現在、16名の薬剤師により、調剤、薬剤管理指導、医薬品情報管理、医薬品管理など、各種業務を分担して行っています。
医療人としての自覚を持ち、医薬品適正使用推進と医療安全に寄与するとともに、地域薬剤師や薬学教育に携わる薬剤師と連携し、
病診薬薬学連携における地域薬剤師との勉強会を通じて、地域中核施設の薬剤師としての役割を果たしていきたいと考えています。
日々進歩していく医療の中で病院薬剤師に対する要望も大きく変化し、これまでよりもさらに安全で質の高い業務展開が求められています。
具体的には、調剤された薬の安全性と有効性の確保、医薬品情報収集・提供の迅速化と充実、薬剤管理指導業務の拡大と質的向上、ハイリスク医薬品の管理など医薬品関連業務における安全管理の徹底などです。
これらは、どれひとつ不足しても適正で良質な医療を提供することはできません。
このため、私たちは絶えず業務の見直しおよび改革を実行しています。
また、毎年、薬学系・医学系を問わず積極的に薬剤師自身の資質の向上を目的に学会参加や発表をしています。
院外処方箋発行率は約平均97%、外来患者の薬剤選択の幅を広げるため外来では代替調剤を導入しています。
基本的に調剤業務は入院患者中心に実施し、薬物療法の安全管理向上と医薬品の適正使用を図っています。
セイフティーマネジメントの観点からインシデントを中心に医薬品棚の表示や配置などを工夫しています。
電子カルテシステムを導入し、処方内容の自動監査、薬歴の管理、「重複投与」「相互作用」のチェックが可能になっています。
後発医薬品の採用に積極的に取り組んでいます。
西陣病院における「注射処方箋による「1本渡し」供給システム」の歴史は古く、昭和57(1982)年から実施されています。
搬送時にはカートを使用しSPDより搬送しています。
危険度の高い注射剤は多面的チェックシステムが求められています。そのため薬剤個別に管理を行い、医療スタッフへの注意喚起とチェック体制を導入しています。
2002年11月より無菌製剤室において、感染予防対策および医療安全管理の観点から入院患者の高カロリー輸液を無菌的に調製しています。
NSTと連携し栄養設計を行った中心静脈栄養を薬剤部内の無菌室で混合調製を行っています。栄養設計された中心静脈栄養は相互作用を確認し、複数の薬剤師で監査した後、調製されています。
安全で効果的ながん化学療法を図る目的で、オンコロジー担当を配置し、プロトコールの管理から投与に至るまで、がん薬物療法認定薬剤師(日本病院薬剤師会)を中心に薬剤師が関わっています。薬剤科(現、薬剤部)移転後は、「がん薬物療法における曝露対策合同ガイドライン」に基づき安全キャビネットを用いて混合調製を行い、揮発性の抗がん剤に対しては閉鎖式薬剤移送システム(CSTD)を使用して、外来および入院患者の抗がん剤の混合を実施しています。
薬剤管理指導業務を通じて、入院患者に処方されている医薬品に関して情報提供を行い、患者に正しい認識で正確な服薬が行えるようベッドサイドにて、直接指導・説明するとともに、患者から得られた情報を収集・評価・蓄積したものを医師に提供することで、薬物治療を効果的、かつ安全に実施できるよう服薬支援や薬の適正使用を推進しています。
特に内科急性期および外科急性期病棟には専任薬剤師(各1名)を配置し、入院時初回面談、持参薬管理や病棟内での医薬品管理責任者として業務を行っています。
入院時に患者の薬歴を確認するため、「お薬手帳」や「薬剤情報の用紙」を持参することをお勧めしています。
薬の新しい作用や副作用、安全性情報等、様々な情報が厚生労働省、PMDA(医薬品医療機器総合機構)、製薬会社などからも提供されます。
薬が安全・適切に使用されるためにそれらの情報を収集・整理し、管理しています。
医薬品情報管理者による、医薬品情報の収集、整理、保管および提供により、適切な薬物治療の向上に寄与しています。薬事委員会においては薬剤学的視点を持った情報収集、医薬品の有効性・安全性等について適切な評価を行い、有意義な審議が可能となるように貢献しています。
医薬品情報管理室では担当者が常駐し、病院内、病院外の医療関係者から医薬品に関する問い合わせに対応しています。
診療全科の薬物療法に対応するために、多品目の医薬品の購入管理、適正な在庫数量を確保するための在庫管理、品質を確保した供給管理に努めています。災害時に備えて災害用備蓄薬品を保管しています。
2002年6月より導入されたSPDシステムにより、自動発注と使用状況に応じた手入力発注によりきめ細かい在庫管理に努めています。
平成13年7月より、治験審査委員会が発足しました。治験の質を高め、症例数を増加させるだけでなく、患者さまへ提供する医療の向上を図るため、また対外的にも信頼される業務を遂行するために、SMO(Site Management Organization)専門業者に委託しています。
薬剤部では治験薬の管理を行っており、また、治験審査委員会に参画し、薬剤学的資料や情報を入手・検討し、その観点から治験業務の適正な遂行に貢献しています。患者さまへの十分な説明と理解、協力があって治験は進められます。
薬剤師が糖尿病教室、透析教室、腎臓病教室へ参画し、集団指導および個人指導を行っています。
ICT、NST、緩和ケアチーム、褥瘡チームなど院内の専門チームへ参画しています。
これらの活動を通して、薬剤師の専門知識の向上を図るだけでなく、病院全体、さらに地域医療における質の向上に貢献しています。
感染制御チーム(ICT)
薬剤師はICT(Infection Control Team)において、院内で起こるさまざまな感染症から患者や職員の安全を守るために活動を行い、横断的に病院全体の感染対策活動に従事しています。抗菌薬および消毒薬の適正使用の推進を行っています。
抗菌薬適正使用支援チーム(AST)
薬剤師はAST(Antimicrobial Stewardship Team)において、治療効果の向上、副作用の防止、耐性菌出現のリスク軽減を目的として抗菌薬の適正使用を支援しています。
抗菌薬使用ガイドラインに基づき、広域抗菌薬届出制度に準じて、広域抗菌薬の投与量、投与期間に加えて、感染源・起炎菌などを確認することで、抗菌薬適正使用に寄与しています。
栄養サポートチーム(NST)
NST専門(薬剤師)療法士を中心に、NST(Nutrition Support Team)において、患者の栄養状態の改善に努めることを目的に、患者の状態に応じた輸液、経腸栄養剤の投与に関するサポートを行っています。また、経管栄養時の投薬方法、特に簡易懸濁法の普及も行っています。
薬剤師外来(糖尿病患者教育)
糖尿病療養指導士を中心に、医師と協働でインスリン製剤の教育などを行い、患者自身が前向きに治療に取り組み自己管理できるよう導くことを支援しています。教育方法は、医師、看護師、薬剤師(病院および近隣保健薬局)でカンファレンスを行い、統一しています。糖尿病の患者教育に携わるスタッフは、毎月開催されている「西陣糖尿病オープンカンファレンス」に参加し、連携・情報交換を行い研鑽しています。薬剤師は、患者の状態を十分に把握し、薬物治療としての枠にとらわれず治療全般にわたり支援できるよう心がけています。
薬剤師外来(術前外来)
2020年10月より、術前に休止が必要な薬剤などについて注意喚起する「薬剤師術前外来」を開始しました。インシデントレポートをもとに、手術の延期や麻酔方式の変更などを回避する目的で始めました。今回は、腰麻における患者を対象に、薬剤師がチェックリストを用いて面談を実施します。すでに麻酔科術前外来が実施されており、今後は、麻酔科医と連携して、手術全症例に対応する予定です。
緩和ケアチーム
薬剤師は緩和ケアチームにおいて痛みをはじめとする様々な痛みの症状を緩和するためにオピオイドを含む鎮痛剤や鎮痛補助剤などの適切な使用方法を提案したり副作用を軽減する薬剤を提案したりします。また、患者へ薬の服用方法や副作用の説明を行っています。
認知症ケアチーム(Dementia care Support Team:DST)
認知症による行動・心理症状や意思疎通の困難さにより、身体疾患の治療が円滑に進まないことが見込まれる患者に対し、認知症の悪化を予防し、身体疾患の治療を円滑に受けられることを目的として活動する多職種で構成されたチームです。
DSTにおける薬剤師の役割
1)認知症患者は、身体疾患の治療薬(糖尿病や高血圧など)に加え、不眠や痛み、便秘、頻尿などの症状のために、ポリファーマシーの状態にあります。患者が服用している薬を調べ、症状に悪い影響を与えていないかチェックします。
2)認知症の症状には、脳の機能が落ちることで必ずみられる中核症状と、それに伴って二次的に出現する様々な症状、BPSD(行動・心理症状)があります。このような症状を和らげるために、患者の体に最も合った薬の種類や量を医師とともに考えます。
3)認知症患者は、飲み込む力が低下していたり、服薬をいやがったりすることで、服薬を続けることが難しくなる場合があります。認知症の薬には錠剤以外にも、水薬や粉薬、ゼリー状や貼り薬などがあるため、患者の服薬能力を判断し、患者に合った服薬方法を考えます。
術後疼痛管理チーム
術後患者にとって、安全で満足のいく痛みの管理を提供するために、麻酔科医師、薬剤師、手術室看護師、臨床工学技士などから構成される「術後疼痛管理チーム」を結成し、各職種が専門性を生かして協働しています。術後の痛みを管理する際に気を付けることとして、痛みがやわらいでいるか、患者の満足度が高まったか、術後の消化管機能や運動機能が順調に回復しているかについてあわせて確認することが大切です。とくに薬剤師は、鎮痛薬の効果と副作用を評価して術後鎮痛の処方の見直しを行うなど、術後鎮痛がよりよいものとなるように努めています。
(公社)日本麻酔科学会の術後疼痛管理研修修了薬剤師1名
二次性骨折予防継続管理チーム
骨粗鬆症を持つ大腿骨頸部骨折患者では、再び骨折するリスクが高いことから、専門的な治療・指導管理による骨折予防が重要です。骨粗鬆症の治療による二次性骨折の予防を推進する観点から、骨粗鬆症を有する大腿骨近位部骨折患者に対して早期から必要な治療を実施する目的で、「二次性骨折予防継続管理チーム」を設立しました。西陣病院においても、2次骨折予防を目指す骨折リエゾンサービス(FLS : Fracture Liaison Service)をもとに、①2次骨折の発生リスクが高い者を特定する②2次骨折リスクを評価する③投薬を含む治療を行う④患者のフォローアップを行う、ことを実践しています。
がん薬物療法認定薬剤師(日本病院薬剤師会認定) | 1名 |
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糖尿病薬物療法認定薬剤師(日本くすりと糖尿病学会認定) | 1名 |
糖尿病療養指導士(日本糖尿病療養指導士認定機構認定) | 3名 |
NST専門(薬剤師)療法士(日本臨床栄養代謝学会認定) | 1名 |
学会認定薬剤師や専門薬剤師の認定に対応する“薬剤師育成”を行っています。
薬剤部では、臨床現場での問題を臨床薬学的な観点から解決することを目的に研究を行っています。研究テーマは、薬剤師の職能を生かし薬剤の適正使用を促進することを目標とした「臨床薬学的研究」を行っています。「研究テーマ」および「臨床データの利用」に関しては。下記をご参照ください。
◎薬剤部にて終了(結果公表済み)した臨床研究一覧
「西陣病院におけるデュラグルチド製剤新規導入患者の調査」(第19-32号)
「尿路上皮がんの片腎患者に対するGC療法が腎機能に及ぼす影響」(第17-08号)
「AST-120の服用状況と腎機能低下抑制効果に関する検討」(第17-02号)
「学会発表における患者データの活用」(第16-06号)
SGLT2阻害薬の処方状況と腎機能評価(日本糖尿病学会)
Evaluation of patient renal function at the time of introduction of cancer chemotherapy(日本腎臓学会)
球形吸着炭(AST—120)服用患者における臨床効果の検討(日本透析医学会)
「メトホルミン処方時の患者腎機能評価と投与量の関係 みのり薬局西陣店と薬剤部における共同研究」(第15-13号)
「薬剤部における下記の症例報告および研究発表に関する審議」 (第15-11号)
モノエタノールアミンオレイン酸塩(オルダミン)注による急性腎障害を来した後に副作用被害救済制度を利用した事例(医療薬学フォーラム2016)
バンコマイシン散服用によりバンコマイシン注のTDMに影響を及ぼした症例 研究発表(医療薬学フォーラム2016)
医療安全の観点から静脈用脂肪乳剤(イントラリポス注)の適正使用を考える(医療薬学フォーラム2016)
「レボフロキサシン処方時の患者腎機能評価と投与量の関係」(第15-02号)
メトホルミンの新規処方時おける患者背景に関する調査・研究(日本糖尿病学会)(第21-09号)
Comparison of Estimation Equations for Assessing Renal Function in Patients Diabetic Kidney Disease and Investigation of Factors Causing Differences(日本腎臓学会)(第21-13号)
・薬剤師外来(2020年4月 新設)
安全で効果的な薬物治療を提供するために、薬剤師が外来で抗がん剤治療、緩和薬物治療、インスリン製剤による治療などを受けている患者に対して服薬指導や手術・検査前の持参薬確認などを行うことは有用です。
西陣病院では、「外来がん化学療法」を行っている患者に対して、治療開始時に使用される薬剤について、発現しやすい副作用やその予防方法、発現時の対処方法などについて説明しており、継続して服薬指導を行っています。
2020年4月より薬剤師外来を設け、まずは糖尿病療養指導士を中心に、インスリン製剤による血糖コントロールが十分でない患者を対象に手技も含めた患者指導を始めました。今後は、術前外来(麻酔科医)と協働し、術前の休薬および持参薬確認を行うためのシステムを構築中です。
・近隣医療施設および薬学教育との連携
地域中核病院として地域医療の質的向上を図ることが責務となっています。その一貫として、薬剤部では病院薬剤師・保険薬局薬剤師や薬学生を対象に、実務実習受け入れ期間の年3回に薬薬学の連携による症例報告検討会を開催しています。また薬学教育研修の一施設として早期体験学習を始め受け入れ体制を整備し、薬学生(実務実習11週間)を指導しています。学生実習では講義を含む実習カリキュラムを用意し、自ら学び考える姿勢を全員で支援しています。
一般社団法人 日本医療薬学会 医療薬学専門薬剤師 | 1名 |
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一般社団法人 日本病院薬剤師会 病院薬学認定薬剤師 | 4名 |
薬学教育協議会 薬学生実務実習 受入施設 認定実務実習指導薬剤師(日本薬剤師研修センター認定) |
4名 |
摂南大学、大阪医科薬科大学、姫路獨協大学、同志社女子大学
「職場体験」とは、生徒が事業所などの職場で働くことを通じて、職業や仕事の実際について体験したり、働く人々と接したりする学習活動であり、主に、医療職を志す中学生が西陣病院を希望している。
<中学生による職場体験>