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がんの痛みのコントロールの強い味方“オピオイド”とは?

(この記事は2009年11・12月号の西陣病院広報誌『西陣病院だより』に掲載したものです)


薬剤科 科長 三宅健文


医療用に使用する麻薬のことを“オピオイド鎮痛薬”と言います。オピオイドは、アヘン(芥子(けし)の実から作られる)に含まれており、モルヒネ、コデインなどが有名です。最近では、モルヒネとは異なる新しいタイプの医療用麻薬として、フェンタニルやオキシコドンが使用できるようになりました。

“麻薬”と聞くと、心理的に抵抗を感じる方がおられるようですが、モルヒネは一般的に医療現場で使用されている有効な鎮痛薬の1つです。また、日本の研究者によって、がん性疼痛などの強い痛みがある場合、からだに鎮痛薬への依存を抑えるメカニズムが発生することが確認されています。つまり、がんの痛みの治療のために医療用麻薬が使用される場合には、患者さん自身に痛みがあるため、麻薬への依存性が抑えられているのです。がんの治療が効いて痛みそのものが弱くなった場合は、徐々に鎮痛薬をやめたり、量を減らすことも可能です。

医療用麻薬の使用目的はあくまで痛みをやわらげることにあります。したがってモルヒネを使用しても効果のない痛みに対して、モルヒネなどの医療用麻薬が処方されることはありません。

緩和ケアとは…
患者さんのからだや心のさまざまな苦痛を取り除き、QOL(Quality of Life =人がより自分らしく生きていくこと)を高めていく医療を「緩和ケア」といいます。つまり緩和ケアは、患者さんが感じるがんの痛み(身体的な痛み)だけでなく、これにからみ合う複雑な痛みを軽減させる治療であるといえます。

緩和ケアが目指す治療目標
「痛くて眠れない」「痛くて食べられない」「痛くて動けない」…がんの痛みやそれにともなう不安は、ふだんの生活を奪います。 がんの痛みの治療を中心とする緩和ケアは、心身の痛みによって失われた本来の日常生活を取り戻すことが一番の目標です。痛みの治療を続けることで、あなたらしい生活を送りましょう。

  • 第1目標 痛みに妨げられないでぐっすり眠れること
  • 第2目標 じっとしているときに痛みがないこと
  • 第3目標 歩いたりからだを動かしたりしても痛みがないこと


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輸血

(この記事は2009年11・12月号の西陣病院広報誌『西陣病院だより』に掲載したものです)


臨床工学検査科 吉田幸


みなさんは輸血と聞いてどんなイメージを持ちますか? 同じ血液型の血液を輸血したら良いと思っていませんか?

一般的に言われている血液型のABO式血液型とRh式血液型が適合すれば輸血できると思っていませんか? 実は血液型には何十種類もの血液型が存在します。その血液を安全に輸血するための検査について今回お話させていただきます。

当院で行っている輸血前検査

血液型検査
ABO式血液型とRh式血液型のD因子(Rh +か-)を検査します。
血液型判定の際はダブルチェックを行い誤判定を防止しています。

交差適合試験
輸血の直前に実施する検査で輸血予定の血液製剤が患者様の体内に入った場合に溶血反応などの副作用が起こらないことを確認する適合性検査です。この検査で適合する血液製剤のみを患者様に提供しています。

不規則抗体スクリーニング検査
妊娠や輸血などの免疫刺激により産生されることのある、赤血球に対する抗体の有無を調べます。また、抗体が発見された場合は適合する血液を準備し安全かつ円滑に輸血療法が行えるように事前準備します。

こうして、交差適合試験と不規則抗体スクリーニングを組み合わせることにより不適合輸血を防止し患者様に安全な輸血療法を受けていただけるよう検査を行っています。また、輸血後にも副作用がなかったかどうか確認するために2~3ヶ月後に肝機能検査、肝炎ウイルスなどの検査も行っています。このように輸血前だけでなく、輸血後にも検査を行い安全に輸血を行っています。


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男性の病気、前立腺癌と前立腺肥大症について

(この記事は2009年11・12月号の西陣病院広報誌『西陣病院だより』に掲載したものです)


泌尿器科 医長 関英夫泌尿器科 医長 関英夫


おしっこが近くて少しずつしか出ない、残尿感がある、おしっこが出にくいといった症状は加齢に伴い男女を問わず多かれ少なかれ出てきます。「年をとったら皆そんなもんだ、仕方がない。」ということも確かにありますが、中にはそうでないこともあります。

とくに男性においては、膀胱と尿道の間に前立腺という臓器があり、前立腺は加齢に伴い排尿の異常の原因となることがあります。その中で頻度の高いものが前立腺肥大症です。前立腺肥大症とはその名の通り、前立腺が大きくなって、正常ではクルミくらいのものが大きいものではソフトボール位になってしまい、膀胱や尿道が圧迫されておしっこが出にくくなったり、頻尿になったりする疾患です。この病気は50才くらいから症状が出だして次第に悪化してくることがあります。悪化するとお酒や風邪薬などの服用を契機におしっこが全然出せなくなり非常に苦しい思いをすることがあります。年末年始などに飲みすぎた後でおしっこを出したくても出せなくなり、苦しくなって深夜に救急受診される方を時折見かけます。

治療方法は、軽症ならば内服で、重症の場合は手術を行うことが一般的です。手術は尿道から内視鏡をいれて前立腺を削り取る手術がほとんどです。入院は1-2週間です。手術によって薬を使わずとも若い頃の様に勢いよく排尿できるようになることがあります。

次に、いま述べた前立腺肥大症とほとんど同じ症状で、注意をしなければいけない疾患で前立腺癌があります。症状が同じでも癌の場合は治療法が全然違ってきます。手術療法、放射線療法(リニアック、IMRT、小線源療法)、薬物療法(ホルモン療法、癌化学療法)などを駆使して治療を行います。もちろん早く見つかるほうが治癒率は高いです。しかしながら癌の場合は症状が出てきたと時はすでに進行癌で根治が難しいことがしばしばです。

症状が気になりだしたら一度は受診していただくのはもちろんですが、症状が出る前に検診などで前立腺癌の血液検査(PSA)をすれば早期癌の段階で発見できることもあり、根治できる可能性も高くなります。50歳を超えたら1年から2年ごとに1回程度の前立腺癌の血液検査をすることをお勧めします。

以上、簡単ではありますが泌尿器科の代表的な疾患を紹介させていただきました。


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冠動脈石灰化について

(この記事は2009年11・12月号の西陣病院広報誌『西陣病院だより』に掲載したものです)


内科 医長 北村亮治内科 医長 北村亮治


動脈が肥厚し硬化した状態を動脈硬化といい、これによって引き起こされる様々な病態を動脈硬化症といいます。動脈硬化の最終像である石灰化は、血管壁の柔軟性と弾力を減少させ、最終的には血管脆弱性を招きやすい状態になります。このため、血管石灰化は糖尿病や慢性腎不全の症例において、虚血性心疾患や脳血管障害などを誘発する因子として注目されています。この中でも冠動脈石灰化は虚血性心疾患の検出や予後判定に有用であるという成績が多く報告されています。冠動脈石灰化は粥状動脈硬化のプロセスで生じ、正常血管壁には生じないと考えられています。従って、冠動脈石灰化を評価する意義は冠動脈硬化の存在とその重症度を評価することにあります。

マルチスライスCT(MDCT)を用いた冠動脈石灰化の検出及び測定は、造影剤を使用せずに比較的容易に短時間で検査が可能であり、X線の被爆という点を除けば、患者さんに苦痛を与えることなく施行できます。生活習慣病の予防と治療においては、動脈硬化の進展予防が重要であり、冠動脈硬化の一指標である冠動脈石灰化の測定は、動脈硬化の進展の程度の把握と虚血性心疾患の予防への動機づけに有用であると考えられます。したがって、糖尿病、高血圧、脂質代謝異常症、慢性透析の患者などを基礎疾患に持つ方々に検診の一環として冠動脈石灰化の測定を行うことは重要であると考えています。

また、ADLが低下し日常生活で虚血発作が誘発されにくく、無症候性虚血も多数存在する超高齢者患者にも、非侵襲的に簡便に低リスク患者群と高リスク患者群を同定できる冠動脈石灰化の測定は非常に有用と考えています。残念ながらMDCTには石灰化部位が冠動脈狭窄部位とは必ずしも一致せず、また、脂質が豊富で不安定な非石灰化プラークの検出などに課題を残しています。しかし、一般に冠動脈石灰化量(CACS)は冠動脈硬化重症度と相関するといわれており、CACSを算出することによって将来的な心血管事故の危険性を推定することができます。なお、冠動脈の狭窄部位の精査については、石灰化が高度な症例では造影剤を使用する冠動脈CTAより冠動脈造影法で確かめる方が良い場合もあります。

いずれにしても、虚血性心疾患の評価目的として冠動脈石灰化の測定をお勧めします。興味あれば一度循環器科の医師に相談して下さい。

 

図1 MDCTでの冠動脈石灰化
MDCTでの肝動脈石灰化

 

図2 冠動脈石灰化についてのコンセンサス
肝動脈石灰化についてのコンセンサス


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神経伝導検査-神経障害の検査-

(この記事は2009年9・10月号の西陣病院広報誌『西陣病院だより』に掲載したものです)


臨床工学検査科 山下奈々
 
 

手がしびれることはありませんか?

手のしびれをおこす疾患の一つに「手根管症候群」という病気があります。この病気の原因は正中神経にあります。正中神経は、頚椎から肩・肘を通り手首のあたりで手根管とよばれるトンネルを通って指先まで走っています。このトンネル内で神経が圧迫されることにより、しびれを起こします。

このしびれは「手根管症候群」の主な症状です。進行すると、しびれが痛みに変わり、「筋肉のやせ(萎縮)」・「指先の動き」が悪くなったりします。手のしびれは親指~薬指の4本にみられ、特に親指・人差し指・中指に強い症状がみられます。小指は別の神経(尺骨神経)に支配されているため、しびれません。

しびれや痛みの症状は夜間・早朝に強くなるのが特徴です。女性に多く、家事などで手を酷使すると発症してしまうこともあります。また、腎不全(長期透析)・糖尿病・リウマチ・自己免疫疾患などと関連して生じることが知られています。

手根管症候群を診断する手段として神経伝導検査という検査があります。

神経伝導検査では親指の付け根の筋肉(短母指外転筋)に電極を貼り付け、手首とひじを電気で刺激し、電極から波形を記録、電気の伝わる速さなどを測定します。測定した値と描出された波形から神経障害の有無やその程度を知ることができます。

「電気で刺激する」というと怖く思われますが、低周波マッサージのようなピリピリ程度です。人によっては少し痛く感じる場合もありますが、痛みが残ることはありません。検査にかかる時間はおよそ30 分程度です。

今回は「手根管症候群」を取り上げましたが、その他にも手だけでなく足にもしびれを起こす病気はあります。気になる方は一度、末梢神経外来(木曜・午後のみ・予約制)または整形外科外来を受診されてみてはいかがでしょうか?


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