(この記事は2022年5・6月号の西陣病院広報誌『西陣病院だより』に掲載したものです)
疫学
日本人では上部尿路結石が95%以上を占めます。50年前と比べると罹患率は3.2倍に増えています。男性の6.5人に1人、女性の13.2人に1人が罹るとされ男性に多い疾患ですが、直近10年で女性の増加は顕著です。好発年齢は男性50代、女性60代です。
成分
結石成分は、男女ともカルシウム結石が約90%を占めます。男性は尿酸結石、女性は感染結石が続きます。
症状
結石は存在するだけでは特に症状を認めず、尿管に詰まることで激しい片側性の疼痛を引き起こすのが特徴的です。尿の流れがせき止められ腎臓が腫大した水腎症の状態になることが痛みの原因です。痛みとともに吐き気や嘔吐を起こすこともあります。また血尿もしばしばみられます。結石の位置によっては頻尿や排尿時痛、排尿困難感などの症状を伴うこともあります。
検査
尿路結石の診断にはまずは尿検査や超音波検査、レントゲン検査などの低侵襲な検査を行います。超音波検査では水腎症の確認ができます。レントゲン検査でほとんどの結石は確認できますが一部の結石は確認できないことがあります。CT検査ではすべての結石が確認でき、また急な疼痛を来す結石以外の疾患の検索にも有用です。
治療
1㎝未満の結石は自然排石が期待できます。1日2L程度の水分摂取を推奨し、必要に応じて内服薬の処方をします。1ヶ月以上排石しない場合や1㎝以上の結石の場合には積極的治療を検討します。以下に挙げた治療が主に行われますが結石があまりにも大きい場合には経皮的結石破砕術(PNL)や腹腔鏡下切石術が行われる場合もあります。いずれの治療もメリット・デメリットがあり、患者さんの背景や適応を十分に考えたうえで治療法を相談いたします。
■ 体外衝撃波結石破砕術(ESWL)
レントゲンで結石を確認しながら、体外で発生させた衝撃波を照射し結石を破砕する治療です。1回の治療は約1時間です。当院では日帰りで施行でき、基本的に大きな合併症は少なく患者さんへ
の負担が少ない治療となっています。レントゲンに写らない結石には施行できず、また結石によっては複数回の治療を必要とする可能性もあります。
■ 経尿道的結石破砕術(TUL)
尿道から細い内視鏡を挿入し結石を直接見ながらレーザーで破砕します。入院で全身麻酔もしくは腰椎麻酔をかけて行い、入院期間は4~5日ほどです。破砕効果はESWLよりも大きいとされます。一方で尿管の損傷や術後の感染症などの合併症が発生する可能性があります。当院ではレーザーとしてQuanta Litho Evoという最新の機械を導入し治療を行っております。
再発予防
約半数が再発すると言われております。再発予防の基本は水分摂取であり、1日2L以上の水分摂取が必要とされています。最も頻度の高いシュウ酸カルシウム結石では、シュウ酸を多く含むタケノコやほうれん草、紅茶などの摂取を抑えることが推奨されます。またシュウ酸はカルシウムと同時に摂取するとシュウ酸の体内への吸収が抑制されます。
まとめ
尿路結石の患者さんは今後も増加が予想されます。再発予防と適切な治療の選択が重要です。気になる方は一度腎臓・泌尿器科を受診してください。