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お薬の飲み方のおはなし

(この記事は2013年11・12月号の西陣病院広報誌『西陣病院だより』に掲載したものです)



薬剤部 薬剤師 宇野 葵


 皆さん薬を服用される時は、水や白湯で飲んでいますか?外出先などで身近に水や白湯がないとき、それ以外の飲み物で飲んでいませんか?
 実は、薬は基本的に水や白湯で飲むことになっています。

 最近、水なしで服用できる口腔内崩壊錠が登場していますが、この場合でも少量の水で流し込む必要があります。多くの薬は、水なしで服用すると食道にくっついて薬がそこで溶け出し、潰瘍ができてしまうことがあります。では水以外の飲み物と薬の飲み合わせは…?


【牛乳】
 牛乳はカルシウムなど薬と反応しやすい成分が多く、注意が必要です。例えば、腸溶性製剤(胃で溶けず、腸に到達してから溶けるようにコーティングしてある製剤)は牛乳との併用で腸溶性が失われてしまいます。また制酸薬の中には、大量の牛乳と一緒に飲むと高カルシウム血症が起こることがあります。

【グレープフルーツジュース】
 降圧薬であるカルシウム拮抗薬(ノルバスクOD5mg、アダラートCR20mg、アダラートCR40mgなど)は小腸にあるCYP3A4という酵素で代謝されます。グレープフルーツジュースは小腸にあるCYP3A4を可逆的に不活化します。そのためグレープフルーツジュースを飲用するとカルシウム拮抗薬は代謝されないため、血中濃度が上昇してしまいます。つまり、薬効が強く出すぎてしまいます。また、グレープフルーツも同じ効果があるため避けた方が良いでしょう。


 水や白湯以外で服用しても問題ない場合もあります。牛乳とグレープフルーツジュース以外で気になる飲み合わせがあれば薬剤師に相談してください。

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外科化学療法室が移転して新しくなりました。

(この記事は2013年11・12月号の西陣病院広報誌『西陣病院だより』に掲載したものです)



福本医師 外科 副部長 福本 兼久


 以前、大腸がんに対する抗がん剤治療についてこの西陣病院だよりにも記載しましたが、2013年6月から外来化学療法室が移転して新しくなりましたのでご紹介します。
 大腸がんは近年急激に増えており、不幸にも大腸がんでなくなる方がこの数十年で10倍近くに増えています。厚生労働省が2007年に発表した死亡率でも、男性では肺がん、胃がんについで第3位ですが、女性では2005年から引き続き第1位です。

 また、大腸がんは、ほかのがんに比べ比較的ゆっくり進行するのが特徴ですが、いったん進行するとリンパ節や肝臓、肺、骨に転移するため、早期発見、早期治療により完治させることが重要です。早期発見のためには、大腸内視鏡検査を受けるのが最も確実で、小さなポリープや粘膜内にとどまっている早期がんは内視鏡下に切除することも可能です。(西陣病院だより2012年9・10月号でも紹介しています)

 がんが進行している場合でも腹腔鏡手術という、より低侵襲な手術により治療することが可能な場合もあり、更に進行して肝臓や肺に転移していても手術で切除が可能な場合もありますが、残念ながら既に肝臓や肺に多数の転移があり、手術単独では治せない場合も増加しています。そのような状態では、手術前や手術後に薬による治療いわゆる化学療法(抗がん剤治療)が行われますが、最近10年間で大腸がんに対する抗がん剤治療は大きく進歩し、新しい抗がん剤や分子標的薬といわれるがん細胞の一部分を狙い撃ちするような治療薬が出現し、薬が効きやすいがんになりつつあります。また、肝臓や肺の転移に対して抗がん剤治療を行うことで、腫瘍が縮小したり消失したりする場合も増えており、化学療法後に縮小した腫瘍を含めて肝臓や肺を手術で切除できる場合もあります。このように、化学療法(抗がん剤+分子標的薬)を行うことで、再発後の生存期間も約2年以上と飛躍的に改善しています。現在も新しい分子標的薬の開発や臨床試験が盛んに行われており、更なる生存期間の改善が期待されています。

生存期間中間値

 続いて、外来化学療法室で行っている実際の治療について説明します。

 当院では、大腸がんを含め、胃がん、膵がん、胆管がん、膀胱がん、前立腺がんなど様々ながん腫に対して外来化学療法を行っています。それぞれの治療法の詳細については割愛しますが、例えば大腸がんでは、抗がん剤+分子標的薬という多剤併用療法が行われることがほとんどで、治療時間も約3~4時間と長時間にわたり点滴を行います。実際に4時間ほどの点滴を続けるのは非常に苦痛なのですが、当院では患者様が少しでもリラックスして治療が受けられるように心がけています。

 設備としては、フルリクライニングチェアー5台(電動3台、手動2台)とベッド2台を配置し、プライバシーに配慮してそれぞれの間隔を広めに取っており、楽な姿勢でご希望の場所で治療を受けることが可能です。また、それぞれにテレビも配置しており、お好きな番組を見ながらの治療も可能です。

外来化学療法室


 最近の化学療法は、非常に特徴的な副作用が出現することも多く、当院では外来化学療法室専属の看護師が常駐しており、治療前から治療後まで患者様の体調をきめ細かく観察し、できるだけ安心して治療が受けられるようにしています。また、投与している薬の作用や副作用については、化学療法専門の薬剤師が丁寧に説明し、治療に対する不安を取り除くように心がけています。

 抗がん剤治療というと以前は副作用が強く、治療により動けなくなってしまうような印象がありますが、現在の治療法は副作用も少なくなっており、外来通院で治療を行うことが可能となりました。このため、外来化学療法室は、患者様にとって、より安心、快適、安全に、個々の病状に応じた治療を受けていただき、治療後も普段通りの生活に戻れるような施設を目指しています。また、主治医、看護師、薬剤師、管理栄養士が密に連携し、チーム医療により患者様の治療を支援していきます。

外来化学療法室スタッフ
外来化学療法室スタッフ


 当院では、週3回(月、水、金)化学療法専門外来を行っていますので、詳細は担当医または化学療法外来担当看護師までご相談ください。

 なお、当院は日本がん治療認定医機構認定研修施設の認定を受けています。

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ピロリ菌とその除菌について

(この記事は2013年11・12月号の西陣病院広報誌『西陣病院だより』に掲載したものです)



 内科 鈴木 俊生


  ピロリ菌(ヘリコバクター・ピロリ)という名前を、一度くらいは見聞きされた方も多いのではないでしょうか。この西陣病院だよりでも前に話題として取り上げられていました。当時と多少状況が変わったところもあり再度取り上げることといたしました。

 ピロリ菌は、発見されてまだ30 年ほどですが様々な病気との関連性が解明されつつあります。その中でもわれわれ日本人が見過ごすわけにはいかないのは胃がんとの関連です。

 がんによって亡くなられる方のうち胃がんは、肺がんについで2 番目に多く、年間約5万人の方々が亡くなっておられます。また、年間約10万人の方が新たに胃がんと診断されています。

 ピロリ菌が感染した胃は、慢性胃炎の状態を経てがんを発症すると考えられます。そのため、ピロリ菌の感染をなくすこと( 除菌)は即ち胃がんの発症のリスクを減らすことにつながります。

 そもそも、ピロリ菌は口から体内に入り感染すると考えられており、衛生状態のよくない地域では感染のリスクは高まります。日本ではほかの先進諸国と比べてピロリ菌感染者の割合が高く、国民の50%(50 歳代以上では80%)が感染しているとみられています。若年世代では感染率は低く、戦後の急速な発展にともない衛生状態が改善されことを如実に反映しているといえるでしょう。

 今年はピロリ菌の除菌治療に関して大きな変化がありました。以前から、胃潰瘍、十二指腸潰瘍やそのほかの特定の病気のある方には、ピロリ菌の除菌が保険診療で行われてきました。

 しかし、これまではピロリ菌に感染してはいるけれども胃潰瘍や十二指腸潰瘍などのない方にはピロリ菌の除菌は保険診療では行えなかったのです。とうとう今年(2013 年)2 月より、そういう方の除菌治療も保険診療で行うことが可能となりました。

 ピロリ菌の感染を確認するためには、血液、尿、便、呼気のいずれかの検査か、胃カメラの際に胃の組織をごく少量採取して調べます。

 もし、これらの検査でピロリ菌に感染していることがわかれば除菌されることをお勧めします。

 除菌を希望される方で胃カメラを受けておられない方は、除菌に先立って胃カメラ検査を受けていただく必要があります。

 除菌の方法は数種類のお薬を7日間飲んでいただくだけです。たくさんのお薬を一度に飲んでいただくことになるため、下痢やアレルギーなどの副作用が現れることがあります。その後、除菌がうまくいったかどうかを先ほどの血液、尿、便、呼気のいずれかの検査で調べます。

 この治療で概ね70-80%前後の方々の除菌は成功します。うまくいかなかった方も二回目の除菌治療を受けていただくことができます。

 二回目の除菌治療は、一回目とは種類を一部変更した薬を飲んでいただきます。二回目の除菌まで含めると90% 以上の方のピロリ菌の除菌が成功します。ただし、その後もピロリ菌以外が原因の病気の可能性もありますので定期的に胃カメラを受けていただくのが望ましいでしょう。


日頃からおなかの具合がよくないとお感じの方や、胃の痛みがある方など気になる方は一度ピロリ菌の検査を受けてみてはいかがでしょうか。まずは病院に足を運んでみてください。お待ちしております。

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たかが湿布薬! でも注意が必要です。

(この記事は2013年9・10月号の西陣病院広報誌『西陣病院だより』に掲載したものです)


薬剤部 副主任 福本 郁子


最近、化粧品による皮膚障害が話題となり、皆様の記憶にも新しいのではないでしょうか。今回は、比較的よく使われている薬剤による皮膚炎についてお話します。

 腰痛や関節痛などに使われている消炎鎮痛剤の成分ケトプロフェンは、医療用の湿布薬(商品名:モーラスパップ、モーラステープ)・ぬり薬、また市販薬にも多く含まれています。

 この成分の湿布薬を貼った部位に紫外線を浴びると、光アレルギー性接触皮膚炎が起こることがあります。その症状は、かゆみ、赤くなる、ぶつぶつができる、ただれ、かぶれなどで、湿布薬をはがした後にも起こることがあります。 一度皮膚炎をおこした薬剤は、体の中に記憶されます。そして、ふたたび同じ薬剤や、よく似た系統の薬剤を使うと、薬疹(副作用として出る発疹)が出る可能性があるので注意が必要です。

 皮膚炎をおこした薬剤は、ふたたび症状をおこさないように必ず覚えておき、医師または薬剤師に薬剤名と症状について話してください。

注意! 注意点
(1)貼ったところに日光をあてないでください。外出するときは、服やサポーターで貼ったところを日光からさえぎってください。はがした後も、皮膚に薬が残っているので、4 週間は注意が必要です。
(2)症状が出たら、すぐに使用を中止してください。
(3)ほかの人に譲らないでください。



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リハビリテーション科の紹介

(この記事は2013年9・10月号の西陣病院広報誌『西陣病院だより』に掲載したものです)




 平成25 年7月より西陣病院リハビリテーション科では、言語聴覚療法が新たに開設され、リハビリテーション室の広さも約1.5 倍となりました。それぞれの特色別に3 部屋開室され、より専門的な治療ができる体制となりました。スタッフも増え、理学療法士7名、作業療法士3名、言語聴覚士1名を含む15名でリハビリテーションを行っています。


 私たちは、当科の基本理念である「患者様と共に歩むリハビリテーションの実践」を目標に、楽しく来室していただき、患者様自ら意欲的にリハビリテーションに取り組んでもらえるような雰囲気作りを心がけています。

 理学療法部門ではリハビリテーション室の拡大とともに理学療法士が1名増員したことにより、今まで以上に質の高いより充実したリハビリテーションが提供できるようになりました。

 作業療法部門では作業療法士が1 名増員し、個別の訓練室が新設されたことにより、専門性を高めたより質の高いリハビリテーションが提供できるようになりました。疾病や受傷により身体機能や精神的な障害を受けた患者様に対し、機能訓練や作業を通し、きめ細やかな回復を図ります。同時にトイレ・入浴・家事動作などの日常生活動作を自分で行えるように治療を進め、早期に家庭・社会復帰できるように目指しております。


 言語聴覚療法部門では、7月より新たに言語聴覚士が配属されました。言語聴覚士は1997 年に国家資格となった、比較的新しいリハビリテーション専門職です。当院リハビリテーション科で対象とする障害は、失語症、高次脳機能障害、構音障害(いわゆるろれつ困難)、摂食・嚥下障害(飲みこみの障害)などです。患者様の障害を軽減、あるいは障害を持ちつつも代わりとなる手段の工夫により、機能の向上のみでなく、地域での生活、社会参加を支援していきたいと思います。


 当院リハビリテーション科ではそれぞれ特色のある3つの療法が揃い、総合的なリハビリテーションが提供できるようになりました。今後、様々な障害に対してより専門的なリハビリテーションを提供させていただき、患者様と共により良いリハビリテーションを展開していきたいと思います。リハビリテーション科一同全力で務めますので、今後とも宜しくお願いします。

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