西陣だより

神経内科外来診療の実際

(この記事は2019年11・12月号の西陣病院広報誌『西陣病院だより』に掲載したものです)

神経内科 山本康正

今年の4月から火曜日に神経内科外来を担当させていただいております。温かい病院の雰囲気に感動致しております。神経内科の外来では、頭痛、めまい、しびれ、脱力、失神、歩行障害、物忘れ、などがよくみられます。あまり気にしなくていい症状から要注意の症状まで混在しているところが特徴です。

頭痛

まず片頭痛かどうかを考えます。若いころから頭痛持ちで、体動により増悪、過剰にまぶしく感じたり音が過敏に聞こえたりする場合です。また、片側の頭痛や目の奥が痛いなどとやや深刻に感じる場合がありますが、頭頸部の筋緊張で感覚神経が圧迫を受けておこる大後頭神経痛で、局所マッサージ等で改善します。しかしその他、くも膜下出血をはじめとする脳卒中や、脳腫瘍などの脳疾患が疑われる場合は画像診断が必須です。

めまい

多くは三半規管や前庭といった内耳由来です。回転性の他に、船に乗ったような、雲の上を歩いているような感じもあります。しかし、脳卒中によるめまいを忘れてはいけません。小脳や脳幹などの脳卒中によることが多く、言語のもつれ、しびれ、脱力、複視などの神経症状が伴うと脳卒中の可能性が極度に高まり(レッドカード)、血管の危険因子を多く持っている場合も要注意です(イエローカード)。低血圧による脳貧血や軽いてんかんでもめまい感として感じる場合があります。

しびれ

多くは末梢神経障害由来ですが、脳卒中などによって感覚路が障害されると脳由来のしびれがおこります。手足の先、手袋・靴下の部分がしびれる場合は多発性神経炎が多く内科的検索が必要です。頸椎症や腰椎症などで神経根が圧迫されておこるしびれ以外に、鎖骨・肋骨・頸筋などの間隙で神経が圧迫される胸郭出口症候群、肘の部分で圧迫される肘部管症候群、手首のところで圧迫される手根管症候群などの神経圧迫によるしびれ(絞扼性神経障害)も高頻度です。

脱力

脳卒中では片麻痺が多く、拡散強調画像(DWI)で細かい病変も描出されます(図1)。病変が小さく見えても、頸動脈の狭窄(図2)や心房細動などが原因になっていることもあり、原因により治療法も異なります。症状の軽さは必ずしも軽症を意味しません。四肢や両下肢の脱力では脊髄障害やギランバレー症候群なども疑われます。運動神経が選択的に障害され筋肉が痩せてくる筋萎縮性側索硬化症(ALS)は難病です。

失神

失神は、脳に血がゆきわたらない場合におこりますが、一時的に副交感神経が亢進して血圧が下がった場合、起立性低血圧という立位時に血圧が維持できない状態、脈が遅くなりすぎて一時心停止するような時におこります。そのほかに、てんかんによる場合が重要です。診断には脳波検査が必須です。

歩行障害

動作が緩慢で表情が乏しく、手足のふるえがみられたりするとパーキンソン病が疑われます。しばしば便秘や嗅覚低下などを伴います。脳で不足しているドーパミン系を補充しますが、パーキンソン症候群といわれる薬が効きにくい一群があります。その他、脊椎・末梢神経・筋疾患も原因となります。

もの忘れ

アルツハイマー型認知症が代表で、最近のことが記憶できないのが特徴です。アセチルコリン系薬剤を用います。その他、幻覚などを伴うレビー小体型認知症や性格変化や能動性の低下がみられる前頭側頭型認知症があります。ただ、ボーっとしているなどの症状が、脳深部の小梗塞による意欲低下であったり、痙攣のないてんかん(非けいれん性てんかん重積状態)であったりすることがあり専門的鑑別が必要です。また、高齢者で頭痛を伴う場合、慢性硬膜下血腫も要注意です。

 

2019年11月01日

変形性股関節症について

(この記事は2019年9・10月号の西陣病院広報誌『西陣病院だより』に掲載したものです)

西陣病院 整形外科 部長 牧之段 淳

整形外科 部長
牧之段 淳






動き始めや歩き始めにももの付け根に違和感があったり痛んだりあるいは靴下が履きにくいなどの症状はありませんか?年齢を重ねるにつれて強くなる股関節の痛みがあれば変形性股関節症かも知れません。原因は「臼蓋」と呼ばれる股関節の屋根が小さく大腿骨頭のかぶりが浅い「臼蓋形成不全」があることが多いです。一度関節軟骨が傷むと回復することは難しく次第に変形が進みます。

 

治療はまず痛みがある時は消炎鎮痛剤を飲んだり、安静にしたりしますが消炎鎮痛剤は胃腸を荒らしたり腎臓に負担がかかったりするので主に急性期に使用し3ヵ月以上経過した慢性期には他の痛みを抑える薬を使うことが一般的になってきました。他の治療法としては運動療法、温熱療法、装具療法などがあります。変形性股関節症では徐々に股関節の動きが悪くなっていくためストレッチや股関節の動きを拡大するリハビリを行ったり筋力を強化したりします。プールなど水中で歩くことは浮力を生かして股関節の負担が減るためお勧めです。

装具療法では歩行時に杖を使用していただき股関節にかかる負担を減らします。片足で立った時には体重の約3倍の力が股関節にかかると言われています。ですから例えば10kg 減量すればその3倍の30kg の負担が減ることになります。以上のような保存的治療を行っても痛みが強く日常生活に支障が生じる場合は手術を考えます。
50歳までの方は関節を温存する手術を考慮しますが現在では痛みを最も確実にとることのできる人工股関節全置換術を行うことが多くなっています。日本では年間6万件を超える人工股関節全置換術が行われております。脱臼、感染、肺梗塞および骨折などの合併症が合せて数%あり慎重に行う必要がありますが人工股関節の成績は向上してきており15年から20年程度は持つようになってきています。平均寿命も女性で87歳、男性で81歳と伸びてきていますが70歳以上であれば1回の人工関節手術で済む計算になります。手術後は翌日から歩行器を用いて歩き始め、術後3-4週間で1本杖をついて自宅に退院されております。術後3ヵ月も経過するとほとんど痛みはおっしゃられなくなられることが多いです。

痛みが股関節であれば分かりやすいのですがお尻の痛みや大腿の痛み、しびれ感を訴える方もおられます。実際には腰椎からの坐骨神経痛と紛らわしく股関節のレントゲンやMRIを撮影しないと分からないことも少なくありません。ももの付け根の痛みでお悩みの方は毎週木曜日に股関節外来(予約制)を開いておりますのでご気軽にご相談下さい。

2019年09月01日

高齢者の低栄養が問題です

(この記事は2019年9・10月号の西陣病院広報誌『西陣病院だより』に掲載したものです)

内科 医長
西村 智子



現代の日本で高齢者の栄養失調が問題となっていることをご存じでしょうか?
「粗食が健康にいい」「野菜中心」と食事に気を付けているご高齢の方々、
段々と体重が減ってきていませんか?
栄養失調になると体力が落ち病気になりやすく、また治りにくくなります。

現代の日本で栄養失調?

日本の高齢者の2割が低栄養であるといわれ、およそ半数に低栄養のリスクがあるといわれています。BMI(body massindex = 体重[kg]/ 身長[m]2)を指標にすると18.5未満の場合低栄養と考えられます。高齢者は食欲が低下し、飲み込む力が弱くなり、噛む力も落ちるので食べられる量が少なくなることが主な原因です。また生活習慣病を心配してカロリーや脂肪を控えめにすることは中高年世代には必要なことですが、高齢になってもそれを続けていると栄養失調になることがあります。

低栄養は何が問題?

肺炎や癌、手術後などたくさんの病気や傷が治りにくく入院期間が長引くと言われています。
また骨折や転倒、認知症の危険性も高まるとされています。
「図1」はもともと低栄養がある高齢患者さんが病気や事故で救急入院したとき経過が悪いことを示すデータです。

低栄養を防ぐためには?

バランスの良い食事

バランス良く食べ、特にたんぱく質(肉・魚・大豆など)は筋肉を増やして体力がつきますので積極的に摂りましょう。
高齢者ほど必要な栄養素と言えます。(肝不全や腎機能障害がある場合は担当医とご相談ください。)

食べやすい形にする

硬いものや噛みにくいものは柔らかく煮たり小さく切ったりして食べやすくしましょう。歯が悪い時は治療しましょう。

間食を利用する

すぐにおなかがいっぱいになる場合は間食をして食べる回数を増やしましょう。市販の高カロリー栄養剤を利用するのも効果的です。

食べる順番に気を付ける

最初に汁物で口を潤し、野菜やおかずから食べ始めましょう。ごはんを先に食べるとすぐにおなかがいっぱいになり量が食べられず栄養も偏ってしまいます。

 

体重を維持し低栄養にならないためには日々の食事への意識が大変重要です。
超高齢化社会である我が国では医療費増加の抑制にもつながりひいては国民全体の福祉にもつながります。高齢者と家族、地域が一体となって高齢者の低栄養を防ぐ枠組み作りが必要です。

 

 

2019年09月01日

世界糖尿病デーイベント開催のお知らせ

(この記事は2019年9・10月号の西陣病院広報誌『西陣病院だより』に掲載したものです)

看護部 主任
糖尿病看護認定看護師
立山 一美

 

世界糖尿病人口が増加していることを踏まえ、11月14日が「世界糖尿病デー」に制定され、糖尿病の予防、治療、療養を喚起する啓発活動を推進し、世界の有名な建築物がシンボルカラーであるブルーにライトアップされています。当院でも、今年より糖尿病のイベントを開催することになりました。糖尿病についての相談や血糖測定など、少しでも糖尿病のことについて知ってもらえる機会にしたいと内容を検討しています。ご参加をお待ちしています。

 

 

2019年09月01日

看護の日

(この記事は2019年9・10月号の西陣病院広報誌『西陣病院だより』に掲載したものです)

「ふれあい看護体験」担当 : 科長 三輪 徳子
「ふれあい健康相談」担当 : 主任 多氣 真弓

看護の日

7月27日(土)に毎年恒例の、「ふれあい看護体験」と「ふれあい健康相談」を実施しました。

「ふれあい看護体験」には、今年は高校生3名が参加してくださいました。看護師の仕事に対して、「命を守る」という緊迫したイメージがあり、高校生のみなさんはとても緊張されていましたが、患者さんとの交流で徐々に笑顔もみられるようになりました。食事介助や保清などの生活を支える場面を見学し、患者さんとのコミュニケーションの大切さを学ぶことができたと話してくれました。

「ふれあい健康相談」では、外来受診で来られた方、またそのご家族が20名参加してくださいました。身体計測では、身長を計測する機会があまりなく、「以前より縮んだ」と言われる方が数名いらっしゃいました。皮膚・排泄ケア認定看護師は、角質水分量(皮膚のうるおい度)を測定して保湿剤の塗り方について、感染管理認定看護師は、今の季節に合わせて「食中毒」についてのお話をさせていただきました。猛暑の折、今年は経口補水液(OS-1)と熱中症対策のパンフレットを配布しました。皆様と触れ合える時間をいただき、いろいろなお話ができましたことに感謝しております。来年も多くの皆様の健康にお役に立てるような企画を考えて参ります。

2019年09月01日

便秘薬について

(この記事は2019年9・10月号の西陣病院広報誌『西陣病院だより』に掲載したものです)

薬剤部 薬剤師 河野 透子

便秘とは、排便が3日以上なかったり、便が硬くて量が少なく、残便感があったりする状態を呼びます。多くは、水分や食事摂取不足、ストレスなどにより腸の動きが低下することで生じます。しかし、がんやポリープなど腸の病気が原因となることもあり、血便や激しい腹痛、嘔吐を伴う場合は早めに受診することが大切です。また、薬の影響で便秘を生じることがあり、コデインリン酸塩を含む咳止めや、抗うつ薬、抗パーキンソン病薬、鉄剤、降圧剤(カルシウム拮抗薬)などが挙げられます。

膨張性下剤

水分によって容積を増大させて便の量を増やす作用があります。作用はあまり強くありませんが、自然に近い形での排便ができます。便秘型の過敏性腸症候群に対し使用されますが、腹部膨満感の悪化に注意が必要です。ポリカルボフィルカルシウム(ポリフル®錠)(※慢性便秘症の適応はなし)などがあります。

浸透圧性下剤

腸内で水分泌を引き起こし、便を柔らかくし、回数を増やす作用があります。塩類下剤、糖類下剤、浸潤性下剤の3種類があり、長期投与によって耐性を生じることがないのが特徴です。酸化マグネシウム(マグミット®錠)は安価であること、用量調節が容易であることから、昔から使用されている塩類下剤です。胃酸の分泌を抑える薬を服用している場合や、胃を切除している場合では効果が弱まる可能性があります。また、高齢者や腎機能が低下している場合には副作用として高マグネシウム血症を引き起こすリスクがあるため注意が必要です。糖類下剤にはラクツロース(ラグノス®ゼリーなど)があり、腸内細菌に利用されることで、浸透圧を高め排便を促す作用があります。副作用として腹部膨満感が現れることがあります。ルビプロストン(アミティーザ®カプセル)は副作用が少なく、腎機能が低下した人にも比較的安全に使用できますが、空腹時では吐き気が現れやすいため、食後に服用するようにしましょう。

刺激性下剤

腸の蠕動運動を亢進することで排便を促進する作用があります。センノシド(センノサイド®錠)、ピコスルファート(ラキソベロン®液)などがあります。通常は内服後8~10時間ほどで作用が現れるため、寝る前に使用することが多い薬です。効果は強力ですが、長期連用により耐性が起こる可能性があるため注意が必要です。

新しい下剤について

リナクロチド(リンゼス®錠)、エロビキシバット(グーフィス®錠)、ポリエチレングリコール製剤(モビコール®配合内用剤)など、次々と新薬が作られています。

 

便秘薬は症状や目的によって使い分ける必要があるため、薬の選択については医師、薬剤師と相談して下さい。便秘の予防として、まずは食事や適度な運動など、生活習慣の見直しを行うことも大切です。

 

 

2019年09月01日

日本列島 ”食” めぐり「福岡県」

(この記事は2019年9・10月号の西陣病院広報誌『西陣病院だより』に掲載したものです)

栄養科  管理栄養士 今井 文恵

全国各地の特色ある料理や名物をご紹介していきます。

 

~がめ煮~

鶏肉を里芋、ごぼう、人参、たけのこなどと一緒に煮込む料理。昔、福岡県北部は筑前国(ちくぜんのくに)と呼ばれていたことから別名「筑前煮」とも言われます。筑前煮と聞けば、京都に住む私たちにも想像がつきやすいですね。「がめ煮」の名前の由来は複数あり、博多の方言である「がめりこむ(寄せ集める)」が短くなり「がめ煮」と呼ぶようになったという説や、文禄の役に朝鮮に出兵した兵士たちが当時「どぶがめ(スッポン)」とその他の材料をごった煮にして作った「亀煮」から来たという説などがあるそうです。現在でも福岡県一帯で慶事には欠かせない郷土料理です。

 

●がめ煮 1人分: エネルギー262kcal たんぱく質19g 塩分2.2g
材料 (4人分) 作り方

鶏もも肉 1枚(300g)
里芋 4個(200g)
れんこん 1節(100g)
ごぼう 1本(100g)
人参 小1本(100g)
干し椎茸 5枚
こんにゃく 1枚
絹さや(茹でておく)適量
サラダ油 適量

(A)--------------------
しょうゆ 大さじ3
みりん 大さじ3
砂糖 大さじ1.5
だし汁 2カップ
干し椎茸の戻し汁 1カップ
--------------------------

  1. 鶏もも肉は一口大に切る。
    里芋は半分に切り塩でもんでぬめりを取り、水洗いする。
    れんこん、ごぼうは乱切りにし、水にさらす。
    干し椎茸は水に浸けてもどし半分に切る。
    こんにゃくは一口大に切り下茹でする。
  2. 鍋に油を熱し、鶏肉を炒め、れんこん、ごぼう、人参、里芋、
    干し椎茸、こんにゃくの順に加えて炒める。
  3. 油が全体に回ったら、(A)を加え、煮立ったら落し蓋をして中火で30分程煮る。
    (こまめにアクを取り除きましょう。)
  4. 器に盛り付け、絹さやを散らす。

 

 

2019年09月01日

透析療法における ドライウェイトのお話

(この記事は2019年7・8月号の西陣病院広報誌『西陣病院だより』に掲載したものです)

西陣病院 泌尿器科 野村 武史

腎臓・泌尿器科 医長
野村 武史



ドライウェイトとは?
腎機能が正常であれば、体重の水の占める割合は一定に保たれま
す。これは腎臓が尿として余分な水を排泄するからです。しかし、
透析患者さんはこの腎臓の働きが障害されているため、余分な水が体内に溜まり、むくんだりします。
そこで透析療法により水のバランスを維持する必要があります。透析と透析の間の体重の増加は
主に口から入った水の量で決まってきますので、透析後と前の体重の増加をみて、透析中の除水量
が決められます。この時の基本となる体重をドライウェイト(DryWeight:DW)と呼びます。

ドライウェイト(以下、DW)を決めるための指標

DW を決める指標としては、臨床症状、血圧、心臓の大きさ、HANP、心臓超音波検査、下大静脈径などが使われます。
今回は、それぞれの意味を考えていきましょう。

臨床症状

体に余分な水分が貯まると、浮腫が下肢などに出てきます。さらに進むと、胸水がたまり、息苦しさが出てきます。胸部レントゲン検査で胸水が過剰状態であればDW を下げます。逆に、起立性低血圧(起きたりするとふらつきがみられる)で体内の水分が不足していれば、DW を上げます。

血圧

心機能が正常であれば、高血圧ではDW を下げ、低血圧ではDW を上げるのが基本です。心機能が低下している方や動脈硬化が強い方では他の指標を総合的に検討する必要があります。

心臓の大きさ(心胸郭比=CTR)(図 1)

当院で透析療法を受けられている患者さんは毎月レントゲン写真を撮影してCTR を測定しています。通常は、透析後のレントゲンで50%以下(女性は53%以下)が正常です。しかし、器質的異常が心臓にある場合は基準が変わります。一般に、CTR が大きくなっていく場合は水分の貯留を考え、DW を下げます。

 

 

HANP(ヒト心房ナトリウム利尿ペプチド)

HANP は主に心臓に貯蔵されており、水分過剰状態になると心臓が広げられ血中に分泌されます。数値が大きくなれば水分過剰と考えDW を下げます。しかし、不整脈などがあるときは変動が大きいためDW の指標になりにくいことがあります。

心臓超音波検査・下大静脈径

心臓の動き、心臓壁の肥大、心室・心房の内腔の大きさ、心臓弁の異常などを観察測定して、心臓自体に問題があるか否かを診ます。下大静脈径では水分過剰になっているかなど判断し過剰であればDW を下げます。

<最後に>

DW が適正か否かは、上述のような複雑な要素が絡み合っています。さらに、透析患者さん自身の自覚症状、日常生活動作(ADL)、生活の質(QOL)などもDW 決定の重要な要素になりますので、適宜DW の変更が必要になります。患者さん自身にあわせた治療方針をこれからも提案していきたいと思いますので、今後ともよろしくお願いいたします。

 

 

2019年07月01日

慢性腎臓病(CKD)の進行を抑えられるよう、 これからの療養生活を支援します

(この記事は2019年7・8月号の西陣病院広報誌『西陣病院だより』に掲載したものです)

透析センター 主任
糖尿病看護認定看護師
立山 一美

 

慢性腎臓病(CKD)の予防、治療においては、食事内容を含めた生活習慣の改善、適正化が重要であるといわれています。
生活習慣の見直しや治療の必要性は理解していても、今までの生活を変えることはたやすいことではありません。2019年4月より、腎臓病及び糖尿病の専門の資格を持った看護師6名で、CKD看護外来をはじめました。腎臓病の進行が抑えられるように、療養生活で気を付けることを具体的に説明し、自己管理がうまくできるように一緒に考え、お手伝いをさせて頂きます。
また慢性腎不全末期の方には、今後の一般的な治療の説明を行い、療法選択の支援をさせて頂きます。看護師のみならず、院内の様々な職種が、患者さんやご家族の不安や悩み事も含めて一緒に考え、取り組んでいきますので、いつでもご相談ください。

 

 

2019年07月01日

食中毒について

(この記事は2019年7・8月号の西陣病院広報誌『西陣病院だより』に掲載したものです)

西陣病院 内科 下村 考史

内科 医員
下村 考史



食中毒とは有害物質に汚染された飲食物を口にすることで様々な健康被害を受ける病気のことです。
これからの季節は気温も高く、湿度も高い季節になり食事なども傷みやすい季節となるために食中毒が起きやすくなります。今回はそういった食中毒についてご説明させていただきます。

 

まずは食中毒の原因についてです。食中毒の大半をしめるのがウイルスまたは細菌によるものですが、魚介類や肉類などについている寄生虫やキノコ毒などに代表される自然毒などでも発症するため以上の4種類におおまかに分類されます。

これからの季節に多くなってくるのは細菌性食中毒となりますので少しお話させていただきます。
細菌性食中毒がなぜこれからの季節に増えてくるかというと、細菌が高温多湿な環境下で増殖しやすいことが原因と言われています。特に有名なものがO-157やサルモネラ、カンピロバクター、黄色ブドウ球菌といったものであります。これらの予防のために最も重要になってくることは食材の管理と調理環境にあると言われています。食中毒は飲食店で起こるものと考える方も多いと言われておりますが、実は自宅の調理でも起こりうるということをまず把握していただく必要があると思います。

食中毒

最も重要なことは手指衛生です。手洗いをしっかりと行うことで手の細菌の食材への付着を防ぎます。続いて食材の管理ですが、少しの時間といってもやはりこれからは高温環境となりますので、冷蔵庫などの冷温環境で保存することが望ましいです。また生食するものでは新鮮であっても魚介類などは真水でしっかりと洗浄する、卵も生食をする際は原則新鮮なものとし洗浄する、などのこころがけが必要です。あとは調理の際に食材にしっかりと火を入れることや肉類や魚介類の調理などを行う際は調理器具をこまめに洗浄して他の食材に細菌を移さない努力することなどが日常で注意していただけることと思います。実際に食材各々に対する注意はできていても、包丁に付着した菌がサラダなどに付着して、そのサラダを生食することで食中毒を起こす事例が報告されており注意が必要です。

食中毒

 

ウイルス性食中毒では有名なノロウイルスなどがありますが、こちらは冬季に流行するものです。これらは2枚貝などに存在していることが多く、牡蠣やハマグリなどに注意が必要です。寄生虫では鯖の生食でのアニサキスなどが有名で、自然毒ではキノコ毒やフグ毒などが有名でこれらには季節性はありません。これらの摂取には充分に気をつけて下さい。

 

以上食中毒についてお話させていただきました。上記で説明させて頂いたようなことに注意して生活して頂き発症を予防することが最も重要ですが、もし腹痛、嘔吐、下痢、発熱などの症状がある場合には水分摂取を励行して頂き、医療機関の受診をお勧めいたします。

 

 

2019年07月01日