西陣病院だより

透析療法における ドライウェイトのお話

(この記事は2019年7・8月号の西陣病院広報誌『西陣病院だより』に掲載したものです)

西陣病院 泌尿器科 野村 武史

腎臓・泌尿器科 医長
野村 武史



ドライウェイトとは?
腎機能が正常であれば、体重の水の占める割合は一定に保たれま
す。これは腎臓が尿として余分な水を排泄するからです。しかし、
透析患者さんはこの腎臓の働きが障害されているため、余分な水が体内に溜まり、むくんだりします。
そこで透析療法により水のバランスを維持する必要があります。透析と透析の間の体重の増加は
主に口から入った水の量で決まってきますので、透析後と前の体重の増加をみて、透析中の除水量
が決められます。この時の基本となる体重をドライウェイト(DryWeight:DW)と呼びます。

ドライウェイト(以下、DW)を決めるための指標

DW を決める指標としては、臨床症状、血圧、心臓の大きさ、HANP、心臓超音波検査、下大静脈径などが使われます。
今回は、それぞれの意味を考えていきましょう。

臨床症状

体に余分な水分が貯まると、浮腫が下肢などに出てきます。さらに進むと、胸水がたまり、息苦しさが出てきます。胸部レントゲン検査で胸水が過剰状態であればDW を下げます。逆に、起立性低血圧(起きたりするとふらつきがみられる)で体内の水分が不足していれば、DW を上げます。

血圧

心機能が正常であれば、高血圧ではDW を下げ、低血圧ではDW を上げるのが基本です。心機能が低下している方や動脈硬化が強い方では他の指標を総合的に検討する必要があります。

心臓の大きさ(心胸郭比=CTR)(図 1)

当院で透析療法を受けられている患者さんは毎月レントゲン写真を撮影してCTR を測定しています。通常は、透析後のレントゲンで50%以下(女性は53%以下)が正常です。しかし、器質的異常が心臓にある場合は基準が変わります。一般に、CTR が大きくなっていく場合は水分の貯留を考え、DW を下げます。

 

 

HANP(ヒト心房ナトリウム利尿ペプチド)

HANP は主に心臓に貯蔵されており、水分過剰状態になると心臓が広げられ血中に分泌されます。数値が大きくなれば水分過剰と考えDW を下げます。しかし、不整脈などがあるときは変動が大きいためDW の指標になりにくいことがあります。

心臓超音波検査・下大静脈径

心臓の動き、心臓壁の肥大、心室・心房の内腔の大きさ、心臓弁の異常などを観察測定して、心臓自体に問題があるか否かを診ます。下大静脈径では水分過剰になっているかなど判断し過剰であればDW を下げます。

<最後に>

DW が適正か否かは、上述のような複雑な要素が絡み合っています。さらに、透析患者さん自身の自覚症状、日常生活動作(ADL)、生活の質(QOL)などもDW 決定の重要な要素になりますので、適宜DW の変更が必要になります。患者さん自身にあわせた治療方針をこれからも提案していきたいと思いますので、今後ともよろしくお願いいたします。

 

 

2019年07月01日

慢性腎臓病(CKD)の進行を抑えられるよう、 これからの療養生活を支援します

(この記事は2019年7・8月号の西陣病院広報誌『西陣病院だより』に掲載したものです)

透析センター 主任
糖尿病看護認定看護師
立山 一美

 

慢性腎臓病(CKD)の予防、治療においては、食事内容を含めた生活習慣の改善、適正化が重要であるといわれています。
生活習慣の見直しや治療の必要性は理解していても、今までの生活を変えることはたやすいことではありません。2019年4月より、腎臓病及び糖尿病の専門の資格を持った看護師6名で、CKD看護外来をはじめました。腎臓病の進行が抑えられるように、療養生活で気を付けることを具体的に説明し、自己管理がうまくできるように一緒に考え、お手伝いをさせて頂きます。
また慢性腎不全末期の方には、今後の一般的な治療の説明を行い、療法選択の支援をさせて頂きます。看護師のみならず、院内の様々な職種が、患者さんやご家族の不安や悩み事も含めて一緒に考え、取り組んでいきますので、いつでもご相談ください。

 

 

2019年07月01日

食中毒について

(この記事は2019年7・8月号の西陣病院広報誌『西陣病院だより』に掲載したものです)

西陣病院 内科 下村 考史

内科 医員
下村 考史



食中毒とは有害物質に汚染された飲食物を口にすることで様々な健康被害を受ける病気のことです。
これからの季節は気温も高く、湿度も高い季節になり食事なども傷みやすい季節となるために食中毒が起きやすくなります。今回はそういった食中毒についてご説明させていただきます。

 

まずは食中毒の原因についてです。食中毒の大半をしめるのがウイルスまたは細菌によるものですが、魚介類や肉類などについている寄生虫やキノコ毒などに代表される自然毒などでも発症するため以上の4種類におおまかに分類されます。

これからの季節に多くなってくるのは細菌性食中毒となりますので少しお話させていただきます。
細菌性食中毒がなぜこれからの季節に増えてくるかというと、細菌が高温多湿な環境下で増殖しやすいことが原因と言われています。特に有名なものがO-157やサルモネラ、カンピロバクター、黄色ブドウ球菌といったものであります。これらの予防のために最も重要になってくることは食材の管理と調理環境にあると言われています。食中毒は飲食店で起こるものと考える方も多いと言われておりますが、実は自宅の調理でも起こりうるということをまず把握していただく必要があると思います。

食中毒

最も重要なことは手指衛生です。手洗いをしっかりと行うことで手の細菌の食材への付着を防ぎます。続いて食材の管理ですが、少しの時間といってもやはりこれからは高温環境となりますので、冷蔵庫などの冷温環境で保存することが望ましいです。また生食するものでは新鮮であっても魚介類などは真水でしっかりと洗浄する、卵も生食をする際は原則新鮮なものとし洗浄する、などのこころがけが必要です。あとは調理の際に食材にしっかりと火を入れることや肉類や魚介類の調理などを行う際は調理器具をこまめに洗浄して他の食材に細菌を移さない努力することなどが日常で注意していただけることと思います。実際に食材各々に対する注意はできていても、包丁に付着した菌がサラダなどに付着して、そのサラダを生食することで食中毒を起こす事例が報告されており注意が必要です。

食中毒

 

ウイルス性食中毒では有名なノロウイルスなどがありますが、こちらは冬季に流行するものです。これらは2枚貝などに存在していることが多く、牡蠣やハマグリなどに注意が必要です。寄生虫では鯖の生食でのアニサキスなどが有名で、自然毒ではキノコ毒やフグ毒などが有名でこれらには季節性はありません。これらの摂取には充分に気をつけて下さい。

 

以上食中毒についてお話させていただきました。上記で説明させて頂いたようなことに注意して生活して頂き発症を予防することが最も重要ですが、もし腹痛、嘔吐、下痢、発熱などの症状がある場合には水分摂取を励行して頂き、医療機関の受診をお勧めいたします。

 

 

2019年07月01日

漢方薬のあれこれ

(この記事は2019年7・8月号の西陣病院広報誌『西陣病院だより』に掲載したものです)

薬剤部 薬剤師 東野 公亮

 

確認しよう  ‒漢方薬の飲むタイミングと飲み方‒

飲むタイミング 食前(ごはんの30分前)もしくは、食間(ごはんを食べて2~3時間後)。

※おなかの中が空っぽの状態の方が、漢方薬の効果が発揮されやすいため。
※食後でも服用できる場合があります。かかりつけ医、かかりつけ薬剤師に確認しましょう。

飲み方 水または白湯。

漢方薬は、症状にあわせて選ばれる薬です。(下記は一例です。)

症   状 処方される漢方薬
腹部膨満感、腹痛 など 大建中湯
体力があり、汗が出ない風邪のひきはじめ など 葛根湯
体力低下、夏バテ、全身倦怠感 など 補中益気湯
こむら返り、筋肉痛 など 芍薬甘草湯

 

漢方薬を飲みやすくするコツ

味やにおいが気になる

漢方薬の独特な味やにおいも、治療の大事なひとつとされています。一般的には水または白湯で服用とされていますが、味やにおいが苦手な方は、オブラートに包む、甘いゼリーに混ぜることで、独特な味やにおいを消す方法や、お茶でも服用できます。

顆粒が苦手

顆粒が苦手な方は、1包あたり100cc ~200ccのお湯に入れ顆粒を溶かして服用しましょう。

漢方薬を飲んで、こんな症状が出たら相談

漢方薬にも副作用があります。すべての漢方薬にあてはまることではありませんが、漢方薬服用後、下記のような症状が出たら、注意が必要です。

漢方服用後に特に注意する症状

空咳(痰のない咳)、発熱、労作時の息切れ、顔や手足のむくみ、脱力感、吐気・嘔吐 など

 

漢方薬は歴史のある薬です。上記以外にも症状に合わせて 薬が選ばれますので、かかりつけ医やかかりつけ薬剤師と 相談し、漢方薬とうまく付き合いましょう。

2019年07月01日

日本列島 ”食” めぐり「鳥取県」

(この記事は2019年7・8月号の西陣病院広報誌『西陣病院だより』に掲載したものです)

栄養科  管理栄養士 竹島 綾香

全国各地の特色ある料理や名物をご紹介していきます。

鳥取 いただき

~いただき~

いただきとは、油揚げの中にお米と野菜を詰め、だし汁で炊き上げる郷土料理です。昔は行事ごとがあるときに各家庭で作られ、近所に振る舞われたそうです。名前の由来は諸説ありますが、まだお米が貴重だった時代に、近所の方に「もらう」ではなく、「いただく」という感謝の気持ちからこの名称で呼ばれるようになったと言われています。見た目はいなり寿司と似ていますが、味付けや調理法は全く異なり、お出汁の優しい味わいがします。中に入れる具材や、味付け、調理法などは各家庭によって少しずつ異なります。好みの具材を使って作ってみてはいかがでしょうか。

 

●いただき 1個分: エネルギー230kcal たんぱく質6g 塩分1.4g
材料 (4個分) 作り方

米 1合(150g)
油揚げ 2枚
ごぼう 30g
人参 20g
だし汁 2カップ
しょうゆ 大さじ2
砂糖 大さじ1と1/2
みりん 大さじ1/2
酒 大さじ1

  1. 米を洗い、1時間水に浸し、ざるに上げる。
  2. ごぼうはささがきにし、水にさらしてアクを抜き、水けをきる。
  3. にんじんは千切りにする。
  4. 油揚げは横半分に切る。
  5. 米、ごぼう、人参を混ぜ合わせ、油揚げに詰め、つまようじで口を留める。
  6. 鍋にだし汁と調味料を入れ、(5)を並べ、落し蓋をして強火にかける。
  7. 煮立ったら中火にし、20分程度煮詰める。

 

 

2019年07月01日