西陣病院だより

「地域で生きる」を支える訪問看護

~ 医療的ケアからご家族への日常生活や精神面のサポートで自宅療養を支援 ~
住み慣れた家で療養生活を送ることができるように

(この記事は2019年11・12月号の西陣病院広報誌『西陣病院だより』に掲載したものです)

 

訪問看護ステーション「西陣」所長 加藤 小津恵

 

「長い間、大変お世話になりありがとうございました。在宅介護は考えていた以上に大変でしたが何とかやってこれたのは、皆様方に助けていただき指導していただいたお陰だと大変感謝しております。戸惑ったり不安になったりしたことも多々ありましたが、そんな時には相談にのっていただき、父の看護だけではなく母や私たちのことも気にかけ支えていただいた事がとても嬉しかったです。」

これは、在宅で最期を迎えられた利用者様のご家族からいただいたお手紙です。この方は、点滴や痰の吸引、尿の管などの医療的なケアが必要な状態の方でした。このように、医療的なケアが必要な方や障害を持つ方が、住み慣れた家で安心して過ごせるよう訪問看護師は、療養生活全般にわたって支援しています。その人、その家族が大切にされている事、想い、生活に合わせた看護の提供に努めています。本人や家族だけでの療養生活は不安になってしまうものですが、訪問看護を活用することで判断がつかない専門的なこともアドバイスを受けることができ、主治医との連携もスムーズに保つことができます。特に病院から退院した時などに利用すると、安定した生活を始めやすく、またそれを維持しやすくなると考えます。

また、訪問看護ステーション西陣では24時間、利用者様やご家族からの相談に対応しています。必要時には訪問し他機関と協働して対応することで安定した在宅療養生活へのサポートをしています。一人一人の利用者様が住み慣れた地域で医療を継続でき、安心して過ごして頂けるように、また不安なく家での看取りができるように専門的な立場で支援させて頂きます。私たちは、利用者様やご家族から学ぶ姿勢を忘れないこと、地域の多職種と協働することを大切にしています。開設し 24年が経ちますが、今後も心のこもった温かな看護を実践し、質の高い在宅ケアの提供に努めてまいります。

 

 

2019年11月01日

みなさんが、日常使用する「痛み止め(鎮痛薬)」の副作用を御存知ですか?

(この記事は2019年11・12月号の西陣病院広報誌『西陣病院だより』に掲載したものです)

薬剤部 薬剤師 國枝 亜矢香

NSAIDsって、なに?

NSAIDsは、鎮痛薬の種類の1つで、Non-Steroidal Anti-Inflammatory Drugsの略、日本語に直すと「非ステロイド性抗炎症薬」と呼ばれています。代表的なものに、ロキソプロフェンイブプロフェンという成分があります。お薬手帳や市販薬のパッケージで成分を確認してみましょう。

NSAIDsの副作用ってどうしておこるの?

痛みがある時、身体の中で痛みや発熱の原因物質(プロスタグランディンE2)が作られます。NSAIDsは、この原因物質が作られるのを邪魔して、痛みを和らげたり、熱を下げたりします。また、身体の中には、胃や十二指腸の粘膜を保護するためや腎臓の働きを保つために「血流を保つためのプロスタグランディンI2」が作られています。困ったことにNSAIDsは、E2とI2の違いが分からないため、身体に大切な「プロスタグランディンI2」が作られるのも邪魔します。

つまり、NSAIDsを漫然と服用していたら、消化管粘膜や腎臓を保護してくれるI2が少なくなり、消化性潰瘍や腎機能障害といった症状が出る可能性があります。

どうしたらいいの?

市販薬にも同じようなNSAIDsがあるため、薬剤師にあなたの病状を伝えて、適切な服用方法を聞いてください。また、出血などの重篤な消化性潰瘍や腎機能障害が出現してしまった場合には、NSAIDsを使用できなくなってしまうこともあります。本当にNSAIDsが必要な時に使用できるためにも、説明書の記載量を超えた過剰な服用や、漫然とした服用は避けるようにしましょう。

2019年11月01日

日本列島 ”食” めぐり「山形県」

(この記事は2019年11・12月号の西陣病院広報誌『西陣病院だより』に掲載したものです)

栄養科  管理栄養士 須惠 裕子

全国各地の特色ある料理や名物をご紹介していきます

 

芋煮

「芋煮」は、山形県の郷土料理で、里芋やこんにゃく、季節の野菜などを主な具材とした鍋料理です。起源は諸説ありますが、江戸時代、紅花交易の船頭が里芋とボウダラを、京都の料理を参考に甘辛く煮て食べたのが始まりと言われています。現在の牛肉スタイルになったのは明治の初期とのことです。

 

芋煮 1人分: エネルギー370kcal たんぱく質25g 塩分2.7g(煮汁を全て摂った場合)
材料 (4人分) 作り方

里芋 600g
牛肉 400g
こんにゃく 1枚
長ネギ 2本
酒 大さじ3

しょうゆ 大さじ4
みりん 大さじ2
砂糖 大さじ2
水(又は出汁) 約1200mL

★お好みで、ごぼう・きのこ類を加えても美味しくなります

  1. 里芋(皮付きは皮をむき)を食べやすい大きさに切る。
    こんにゃくは食べやすい大きさにちぎり、あく抜きする。
    長ネギは斜め切りにする。
  2. 鍋に手順1の里芋とこんにゃく、水(または出汁)を入れて火に掛ける。
    酒、砂糖、みりん、醤油、牛肉の半分程度を入れ、
    里芋に火が通るまであくを取りながら煮る。
  3. 里芋が煮えたら、残りの牛肉を入れ、
    調味料で味を調え(分量は目安、味付けはお好みで)さらに煮る。
    長ネギを入れてひと煮立ちさせたら完成。

 

同じ山形県でも、内陸地域と日本海側に位置する庄内地域とでは食文化に違いがあり、今回ご紹介したのは内陸の芋煮で、庄内の芋煮は「豚肉で味噌味」と材料も味付けも異なるようです。

2019年11月01日

第10回 透析センター 避難訓練開催報告

(この記事は2019年11・12月号の西陣病院広報誌『西陣病院だより』に掲載したものです)

透析センター
災害対策委員会

10月20日(日曜日)に、本館2階透析センターにおきまして透析患者さん対象の避難訓練を実施しました。今回で10回目となる訓練には、患者さんとそのご家族24名が参加されました。透析治療は、血液を体の外に出してダイアライザーといわれる人工腎臓により血液中の老廃物や電解質(カリウム・リンなど)や水分などを除去しますが、血液回路で機械につながれた状態となります。透析センターでは日頃から、患者さんが透析治療中にトイレ休憩をとられる際には、患者さんと機械を一時的に離脱する手技を行っております。その手技は緊急時の手技と同じにしておりますので、普段から緊急時の訓練を行っているということになります。スタッフは離脱手技を普段通り実施し、患者さんを安全に1階に避難誘導しました。

参加された患者さんからは、「経験することができてよかった」「毎年くるべきですね」などの感想がありました。安全に配慮して声かけを行いながら、参加された全員が無事に避難訓練することができました。

今年は、台風による被害が全国各地で起きています。関東では自施設で透析が行えず近隣施設で透析を受ける方もいたそうです。災害時は通常の透析が行えないことも想定し日頃から水分、塩分、カリウムの管理には十分注意するようお伝えし訓練を終了しました。

 

2019年11月01日

神経内科外来診療の実際

(この記事は2019年11・12月号の西陣病院広報誌『西陣病院だより』に掲載したものです)

神経内科 山本康正

今年の4月から火曜日に神経内科外来を担当させていただいております。温かい病院の雰囲気に感動致しております。神経内科の外来では、頭痛、めまい、しびれ、脱力、失神、歩行障害、物忘れ、などがよくみられます。あまり気にしなくていい症状から要注意の症状まで混在しているところが特徴です。

頭痛

まず片頭痛かどうかを考えます。若いころから頭痛持ちで、体動により増悪、過剰にまぶしく感じたり音が過敏に聞こえたりする場合です。また、片側の頭痛や目の奥が痛いなどとやや深刻に感じる場合がありますが、頭頸部の筋緊張で感覚神経が圧迫を受けておこる大後頭神経痛で、局所マッサージ等で改善します。しかしその他、くも膜下出血をはじめとする脳卒中や、脳腫瘍などの脳疾患が疑われる場合は画像診断が必須です。

めまい

多くは三半規管や前庭といった内耳由来です。回転性の他に、船に乗ったような、雲の上を歩いているような感じもあります。しかし、脳卒中によるめまいを忘れてはいけません。小脳や脳幹などの脳卒中によることが多く、言語のもつれ、しびれ、脱力、複視などの神経症状が伴うと脳卒中の可能性が極度に高まり(レッドカード)、血管の危険因子を多く持っている場合も要注意です(イエローカード)。低血圧による脳貧血や軽いてんかんでもめまい感として感じる場合があります。

しびれ

多くは末梢神経障害由来ですが、脳卒中などによって感覚路が障害されると脳由来のしびれがおこります。手足の先、手袋・靴下の部分がしびれる場合は多発性神経炎が多く内科的検索が必要です。頸椎症や腰椎症などで神経根が圧迫されておこるしびれ以外に、鎖骨・肋骨・頸筋などの間隙で神経が圧迫される胸郭出口症候群、肘の部分で圧迫される肘部管症候群、手首のところで圧迫される手根管症候群などの神経圧迫によるしびれ(絞扼性神経障害)も高頻度です。

脱力

脳卒中では片麻痺が多く、拡散強調画像(DWI)で細かい病変も描出されます(図1)。病変が小さく見えても、頸動脈の狭窄(図2)や心房細動などが原因になっていることもあり、原因により治療法も異なります。症状の軽さは必ずしも軽症を意味しません。四肢や両下肢の脱力では脊髄障害やギランバレー症候群なども疑われます。運動神経が選択的に障害され筋肉が痩せてくる筋萎縮性側索硬化症(ALS)は難病です。

失神

失神は、脳に血がゆきわたらない場合におこりますが、一時的に副交感神経が亢進して血圧が下がった場合、起立性低血圧という立位時に血圧が維持できない状態、脈が遅くなりすぎて一時心停止するような時におこります。そのほかに、てんかんによる場合が重要です。診断には脳波検査が必須です。

歩行障害

動作が緩慢で表情が乏しく、手足のふるえがみられたりするとパーキンソン病が疑われます。しばしば便秘や嗅覚低下などを伴います。脳で不足しているドーパミン系を補充しますが、パーキンソン症候群といわれる薬が効きにくい一群があります。その他、脊椎・末梢神経・筋疾患も原因となります。

もの忘れ

アルツハイマー型認知症が代表で、最近のことが記憶できないのが特徴です。アセチルコリン系薬剤を用います。その他、幻覚などを伴うレビー小体型認知症や性格変化や能動性の低下がみられる前頭側頭型認知症があります。ただ、ボーっとしているなどの症状が、脳深部の小梗塞による意欲低下であったり、痙攣のないてんかん(非けいれん性てんかん重積状態)であったりすることがあり専門的鑑別が必要です。また、高齢者で頭痛を伴う場合、慢性硬膜下血腫も要注意です。

 

2019年11月01日