(この記事は2021年5・6月号の西陣病院広報誌『西陣病院だより』に掲載したものです)
日本は近年超高齢社会となってきました。転倒し病院受診をされる方が多くいらっしゃいます。転倒して生じうる骨折としては統計的に①大腿骨近位部②脊椎③手関節が多いとされています。今回はその中でも①大腿骨近位部の骨折についてご説明させていただきます。
大腿骨は近位部、骨幹部、遠位部の 3 つに分かれます。今回お話する近位部は、体に近い股関節周囲を指します。骨盤にはまり込む丸い部分を骨頭、細くなっている頸部、ふくらみのある転子部、となっています。高齢者の転倒で生じる骨折は大腿骨頸部/転子部骨折が多いとされています。
日本の老年人口は 2020 年には 3,590 万人、2030年には3,667万人、ピークに達する2042年には 3,863 万人になると推計されています。したがって2020年には約25万人、2030年には約30万人、2042年には約32万人の大腿骨頸部/転子部骨折が発生するとされ、日常的に多い骨折となっています。骨折が生じた際は痛みで歩けなくなる方が多いです。レントゲンで判明することが多いですが、不顕性骨折といって転位がない骨折で、レントゲンでは判明せず、MRIなどの精密検査で診断がつくこともあります。その場合は痛いながらも歩けることもあります。不顕性骨折は後々転位することも多く、手術加療となる場合があるため、早期発見が大切です。
一般的にどの骨折も治療は大きく分けて2つです。手術か、ギプスなどの保存加療です。治療法は部位や折れ方によって変わります。大腿骨は歩行に大きく関与し、歩行できる方については積極的な手術加療を勧めています。保存加療では、痛みで寝たきりとなり、筋力低下し、歩行能力が見込めないことがよくあります。リハビリを行えば立位動作が可能となる方もいらっしゃいます。寝たきりや車いすでの生活が主な方は保存加療を選択される場合もあります。
転倒後無理して生活され、骨折部が大きくずれることでより難しい手術になることがあります。先ほどの不顕性骨折のこともあわせ早期発見が大切です。転倒し、股関節部の痛みが強い場合は無理なさらず、早期の病院受診をお願いします。 患者さん一人一人に合わせた最適な加療ができるよう、日々研鑽を積んでおります。転倒し困った方がいらっしゃれば、お気軽に当院にご相談ください。