法を採用しています。
胃亜全摘術▶胃の上部にある胃がんに対する手術で、逆流防止機能や食欲を調整するホルモンを分泌する部分を残せるため、胃全摘より術後の栄養状態や生活の質が向上すると報告されています。
噴門側胃切除術▶胃の上部や食道胃接合部のがんに対する手術で、胃の約半分を温存できます。食道と残った胃をつなぐ際に逆流を防ぐ工夫を行うことで、術後の食事摂取、生活の質を保つよう努めています。
進行胃がんにも積極的な治療を
進行した胃がんや転移がある場合でも、積極的な治療を行っています。
術前化学療法▶大きなリンパ節転移がある場合、手術前に抗がん剤治療を行い、がんを小さくしてから手術を行う方法を採用しています。
コンバージョン手術▶転移があるため手術が難しいと診断された患者さんでも、化学療法によって転移が消えた場合には手術が可能になることがあります。
患者さんひとりひとりの疑問にお答えします
がんの治療には何より早期発見が大切です。そのためにもまずは胃カメラの検査を受けてみてください。胃がんと診断された場合はいろいろな不安や疑問が出てくることでしょう。「胃は全部取るの?」「どのような手術が適しているの?」といった疑問にも、「手術の傷の痛みは?」「術後の生活はどうなるの?」という不安にも、ゆっくり丁寧にお答えします。患者さんとじっくり話し合いながら、最適な治療を一緒に考え、サポートしていきますので、どうぞ安心してご相談ください。