西陣病院だより

食中毒について

(この記事は2019年7・8月号の西陣病院広報誌『西陣病院だより』に掲載したものです)

西陣病院 内科 下村 考史

内科 医員
下村 考史



食中毒とは有害物質に汚染された飲食物を口にすることで様々な健康被害を受ける病気のことです。
これからの季節は気温も高く、湿度も高い季節になり食事なども傷みやすい季節となるために食中毒が起きやすくなります。今回はそういった食中毒についてご説明させていただきます。

 

まずは食中毒の原因についてです。食中毒の大半をしめるのがウイルスまたは細菌によるものですが、魚介類や肉類などについている寄生虫やキノコ毒などに代表される自然毒などでも発症するため以上の4種類におおまかに分類されます。

これからの季節に多くなってくるのは細菌性食中毒となりますので少しお話させていただきます。
細菌性食中毒がなぜこれからの季節に増えてくるかというと、細菌が高温多湿な環境下で増殖しやすいことが原因と言われています。特に有名なものがO-157やサルモネラ、カンピロバクター、黄色ブドウ球菌といったものであります。これらの予防のために最も重要になってくることは食材の管理と調理環境にあると言われています。食中毒は飲食店で起こるものと考える方も多いと言われておりますが、実は自宅の調理でも起こりうるということをまず把握していただく必要があると思います。

食中毒

最も重要なことは手指衛生です。手洗いをしっかりと行うことで手の細菌の食材への付着を防ぎます。続いて食材の管理ですが、少しの時間といってもやはりこれからは高温環境となりますので、冷蔵庫などの冷温環境で保存することが望ましいです。また生食するものでは新鮮であっても魚介類などは真水でしっかりと洗浄する、卵も生食をする際は原則新鮮なものとし洗浄する、などのこころがけが必要です。あとは調理の際に食材にしっかりと火を入れることや肉類や魚介類の調理などを行う際は調理器具をこまめに洗浄して他の食材に細菌を移さない努力することなどが日常で注意していただけることと思います。実際に食材各々に対する注意はできていても、包丁に付着した菌がサラダなどに付着して、そのサラダを生食することで食中毒を起こす事例が報告されており注意が必要です。

食中毒

 

ウイルス性食中毒では有名なノロウイルスなどがありますが、こちらは冬季に流行するものです。これらは2枚貝などに存在していることが多く、牡蠣やハマグリなどに注意が必要です。寄生虫では鯖の生食でのアニサキスなどが有名で、自然毒ではキノコ毒やフグ毒などが有名でこれらには季節性はありません。これらの摂取には充分に気をつけて下さい。

 

以上食中毒についてお話させていただきました。上記で説明させて頂いたようなことに注意して生活して頂き発症を予防することが最も重要ですが、もし腹痛、嘔吐、下痢、発熱などの症状がある場合には水分摂取を励行して頂き、医療機関の受診をお勧めいたします。

 

 

2019年07月01日

足の付け根のあたりがふくらんでいませんか?

(この記事は2019年5・6月号の西陣病院広報誌『西陣病院だより』に掲載したものです)

西陣病院 外科 医長 小林 博喜

外科 医長
小林 博喜



鼡径ヘルニアとは、本来お腹の中に納まっているはずの腸や内臓脂肪が、足の付け根あたりのお腹の壁の弱いところから外側にはみ出して、皮膚の下まで出てきてしまう病気で、俗に脱腸と呼ばれます。症状としては足の付け根が膨らむ(立った時に膨らみ、寝ると元に戻ることが多いです)他に違和感や痛みを伴うこともあります。放置しておくと、段々と大きくなるばかりか脱出した腸が戻らなくなる嵌頓と呼ばれる状況になり腸閉塞や腸壊死の原因となります。症状が無く、程度が軽い場合には経過をみることもありますが、基本的には治療が必要な病気で、治療法としては手術が唯一の手段となります。

 

 

鼡径ヘルニアに対する手術は様々な方法があり、脱腸している部位の皮膚を切って外側からアプローチする方法(鼡径部切開法)と、腹腔鏡を使って脱腸している内側であるお腹の中からアプローチする方法の大きく二つに分かれます。腹腔鏡を使った方法は、傷が小さいため手術後の痛みが少なく、社会復帰や仕事復帰が早期に可能であるといった点や、両側の脱腸がある患者さんでも同じ傷で一度に両側の修復が可能であるといった点でメリットがあります。一方で腹腔鏡手術は全身麻酔が必須であるため、心臓や肺の病気を抱えている方など全身麻酔が危険な方は受けていただくことができないという制約があります。それに対して鼡径部切開法は、傷がやや大きいため(3‒5㎝程度)腹腔鏡手術に比べるとわずかに回復に時間を要しますが、腰椎麻酔や局所麻酔でも施行が可能であり、心臓や肺への影響を少なくすることが可能という長所があります。したがって大まかには、全身麻酔が問題なく可能な患者さんには腹腔鏡による方法を選択し、全身麻酔の危険があったりその他の理由で腹腔鏡手術が難しい患者さんには腰椎麻酔や局所麻酔下に鼡径部切開法による手術を選択することが多いです。

 

 

 

当院での近年の鼡径ヘルニア手術の件数、内訳の推移はグラフの通りで、約6割の患者さんに全身麻酔下での腹腔鏡手術を施行しており、残り4割の患者さんに対して鼡径部切開法による手術を施行しておりますが、その中でも局所麻酔で行う患者さんの割合が増えてきております。

局所麻酔下での手術は全身への影響が極めて少なく、様々な全身疾患をお持ちの患者さんでも安全に行うことができる方法であり、当院では2016年から積極的に局所麻酔下での手術を施行し、全身麻酔や腰椎麻酔での手術に近い内容での手術を行うことができるようになっております。

大事なことは個々の患者さん毎にご年齢、全身の状態、鼡径ヘルニアの状況に応じた最適な手術法を選択し、安全かつ確実な鼡径ヘルニア修復術を施行することにあり、そのために我々はたゆまぬ努力を続けております。

足の付け根が膨らんでいる気がしたら、ご高齢の方や、全身疾患をお持ちの患者さんでも安全に手術ができる可能性がありますのでまずは当院外科の外来にご相談ください。

 

 

2019年05月01日

食塩の多い食事は心臓病や胃がんになりやすい。

(この記事は2019年3・4月号の西陣病院広報誌『西陣病院だより』に掲載したものです)

内科 副部長
角田 聖



食塩(塩分)が高血圧の原因になり、心不全や脳卒中など心血管病の予防や治療に減塩食が大事だということはよくご存じだと思います。しかし食塩の摂りすぎが関係している病気は心血管病だけではありません。それに、自分は薄味にしているから大丈夫と思っていませんか? 実際にどれくらい塩分を摂っているか調べる方法について説明します。

食塩と関係する病気

食塩の摂りすぎは心血管病の原因となるだけでなく、(表1)のように多くの診療科で扱う病気と関係があります。動脈硬化、心不全、心筋梗塞、脳卒中など高血圧と関わりが深い病気になりやすいのは言うまでもないことですが、食事の塩分が多い国や地域では胃がんが多いことがわかっており、その理由として血圧は関係なく、胃がんの原因になるヘリコバクター・ピロリ菌という細菌が、塩分が多い胃粘膜では感染しやすいからなどと考えられています。腎臓に石ができる腎尿管結石や骨粗鬆症も食塩が関係しています。

 

 

 

 

 

 

日本人と塩分

食べ物の保存を主に塩に頼っていた昔に比べ、現代の日本人の食塩摂取量は減少傾向にありますが、アメリカやイギリスに比べるとまだ多く、平成29年の調査によると日本人の食塩摂取量は1日あたり男性で10.9グラム、女性で9.1グラムでした。男性のほうが多いのは、同じ味付けでも男性は食べる量が多いからと分析されています。いくら薄味にしても、食べ過ぎては意味がないということです。

自分の食生活で塩分はどれくらい?

食塩は料理に溶け込んでいますから目に見えません。家庭での調味料や加工食品の成分表示を確認することで、1食あたりどのくらい塩分が含まれているか、計算できます。外食の場合もお店によってはカロリーや塩分表示のあるメニューがおいてあるので助かります。でもこれだけでは実際のところはわかりません。西陣病院では1回分の尿検査で1日の推定食塩摂取量が表示できるようになりました。1回の尿に含まれるナトリウムの濃度から1日の食塩摂取量を予想する計算式を使うので多少の誤差はありますが、24時間尿をためておくよりも簡便に、繰り返して定期的に調べることができます。

高血圧の人は1日6グラム未満、そうでない人は7~8グラム未満に

自分の食塩摂取量がわかったら、目標を決めます。日本人の食塩摂取量の目標値は男性で1日8グラム未満、女性で1日7グラム未満です。高血圧の人は男女とも1日6グラム、1食あたり2グラムにすることが目標です。しかし食塩を制限しているつもりでも、実際はあまり出来ていないものです。高血圧患者さんを対象にしたある研究によると、減塩を意識していない人の平均値は1日10.6グラムだったのに対し、減塩を意識している人でも平均9.4グラムの食塩を摂っていたという報告があります。西陣病院でも調べてみましたが、6グラム未満を守れているのはわずかに3~5パーセントの人だけでした。

 

<おわりに>

食塩の摂りすぎで年間4万人近くの人が亡くなっています。その半数は心血管病で、のこりは癌であることがわかっています(2007年データ)。高血圧の人はもちろんのこと、そうでない人も、大人も子供も減塩生活をお勧めします。一度担当の先生に検尿してもらって自分の食塩摂取量を知っておきましょう。

 

 

2019年03月01日

骨密度検査と骨粗鬆症の治療について

(この記事は2019年3・4月号の西陣病院広報誌『西陣病院だより』に掲載したものです)

西陣病院 整形外科 医長 森 裕貴

整形外科 医長
森 裕貴



骨粗鬆症は骨の強度が低下してもろくなり、骨折しやすくなる病気です。
骨粗鬆症による脆弱性骨折が生じると、生命予後や身体機能が低下することが知られています。健康寿命を延ばすためには早期に骨粗鬆症の治療を開始し、骨折を予防することが重要です。

 

骨粗鬆症の患者は約1,300万人(女性1,000万人、男性300万人)と推測され、骨粗鬆症の結果として生じる骨折も増加しています。女性ホルモンであるエストロゲンの欠乏、加齢、運動不足などの生活習慣が骨強度の低下する主な要因とされています。

骨粗鬆症の治療を開始する前に、まずは骨密度を測定することが重要です。当院では腰椎と大腿骨の2つの骨密度をDXA 法で測定しています。検査は苦痛を伴わず、短時間で行えます。原則1年に1回、特に女性では40歳頃から骨密度を測定することが推奨されています。検査を施行された方は、特に『若い人と比較した値(YAM)』に着目してください。多くの場合、YAM が70%以下で骨粗鬆症と診断されます。しかし、椎体骨折や大腿骨近位部骨折の既往があれば骨密度と関係なく骨粗鬆症に対する治療が必要です。

 

初期の骨量減少であれば、食事(Ca の摂取)、運動、日光浴などを行うことで骨量の増加が期待できますが、多くの方は薬物治療が必要です。治療薬は大きく分けて、骨吸収を少なくする薬(骨吸収抑制薬)、骨形成を助ける薬(骨形成促進薬)、Ca の吸収量を増やす薬(骨・Ca代謝調整薬)の3種類があります。現在、最も多く処方されている治療薬は骨吸収抑制薬であるビスホスホネート薬です。ビスホスホネート薬は有効である一方、内服時の注意点(起床後すぐに内服、服用後30分は横にならず、食事もさける)があるため、服薬が継続できない方もいます。半年や1年に1回の注射製剤も誕生しており、自分にあった治療薬を選択し、治療を継続していくことが最も重要です。

 

骨密度が気になる方や骨折の既往がある方は、ぜひ一度整形外科を受診してください。

 

 

2019年03月01日

NASH(非アルコール性脂肪性肝炎)をご存知ですか?

(この記事は2018年11・12月号の西陣病院広報誌『西陣病院だより』に掲載したものです)

西陣病院 内科 副部長 中村 英樹

内科副部長
中村 英樹



みなさん、NASH(ナッシュ)という病気をご存知ですか?
脂肪肝なら聞いたことがあるという方は多いと思いますし、中には健診などで脂肪肝と言われたことがある方もおられるかもしれません。

脂肪肝は飲酒など様々な原因でおこりますが、近年ほとんどお酒を飲まないにもかかわらず、肥満、糖尿病、脂質異常症、高血圧など、いわゆる生活習慣病が原因で脂肪肝を発症するケースが増えています。これを非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD)といいます。その多くの方は単純な脂肪肝(NAFL)で、これは比較的予後良好な疾患ですが、NAFLD の患者さんのうち約20%の方は肝臓に炎症や線維化があり、肝硬変や肝がんに移行する予後不良のものです。これが非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)です。日本でも広く認識されるようになったのはここ20年ほどのことですが、生活習慣病の蔓延とともに注目を集めています。

肝がんの原因疾患としてはC型肝炎が有名ですが、最近新しい内服の抗ウイルス薬が登場し、ほとんどのC型肝炎患者さんは治ってしまいますので、C型肝炎ウイルスが原因の肝がんは今後減少していくと考えられます。その一方で生活習慣病患者さんの増加に伴い、このNASH からの肝がんが今後増えてくるだろうと予想されています。

日本人では成人男性の30%以上、女性の20%近くがNAFLD で、NAFLD は1,000~1,500万人いると考えられ、そのうちの20%(200~300万人)がNASH と言われています。わが国ではここ10年間でNASH 患者さんが倍増しています。つまり、早急な治療を必要とする患者さんが、自覚症状のないままに生活を送っているケースが非常に多いのです。

健診などで脂肪肝を指摘されたとき、単純な脂肪肝なのか、NASH なのかを判別するには、入院して肝生検(肝臓の組織を採取して顕微鏡で調べる検査)を行い、炎症や線維化があるかないかを確認する必要がありますが、最近は血液検査や特殊な超音波検査といった、より身体に負担が少ない判別方法が研究、開発されてきており、今後当院でも積極的に取り入れていこうと考えています。

また、肝臓の線維化を抑えて、肝硬変や肝がんへの進行を抑えようという新しいお薬の開発も進んでおり、有望な治療薬として期待されています。

まずは脂肪肝にならないように、食生活に気を付けたり、運動習慣を身に付けるなど、生活習慣を見直して予防していくことが最も大切ですが、脂肪肝を指摘された方は、是非一度主治医の先生にご相談ください。

 

2018年11月01日

足の水虫について

(この記事は2018年11・12月号の西陣病院広報誌『西陣病院だより』に掲載したものです)


皮膚科 部長 坂元 花景

足の水虫は、カビの一種(白癬菌)が皮膚に感染して起こる病気です。水虫は自然治癒は期待できませんので、抗真菌剤の外用や内服でしっかり治しましょう。

 

 

水虫は春から夏にかけて増え、冬には減ります。長時間の革靴や長靴の着用や、プールや銭湯の利用がリスクを高めます。足の指の間や裏がふやけたり、皮がむけたり、爪が分厚く濁ったりするのが主な症状で、痒いと思われていますが、痒みを伴うのは約1割に過ぎません。ただし、こうした症状がすべて水虫なわけではありません。皮膚科では、病変部の皮膚を採取し、顕微鏡で白癬菌を確認して診断します。同じような症状の病気は他にもあるため、診断を受けることは大事です。

足の水虫

足の水虫を治すには、足の指の間から裏全体に、1日1回、最低1ヶ月は薬を塗ります。症状が消えても2ヶ月は外用を続けましょう。塗る前に足を洗うことも大事です。お風呂だけではきれいにならないので、歯を磨くのと同様「あえて洗う」という意識を持ちましょう。白癬菌はスリッパやバスマットによくいるので、うつし合わないように注意も必要です。一方、爪の水虫は外用薬では治療が難しく、爪が生え変わるまで1年半程度、毎日塗る必要があります。抗真菌剤を内服することで約半年で治療が可能ですが、まれに肝臓をいためることがあり、定期的な血液検査が必要な場合もあります。外用、内服のどちらを選ぶかは、年齢や他の病気にもよりますので、ご相談下さい。水虫の病変から細菌が侵入し、感染症や潰瘍を引き起こすこともあるので、たかが水虫と放置せず、早めの治療をお勧めします。特に糖尿病や透析の患者さんは壊疽に結びつく可能性が高いため、積極的に治療を受けた方がよいでしょう。

 

 

2018年11月01日

気管支内視鏡検査について

(この記事は2018年9・10月号の西陣病院広報誌『西陣病院だより』に掲載したものです)


内科 医員 平井 聡一

皆さん、気管支内視鏡検査(気管支ファイバースコープ)という言葉を耳にしたことがあるでしょうか?
気管支鏡内視鏡検査は胃カメラや大腸カメラのように検診で実施することがないためにご存知ない方が大半ではないでしょうか。ここでは気管支鏡検査で一体どんなことができるのかをご紹介させて頂きます。

 

従来我が国の三大死因は悪性新生物、心疾患、脳血管疾患とされてきました。近年は高齢化に伴い死因別統計では悪性新生物、心疾患、肺炎が右肩上がりとなっています。その中でも悪性新生物の内訳としては肺がん、胃がん、肝がんが順に挙がります。気管支鏡検査はこの中の肺がんを診断するために必要不可欠な検査の1つなのです。またそれ以外にも原因不明の感染症やその他呼吸器疾患、膠原病疾患の診断にも有用な検査です。では、一体どういった場合に実際に気管支鏡検査を実施していくのかを下記に示します。

  1. 痰に血が混じった場合
  2. 原因不明の咳が長く続く場合
  3. 胸部レントゲンやCT 写真で肺に異常陰影がみられ、肺がんや感染症、炎症などが疑われる場合
  4. 喀痰検査でがん細胞を疑う所見が見られる場合
  5. その他、肺、気管支に異常が疑われる場合

 

肺がん治療には外科治療(手術)、放射線治療、化学療法という3本柱があります。もし気管支鏡検査によって肺がんの確定診断がつけば、他の画像検査結果と合わせて総合的に判断して、患者さん一人一人にどの治療が最適な治療となるかを判断していきます。特にここ数年の間には遺伝子解析技術の進歩に伴って化学療法の治療選択肢は急速に増加しています。患者さんのご希望に沿って実際にどのようなタイプの遺伝子変異があるかどうかも気管支鏡検査で採取した組織検体を用いることで調べることができます。

気管支鏡検査で診断できる疾患

  • 悪性新生物(肺がん、転移性肺がん、悪性リンパ腫 など)
  • 感染症(細菌、真菌、一部のウイルス など)
  • アレルギー疾患(アレルギー性肺アスペルギルス症、過敏性肺炎 など)
  • 間質性肺炎(器質化肺炎、好酸球性肺炎 など)
  • サルコイドーシス
  • 肺胞蛋白症 など

患者さんへ

気管支鏡検査は1泊2日入院で実施させて頂いております。入院当日は午前中に入院して頂き、入院後は採血やレントゲン、心電図、肺機能検査など検査前に必要な検査を実施します。午後には気管支鏡検査を実施します。検査時間のおおよその目安は30 ~ 60分です。検査中は出来る限り患者さんの負担・苦痛が軽減する目的に鎮静剤を使用します。検査終了後は副作用の有無を確認して問題がなければ翌日に退院して頂けます。

近隣の先生方へ

気管支鏡検査の必要性があるかどうかについては当院呼吸器内科が窓口となっています。症状や画像所見でお悩みの際には是非一度当科へご紹介下さい。ご紹介後当施設で診断が困難な方に関しては実施可能施設に当院よりご紹介させて頂くことがありますのでご了承下さい。

 

2018年08月27日

前立腺がんについて

(この記事は2018年9・10月号の西陣病院広報誌『西陣病院だより』に掲載したものです)


腎臓・泌尿器科 医長 中村 雄一

高齢化に伴い、がん患者の数は年々増加しています。その中でも前立腺がんはこの10 数年で急増しており、2015 年には男性のがん罹患数の第1 位となりました。以前は高齢者に多いがんとして知られていましたが、最近では50 ~ 60 歳代で診断される方も増えています。

 

前立腺がんとは

前立腺は男性だけにある臓器で、膀胱の下にあり、精液の一部である前立腺液を分泌しています。前立腺がんは初期にはほとんど症状がありません。排尿に関する症状が診断のきっかけになることもありますが、それは前立腺がんと同時に存在する前立腺肥大症による症状であることが多いです。また、他のがんに比べて病気の進行が遅く、何年もかかってゆっくりと進行していくことが特徴です。

検査方法について

血液マーカーである前立腺特異抗原(PSA)が高い値であれば、精密検査を進めていきます。
精密検査では前立腺の触診や、MRIでの断層撮影を行います。それらの検査で前立腺がんの可能性が高いと考えた場合、前立腺の針生検を行います。針生検では麻酔を効かせた状態で前立腺に針を刺し、組織のサンプルを採取します。

実際の治療方法

主な治療方法は手術、放射線療法、内分泌療法の3つになります。

  1. 手術
    初期のがんに対しては、完全に治すことを目標に手術を行います。当院ではおなかを切る開腹手術を行っておりますが、最近ではダヴィンチというロボット手術が主流になってきています。
  2. 放射線療法
    放射線療法でも手術に匹敵する治療効果があるといわれており、手術をためらうようなご高齢の患者さんにはよい選択となります。最近では強度変調放射線治療(IMRT)が放射線治療の主流になっています。
  3. 内分泌療法
    精巣や副腎で作られる男性ホルモンは、前立腺がんの増殖を促進する働きがあります。内分泌療法では、男性ホルモンの分泌や作用を抑える薬を使うことでがんの進行を抑えることができます。

 

前立腺がん、

 

以上のように、前立腺がんの治療には様々な選択肢があり、当院ではがんの悪性度や進行度、患者さんのライフスタイルも参考にしながら、一人一人に合わせた治療方針をご提案しています。

 

2018年08月27日

糖尿病教育入院について

(この記事は2018年7・8月号の西陣病院広報誌『西陣病院だより』に掲載したものです)


内科 部長 矢野 美保

糖尿病と言われ、今後生活上どのような点に注意したらいいか、糖尿病で病院に通院しているがなかなかよくならないなど、普段お悩みのことはないでしょうか? 短期入院で、一緒に糖尿病と向き合ってみませんか。

 

 

当院は内科・日本糖尿病学会認定教育施設として糖尿病の診療を行っております。2018 年4月より新たに糖尿病専門医の常勤が2人となり、糖尿病診療、チーム医療の強化に努めて参ります。
現在、2週間の糖尿病教育入院を中心に行っております。目的は糖尿病悪化の原因をみること以外に合併症の評価、併発疾患の有無の検索で、入院中に必要時、治療薬調節、治療法変更も行います。2週間で、治療が安定しない際は 可能なら退院延期か外来加療に移行させることもできます。
入院中は定期的に、医師、看護師、薬剤師、管理栄養士の間で情報を共有し、問題点や改善点に関してミーティングを行っております。また、適切な食事療法の上で、血糖値が改善したかもチェックしつつ、積極的に可能な範囲の 運動療法が行えるか、必要時、循環器医師の検査によりみてもらえます。
当院の特徴として、各専門の科が協力し合い連携診療を行っている点があります。このため、合併症、併発疾患の早期発見、早期治療に努めますので、お気軽に御相談下さい。

以下に教育入院中に行う検査項目を記載します。

  • 血液検査・尿検査(一般検査、糖尿病性腎症評価、インスリン分泌測定など)
  • 胸部レントゲン
  • 腹部超音波検査、CT 検査
  • 心電図
  • ABI(足関節上腕血圧比:下肢動脈硬化検査)
  • CVR-R(自律神経検査)
  • 必要時心臓超音波検査、循環器医師によるトレッドミル検査(負荷心電図)
  • 神経伝導速度
  • 眼科受診(眼底検査)
  • 便検査
※その他、必要時、症状や検査結果を踏まえて、臨時の検査、他科対診も可能です。

 

入院中に行う主な指導

  • 栄養指導、服薬指導、看護師によるパンフレットやビデオを用いた糖尿病指導
  • 必要な方に対して、血糖自己測定、注射手技の指導

※御家族も含めて、管理栄養士による個別栄養指導、週1回行われている糖尿病教室にも参加してもらえます。西陣病院、

 

患者さんへ

入院希望がありましたら、主治医にお気軽に御相談下さい。入院期間は基本2週間ですが、患者さんの要望に合わせて、項目を変更して短縮することも可能ですので、御相談下さい。
尚、当院に通院中でない方も、主治医の先生と相談の上、申し込んでもらうことも可能です。健診結果で糖尿病と言われた方で、医療機関に受診歴のない方でも、当院糖尿病内科外来受診を経て、必要時入院は可能です。
西陣病院、

西陣病院、

近隣の先生方へ

直接、教育入院のみの依頼でも、教育入院も含めて、前後治療薬の調節をしてから、逆紹介させていただく依頼でもかまいませんので、地域医療連携室を通してご連絡下さい。
西陣病院、

糖尿病とうまく付き合いながら自分らしく過ごしていきましょう

糖尿病看護認定看護師 立山 一美

糖尿病を発症する方が増え、対策として生活習慣の改善が必要になります。はじめて糖尿病と言われたけれど何からはじめていいかわからない、食事療法や運動を頑張っているのに血糖値が下がらないなどお困りのことはないですか?

入院中は糖尿病のことを勉強しながら、今までの生活を振り返り、変えられることはないか、具体的な方法を一緒に考えられるよう、看護師だけでなく医師、管理栄養士、薬剤師、理学療法士などスタッフがチームを組んでお手伝いをさせて頂きます。必要な方には、血糖自己測定やインスリン自己注射の方法の説明や、フットケアを行っています。

食べることを楽しみながら無理のない食事療法を続けていきましょう

栄養科 管理栄養士 今井 文恵

「食事療法」「栄養指導」と聞くと、「好物を禁止される」「面倒な計算をさせられる」というイメージを持っている方はおられませんか。

当院の糖尿病教育入院では、「糖尿病療養指導士」という専門資格を持つ管理栄養士が入院中の食事を通してエネルギー量や食事バランスについて説明するとともに、患者さんの実生活を踏まえ、お一人お一人の嗜好や家庭環境、生活習慣に合わせた食事プランを一緒に考えていきます。さらに、退院後も患者さんご自身の思いに寄り添いながら、無理のない食事療法が継続できるようにサポートさせて頂きます。

2018年07月01日

鼠径ヘルニア短期滞在手術

(この記事は2018年7・8月号の西陣病院広報誌『西陣病院だより』に掲載したものです)

西陣病院、外科 副部長
高木 剛

腹腔鏡手術のなかでも更にキズを小さくした鼠経ヘルニア修復術を行っています

当院の低侵襲腹腔鏡下鼠経ヘルニア修復術(TAPP法)

当院では2010年から積極的に腹腔鏡下鼠経ヘルニア手術(TAPP法)に取り組んでいます。当院の特徴としては、必要最小限の切開創で行う低侵襲腹腔鏡手術を行っています。胆嚢摘出や虫垂切除のような臓器摘出が必要な場合は小さな一つの切開創で行う単孔式腹腔鏡手術を行っていますが、鼠径部ヘルニアの場合は修復に必要なメッシュが腹腔内(お腹の中)に挿入できれば良いため、腹部に留置するポートと呼ばれる器具の直径を小さくした手術を行っています。

一般的には、直径12㎜ポートと5㎜ポートを併用した方法で行われていますが、当院では最大でも5㎜ポートとし、3㎜ポートを併用したキズを小さくした方法で行っています。これにより、手術後のキズは目立たないだけでなく、何より痛みが非常に少ないため鎮痛剤の使用が殆どなく、その結果として早期退院・社会復帰が可能となります。ただ全身麻酔を必要とするため、術後管理の安全面から手術後は最低1泊入院をして頂いております。

手術に必要な切開を最小としたうえで、合併症を起こさせないよう、より安全な腹腔鏡下鼠経ヘルニア手術を行っています。

 

西陣病院、手術写真
2018年07月01日