(この記事は2018年3・4月号の西陣病院広報誌『西陣病院だより』に掲載したものです)
消化器内視鏡センターは、本館地下1階の画像診断センターの一角に設置されています。当センターは日本消化器病学会認定施設、日本消化器内視鏡学会指導施設に認定されており、内視鏡専門医を中心に丁寧かつ高度な内視鏡検査・手術を心掛けております。2016年6 月にリニューアルしてから2 年近くが経過しましたので当センターの現況を紹介します。
現在当センターは医師11名(日本消化器内視鏡学会指導医1名、専門医9名)、看護師9名(内視鏡技師2名)、内視鏡洗浄員3名が所属し日々の内視鏡診療を行っています。年間の内視鏡検査件数は、2015年度は4783件、2016年度は4963件で徐々に件数は増えています。内視鏡検査室は2室、専用のX 線装置付きの検査室が1室で計3室での検査が可能です。スタッフルームでは各検査室の内視鏡画像が確認できるため検査の進行状況の確認や技術指導に役立っております。待合室や回復室も充分な広さを確保し、検査前、検査後の患者さんにとってより良い環境を整備しております。 当センターで現在行っている各種内視鏡検査について詳しく説明します。
上部消化管内視鏡検査(胃カメラ)
食道、胃、十二指腸を観察する検査で年間約3000件行っています。日本人は胃にピロリ菌が感染している率が高く、欧米に比べて胃癌が多い傾向にありました。最近はピロリ菌に対する除菌療法が普及したことや若年者のピロリ菌保有率が低いことから日本人のピロリ菌感染率は低下しております。このため胃癌の罹患率は減少傾向にありますが、まだまだ多くの方が胃癌に罹患している状況です。胃癌は早期に発見されればお腹を切らずにESD(内視鏡的粘膜下層剥離術)という方法で内視鏡的に切除することが可能です。飲酒や喫煙が発症の要因とされる食道癌も早期発見されればESD により治療可能です。胃癌や食道癌を早期発見するために、胸焼け、胃の痛み、胃のもたれなどの症状があれば内科を受診して検査を受けていただくか、無症状であっても積極的に胃癌検診を受けていただくことをお勧めします。これまで胃癌検診はバリウムを飲む「胃エックス線検査」のみでしたが、2017年より京都市で「胃カメラによる胃癌検診」がスタートしました。当院でも受け付けておりますのでご希望の方は病院受付で御相談下さい。
下部消化管内視鏡検査(大腸カメラ)
肛門から内視鏡を入れて大腸を観察する検査です。生活習慣の欧米化により日本人の大腸癌は増加しています。大腸にできるポリープ(イボの様なできもの)の一部が癌化すると考えられており、大腸ポリープを積極的に治療することが大腸癌の予防に繋がると考えられています。当センターの大腸カメラの検査件数は10年前は年間約1000件でしたが現在は年間約2000件と倍増しています。大腸ポリープの治療は1泊入院で行っており、年間治療件数は約600件です。大腸癌も胃癌、食道癌と同様に早期発見されればESD による治療が可能です。大腸カメラはつらい検査という印象をお持ちの方も多いと思いますが、当センターでは鎮痛剤・鎮静剤を使用することで苦痛の少ない検査を心掛けております。お腹が張る、便通が思わしくない、便が細いなどの症状がある方は御相談下さい。大腸癌検診で便の潜血反応が陽性となった方は、二次検査として大腸カメラを必ず受けるようお勧めします。
胆膵内視鏡検査(ERCP)
内視鏡を口から十二指腸まで挿入し、胆管・膵管に造影剤を注入してレントゲン撮影する特殊な検査です。造影検査に引き続き、胆管や膵管の中に様々な器具を挿入して、結石の除去・癌細胞の有無の検査・胆汁の流れを確保するためのチューブの留置などを行います。
超音波内視鏡検査(EUS)
先端に超音波装置が装着された特殊な内視鏡を使った検査です。通常の内視鏡では観ることができない粘膜の中にある腫瘍や、消化管の外にある臓器(肝臓や膵臓)を観察します。内視鏡から細い針を出して粘膜の中や外の腫瘍を穿刺して細胞を採取する(EUS-FNA)ことができるため、従来外科手術をするまでどの様な病気か診断できなかったものが診断可能となり、手術の必要性がより確実に判断できるようになりました。近年は超音波内視鏡を使って胃・十二指腸の中から胆嚢や胆管を穿刺して、腫瘍や結石で滞った胆汁の流れを確保することも可能となってきました。今後はさらに様々な治療に応用される重要な検査として注目されています。
小腸内視鏡検査
小腸を調べる内視鏡で、内視鏡の先端に風船を装着した「バルーン小腸内視鏡」と「カプセル小腸内視鏡」があります。クローン病や小腸腫瘍、小腸出血などは従来診断や治療が困難でしたが近年の小腸内視鏡の進歩により可能となってきました。カプセル内視鏡は京都府立医科大学消化器内科と連携して行っております。
嚥下内視鏡検査
嚥下内視鏡は、鼻から内視鏡を挿入して喉の動きを観察・評価する検査です。脳梗塞の後遺症や老化により嚥下(飲み込み)機能が低下した方の嚥下機能訓練(リハビリ)を行う際に大変役立つ検査です。
消化器内視鏡センターの現況を紹介しました。胃腸にまつわる症状やご心配な事がありましたら、お気軽に当院内科へ御相談ください。