西陣だより

血尿のおはなし

(この記事は2024年7・8月号の西陣病院広報誌『西陣病院だより』に掲載したものです)




腎臓・泌尿器科 医長
新納 摩子



 

 腎臓・泌尿器科で扱う疾患は、尿を作る腎臓からはじまり、腎盂、尿管、膀胱、尿道などの尿の通り道にある臓器に加えて、男性の場合は、   精巣、精管、前立腺といった臓器に生じる疾患です。これらの臓器にかかわり、かつ、性別の関係なく生じる「血尿」について説明をします。

 

「血尿」は大きく2種類に分けられます。1つは「肉眼的血尿で、目でみて、鮮紅色~暗赤褐色の尿です。数値で示すと、尿中1L中に血液1ml 以上を含む尿をいいます。もう1つは、「顕微鏡的血尿」といい、見た目には血尿を認めないのですが、尿検査(尿沈渣検査法)で、尿中赤血球5個/HPF以上を認めるものをいいます。簡単にいえば、「肉眼的血尿」は、自分で血尿だと分かる血尿で、「顕微鏡的血尿」は、尿検査でわかる血尿です(健診での尿検査は通常尿試験紙で行われますので、「尿潜血陽性」との結果が出ます)。 

 肉眼的にしろ、顕微鏡的にしろ、血尿が出るということは、尿の通り道のどこかに血が出るような原因があります。まず、膀胱炎のような感染症では、炎症により粘膜が傷つき、細い血管が切れて血尿になる場合があります。つぎに、尿路結石症があげられます。腎結石、尿管結石などがありますが、結石が動くことで、血尿が生じます。もっとも注意すべきは、悪性腫瘍、いわゆる癌です。腎臓癌、膀胱癌など、尿路に癌が生じることがあります。その他、臓器の形態の異常(腎動静脈奇形など)により生じる場合、外傷(腎外傷など)により生じる場合、女性では婦人科疾患がある場合などがあります。さらに、顕微鏡的血尿の場合は、腎炎・腎症つまり腎実質に何らかの疾患がある場合があり、このような疾患では同時に蛋白尿も認めることが多いです。 

 健診などで尿を検査するときに注意していただきたいことがあります。健診での尿検査は尿試験紙で行われますので、事前にビタミンCを多く含むものの摂取はひかえてください。検査で偽陰性になることがあります。また、尿をとるときは、出始めの尿はすてて、中間尿をとるようにしましょう。

 西陣病院の腎臓・泌尿器科では、肉眼的血尿も顕微鏡的血尿も、その原因が何であるか精査を行い、疾患が明らかになれば治療を行っています。健診で尿潜血陽性と指摘された場合には、かかりつけの医療機関を受診して頂き、「顕微鏡的血尿」と診断された場合には、かかりつけの先生から腎臓・泌尿器科に御紹介頂ければと思います。「肉眼的血尿」の場合は、腎臓・泌尿器科をかならず受診してください。腎臓・泌尿器科を受診することを恥ずかしいと思われる方が多いかもしれません。西陣病院の腎臓・泌尿器科では、男性医師も女性医師も診察を担当していますので、ためらわずに受診をお願いします。

2024年07月01日