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変形性膝関節症に対する人工関節手術について

(この記事は2009年3・4月号の西陣病院広報誌『西陣病院だより』に掲載したものです)


整形外科 副部長 青盛克裕


変形性膝関節症とは

 年齢とともに、膝関節の滑りをよくしクッションの役割をはたす軟骨がすりへり、骨と骨が直接こすれ合い変形するために、膝に痛みや腫れなどが生じる病気です。

 女性に多く、65歳以上の方の約20%に起こり、国内では毎年90万人が発症していると言われています。原因は主に関節軟骨の老化と考えられます。

 あまり進行していない場合や、変形が膝関節の一部にだけ認められる場合は手術を行わない保存療法、あるいはほかの手術方法で症状がよくなりますが、破壊が進行した場合、人工膝関節を入れる手術を行います。


人工膝関節置換術

 人工膝関節は、生体材料(人の体の中に入れて問題ないもの)であるコバルトクロム合金、チタン合金、セラミックや超高分子ポリエチレンで作られています。大腿骨(太ももの骨)、脛骨(すねの骨)の破壊した関節面を切除して合金製の部品をはめ込みます。金属と金属が直接接触して傷がつき、細かい金属粉が出ないように金属と金属の間には超高分子ポリエチレンを挿入し、膝がなめらかに動くように工夫されています。膝蓋骨(お皿の骨)の関節面には超高分子ポリエチレンをはめ込みます。

 手術時間は通常2時間程度です。手術には感染を予防するため、特別なクリーンルームを使用したり、宇宙服のような滅菌されたマスクをつけて行います。

 ほとんどの患者さまは術後3週間以内に杖を使って歩くことができます。ほとんどの場合、痛みやこわばりが解消し、多くの日常的な動作ができるようになります。入院期間は約1ヵ月程度です。

 入院中に、退院後の日常生活動作、特に、入浴、階段昇降、畳での生活、トイレ動作について訓練します。

 退院後は、定期的に外来受診していただき、問題がないかチェックを行います。退院後は、手術前にできたことはほぼでき、自転車や車の運転は退院後数ヵ月でできるようになりますし、水泳やサイクリング、またゴルフやハイキングなどの山歩きもできるようになります。

 人工膝関節は膝関節の変形した患者さまに多くの恩恵をもたらしますが、長い年月が経過すると緩みが生じ、入替え(再置換)の手術が必要となる場合があります。しかし、再置換手術を受けることになっても、ほぼ元通りに復帰することが可能です。また手術の合併症として、わずかですが、感染、血栓症などの危険性もありますので、ひざの痛みでお困りの方は、手術について、専門の医師によく相談されることをおすすめします。

変形性膝関節症のレントゲン写真

変形性膝関節症1     変形性膝関節症2

人工膝関節置換術後のレントゲン写真

人工膝関節置換術後1     人工膝関節置換術後2

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LDLコレステロールについて

(この記事は2009年3・4月号の西陣病院広報誌『西陣病院だより』に掲載したものです)


臨床工学検査科 副主任 松田英樹


コレステロールについて

 皆さんは、コレステロールをご存じでしょうか。

 コレステロールは脂質の一種です。生命維持に必要な役割を果たす物質で、以下の働きがあります。

・男性ホルモン、女性ホルモンを作る材料となる
・細胞を包む膜(細胞膜)を作る
・栄養分の分解吸収をする

 コレステロールは食べ物からも摂り入れられますが、必要量の約7~8割が肝臓で作られ、食べた量に合わせて血中コレステロールが一定に保つよう調整されています。このコレステロールを肝臓から身体の細胞に運ぶものをLDL(悪玉コレステロール)といいます。悪玉といいますがコレステロールを体内へ運ぶ大切な仕事をしています。ただし、活性酸素によって酸化された悪玉コレステロールが要注意で、それが血管の壁にくっついて、内壁をどんどん硬く厚くし、狭くしていくのです。これが動脈硬化です。


閉塞性動脈硬化症(ASO)とは

 動脈硬化が進むと、動脈の血管は硬くなったり狭くなったりします。

 特に、足での動脈硬化が進み、足の血管が狭くなったりふさがったりすると、血液の流れが悪くなって、足の先の方まで栄養や酸素を十分に送る事が出来なくなってしまいます。足が冷たい、しびれる、ふくらはぎの筋肉がつる、痛むなどの症状が出てきます。

 このような症状を閉塞性動脈硬化症(以下ASO)といいます。症状の出現部位は腰の部分から足先までありますが、最も多く出現する部位はふくらはぎです。この部位にASOが起きると、足先にチアノーゼ(血液の酸素濃度が低くなり皮膚が紫色になること)・潰瘍が起きやすくなり、最悪の場合、壊死するケースがあります。

 ASOの治療は、症状の進行状況に応じて薬物療法や外科的治療が用いられますが、薬物療法で十分な効果が得られず、外科的治療が難しい場合には、動脈硬化の原因の一つとされる血液中のLDLコレステロール(悪玉コレステロール)などを除去する目的でLDL-アフェレーシス療法を行います。


LDL-アフェレーシス療法とは

 「アフェレーシス」とは、患者さまの血液中の不必要な成分を取り除いて、きれいにした血液を再び患者さんに戻すことです。

 LDL-アフェレーシス療法は、専用の機械を用いて体から血液を取り出し、吸着器でLDLコレステロール(悪玉コレステロール)を取り除きます。きれいになった血液はすべて体に戻されます。治療時間は、症例によりますが約3時間程度で、治療効果を診るために動脈硬化検査や採血等も行います。LDL-アフェレーシス専用機器

 ASOの患者さまで、なおかつ一定の条件を満たす場合にLDL-アフェレーシス療法が保険適応となりますが、治療期間は3ヶ月間で10回までとなります。

 当科では、医師の指示のもとに、LDL-アフェレーシス療法の準備・設定・治療・管理を行っております。

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私たち薬剤科の仕事

(この記事は2009年3・4月号の西陣病院広報誌『西陣病院だより』に掲載したものです)

薬剤科科長 三宅健文

 今回は、薬剤科について紹介します。

 私たち薬剤科(現在、薬剤師は10名)の仕事はもちろんクスリに関するすべての事。最近クスリの進歩はめざましく、いろいろな病気を治療する上でとても大切なものとなってきています。患者さま一人一人に最も適したクスリが効果的かつ安全に使われ、質の高い薬物治療が行なえるよう、医師や看護師など他のスタッフと連携をとり業務を行なっています。

 業務の中心は、入院患者さまが服用するクスリの調剤や監査業務、中心静脈栄養療法時の注射薬混注業務、薬剤管理指導業務(患者さまへのクスリの情報提供を行なったり、クスリに関するご相談をお受けするとともに、クスリを効果的に使用する上で必要なお話を伺ったりしています)などですが、入院患者さまだけではなく、外来患者さまや地域の方々に糖尿病教室や透析教室など各種健康教室でもクスリの話をしています。また、次世代の薬剤師を研修・教育するために、入院薬局や病棟において薬学部の大学院生や4回生を対象に、実務研修や実習なども行なっており、新しい薬学教育6年制の薬学部生も受け入れるため現在準備を進めています。

 今年で処方箋を院外に発行してから10年目になります。外来患者さまに対しては、お目に掛かることが少なくなってしまい、少し寂しい思いをしていますが、近隣の保険薬局とも連携を取りながら、適正にクスリが使用できるよう努力しています。クスリに関して疑問・不安等があれば遠慮なくいつでも声をおかけください。

 最近の薬剤科では、専門的な分野にも力を入れています。ひとつは、糖尿病治療に関する専門としての『糖尿病療養指導士』が2名います。ふたつめは、厚生労働省が推進している“がん均てん化(どこの施設でも同じようながんの治療が受けられる体制)”に伴い、1名の『がん薬物療法認定薬剤師』がいます。最後に、入院患者さまの栄養に関するサポートを行なうため専任の『NST専門(薬剤師)療養士』が1名います。まだまだ至らないところも多いと思いますが、クスリを通じて患者さま一人一人の身近な存在として日々業務を行なっていけるよう精進して参りたいと思いますので宜しくお願い致します。

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自宅でおこなう透析 ~腹膜透析(PD)について~

(この記事は2009年1・2月号の西陣病院広報誌『西陣病院だより』に掲載したものです)

泌尿器科 医長 小山正樹

 さまざまな原因で腎臓の働きが除々に悪くなる病気を、慢性腎臓病(CKD)といい、日本では、成人の25人に1人は慢性腎臓病の疑いがあると言われています。腎臓病が進行すると、透析治療が必要となります。透析患者の増加には、糖尿病などの生活習慣病の増加や高齢化社会の影響が大きく、平成17年末現在では、25万人を超える人が透析治療を受けておられます。これは国民の約500人に1人にあたります。

 透析療法には、血液透析(HD)と腹膜透析(PD)という方法があります。それぞれ特徴がありますが、腹膜透析の大きな利点としては、在宅でできることにより透析前の生活スタイルを大きく変えることなく始められることや、ゆっくりと24時間連続した透析治療であることにより、体にやさしく、透析導入時に残っている腎臓の機能をより長く保てることなどがあげられます。

 腹膜透析は、自分の体の中の腹膜を利用して血液をきれいにします。お腹の中に透析液を一定時間入れておくと、腹膜を介して血液中の余分な水分や老廃物が透析液側に移動します。その老廃物や水分を含んだ透析液を体の外に出すことで血液をきれいにします。

 また、腹膜透析には、CAPDとAPDの2種類があります。CAPDは日中に4回ほど透析液を交換して治療します。交換は日常生活の中で行います。自宅だけでなく職場や学校などでも行えます。APDは就寝中に機械を使用して、透析液の交換を自動的に行う治療です。また、CAPDとAPDを組合わせることもあります。

 腹膜透析を行ううえで透析液を交換するためのカテーテルと呼ばれるチューブをお腹に埋め込む必要があります。カテーテルは、お腹よりやや下の左ないし右のお腹より出ています。カテーテルの出口は、特別な消毒はいりませんが、一日一度は石鹸とシャワーによる洗浄が必要です。入浴にはカバー材を貼り付けて入る必要があります。

 腹膜透析は、自分の腹膜を使って透析を行いますので、腹膜の動きが弱くなってきたら、いずれ血液透析に移ることが必要になってきます。また、長期間腹膜透析を行うとお腹の中の腸管が癒着することがありますので、5から7年で腹膜透析から血液透析に移ります。

 腹膜透析は、病院で行う治療でなく、自宅で行いますので、自分でおこなう必要がありますが、病院で十分な教育を受けてから、退院しますので自宅では自分でできるようになります。高齢者の方の場合には、介護者がおこなうことにより、高齢者だからといってできない治療ではありません。通院の回数が少ないので、高齢者にとって適している治療とも言えます。当院での腹膜透析患者さんの通院は、2週間に1度の通院で、月に2回のみの通院回数です。当院では、腹膜透析外来は、水曜日午後におこなっております。

 残念ながら腎不全が進行し、透析療法が必要になられる方で、血液透析および腹膜透析について詳しくお話をお聞きしたい患者さんがおられましたら、当院泌尿器科にご相談下さい。
腹膜透析(PD)ってなに? 腹膜透析のしくみと特徴

腹膜透析(PD)のしくみ

 お腹の中に透析液を出し入れすることで、体の余分な水分や老廃物を取り除きます。
 お腹の中に透析液を一定時間入れておくと、腹膜を介して血液中の余分な水分や老廃物が透析液側に移動します。その老廃物や水分を含んだ透析液を体の外に出すことで血液をきれいにします。

治療の特徴腹膜透析

●通院は月2回程度です。
 自宅や職場、学校でも可能ですので、社会復帰に有利で、生活スタイルにあわせた治療が行えます。
●治療は自分で行えます。





(画像はクリックすると大きく表示されます)

この記事の画像は、NPO法人腎臓サポート協会の許諾を得て転載しています。
(出典:NPO法人腎臓サポート協会「自宅でできる腹膜透析(PD)[腎栓の治療]」より転載)。

| Copyright 2009,01,01, Thursday 09:00am administrator | comments (x) | trackback (x) |

 

七草粥は漢方の知恵

(この記事は2009年1・2月号の西陣病院広報誌『西陣病院だより』に掲載したものです)

薬剤科科長 三宅健文

 七草粥は、お正月休みの食べ過ぎ、飲み過ぎで疲れた胃を優しくいたわってくれる7種類の薬草粥です。春の七草の行事は「正月の七日に春の七草を摘み、これを神前に供えてから食べれば、その年は病気にかからない」という考えで、もともとは中国から日本へ伝わりました。

 正月7日(人日)、3月3日(桃の節句)、5月5日(端午の節句)、7月7日(七夕の節句)、9月9日(重陽の節句)を合わせて五節供と呼び、その中の1月7日を過去1年の厄払いとこれからの1年の無病息災と招福を祈願する「人日(じんじつ)の節句」とし、この日には、万病除けと邪気払いに良いとされる7種の野菜や雑草を入れた粥に餅を入れた七草粥を食べる習慣があります。

 たくさんある春の若草のなかで、この7つが選ばれたのはなぜか。じつは、定説はなく、和歌に詠われたことから広まったと言われています。「せり、なずな、ごぎょう、はこべら、ほとけのざ、すずな、すずしろ、これぞ七草」鎌倉末期の四辻左大臣が詠みました。

 本来、お正月に食べる七草粥は「7種類の草の粥」ではありませんでした。日本で、1月7日に春の若菜を粥にして食べる風習が始まったのは、平安時代とされています。1月7日は、都びとの位が上がる日だったので、「名(な)を成すために、菜(な)を食す」という縁起かつぎだったという面白い説もあります。

 当時は、セリ、ナズナ、ゴギョウ、ハコベラ、ホトケノザ、スズナ、スズシロ=七草粥とは、まったく決まっておらず、草以外にも木の実や海草など多彩に入れていたようです。「いろいろ、もろもろ、あれこれ、たくさん」という意味合いで、7という数字を使っていたのです。7はなんといっても吉の数字。ラッキーセブンですから。

 春の七草を使った七草粥のエキスには、弱った胃腸を助けて食欲を増進する。という効果の他に、糖尿病の合併症を防いだり、活性酸素を除去する働きがあることが医学的に報告されているそうです。まさに「医食同源」を考えた漢方の知恵と言えるでしょう。

 1.セリ(芹):七草粥
   効能/健胃・食欲増進・解熱・利尿・去痰など
 2.ナズナ 別名「三味線草」:
   効能/止血・消炎・鎮痛・利尿・解熱・下痢止めなど
 3.ゴギョウ(御形) 別名「母子草」:
   効能/せき止め・去痰・扁桃腺炎・利尿など
 4.ハコベラ 別名「はこべ」:
   効能/利尿・乳汁分泌促進・歯痛・消炎など
 5.ホトケノザ キク科の「コオニタビラコ」:
   効能/健胃・食欲増進・歯痛など
 6.スズナ(現在のかぶを指します):
   効能/消化促進・解毒・せき止め・そばかすなど
 7.スズシロ(現在の大根を指します):
   効能/消化促進・せき止め・去痰・利尿など

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