西陣だより

骨粗鬆症性椎体骨折(整形外科より)

(この記事は2020年5・6月号の西陣病院広報誌『西陣病院だより』に掲載したものです)

整形外科 部長
北中 重行



 骨粗鬆症性椎体骨折とは、骨粗鬆症に起因する背骨の骨折のことです。胸椎と腰椎の移行部あたりの椎体に生じることが多く、転倒、尻もちなどの外力により生じるもの、中腰や重いものを持った際に生じるもの、さらにはいつのまにか骨折とテレビ CM でも放映されていたように知らない間に生じるものもあります。

 

 骨粗鬆症が進行し骨が弱くなって生じるものは、疼痛が軽度のこともあります。いつのまにか骨折はその典型と言えるかもしれません。転倒、尻もちなどの明らかに外力が加わったものでは、通常は骨折の生じた部位の疼痛を伴うことが多いですが、まれに骨折部位とはやや離れた箇所の疼痛を訴える方もおられます。診断は、基本的にはX線(レントゲン)検査を行うことで確定します。ただX線で分かりにくいこともあり、CTやMRI検査が必要になることもあります。また骨粗鬆症の程度をみるために骨密度も測定します。
 治療は、疼痛がある程度軽度な場合は、コルセットを装着し、外来で経過観察、保存療法を行います。1~2週間に1回の受診(徐々に受診頻度を少なくしていきます)で経過を診させて頂き、
約2~3か月ほどで治る方が多いです(図①)。疼痛が強く歩行困難な場合は、入院して頂くこともあります。疼痛の程度にもよりますが、基本的にはベッド上安静ということはなく、コルセットを装着し、リハビリテーションで早期離床、歩行訓練を行っていきます。

 このように基本的に第一選択は、手術療法ではなく、ほぼすべての症例で保存療法となります。コルセットの採型、装着を行い、鎮痛剤などで疼痛コントロールをしながら、骨粗鬆症の治療も併せて行います。骨粗鬆症の治療薬剤は日進月歩で、様々な内服薬、注射製剤が存在しています。現在明確な選択基準はありませんが、個々の患者さんに合わせた薬剤の選択、投与を行っています。一度骨折が生じると、続いて骨折することが多く、このような骨折の連鎖を抑制しうる薬物治療は非常に重要になってきます。
 多くの場合はこうした保存療法で改善が見込めますが、早期に手術が必要になることもあります。例えば、骨折によって神経が圧迫され神経症状(下肢痛や筋力低下、膀胱直腸障害など)が出
現している場合、骨折部の不安定性(グラつき)(図②)があるために腰痛が強く体動困難な場合などは早期手術の適応になってきます。
 また保存療法で症状の改善を認めない場合、例えば、経過中に骨癒合せず偽関節(骨折部がひっつかずにグラグラした状態)(図➂)となり、疼痛がいつまでも残り日常生活に支障を来す場合には手術が必要になってきます。

 手術療法も日進月歩で手技が開発されており、当科では経皮的椎体形成術、BKP(balloon kyhoplasty)や最小侵襲脊椎安定術MISt(minimally invasive spine stabilization)といった低侵襲手術
を導入し、早期離床、早期社会復帰、早期家庭復帰を目指して取り組んでいます。
 当科では患者さん、御家族さんの意欲、意思を尊重し、保存療法、手術療法を含む全ての骨粗鬆症治療を積極的に行っておりますので、椎体骨折に関わらず、骨粗鬆症に関しても何か気になることがありましたら、いつでもお気軽に御相談頂ければ幸いです。

2020年05月01日