西陣病院だより

長引く咳 放置しないで!覚えておきたい「咳喘息」という疾患

(この記事は2024年11・12月号の西陣病院広報誌『西陣病院だより』に掲載したものです)

内科 医長
瀬戸 友利恵


 

  感冒後、抗菌薬や咳止めを処方されてもよくならない咳を経験したことはありませんか?それは「咳喘息」かもしれません。
咳喘息は、アレルギー性の気道炎症です。適切に炎症を抑えないと再発し、「気管支喘息」に移行することもあるため初期治療が肝心です。

 

内科外来は咳が多い

  咳でお困りの患者さんは実はとても数が多く、近年増加傾向です。
咳は持続する期間で3つに分類され、咳が出始めてから3週間未満の急性咳嗽、3~8週間の遷延性咳嗽、8週間以上の慢性咳嗽です。急性咳嗽は感冒・上気道炎などの感染性咳嗽が主体ですが、遷延性咳嗽と慢性咳嗽は感染症以外の咳が主体であり、胸部レントゲンで異常のないものをいいます。長引く咳の原因は、胃食道逆流(GERD)、アトピー咳嗽、副鼻腔気管支症候群、腫瘍性疾患、間質性肺炎など多岐にわたりますが、そのなかでも本邦で最も多いのは「咳喘息」であり、ある統計では全体の34%を占めるといわれています。

「咳喘息」は「気管支喘息」に移行することがある

 咳喘息は、気管支喘息と同様にアレルギーによって起こる病気ですが、気管支喘息のような「ヒューヒュー」「ゼイゼイ」といった呼吸困難を伴わず、咳だけが唯一の症状です。喘息と似たような症状としては、「夜間や早朝の悪化」、「季節性の変動」といったものがあり、残念ながら、咳喘息の30%は典型的気管支喘息に移行してしまうといわれています。そのため、初期治療が非常に重要です。吸入ステロイド、なかでも気管支拡張薬配合の合成吸入薬が有効であり、早期からの導入が望まれます。吸入薬を開始すればすぐに良くなることが多いですが、良くなったからといって治療を数日でやめてしまうと症状が再燃してしまうことがあります。気管支喘息と同様に、症状が治まってからも気道の炎症がくすぶっていることが多いため、少なくとも1か月以上の吸入薬継続が望ましく、状況に合わせて薬剤を調節します。吸入薬を処方された場合には、症状がすぐによくなっても自己判断で治療を中断しないようにしましょう。日本呼吸器学会「咳嗽・喀痰の診療ガイドライン2019」によりますと、診断は ❶喘鳴の無い咳嗽が8週間以上持続していること、❷気管支拡張薬(β2刺激薬など)が有効であること、このいずれも満たす場合に限ります。ただし実際には咳嗽症状が3週間以上続く場合でも辛いですので、積極的に鑑別診断を行い、治療介入をすることもあります。

さいごに

 当院では、肺機能検査に加え、咳喘息や気管支喘息の診断の手助けとなる呼気一酸化窒素(NO)検査を2023年より取り入れており、
気道炎症の評価が可能です。咳でお困りの際は是非、西陣病院の呼吸器内科外来を受診ください。

2024年11月01日

ロコモと骨折

(この記事は2024年9・10月号の西陣病院広報誌『西陣病院だより』に掲載したものです)

整形外科 医長
下島 康太



「ロコモティブシンドローム」皆さんはこの言葉を聞いたことがありますか。ロコモティブシンドローム(ロコモ)と骨折は、健康と生活の質に密接に関連する重要な問題です。ぜひ、自分自身やご家族の方などを思いながら一読いただければ幸いです。

 

「ロコモティブシンドローム」皆さんはこの言葉を聞いたことがありますか。ロコモティブシンドローム(ロコモ)と骨折は、健康と生活の質に密接に関連する重要な問題です。ぜひ、自分自身やご家族の方などを思いながら一読いただければ幸いです。

 ロコモティブシンドローム( Locomotive Syndrome、略してロコモ )は、骨、関節、筋肉、神経などの運動器の障害により「立つ」「歩く」といった基本的な移動機能が低下した状態を指します。この概念は、2007年に日本整形外科学会によって提唱され、高齢化社会における健康問題として注目されています。ロコモの主な原因は、運動器の疾患や障害です。代表的な疾患には、骨粗鬆症、変形性関節症、脊柱管狭窄症、筋力低下(サルコペニア)などがあります。これらの疾患や障害が進行すると、日常生活での移動や動作の困難さから要介護状態になったり、転倒や骨折を引き起こしたりするリスクが高まります。
 骨折とは、文字通り骨が折れることです。骨の連続性が途切れることを指し、粉々になっているものから、ひび割れや骨が潰れているものなども含めて整形外科の領域では骨折と呼びます。一般的には外部からの強い力によって発生しますが、高齢者に多いのが脆弱性骨折と呼ばれる骨折です。これは骨密度の低下や骨の質の低下によって骨が弱くなり、日常的な動作や軽微な転倒でも骨折が生じるものです。骨折のリスクは年齢とともに増加し、特に閉経後の女性は骨密度が急激に低下するため、骨粗鬆症に伴う骨折のリスクが高くなります。骨折が起きた場合、日常生活に制限が生じることも少なくありません。長期間の安静や活動制限などから筋力やバランス能力がさらに低下し、さらにロコモが進行してしまうだけでなく、痛みや不安感が精神的な健康にも悪影響を及ぼすこともあります。
 このようにロコモと骨折は相互に関連し合う問題であり悪循環を引き起こすことがあります。骨折によって運動機能が低下し、それがロコモの進行を促進する一方、ロコモによる筋力やバランスの低下が転倒や骨折のリスクを高めます。特に高齢者では、この悪循環が要介護状態への移行を加速させることがあります。例えば、股関節周囲の骨折(大腿骨近位部骨折)は手術や長期間の入院リハビリテーションを必要とし、場合によっては歩行能力の喪失や介護の必要性を伴うこともあります。当院でも同部位の骨折患者さんはたくさんいらっしゃいますが、その多くが骨粗鬆症や筋力低下、関節変形などを背景としたロコモを来しているように思われます。
 「 最近、関節が痛いんだけど大丈夫かな?」「骨粗鬆症やロコモになってないかしら?」など運動器でお困りの方はぜひ一度整形外科でご相談してください。

 

 

 

 

 

2024年09月01日

日本最古の糖尿病患者とは?

(この記事は2024年7・8月号の西陣病院広報誌『西陣病院だより』に掲載したものです)

内科 医長
福井 麻優子


 

  日本最古の糖尿病患者は誰でしょうか。その答えは現在放送されている大河ドラマでおなじみの 藤原道長 です。源氏物語の主人公である光源氏のモデルといわれ、栄華を誇った道長も裏では糖尿病の合併症に苦しんでいました。今回は糖尿病の歴史と当院での糖尿病に対する取り組みを少しご紹介させていただきます。

 

 藤原道長といえば「この世をば 我が世とぞ思ふ望月の欠けたることもなしと思へば」という歌で有名です。この歌の意味は欠けることのない満月のようにこの世はすべて自分のもの、といったところでしょうか。道長がこの歌を詠んだころには権力は絶頂期でしたが、かなり健康状態は悪くなっていたようです。「日がな一日水を飲み、けれど口の渇きが収まらない。元気はないが、食欲はある」と記載されており、糖尿病の症状と酷似しています。望月の句を詠んだ際もほとんど目が見えなくなっていたといわれており、50代で糖尿病の症状がかなり進んでいたと考えられます。

 平安時代の貴族は3日とあけず宴会が催されており、甘酒や果物などを食べてハイカロリーな食生活であったようです。貴族の生活が運動不足であったことも原因と考えられます。また、藤原摂関家(道長の血筋)は「飲水という病で亡くなった」という人の記録が多々あり、「糖尿病になりやすい体質が遺伝していたのでは?」ともいわれています。

 権力の絶頂にあった道長ですら苦しんだ糖尿病ですが、現在は早期発見・早期治療によって糖尿病でない方と同じ寿命、ADLを保つことが可能になっています。当院での糖尿病に対する取り組みをご紹介させていただきます。

外来での活動

糖 尿 病 外 来 糖尿病の評価、治療、各種検査(外来での注射開始、血糖測定、必要時リブレ・リブレプロなどの連続グルコース測定も行っています。)
看 護 外 来 インスリンや血糖測定(リブレも含む)の指導、糖尿病に関する説明、各種相談。
フットケア外来 看護師による足のチェック・ケア(毎週火曜日)
薬剤師による指導 インスリン導入指導
透析予防指導 腎機能悪化の予防のため、医師・看護師・栄養士による指導

糖尿病教室

 毎週金曜日の14~15時に様々なテーマで行っております。

糖尿病デーのイベント

毎年11月14日の世界糖尿病デーに伴い、当院でもイベントを行います。是非御参加下さい。
日 時 11月16日(土)、13時半~15時
場 所 西陣病院本館地下2階
内 容 ミニレクチャー・クイズ大会・体操教室動脈硬化チェック・各種相談コーナー

 


2024年07月01日

血尿のおはなし

(この記事は2024年7・8月号の西陣病院広報誌『西陣病院だより』に掲載したものです)




腎臓・泌尿器科 医長
新納 摩子



 

 腎臓・泌尿器科で扱う疾患は、尿を作る腎臓からはじまり、腎盂、尿管、膀胱、尿道などの尿の通り道にある臓器に加えて、男性の場合は、   精巣、精管、前立腺といった臓器に生じる疾患です。これらの臓器にかかわり、かつ、性別の関係なく生じる「血尿」について説明をします。

 

「血尿」は大きく2種類に分けられます。1つは「肉眼的血尿で、目でみて、鮮紅色~暗赤褐色の尿です。数値で示すと、尿中1L中に血液1ml 以上を含む尿をいいます。もう1つは、「顕微鏡的血尿」といい、見た目には血尿を認めないのですが、尿検査(尿沈渣検査法)で、尿中赤血球5個/HPF以上を認めるものをいいます。簡単にいえば、「肉眼的血尿」は、自分で血尿だと分かる血尿で、「顕微鏡的血尿」は、尿検査でわかる血尿です(健診での尿検査は通常尿試験紙で行われますので、「尿潜血陽性」との結果が出ます)。 

 肉眼的にしろ、顕微鏡的にしろ、血尿が出るということは、尿の通り道のどこかに血が出るような原因があります。まず、膀胱炎のような感染症では、炎症により粘膜が傷つき、細い血管が切れて血尿になる場合があります。つぎに、尿路結石症があげられます。腎結石、尿管結石などがありますが、結石が動くことで、血尿が生じます。もっとも注意すべきは、悪性腫瘍、いわゆる癌です。腎臓癌、膀胱癌など、尿路に癌が生じることがあります。その他、臓器の形態の異常(腎動静脈奇形など)により生じる場合、外傷(腎外傷など)により生じる場合、女性では婦人科疾患がある場合などがあります。さらに、顕微鏡的血尿の場合は、腎炎・腎症つまり腎実質に何らかの疾患がある場合があり、このような疾患では同時に蛋白尿も認めることが多いです。 

 健診などで尿を検査するときに注意していただきたいことがあります。健診での尿検査は尿試験紙で行われますので、事前にビタミンCを多く含むものの摂取はひかえてください。検査で偽陰性になることがあります。また、尿をとるときは、出始めの尿はすてて、中間尿をとるようにしましょう。

 西陣病院の腎臓・泌尿器科では、肉眼的血尿も顕微鏡的血尿も、その原因が何であるか精査を行い、疾患が明らかになれば治療を行っています。健診で尿潜血陽性と指摘された場合には、かかりつけの医療機関を受診して頂き、「顕微鏡的血尿」と診断された場合には、かかりつけの先生から腎臓・泌尿器科に御紹介頂ければと思います。「肉眼的血尿」の場合は、腎臓・泌尿器科をかならず受診してください。腎臓・泌尿器科を受診することを恥ずかしいと思われる方が多いかもしれません。西陣病院の腎臓・泌尿器科では、男性医師も女性医師も診察を担当していますので、ためらわずに受診をお願いします。

2024年07月01日

屋上に新たな リハビリ施設が 完成しました !

(この記事は2024年5・6月号の西陣病院広報誌『西陣病院だより』に掲載したものです)

リハビリテーション科

 退院される患者さんが安心して生活に戻れるように、屋上に新たなリハビリ施設が完成しました!
リハビリ中や退院時の患者さんの不安を和らげるため、階段や坂道、砂利道など不整地歩行を行えるリハビリ設備を整えました。

 当院では昨年度、クラウドファンディングに挑戦し、西館の屋上 にリハビリ施設を新設しました。建設に伴い、多くの方々から心温まる応援メッセージ、支援を頂いたことで完成に漕ぎつけることができました。皆さんからの応援、支援に深く感謝申し上げます。
 当院のリハビリテーション科は22人のセラピストが在籍し、今後もリハビリニーズの増加に伴いセラピストの増員を見込んでいます。以前よりリハビリの備品として必要最低限の設備を整えてきました。しかし、スペース的な問題で階段昇降台などを置くことができず、人通りが多い階段を使って昇り降りの練習をしていました。階段は薄暗く「怖い」など不安の声を聴くことが多くありました。また屋外での歩行練習は西館の周りで行っている為、車の通りもあり恐怖と不安、危険と隣り合わせです。そのため「患者さんが安心・安全にリハビリを行える施設が何処かに作れないか」と考え、屋上にリハビリ施設を建設する運びとなりました。
 また屋上の出入り口の扉は重たく開け閉めがしにくくなっています。さらに扉の幅も狭い為、車いすでの出入りは一苦労です。別の出入り口は段差も高く、出入りは危険で使いづらい状況でした。そのため屋上リハビリ施設の建設と合わせて2つの出入り口の改修も行い、誰もが使いやすい施設づくりを目指しました。

 屋上のリハビリ施設は2つに分かれています。1つ目は高さや傾斜が違う3種類の階段がある施設です。そこでは自宅の階段や上がりかまちの高さに合わせた段差昇降練習をすることができます。2つ目は坂道や砂利道、石畳などの不整地歩行練習ができる施設です。そこは屋外歩行前の予行練習として使います。これらの施設では家庭訪問や退院前に実際の生活を想定した練習ができ、それにより退院後の生活への不安を減らせて、日常生活にスムーズに馴染んでいけると考えています。また現在のリハビリ施設では感じにくい移り行く四季などを屋上では感じられる為、気分転換やリフレッシュに繋がり入院生活のストレスを和らげることを期待しています。屋上の出入り口は重たかった扉を軽く幅広いものに変え、高い段差は踏み台を置くなど出入りがしやすい環境を整えました。
 地域の病院として、この地域に必要な設備を整え患者さんに良質な医療を提供したいと考えます。また、これからも地域の病院として皆さんと共に歩んでいきたいと思っています。よろしくお願い致します。

2024年05月01日

切らない痔の治療 痔核硬化療法(ALTA療法)

手術をあきらめていませんか?安心安全確実で満足度の高い鼠経ヘルニア手術

(この記事は2024年3・4月号の西陣病院広報誌『西陣病院だより』に掲載したものです)

外科医長
古家 裕貴

 

 

痔は日本人の約3人に1人の方が発症すると言われています。お尻から出血したり、排便時に脱出したり、痛みがでたりしていないでしょうか。これらの症状でお困りの方、注射で治せるかもしれません。

内痔核とは

 一言で痔といっても実は色んな種類があります。その中で内痔核は最も頻度の高いタイプになります。症状は排便時の出血や脱出が多く、痛みはないことが多いですがひどくなると痛みがでることもあります。急性期は肛門に塗る外用薬による治療を行います。症状が落ち着いた段階で必要な方には追加の治療をお勧めします。手術などで切除するか、今回説明する注射での治療法があります。

ALTA(アルタ)療法とは

 内痔核にのみ適応がある治療方法です。硫酸アルミニウムカリウム水和物・タンニン酸(ALTA)という物質を内痔核に直接注射することで局所に一時的な炎症を起こします。その後1週間から1か月程度かけて線維化が起こり、だんだん痔が硬く小さくなり治っていきます。また痔核内の血の巡りを抑える効果があり出血もしにくくなります。1か所の内痔核なら手術に要する時間は10分程度で、全身麻酔は必要なく主に局所麻酔で行います。不安の強い方には鎮静剤を使用することも可能です。一度に数か所の内痔核を治療することもできます。手術による痛みや出血もほとんどないので術後の回復も早いです。治療費も手術による切除に比べて安くなるのもメリットの一つといえます。

当院でのALTA療法

 ALTA療法は手技を誤ると重篤な合併症(直腸狭窄や直腸潰瘍、前立腺炎/膣炎など)を引き起こす可能性もあるため、全ての医師が行えるわけではありません。当院には講習を受けた上で資格を持った外科医師が3人いますので安心して手術を受けていただけると思います。局所麻酔で行う手術になりますので外来で行うことも可能なのですが、当院では患者さんの安全のため手術当日に1泊入院していただくようにしています(条件を満たせば日帰り手術も可能です)。全ての痔に対して適応があるわけではありませんのでまずは適切に診断する必要性があります(外痔核や痔ろうは適応外になります)。また患者さんの状態によっては使用できない場合もあります。もし痔の症状でお困りでしたら、まずは気軽にご相談下さい。

2024年03月01日

「術後疼痛管理チーム」活動開始!

(この記事は2023年11・12月号の西陣病院広報誌『西陣病院だより』に掲載したものです)

 

麻酔科 部長 中川 博美



手術の後は「切ったから痛いのは当然」と思っておられませんか。
当院では、麻酔科医や術後疼痛に係る所定の研修を修了した看護師・薬剤師も加わった「術後疼痛管理チーム」が活動をはじめ、「安全で痛みの少ない手術後」をお過ごしいただくことで患者様の順調な術後回復をご支援いたします。

 

 当院では20年ほど前から患者様が安心して安全に手術を受けていただけるように、医師・看護師だけでなく薬剤科・放射線科・臨床工学科・臨床検査科・総務室・経営管理室などの多くの部門が協力して、手術医療にかかわる安全管理業務を行う手術室安全管理委員会が活動してきました。この度、この委員会の活動の一環として、手術中のみならず手術後も患者様に安全で適正な術後疼痛管理をご提供し順調な術後回復につなげていくことを目的にする「術後疼痛管理チーム」を結成いたしました。
 チームメンバーは、麻酔科医、術後疼痛に係わる所定の研修を修了した専任の看護師・薬剤師、主治医、病棟看護師、病棟薬剤師と臨床工学技士から構成されています。チームの回診は、主に硬膜外患者自己管理型持続鎮痛法や経静脈的持続鎮痛法を用いて術後疼痛管理法を施行した患者様が対象となりますが、あまねく術後の患者様からの「痛い」・「気持ちが悪い」などの訴えがあったときの相談窓口としての役割も担っています。患者様には、麻酔科術前外来を受診された際に「術後疼痛管理計画書」を用いて個別の術後疼痛管理法についてご説明させていただきます。また、疼痛評価法(NRS:Numeric rating Scale)に基づき「痛みを数字で表現」していただくようにご協力をお願いいたします。万が一、悪心、嘔吐、かゆみ、下肢のしびれや運動障害などの術後鎮痛法による副作用が発生した場合には、チームメンバーに限らずお近くの医師、看護師、薬剤師にご遠慮なくご相談いただければ早期に対応させていただきます。
 手術後は「切ったから痛いのは当然」ではなく、安全な範囲内での十分な術後疼痛管理を行い「手術後もなるべく痛みが少なく辛くないように」お過ごしいただけるように、また、これにより、術後せん妄や混乱に陥ることなくより早く日常の生活に戻り、術後のリハビリテーションにも積極的に取り組んでいただけますように、チームで患者様の順調な術後回復をご支援できればと思っております。

 

 

  

  
2023年11月01日

糖尿病についての取り組み

(この記事は2023年9・10月号の西陣病院広報誌『西陣病院だより』に掲載したものです)

糖尿病内科 部長
矢野 美保


 

  糖尿病は現在めずらしい病気ではなくなってきており、その合併症は早期に適切な治療を開始することで進行しにくいと言われています。皆様のお役にたてるよう、当院の糖尿病チームでは様々な取り組みをしていますので御紹介します。

 

 御自分が糖尿病のどの状態にあるかを知ることは大切です。外来では血糖値や1ヶ月の血糖の平均値であるHbA1cなどをみて治療をしていますが、まず糖尿病の治療の基本は適切な食事と運動をすることです。糖尿病教室、教育入院、外来での様々な糖尿病チームのスタッフとの関わりにより知識を増やしていただけることを願っています。また、糖尿病の合併症は進行しないと無症状であることが多いため、下記をうまく利用していただきセルフチェックをおすすめします。

糖尿病教育入院

 基本2週間で、合併症などの評価、血糖調節(内服・注射剤)、糖尿病の知識を深めるためパンフレットやDVDによる指導も行います。(入院期間・日程は御相談下さい。)

検 査 内 容 血液・尿検査、胸部レントゲン、
腹部エコー・CT、心機能・動脈硬化検査、
骨密度、糖尿病神経障害検査、
眼底検査、体組成検査 など。

高齢者短期入院

 2泊3日でサルコペニア・骨粗鬆症・頭部MRI・動脈硬化検査・認知機能や嚥下機能の簡易評価、服薬管理指導・食事チェックなどを行います。

外来での活動

糖 尿 病 外 来 糖尿病の評価、治療、各種検査(外来での注射開始、血糖測定、必要時リブレ・リブレプロなどの連続グルコース測定も行っています。)
看 護 外 来 インスリンや血糖測定(リブレも含む)の指導、糖尿病に関する説明、各種相談。
フットケア外来 看護師による足のチェック・ケア(毎週火曜日)
薬剤師による指導 インスリン導入指導
透析予防指導 腎機能悪化の予防のため、医師・看護師・栄養士による指導

糖尿病教室

 毎週金曜日の14~15時に様々なテーマで行っております。

患者会(西陣糖友会)

 糖尿病の患者さんや御家族との交流を深めるため活動を行っています。入会を御希望の方は糖尿病教室の際にお尋ね下さい。

糖尿病デーのイベント

毎年11月14日の世界糖尿病デーに伴い、当院でもイベントを行います。是非御参加下さい。
日 時 11月11日(土)、13時半~15時
場 所 西陣病院本館地下2階
内 容 ミニレクチャー・クイズ大会・体操教室動脈硬化チェック・各種相談コーナー


2023年09月01日

便秘について

(この記事は2023年7・8月号の西陣病院広報誌『西陣病院だより』に掲載したものです)

消化器内科 医長
鈴木 俊生


 

  皆さんの中にも便秘でお困りの方も多いのではないでしょうか。日々の外来にも多くの患者さんがいらっしゃいますが、中には浣腸や摘便を要する状態の方もおられます。今回は便秘について、少し詳しくお伝えしたいと思います。

 

 平成28年の国民生活基礎調査では、便秘症の方は男性2.5%、女性 4.6 %でした。80歳以上に限ると男女ともに10%を超えています。
 日本内科学会では「3日以上排便がない状態、または毎日排便があっても残便感がある状態」とされています。慢性便秘症ガイドライン(2017年)では便秘は「本来体外に排出すべき糞便を十分量かつ快適に排出できない状態」と定義されています。つまり、毎日排便がなくてもすっきり違和感なく排便ができていれば問題はありません。便秘はその原因によって図のように分類されます。

 

器質性便秘

 便が通過できない物理的な原因が大腸自体にあるものを器質性便秘といいます。大腸癌、腸閉塞、Crohn病に伴う狭窄などが原因となります。突然の排便障害と、腹部膨満感、腹痛、嘔気・嘔吐などの症状が生じます。緊急を要することもあり、大腸カメラやCTによる精査が必要となります。

症候性便秘

 内分泌疾患、膠原病、神経疾患などが原因の便秘のことです。基礎疾患の治療が必要になります。

薬剤性便秘

 抗うつ薬、向精神病薬、抗コリン薬(ぜん息、頻尿、パーキンソン病などの薬)、鎮咳薬、抗がん剤などの副作用による便秘や、下剤の乱用による便秘のことです。

機能性便秘

 検査で器質的異常がない便秘です。①弛緩性便秘、②痙攣性便秘、③直腸性便秘に分けられ、慢性便③の多くを占めます。生活習慣と関連が強く、食生活や生活様式の改善が肝要です。補助的に薬物療法を併用します。

弛緩性便秘
大腸を動かす筋肉が緩み、ぜん動運動が弱まり、便がスムーズに運ばれずに便秘になります。朝食をとらないことや、運動不足による便秘もこれに含まれます。

② 痙攣性便秘
ストレスなどの影響で、大腸の一部で痙攣性収縮が持続すると、ぜん動運動に連続性がなくなり便の輸送に時間がかかり過ぎて便秘になります。このタイプには刺激性下剤は症状を悪化させるため原則的には使用しません。

③ 直腸性便秘
習慣性便秘とも呼ばれます。便意をがまんする習慣により直腸のセンサーの感度が低下し、便意を催さなくなります。また、温水洗浄便座の水を肛門の奥まで入れることも原因となります。一時的に排便反射を誘発する座薬、浣腸が用いられます。

便秘の治療薬について

 この数年でいくつかのあらたな便秘のお薬が登場しています。小腸から水分を分泌させて便を柔らかくしたり、自身の胆汁酸と呼ばれる消化液を使うことで便を柔らかくし腸の動きをよくして便秘を改善させる薬などで、既存の治療で改善しない場合に用います。便秘には適切な薬の選択が必要です。まずは外来で気軽にご相談ください。


2023年07月01日

オンライン資格確認について

(この記事は2023年5・6月号の西陣病院広報誌『西陣病院だより』に掲載したものです)

西陣病院 医事課

オンライン資格確認について

 オンライン資格確認は、マイナンバーカードのICチップまたは健康保険証の記号番号等により、オンラインで保険情報の確認ができることです。
 マイナンバーカードの場合はカードリーダーに置き、ICチップ内の電子証明を読み取ります。顔認証や暗証番号による本人確認を行い、患者さんの保険情報を取得します。同意を得ることにより、患者さんから保険者への申請がなくても医療機関の窓口で限度額情報が確認できるようになります。

2023年05月01日