西陣だより

透析センター開設50周年を迎えて

(この記事は2023年3・4月号の西陣病院広報誌『西陣病院だより』に掲載したものです)

腎臓・泌尿器科 部長 透析センター長
小山 正樹



 

 当院の透析医療は1972年(昭和47年)7月、3名の透析患者さんの維持透析からはじまりました。その後医療機器の開発、設備拡充、スタッフ育成などにより現在は約370名の患者さんの透析治療にあたっております。おかげをもちまして昨年は透析センター開設50年を迎えました。

 

 血液透析とは腎不全状態にある患者さんの血液を体外に出し、人工腎臓を用いて血液をきれいにする治療です。当院で透析が開始された頃はコイル型の人工腎臓を使用しており、洗濯槽ほどの大きさの装置で膜が破れ血液が漏れること(リーク)がしばしばあったそうです。その後現在も使用されている中空糸型ダイアライザーが登場し膜リークが激減しました。透析液は清浄化が改良されオンラインHDFと呼ばれる治療法では、通常で使用される透析液を補充液として用いられるまでになりました。

 それから合併症の一つに手根管症候群があり、治療法としては手根管開放術が主流だったのですが、その原因物質であるβ2-mg を吸着する治療法としてリクセルという医療材料が1996年に発売されたこと、先ほどのHDFの普及と透析液清浄化により手根管症候群を呈する患者さんが激減しました。腎性貧血については輸血が第一選択だったため輸血によるC 型肝炎を罹患する患者さんが増加したのですが、1990 年に登場した造血剤によりC 型肝炎患者が減少しました。またインターフェロンの登場、抗ウイルス薬の開発によりC 型肝炎はほぼ完治できるまでになりました。

 施設としては、患者数増加にあわせて旧本館 3 階に第 1透析室、同 2 階に第2透析室、同4階に第3透析室を設置していましたが、2007年本館増改築に伴い本館2階に115床のワンフロア化をオープン(現在125床)し、利便性、効率性、安全性が向上いたしました。本館 3 階には病棟からベッドのままで搬送可能な入院透析 8 床を設置し患者さんおよびスタッフの負担軽減を実現しました。ベッド間隔も広くなり快適性も向上しました。

 また2010年には以前から懸念していた避難訓練を新型コロナの感染が広まる前の年まで毎年開催してきました。透析治療としては保険収載されている治療全域を実施し、循環動態の不安定な患者さんへの持続的血液透析や潰瘍性大腸炎の治療法である顆粒球除去療法などの特殊症例にも対応しております。また透析通信システムを採用し、コンピュータを活用した透析管理を実施しております。内シャントについては当院にて作成し、狭窄や閉塞時などの血管拡張術にも対応しております。また当院では慢性腎臓病とよばれる慢性に悪化する腎臓病にも積極的に介入を行い、CKD外来の開設、CKD教育入院などを実施し、永く腎臓 が機能できるようサポートを行っております。腹膜透析については隔週木曜にC APD 外来を開設、腎臓移植については他施設と提携しております。

 当院は内科をはじめ外科・整形外科などを有する総合病院で、透析患者さんの透析以外の治療においても早期に対応可能となっております。透析医療は医師、看護師、臨床工学技士などの医療専門職 が協力し合うことが必要です。これからもより安全で安心して透析を受けていただけるように 努力邁進いたしますので、どうぞよろしくお願いいたします。

2023年03月01日