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脂質異常症について

(この記事は2010年3・4月号の西陣病院広報誌『西陣病院だより』に掲載したものです)


内科 医長 小林由佳


採血でコレステロール値が高いと言われたことはありませんか? 特に自覚症状がないために、そのままになっていないですか?それによってどんな事が起こるのか、どれぐらいまでコレステロールの値を下げればいいのかについて、考えていきましょう。

2007年の日本動脈硬化学会にて、今まで呼ばれていた "高脂血症" という名前が "脂質異常症" と変更されました。脂質異常症というのは、簡単に言えば血液中の脂質(コレステロールや中性脂肪)が多すぎる病気のことで、LDLコレステロール(悪玉コレステロール)140mg/dl以上、HDLコレステロール(善玉コレステロール)40mg/dl未満、中性脂肪150mg/dl以上を指します。これは、今までは総コレステロール値が基準となっていたのが、LDLコレステロールやHDLコレステロールの方がむしろ重要であるということなのです。

LDLコレステロールは増えすぎると、血管の内側の壁にコレステロールが溜まり、詰まったり、硬くなって脆くなります。一方HDLコレステロールは、不要なコレステロールを取り込む役割があり、動脈硬化を防ぎます。よってLDLコレステロールが高いだけでも、HDLコレステロールが低いだけでも動脈硬化は進行する可能性があります。また、中性脂肪はそれ自体が動脈硬化の原因にはなりませんが、中性脂肪が多いと、HDLコレステロールが減ってLDLコレステロールが増えやすくなり、間接的に動脈硬化の原因となります。よって、脂質異常があると動脈硬化が進行するので、狭心症・心筋梗塞などの心臓病の発症率が普通の人よりも4倍、さらに高脂血症に加えて糖尿病や高血圧症があるなら、発症率が16倍に増加すると言われています。また脳卒中の危険も高まります。

治療としては、まず生活習慣の改善を心掛けます。これは血中脂質を下げるだけでなく、動脈硬化を促進するほかの要素、高血圧、耐糖能異常、肥満などの改善も期待できます。その主な内容は、(1)食生活の改善、(2)運動の増加、(3)適正体重の維持、(4)禁煙です。特に食事療法は重要であり、一度栄養指導を受けられることをお勧めします。また運動については、有酸素運動を中心に、1日30分以上、週3回以上をめざします。さらに、適正体重の維持も大切で、内臓脂肪がたまっていると血液中の脂質代謝の異常や耐糖能異常などが起こり、動脈硬化を促進するので、適正体重を維持することは、高脂血症の治療、動脈硬化の予防のためにも、たいへん重要なポイントの一つです。喫煙は中性脂肪の原料となる血液中の遊離脂肪酸を増やす作用もあり、さらに血液中のコレステロールが酸化されて動脈硬化が進行することや、HDLコレステロールの濃度が低くなることも知られています。よって、1日も早く禁煙することをお勧めします。しかし、どうしても生活習慣が改善できない人や、生活習慣を改善しても血中脂質の数字が下がらないときには、薬物療法を考えます。

どれぐらいコントロールが出来ればいいかについては、最近LDLコレステロール値をHDLコレステロール値で割ったLH比が重要と言われています。このLH比が脂質異常症の人は2.0以下、動脈硬化の危険因子がある人は1.5以下を目標とするのがいいでしょう。

また、気になる方は内科受診の際にご相談していただければと思います。


| Copyright 2010,03,01, Monday 01:42pm administrator | comments (x) | trackback (x) |

 

胆石外来の開設について

(この記事は2010年3・4月号の西陣病院広報誌『西陣病院だより』に掲載したものを一部改編しています)





外科 医長 高木剛
外科 医長 高木剛





胆石症について

先ず、胆のうとは肝臓でつくられた胆汁(たんぱく質や脂質の消化・吸収を助ける液)を貯蓄する約30ccの小さな袋状の臓器です。胆石症は、胆のうの働きがなんらかの原因で悪くなり、その胆のうの中で胆汁が結晶を作ることで石ができてしまう病気です。胆石は下の写真のように、コレステロール・カルシウム・ビリルビン等の種々の成分からできています。



胆道系と膵臓の解剖
胆道系と膵臓の解剖


胆石症の症状は、石があるから必ずしも症状が出るわけでなく無症状で経過する場合が多いです。しかし、胆石症の約2割の方に症状がでるといわれています。典型的な症状は、脂肪の多い食事の摂取後に突然の上腹部痛、右季肋部痛が出現するのが特徴的です。痛みは右肩・背部にしばしば放散し、悪心や嘔吐を伴うことがあります。



摘出した胆のうと種々の胆石※写真はクリックで拡大します





治療方法

治療方法には、主に3つあります。


  1. 結石溶解剤[飲み薬]にて胆石を溶かす方法:体への負担は最も少ないのですが、溶かすことができる石には限りがあり、ほとんどの場合で無効です。

  2. 衝撃波による治療(ESWL):衝撃波で石を破砕するのに回数がかかり、時に破砕された石が細い胆のう管につまり胆のう炎を誘発することもあります。根治的治療とはならず、ほとんど行われておりません。

  3. 外科的治療:手術は一度で根治することができる方法です。


(3)の治療方法をご紹介します。




  • 腹腔鏡下胆のう摘出術

    現在、胆石症の治療の主流となっている方法です。全身麻酔のもと、通常は臍下と上腹部に計3~4個の小穴をあけおなかの中(腹腔内)に二酸化炭素を送気(気腹)した後、テレビモニターにつながったカメラ(腹腔鏡)を腹腔内に挿入し、映った画像を見ながら専用の手術器械を駆使して胆嚢を摘出します。手術所要時間は、状態にもよりますが1時間前後です。開腹胆嚢摘出術より創部がかなり小さい分、痛みも軽度で回復も早く傷もほとんど目立ちません。合併症がなければ手術後2~7日で退院可能です。また、当科では昨年秋より臍部一箇所の創のみより手術を行う単孔式腹空鏡下胆嚢摘出術を炎症の程度に応じて行っており、術後傷跡がほとんど目に見えず、患者様に喜ばれております(これについては、こちらでご紹介しています)。ただし、腹腔鏡下胆のう摘出術を開始しても、以下の理由などで途中から開腹胆のう摘出術に移行する場合があります。

    • 胆のうの炎症が強かったため周囲臓器との癒着が強い

    • 術中に出血、胆管損傷・腸管損傷が発生し、対処が困難(頻度はまれです)など




  • 腹腔鏡下胆嚢摘出術





    腹腔内画像
    (胆のう摘出前)
    胆のう摘出後



  • 開腹胆のう摘出術

    最初から開腹手術を行うことはあまりないのですが、開腹手術の既往や炎症などにより癒着がかなり強いと予測される場合、また癌の合併している疑いが強い時は10cmほど切開する開腹術を行います。




手術後の経過

胆のうを摘出しても胆のう欠損症状はほとんど認められませんので、術後の食生活は今まで通りで構いません。退院後は、術後の経過を診るため1~2回外来受診して頂くことが多いですが、その後の定期受診は必要ありません。




胆石外来の開設について
当科では多数の患者様のご要望により、本年3月1日より夜間診療(月~金)の時間帯に胆石外来を併設いたします。胆石症でお悩みの方はお気軽にご相談下さい。

| Copyright 2010,02,24, Wednesday 12:28am administrator | comments (x) | trackback (x) |

 

腰椎の疾患について

(この記事は2010年1・2月号の西陣病院広報誌『西陣病院だより』に掲載したものです)


整形外科 医長 髙取良太整形外科 医長 髙取良太


腰椎に関わる疾患についてご紹介させていただきます。腰椎は体幹部と骨盤部をつなぎ、二足歩行を行う人間において非常に負担がかかる部位です。腰痛を経験されている方は非常に多いと思いますが、腰痛だけではなく、下肢にも症状を伴うことが多いことも特徴の一つです。

腰椎椎間板ヘルニア
頚椎と同様に椎間板が加齢などにより変性し、線維輪という椎間板周囲の組織に断裂が生じ、椎間板内部の髄核が後方に突出することで、神経根や脊髄を圧迫し、症状を引き起こします。20 ~ 40歳代、男性に多く、腰部や殿部、下肢にかけて痛みやしびれが生じます。治療法としては、痛みの強い急性期には安静、コルセット装着、痛み止めの使用、神経ブロックなどを行い、慢性期には運動療法を取り入れます。保存的加療が原則ですが、早期社会復帰を目指す場合、強い痛みが持続する場合、下肢の脱力、排尿障害などが生じる場合には手術加療を行います。手術では顕微鏡や内視鏡を用いて原因となったヘルニアを摘出し、神経の圧迫を除去します(図1)

腰部脊柱管狭窄症
加齢、労働などにより長年負担がかかった腰椎に起こる疾患で代表的な疾患が腰部脊柱管狭窄症です。50歳以降に多く発生し、変性、変形が進んだ椎間板、椎間関節、脊椎を支える黄色靭帯の肥厚などにより、脊髄の神経が通る脊柱管が狭くなり、神経が圧迫されて発症します。下肢の痛みやしびれが出現し、その症状のため長い距離を歩くことができなくなり、少し休息するとまた歩行できるという間欠性跛行が症状として特徴的です。また前かがみになると楽になり、逆に背中を伸ばす姿勢になると症状が悪化するのも特徴の一つです。進行すると下肢の脱力、排尿障害を生じます。治療としてはコルセット着用、運動療法、神経ブロックや神経の血流をよくする薬の内服などを行いますが、ゆるやかに進行していく疾患のため、歩行障害が進行し、日常生活に支障をきたす場合には手術加療を行います。手術では顕微鏡を用いて肥厚した黄色靭帯と骨の一部を切除して、神経の圧迫を除去する除圧術を行います(図2)。明らかな腰椎不安定性を認める場合には固定術を併用します。

当院では脊椎、特に腰椎に関する手術を数多く行っています。腰椎の手術と聞くと怖いものと誤解される方も多いと思いますが、低侵襲な手術を心がけており、手術翌日にはほとんどの方が歩行器で歩行しています。入院期間は術後のリハビリテーションを含めて約3週間です。保存的加療、手術療法に関わらず、腰痛、下肢痛などの症状が気になる方は整形外科外来を受診してみてください。

 

図1 腰椎椎間板ヘルニア術前、術後MRI
腰椎椎間板ヘルニア術前、術後MRI

 

図2 腰部脊柱管狭窄症術前、術後MRI
腰部脊柱管狭窄症術前、術後MRI


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看護部の紹介 -西2階病棟-

(この記事は2010年1・2月号の西陣病院広報誌『西陣病院だより』に掲載したものです)


看護科長代行 中村正一


今回から6回にわたって、西陣病院の看護部を紹介させていただきます。

看護師は、24 時間患者さまの近くで、お世話をさせていただいております。それぞれの部署はこんな看護を行っています。

西2階病棟はこんな病棟です

西2階病棟スタッフまずは西館2階病棟を紹介します。西館2階病棟は整形外科と眼科の患者さまが主に入院されている病棟で、看護師20 名、看護アシスタント4名で構成されています。

整形外科の患者さまの主な病名は、骨折、腰痛や手足のしびれなどが伴う脊椎疾患(脊柱管狭窄症、椎間板ヘルニアなど)、膝や股関節の変形が起こる変形性膝関節症・股関節症、リウマチなどです。これらの外傷や病気には主に、手術療法や安静療法やリハビリテーション療法などの治療がおこなわれています。

眼科の患者さまの主な病名は白内障で、治療は手術療法です。白内障の治療は、短期間の入院で、2日から5日くらいで退院することができます。

西2階病棟ではこんな看護をしています

西2階病棟に入院される患者さまは、手術を受ける方が多いので、私たちは、患者さまが安心して手術に臨めるように、十分な説明や手術室看護師の術前訪問などで、不安の軽減を図り、心身ともに万全な状態で手術に臨んでいただけるように努めています。手術後は、経過が順調であるかを観察し、異常兆候があれば、すぐに医師に報告し、医師と連携をとりながら、異常の早期発見・早期治療ができるように努めています。また、術後の痛みに対しては、体の向きや姿勢を整えたり、鎮痛剤を使用して痛みの緩和を図ります。手術後は、できるだけ早く元の生活に戻っていただけるように、お一人お一人の回復レベルに合わせて、生活の自立への援助を行います。患者さまのご自宅での過ごし方をお聞きして、家の中の階段や段差を想定した移動動作・排泄・入浴・更衣・食事摂取の方法などを、患者さまと一緒に考えリハビリテーションを行っています。手術後は痛みが伴いますが、私たちは、患者さまがご自身でできることはできるだけご自身で行っていただくようにしています。それは、痛いからといってベッドでじっとしていては回復が遅れてしまうからです。私たちは患者さまに「一人で歩けるようになってよかった」「また、公園まで散歩できる」という喜びを味わって頂きたいと思っています。しかし、痛みがある時は我慢せずにおっしやって下さい。痛みの緩和を行ってから、リハビリテーションを行います。そして、退院の際に心配なことや困っていることがあれば私たちにご相談ください。患者さまやご家族の方と一緒に考えて、患者さまに一番あった解決方法を見つけていきたいと思います。

私たちは、医師、薬剤師、理学療法士・作業療法士、社会福祉士と連携を図り、患者さまが安心して退院を迎えられるよう努力しています。常に患者さまのそばで応援し、患者さまの退院を笑顔でお送りしたいと考えています。


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「お薬手帳」って、こんなに便利

(この記事は2010年1・2月号の西陣病院広報誌『西陣病院だより』に掲載したものです)


薬剤科 科長 三宅健文


医療の情報が必要なとき何処でもすぐに使えるように、患者さん個人に持っていただきたいという願いを込めて「お薬手帳」は作られています。

使い方は?

  1. 病院・医院・歯科医院・薬局に行く時
    西陣病院を受診する時、かかりつけ薬局で薬をもらう時にお持ちください。医師・薬剤師が「お薬手帳」の記録から薬の飲み合わせや副作用をチェックします。また、新しく処方された薬の情報等を記入してもらうこともできます。
  2. 入院する時
    医師・薬剤師が病院の外来や家庭で飲んでいた薬等をチェックし、入院中の治療に最適な薬を選択します。
  3. 薬局・薬店等で薬や健康食品(サプリメント)を買う時
    薬剤師が「お薬手帳」の記録をチェックし、あなたに合う薬のアドバイスをします。
    また、購入した薬や健康食品(サプリメント)の名前を書いておくと良いでしょう。

使ってみて良かったこと(患者さんから聞きました)

  1. 副作用予防
    同じくすりで起きるアレルギー、2度目は1度目より強くでると言われています。同じ副作用は、二度と繰り返したくないですよね。副作用の出た薬の名前・日付・副作用の症状を記録しておきましょう。
  2. 飲み合わせチェック
    形は違っても、同じ効果の薬はかなり多いのです。お薬同士が、相手の薬の効き方を変えたりします。貼り薬や、目薬でも飲み合わせがあります。薬剤師による、飲み合わせチェックを受けましょう。
  3. 健康記録
    病院等でもらった検査値などのデータ、飲酒量、喫煙数などとそれにあわせた体調の変化も記録しておくと、自分の健康管理記録にもなりますね。保険証も一緒に付けておくと便利です。
  4. 旅行に行く時
    薬の名前は全国共通。旅行先にいつも薬を持っていくのを忘れた時でも、「お薬手帳」を見せれば大丈夫。いつもと同じ薬を処方してもらえます。
  5. 災害時
    阪神淡路大震災の時には、この記録が大変役に立ちました。災害時に常用薬や「お薬手帳」自体を持ち出すのを忘れたとしても、日頃から「お薬手帳」に記入する習慣があれば、自然と自分の薬への理解度が増すので、容易にいつもの薬を入手することができるでしょう。

いつもは、薬局や医院で書いてもらう「お薬手帳」ですが、自分流にはこんな風に使うことも出来ます。使い方は、自分の自由!とにかく、何でも記入しましょう!

  • ドラッグストアやコンビニで買った薬の名前
  • 健康になりたくて買った健康食品
  • お薬についてわからないこと、困っていること
  • お医者さんや歯医者さんに聞いておきたいこと

「お薬手帳」は、かかりつけの薬局でもらってください。


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