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胃癌、大腸癌の手術および手術治療成績について

(この記事は2013年9・10月号の西陣病院広報誌『西陣病院だより』に掲載したものです)


中瀬 有遠医師 外科 副部長 中瀬 有遠


 日本では、癌にかかる人の数も高齢化に伴い年々増加傾向であり、その中でも胃癌・大腸癌は罹患率(病気になる確率)が高く、男性では1 位:胃癌、2 位:大腸癌、女性では2 位:大腸癌、3 位:胃癌となっています(2005年国立がん研究センター調べ)。つまり、胃癌や大腸癌は、かかってしまう可能性の高い一般的な癌であると言えます。当院でも胃癌や大腸癌に対する治療をたくさん行っていますが、今回はその手術法、治療成績についてお話します。

 手術法:癌が粘膜内にとどまる早期癌については胃カメラや大腸カメラを使った内視鏡的粘膜下層剥離術(ESD)で切除できることがあり、当院でも消化器内科医により積極的に施行しております。外科では、ESDの適応とならない早期癌や進行癌に対して手術を行っています。手術法は開腹手術と腹腔鏡手術に分けられますが、当院では癌以外の疾患に対しても早期から腹腔鏡手術を導入しており、独自の手術器具を開発するなど腹腔鏡手術は特に力を入れている得意分野であります。腹腔鏡手術は、高度な技術と特殊なトレーニングが必要とされ、しばしば安全性や癌の根治性が問題視される場合もありますが、当院では単孔式内視鏡手術研究会世話人や内視鏡外科学会技術認定医を含む外科医全員が高い意識を持って日々トレーニングを行っており、確実な技術により安全で良質な手術を行っております。近年、胃癌および大腸癌に対する腹腔鏡手術適応症例の拡大により、全国的に腹腔鏡手術は増加しておりますが、当院の腹腔鏡手術率も増加傾向で、昨年は胃癌(図1)が61.5%で大腸癌(図2)では93.5%と、腹腔鏡手術が盛んな全国主要施設と同程度であり全国トップレベルといえます。さらに症例によっては単孔式手術やReduced port surgery という、より少ないキズでの腹腔鏡手術を積極的に導入しております。

図1  図2

 手術治療成績(5 年生存率):当院で2004 年~2009年に手術を行った症例の胃癌および大腸癌の治療成績(5 年生存率:胃癌取扱い規約13 版、大腸癌取扱い規約7 版を使用)は、胃癌(図3)はStageⅠa:Ⅰb:Ⅱ:Ⅲa:Ⅲb:Ⅳ=95.5%:93.3%:58.7%:55.6%:38.4%:0% で、大腸癌(図4)はStageⅠ:Ⅱ:Ⅲa:Ⅲb:Ⅳ=90.3%:82.8%:78.9%:56.6%:12.5% です。当院の生存率は他病死症例を含んでおり、手術時の併存疾患(肝や腎、肺などの慢性疾患、心・脳の血管病変、糖尿病など)の有無や年齢などにも左右されるため、他施設との比較は一概にできませんが、全国の主要病院の手術治療成績と大きく変わりはありません。手術治療成績の向上には、適切な手術の施行はもちろん重要ですが、術後(補助)化学療法も適切に行われることも重要です。

図1  図2

 つまり、早期癌は手術だけでほとんど治りますが、手術後の再発が心配される一部のStageⅡあるいはStageⅢの場合は再発予防としての補助化学療法が必要で、すでに肝や肺などの遠隔転移をともなうStageⅣでは癌の進行を抑える抗癌剤治療が必要となってきます。当院では外科医全員が、がん治療認定医であり、副作用対策なども含め常に最先端の情報を入手するように努め、看護師や薬剤師と連携して、その患者様に最適と思われる治療法を提案し、患者様に納得していただけるような治療を目指しています。


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脊椎外来について

(この記事は2013年9・10月号の西陣病院広報誌『西陣病院だより』に掲載したものです)


髙取良太医師 整形外科 医長 髙取 良太


 当院では15年以上前より京都府立医科大学整形外科教室の関連病院として、地域の皆様の脊椎脊髄病疾患診療に携わってまいりました。このたび平成25年4月より髙取が再度着任し、常勤医師1名 (日本脊椎脊髄病学会 脊椎脊髄病医)、非常勤医師2名 (2名とも日本脊椎脊髄病学会 指導医) による脊椎外来を行う体制を整えました。火曜日、木曜日は髙取 (午後一部予約制)、水曜日 (予約制) 長谷 斉先生、金曜日 (予約制) 池田 巧先生がそれぞれ担当しております。今回脊椎外来のご紹介をさせていただきます。

 脊椎外来は首・背中・腰の痛みや手足のしびれなど、脊椎脊髄病疾患を専門的に診察する外来です。MRIや脊髄造影検査などの画像検査と専門医による診察に基づいた診断と治療方針の決定を行い、症状や病態に合わせて薬や神経ブロックなどによる保存的治療や神経圧迫除去術 (除圧術) や脊椎固定術などの手術治療を行います。

 特に高齢化社会を迎え、腰痛や手足のしびれなどの症状を有する方が非常に多く、数多くの外来治療とともに、当院では脊椎手術を年間50-70件程度行っています。平成25年4月から6月までの3ヶ月間では20件の手術治療を行っており、その内訳も頚椎除圧手術4件、腰椎除圧手術 (ヘルニアを含む) 11件、脊椎固定術 5件 (頚椎1件、胸腰椎2件、腰椎2件) と様々な疾患・術式に対応しています。顕微鏡ないしは内視鏡を用いた筋肉・関節温存に配慮した除圧術や、経皮的手技や術中神経モニタリングを併用した脊椎固定術など、全ての手術治療において体にできる限り負担が少なく安全な低侵襲手術を心がけております。基本的に手術翌日から歩行訓練を開始し、2、3週間程度の入院治療を行っています。

 当院の特徴としましては、ご高齢の患者様、様々な内科疾患をお持ちの患者様、血液透析患者様など、一般的に手術を受ける際のリスクとされる要素をお持ちの患者様が多いことが挙げられます。当院では幸いなことに、かかりつけの近隣の先生方や当院内科・外科・泌尿器科など各科医師との連携が非常に密であり、麻酔科医師による周術期管理を含めて充実したチーム医療体制が引かれております。そのため他院では敬遠されがちなリスクが高い患者様においても、安心・安全の脊椎手術治療に努めることができています。様々な症状、病気でお悩みの患者様がございましたら、ぜひかかりつけの先生にご相談いただき、地域医療連携室をご利用の上、当院整形外科脊椎外来にお越し頂ければ幸いです。

西陣病院TEL番号 075-461-8800 (代表)
地域医療連携室専用FAX番号 075-465-7327

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くすりのおはなし -薬の保管は大丈夫ですか?-

(この記事は2013年7・8月号の西陣病院広報誌『西陣病院だより』に掲載したものです)

薬の保管方法


薬剤部 薬剤師 須山 奈見子



 薬は、温度や湿度、光によって品質が変化する可能性があります。通常は30 度以下、冷所保存の場合は15度以下での保管が必要です。特に梅雨時や夏場など多湿や高温の時期には、カプセルが軟らかくなったり、カプセル同士が張り付いたり、錠剤では潮解といって溶けてしまうものまであります。冷蔵が必要な薬は、薬袋に「冷所保存」、「要冷蔵」と記載されています。

 インスリン製剤は、使用を始めてから常温で1ヶ月は携帯出来ます。しかし、インスリン製剤は温度の影響を受けやすいため、屋外に駐車した車に置いておく場合は、クーラーボックスなどにいれておくと良いでしょう。使用していないインスリン製剤等は、凍結を避けて2 ~ 8℃(扉のところが良いでしょう)に遮光して保存してください。要冷蔵となっていない薬は、直射日光が当たらない戸棚などに保管してください。

 これから本格的な夏になるので、屋外に駐車した車の中などでは、かなりの高温になるため、薬を車中や日差しが強い場所には放置しないようにしましょう。

注意! 以下のような場合は薬が変質しているおそれがあるので、使用しないでください。

●錠剤やカプセルの色が変わっている、表面がザラザラしている、亀裂が入っている、においが変わっているときなど。
●粉薬の色が変わっている、固まっている、においが変わっているときなど。
●透明だった水薬がにごったり沈殿物ができ、よく振っても溶けないとき。
●軟膏やクリームなどの外用剤で色が変わっていたり、油が浮いているとき。
●透明だった点眼薬が濁っているとき。
●シップ剤などの表面が乾いていたり、油が浮いているとき。

変質した薬は、交換できません。
あなたの病気を治す薬を大切に保管しましょう。


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最近の内視鏡の進歩 -超音波内視鏡-

(この記事は2013年5・6月号の西陣病院広報誌『西陣病院だより』に掲載したものです)



曽我先生 内科 医長 曽我 幸一


 超音波内視鏡(EUS:Endoscopic ultrasoundscopy)は内視鏡先端に超音波装置がついており、消化管内から消化管壁や周囲組織・臓器などの診断・治療を行う内視鏡です(図1A)。胃カメラと同じように口から内視鏡を挿入して検査します。通常の胃カメラでは消化管の表面しか見ることができませんが、EUS は表面より深い部分の観察が可能となります。またEUS は体外式超音波検査に比べて目的の病変近くから観察を行うため、胆管炎、胆嚢炎、膵炎等の炎症性疾患の原因精査、消化管粘膜下腫瘍、胆膵癌の早期発見・精査に非常に有用と言われています(図1B)。


 最近はEUS で得られた画像から診断するだけではなく、EUS で観察しながら病変の一部を採取したり、治療したりするInterventional EUSを積極的に行われています。EUSを用いた組織検査(超音波内視鏡下穿刺吸引術:EUS-FNA)は広く普及してきた内視鏡検査と言えます(図1C)。 EUS-FNA をよりさらに発展した技術もあります。穿刺後の針の中にガイドワイヤーを通して、経皮的胆嚢ドレナージ術(PTGBD)や経皮的胆管ドレナージ術(PTBD)を応用したドレナージ(EUS - GBD、EUS-BD)や急性膵炎後の仮性嚢胞に対してのドレナージも行うことができます(EUS-CD)。例えば膵頭部癌で十二指腸浸潤・胆管狭窄を起こした場合に、EUS 下穿刺術を応用しますと、十二指腸球部より拡張した胆管に針を刺して、ドレナージチューブを留置することが可能です(EUS-BD)。



 EUS下穿刺技術を応用したもうひとつの手技は、超音波内視鏡ガイド下腹腔神経叢破壊術(EUS - CPN)です(図2)。腹部癌性疼痛の中継点として知られる腹腔神経叢を、アルコール等を使用して破壊する手技です。体表からの腹腔神経叢へのアプローチは、EUSを使わない場合は極めて困難で、今までの方法では脊髄誤穿刺や動脈損傷で対麻痺などが起こる可能性があります。EUSを使うと、腹腔動脈のすぐ脇にある神経叢に比較的簡単にたどり着くことができるため、癌性疼痛の疼痛コントロールの有力な手段として期待されています。



 以上簡単ですが、消化器内視鏡分野で注目されているEUS、およびEUS 関連手技に関して、ご紹介致しました。当院でも近々この内視鏡機器を導入予定です。今後も今まで以上に質の高い内視鏡検査・治療を受けて頂ける消化器内視鏡センターを目指してまいります。


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顔の「色素性疾患」と「Qスイッチルビーレーザー」について

(この記事は2013年5・6月号の西陣病院広報誌『西陣病院だより』に掲載したものです)



 皮膚科部長 若林 浩子


西陣病院皮膚科では、日頃の外来診療において、顔の色素斑についてのご相談を受けることが、たびたびありました。顔については、人と接する際に印象を左右しますので、年齢、男女を問わず、関心があるかと思われます。

 色素斑と一言にくくられますが、成因は様々です。一見同じように見えるシミも長年の紫外線暴露による、炎症後色素沈着によるものから、皮膚癌の初期段階である、日光角化症もあります。日光角化症には、最近イミキモドという薬剤を外用することが有効であり、多発している場合も治療が簡便になりました。黒色の結節で、いかにも悪そうな顔をしていながら、良性である脂漏性角化腫と、ダーモスコープという特殊な装置で観察すると鑑別できる、基底細胞癌は、見た目は似ております。脂漏性角化腫は、麻酔の必要ない液体窒素による凍結治療で加療できますが、基底細胞癌は手術切除が必要です。稀ですが、悪性黒子、悪性黒色腫といったものがひそんでいることもあります。生下時や、若いころより存在する母斑性のものもあります。目の周囲に見られる青黒色の太田母斑や、茶褐色の扁平母斑などです。


 長年の紫外線暴露による、炎症後色素沈着や、太田母斑、扁平母斑の治療については、いままで、形成外科への紹介や、母斑用レーザーのある大学病院等に紹介させていただきご不便をおかけしておりましたが、当院でも、最新式のQスイッチルビーレーザーを導入いたしましたので、今後の診療に役立てていければと思っております。



 当院のJMEC社The Ruby Z1 Qスイッチルビーレーザーは、異所性蒙古斑、自転車の転倒時などに受けた擦過傷などの異物混入による外傷性刺青、太田母斑、扁平母斑には保険適応があります。当院のレーザー機種は、東洋人に多い、目の周りに両側性に見られる、遅発性両側性太田母斑にも保険適応があります。The Ruby Z1は、メラニンという黒色の色素に選択性の高い694nmの波長を持ち、アレクサンドライトやYAGレーザーより、周囲組織へのダメージを最小にして、色素の薄い病変でも鋭い反応性を持つことができます。カライドスコープにより、均等な強度のエネルギーを与えることができるので、治療ムラがでにくくなっています。


Qスイッチルビーレーザー 紫外線暴露による、炎症後色素沈着、老人性色素斑といったいわゆるシミには、保険適応がありませんので、まず、通常の外来を受診いただいて、ほかの治療が適切な疾患を除外した上で、別の日時に予約外来に来ていただく必要があります。レーザー照射後のアフターケアや遮光を適切にしないと、東洋人では再び炎症後色素沈着を起こしやすいので、きめ細かな説明もさせていただきます。


 皮膚癌については早期診断が大切ですし、レーザーが有効な治療であり、保険診療の適応である太田母斑や、外傷性刺青を治らないものとあきらめておられる方も多くありますので、ご紹介いただければと思います。色素斑が気になっておられる方もお気軽に受診ください。


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