西陣だより

ポリファーマシーが社会問題に

(この記事は2022年5・6月号の西陣病院広報誌『西陣病院だより』に掲載したものです)

薬剤部  薬剤師  楠 斐未

ポリファーマシー(Poli+pharmacy)とは?

多剤併用(多くの種類の薬を服用している)を意味しますが、単に多剤併用を指すのではありません。一般的に5~6剤以上を言いますが、何剤以上でポリファーマシーであるという定義ではなく、必要以上にたくさんの種類の薬が処方されたことによって、害を有する場合がある状態を言います。

なぜ薬が増えるのか?

加齢に伴って基礎疾患(糖尿病、高血圧、腰痛など)が増え、複数の医療機関に通院する方が増えるため、その医療機関ごとに薬が処方され、通う病院の数だけ薬が増えていく結果になります。

ポリファーマシーの問題点

それぞれの医師から処方された薬を飲んでいて、その種類が多いほど、飲み合わせにより薬が効きすぎる、あるいは効果を打ち消しあってしまう可能性が高まります。高齢になるほど肝臓や腎臓の薬を代謝・排泄する機能が低下し、薬が体内に長く留まるようになるため、薬の副作用リスクも高まり、そして、必要以上にお金がかかります。

ポリファーマシーを予防するために

① かかりつけ医師やかかりつけ薬局をもちましょう。
② お薬手帳を一冊にまとめて活用しましょう。
③ 服用している薬について医師や薬剤師に相談しましょう。
 
 ※ 医師や薬剤師等の医療スタッフとお薬手帳の情報を共有することで、飲み合わせや同じ効果をもつ薬剤の重複を防ぐことが出来ます。そのためにもお薬手帳を一冊にまとめること、かかりつけをもつことが重要です

注意

飲んでいる薬が多いからといって、勝手に薬をやめたり減らしたりするのはいけません。自己中断すると症状が悪化することがあります。必ず医師や薬剤師に相談しましょう。

2022年05月01日

最先端の内視鏡システムを導入しました

(この記事は2022年5・6月号の西陣病院広報誌『西陣病院だより』に掲載したものです)

消化器内科部長
消化器内視鏡センター長
稲垣 恭和

消化器内視鏡センターでは 2022年1月より内視鏡システムを全てオリンパス社製の最上位機種であるEVIS X1に更新し、最新のスコープも導入致しました。EVIS X1は世界初の5LED 光源を搭載しており、EDOF(Extended Depth of Field:被写界深度拡大)などの最新観察技術により、より明るく鮮明な画質での内視鏡観察が可能となっております。また、オリンパス社独自の NBI/RDI/TXI などの特殊光観察技術により、通常では発見できない微細病変の発見や、より安全で確実な内視鏡治療が可能となりました。当センターでは今後もチーム一丸となってより良質な医療を提供させて頂けるよう努力してまいります。

 

                             

2022年05月01日

尿路結石について

(この記事は2022年5・6月号の西陣病院広報誌『西陣病院だより』に掲載したものです)

腎臓・泌尿器科 医員
岩本 鴻太朗



 

疫学

日本人では上部尿路結石が95%以上を占めます。50年前と比べると罹患率は3.2倍に増えています。男性の6.5人に1人、女性の13.2人に1人が罹るとされ男性に多い疾患ですが、直近10年で女性の増加は顕著です。好発年齢は男性50代、女性60代です。

成分

結石成分は、男女ともカルシウム結石が約90%を占めます。男性は尿酸結石、女性は感染結石が続きます。

症状

結石は存在するだけでは特に症状を認めず、尿管に詰まることで激しい片側性の疼痛を引き起こすのが特徴的です。尿の流れがせき止められ腎臓が腫大した水腎症の状態になることが痛みの原因です。痛みとともに吐き気や嘔吐を起こすこともあります。また血尿もしばしばみられます。結石の位置によっては頻尿や排尿時痛、排尿困難感などの症状を伴うこともあります。

検査

尿路結石の診断にはまずは尿検査や超音波検査、レントゲン検査などの低侵襲な検査を行います。超音波検査では水腎症の確認ができます。レントゲン検査でほとんどの結石は確認できますが一部の結石は確認できないことがあります。CT検査ではすべての結石が確認でき、また急な疼痛を来す結石以外の疾患の検索にも有用です。

治療

1㎝未満の結石は自然排石が期待できます。1日2L程度の水分摂取を推奨し、必要に応じて内服薬の処方をします。1ヶ月以上排石しない場合や1㎝以上の結石の場合には積極的治療を検討します。以下に挙げた治療が主に行われますが結石があまりにも大きい場合には経皮的結石破砕術(PNL)や腹腔鏡下切石術が行われる場合もあります。いずれの治療もメリット・デメリットがあり、患者さんの背景や適応を十分に考えたうえで治療法を相談いたします。

体外衝撃波結石破砕術(ESWL
レントゲンで結石を確認しながら、体外で発生させた衝撃波を照射し結石を破砕する治療です。1回の治療は約1時間です。当院では日帰りで施行でき、基本的に大きな合併症は少なく患者さんへ
の負担が少ない治療となっています。レントゲンに写らない結石には施行できず、また結石によっては複数回の治療を必要とする可能性もあります。

■ 経尿道的結石破砕術(TUL
尿道から細い内視鏡を挿入し結石を直接見ながらレーザーで破砕します。入院で全身麻酔もしくは腰椎麻酔をかけて行い、入院期間は4~5日ほどです。破砕効果はESWLよりも大きいとされます。一方で尿管の損傷や術後の感染症などの合併症が発生する可能性があります。当院ではレーザーとしてQuanta Litho Evoという最新の機械を導入し治療を行っております。

再発予防

約半数が再発すると言われております。再発予防の基本は水分摂取であり、1日2L以上の水分摂取が必要とされています。最も頻度の高いシュウ酸カルシウム結石では、シュウ酸を多く含むタケノコやほうれん草、紅茶などの摂取を抑えることが推奨されます。またシュウ酸はカルシウムと同時に摂取するとシュウ酸の体内への吸収が抑制されます。

まとめ

尿路結石の患者さんは今後も増加が予想されます。再発予防と適切な治療の選択が重要です。気になる方は一度腎臓・泌尿器科を受診してください。

2022年05月01日

日本列島 ”食” めぐり「岐阜県」

(この記事は2022年3・4月号の西陣病院広報誌『西陣病院だより』に掲載したものです)

栄養科 管理栄養士 今井 文恵

全国各地の特色ある料理や名物をご紹介していきます

 

鶏ちゃん

 鶏ちゃん(けいちゃん)とは、岐阜県の郷土料理の一つで、鶏肉に醤油や味噌をベースにニンニクや生姜などで下味を付け、キャベツやもやしなどの野菜と共に鉄板で炒めた料理のことです。戦中から戦後、下呂や郡上の田舎で、卵を産まなくなった採卵用のニワトリを食べたことが始まりと言われています。食肉が手に入りにくかった当時、「鶏ちゃん」は貴重な料理であり、盆や正月、親族の集まりや来客があるときなど、特別な時に振る舞われたそうです。

(1人分)エネルギー 329kcal/たんぱく質21g/塩分2.1g

材料 (2人分) 作り方

●鶏もも肉・・200g
●キャベツ・・ 150g
●もやし・・ 100g
●しいたけ・・ 4個
●サラダ油・・ 大さじ1
●小ねぎ(小口切り)・・ 適量

<みそだれ>
●料理酒・・ 大さじ2
●みそ・・ 大さじ1
●しょうゆ・・ 小さじ1
●砂糖・・ 小さじ1
●すりおろしニンニク・・ 小さじ1

① しいたけは軸を切り落とし、薄切りにする。
② キャベツはざく切り、もやしはさっと水で洗ってから水気を切っておく。
③ 鶏もも肉は一口大に切る。
④ ボウルにみそだれの材料を入れ、混ぜ合わせる。
➄ ④に③を加えて揉み込み、冷蔵庫で1時間ほど味がなじむまで浸ける。
⑥ 中火で熱したフライパンにサラダ油をひき、➄、②を入れて5分程焼く。
⑦ 鶏もも肉に火が通ったら①を加え、中火で炒め合わせ、キャベツがしんなりしたら火から下ろす。
⑧ 器に盛り付けて小ねぎを散らして完成。

 

2022年03月01日

食物アレルギーとお薬

(この記事は2022年3・4月号の西陣病院広報誌『西陣病院だより』に掲載したものです)

薬剤部  薬剤師 植村 有加

お薬には、食物に由来する成分が含まれていることがあり、食物アレルギーがある方は注意が必要です。
今回は、食物アレルギーとお薬の関係をご紹介します。

食物アレルギーとは?

特定の食物を摂取することにより免疫システム(体が物質を排除する機能)が過敏に働き、体に不利益な症状が現れることです。

不利益な症状とは?

皮膚症状
→ 蕁麻疹、かゆみ、赤み

呼吸器症状
→ せき、呼吸困難

粘膜症状
→ 唇やまぶたの腫れ、鼻水

消化器症状
→ 嘔吐・吐き気、下痢

※ 血圧の低下や意識障害などを引き起こし、場合によっては生命を脅かす危険な状態(アナフィラキシー)になることもあります

食物アレルギーがある方が、服用できない医薬品のご紹介

鶏卵由来の成分を含む医薬品(塩化リゾチームや卵黄レシチンを含む
● 市販のかぜ薬や鎮咳去痰薬(コンタック・ルル・パブロンなど)
● 市販の目薬(スマイル40など)
● 手術時に使用する鎮静剤(プロポフォールなど)
● インフルエンザワクチン

 

牛乳由来の成分を含む医薬品(カゼインや乳糖を含む)
● 下痢止めのタンニン酸アルブミン製剤
● 整腸剤(ラックビー、耐性乳酸菌散など)
● 食事がとれない時の栄養剤(エンシュア、ラコールなど)
● 肝臓病に用いる栄養剤(アミノレバンEN)
● インフルエンザ治療薬(イナビル、リレンザ)
● 喘息治療薬(シムビコート、レルベアなどの吸入薬)

 

その他
ゼラチンは、医薬品の添加物やカプセルの原材料として非常に多く使用されています。

 

※ 今回は、紙面の都合上、全てのお薬を掲載していません。必ず、お薬を服用する前や手術などを受ける時には、食物アレルギーについて、医師や薬剤師に伝えてください。食物などによるアレルギーを起こした経験があったり、起こしたりした時には、「お薬手帳」に「アレルギー歴」を記載し、医師や薬剤師に見せてください。ドラッグストアなどでお薬を購入される際にも、心配な点があれば、薬剤師にご相談ください

2022年03月01日

当院の認知症看護特定認定看護師を紹介します

(この記事は2022年3・4月号の西陣病院広報誌『西陣病院だより』に掲載したものです)

認知症看護特定認定看護師


認知症看護
特定認定看護師
草川 千恵




  2021年に、認知症看護特定認定看護師の資格を取得しました。今や認知症は誰もが関わる可能性のある身近な病気となり、2025年には65歳以上の高齢者5人に1人が認知症になると推計されています。

 

 認知症の方が入院すると、次のような苦痛や困難を体験されます。入院に伴い、住み慣れた自宅から病院へと物理的環境が変わり、家族から医療者へと社会的環境も変化してしまいます。それに、病気の治療のため医療処置が新たに加わります。認知症の方は一般の高齢者に比べて環境の変化に弱く、入院に伴う様々な環境の変化にさらされることにより、身体的・精神的に負担となり、入院中に身体機能の低下や認知症の進行を招くリスクがあります。その上、認知症の方は記憶障害や言語障害などにより、病気の症状や処置による苦痛をうまく医療者へ伝えることができないのです。
 認知症看護特定認定看護師として、入院に伴う環境の変化で苦痛や困難を抱えている認知症の方が、安全に治療を受けることができ、入院後も自分らしく過ごせるように、そして早期に退院できることを目指して介入を行っています。具体的には、無機質な病床を少しでも住み慣れた自宅に近づけるようなレイアウトにしたり、点滴や治療に必要なチューブ類が気にならないような工夫を行ったりしています。そして、苦痛をうまく訴えられない認知症の方の表情やしぐさを捉え、全身の観察を行い、隠された身体異常を察知してケアへ繋げています。そのためにも、スタッフに対する指導や教育も重要な特定認定看護師の役割の一つであり、院内で認知症に関する研修会を実施したり、近隣の看護専門学校へ講義を行ったりもしています。
 認知症の方が「地域で自分らしく暮らすことができる」よう、活動していきたいと思いますので、認知症に関する困りごとがありましたら、いつでもご相談ください

 

施設や医院で働く方々に向けた出張研修会などを行いますので、s.saeki@nishijinhp.com(佐伯)のメールか、地域医療連携室に是非ご相談ください。お待ちしております。

<出張研修会内容の例>

●感染管理認定看護師
「新型コロナウイルス感染対策について」
「感染性吐物・排泄物処理方法について」

●透析看護認定看護師
「腎臓の悪化に気づくポイント」

●皮膚・排泄ケア特定認定看護師
「褥瘡の予防・治療ケア」
「高齢者の失禁管理」
  症例検討など

この他にもご希望がございましたら、ご相談ください。

2022年03月01日

心不全について

(この記事は2022年3・4月号の西陣病院広報誌『西陣病院だより』に掲載したものです)

内科 主任部長
中森 診


 
 
 心不全とは、心臓が悪いために、息切れやむくみが起こり、だんだん悪くなり、生命を縮める病気です。心不全の原因は狭心症や心筋梗塞のほか、心臓の筋肉に障害が起こる心筋症、心臓の弁に障害のある心臓弁膜症などですが、高血圧の人は心臓肥大を生じて心不全になりやすいと言われています。日本循環器学会「急性・慢性心不全診療ガイドライン(2017年改訂版)」では、心不全にA~Dの4つのステージが定められています。

 

心不全について

ステージA
心不全の危険因子を抱えている段階で、糖尿病や高血圧など心不全悪化の原因になる危険因子を抱えているものの、心臓の働きは正常で心不全症状もありません。

ステージB 
心臓の働き異常(心臓肥大、心拍出量低下)などが出てきた段階で、心不全の原因になる心筋梗塞、弁膜症、不整脈などを発症していますが、まだこの段階では心不全症状はありません。

ステージC
心臓の働きの異常により、息切れ、むくみ、疲れやすさなどの症状が現れた時で、心臓の働きの異常に応じて治療薬が異なります。

ステージD
心不全が進行して治療が難しくなった段階です。

 心不全の症状には、収縮機能(血液を送り出す機能)が低下して十分な血液を送り出せないことから起こる症状と、拡張機能(全身の血液が心臓に戻る機能)が低下して血液がうっ滞することによって起こる症状があります。ポンプ機能低下による症状は、疲労感、不眠、冷感などがあり、血液のうっ滞による症状は、息切れ、呼吸困難、むくみなどがあります。心不全には、急性心筋梗塞などにより急激に心臓の働きが悪くなり、命の危機にさらされることもある「急性心不全」と、徐々に進行して心不全の状態がずっと続く「慢性心不全」があり、慢性心不全は急に悪くなって急性心不全となることもあり、入院のたびに全身状態が悪化していきます。
 最初のうちは、階段や坂道などを登ったときにだけ息が切れる程度ですが、進行すると少し身体を動かすだけでも息苦しくなります。さらに悪化すると、じっとしていても症状が出るようになり、夜中に寝ている時でも咳や息苦しさで寝られなくなります。最近、収縮機能が正常の心不全(拡張不全)が多いことがわかってきました。静脈や肺、心臓などに血液が溜まりやすくなってしまうもので、有効な治療法が限られます。また、高齢者では自覚症状が現れにくく、息切れがあっても、「歳だから仕方がない」などと見過ごし易いため、放置したまま悪化してしまい、夜中に呼吸困難を起こして救急搬入される患者さんも少なくありません。

 息切れや動悸は、狭心症や不整脈など、ほかの心臓の病気が隠れていることもありますので、今までできていた動作ができなくなった、急に体重が増えた、動悸や息切れを感じるときには、心不全の可能性がありますので早めにかかりつけ医に相談して下さい

2022年03月01日

新年のごあいさつ

(この記事は2022年1・2月号の西陣病院広報誌『西陣病院だより』に掲載したものです)

西陣病院 院長 葛西 恭一


 

あけましておめでとうございます。

皆様には、さわやかな新春をお迎えのことと心よりお喜び申し上げます。皆様のご協力・ご支援により無事に新しい年を迎えることができました。職員一同より皆様への感謝を申しあげますとともに、新しい年が皆様にとって素晴らしい年となりますよう祈念いたします。

2021年は新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の第3波、第4波、第5波により、国内で多くの感染者が発生した年となりました。一方2020年とは異なり、COVID-19に対する治療方法の進歩やワクチン接種の普及があった年でもありました。当院でもかかりつけの患者さんを中心にワクチン接種をおこないましたが、予約システムやワクチン確保の面でいくつかの問題点があり、患者さんのご期待に十分添えなかった点が多々ありました。院長として改めてお詫びしますとともに、今回得た教訓を糧に今後予定される3回目接種が円滑に進むよう準備にあたりたいと考えています。第5波収束以後は国内では感染者数が劇的に減少しており、徐々に以前の生活に戻りつつあります。しかし海外ではまだまだ収束の気配は見られない状況でありかつ新たな変異株の発生が報告されていることから、2022年も引き続きしっかりとした感染対策が必要となるでしょう。

同時に、本年は「ポストコロナ」「アフターコロナ」とも呼ばれるCOVID-19を前提としたニューノーマルの社会を構築していく年になると思われます。我々医療者には、超高齢化社会や働き方改革への対応とともにニューノーマル社会に対応していくためのソフト面・ハード面の充実が求められる年となるでしょう。

本年も当院の基本方針である「地域に密着した良質な医療を提供する」という目標は変わりません。従来通り、一般診療と透析医療を中心に大病院に引けをとらない高いレベルの医療を提供するとともに、急性期病棟、地域包括ケア病棟、障害者病棟を有する当院の特徴を生かし、患者さん個々の療養状況に応じた切れ目の無いきめ細かい医療を提供してまいります。また、医療社会福祉課や入退院支援室を中心とした福祉・入退院支援にもこれまで同様注力していく所存です。ニューノーマルの時代となっても、当院はぶれることなく地域の患者さんや開業医の先生方との繋がりを大事にすることで地域に愛される病院となるよう引き続き努力してまいりますのでよろしくお願いいたします。

2022年01月01日

新年を迎えて

(この記事は2022年1・2月号の西陣病院広報誌『西陣病院だより』に掲載したものです)

   外科主任部長 
福本 兼久

 

 

皆様、明けましておめでとうございます。
2022年を迎えましたが、新型コロナウイルスは終息するのでしょうか。

 

この感染症が流行後、全国的に病院受診やがん検診を控える方が増えました。国立がん研究センターの調査結果では、2020年に新たにがんの診断・治療を受けた件数が前年と比べ約6万件減ったと報告されました。これは、集計を開始してから初めての減少で、特に、胃がん、大腸がん、乳がんで減少しており、今後は進行がん症例が増えることが懸念されます。当院でも、コロナ禍で受診を控えていた方が、進行がんで発見された例がありました。今年は当院でも進行がん症例が増加するのではないかと危惧しています。

早期がんは、手術で根治できる可能性が高く、術後も長期生存が期待できます。一方、進行がんは、手術で切除しても再発する場合があります。がん検診は非常に大事ですので、今年はぜひ検診を受けて下さい。そして、皆様にとって笑顔の一年となりますよう、心からお祈り申し上げます。

最後になりましたが、今年も低侵襲外科治療をさらに推進していきますので、近隣の先生方には、本年も変わらぬご支援、ご指導を賜りますようお願い申し上げます。

2022年01月01日

新春のごあいさつ

(この記事は2022年1・2月号の西陣病院広報誌『西陣病院だより』に掲載したものです)

  消化器内科部長
消化器内視鏡センター長
稲垣 恭和

 

 

2020年度から前任の葛西より消化器内科部長、消化器内視鏡センター長を引き継ぎました。コロナ禍でもあり直接ご挨拶できておらず大変失礼を致しております。

 

近年、消化器内視鏡診療は著しく進歩を続けています。診断の分野においてはNBI併用拡大内視鏡の進歩により早期癌のより正確な診断が可能となり、EUS-FNA(超音波内視鏡下穿刺吸引法)の開発により従来は困難であった粘膜下腫瘍や膵癌などの病理診断が可能となりました。治療の分野においては内視鏡技術や機器の進歩により、消化管癌治療において従来では外科手術が必要であった巨大病変や線維化病変などについても内視鏡切除が可能となっております。当センターは経験豊富な専門医、指導医、内視鏡技師が多数おり、これらがチーム一丸となって診療にあたっています。ERCP関連手技、EUS関連手技、上下部消化管のESD(粘膜下層剥離術)においても中規模病院ながら high volume center と遜色のない医療を提供できていると自負しております。最新の内視鏡機器や高周波装置も揃っており、2022年1月より内視鏡システムを全てOLYMPUS社製の最上位機種 EVIS X1 に更新し最新のスコープも導入致しました。当センターは充実したソフト、ハード両面を生かし良質な医療を提供させて頂けるよう努力して参ります。また消化器内視鏡診療が進歩を続けているように当センターも進化を続けられるように日々精進していく所存ですので、近隣の先生方におかれましては本年も変わらぬご支援、ご指導を賜りますよう何卒宜しくお願い申し上げます。

2022年01月01日