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女性と泌尿器科

(この記事は2008年9・10月号の西陣病院広報誌『西陣病院だより』に掲載したものです。)

泌尿器科医師 奥原紀子

 当院では、腎臓病の方のための血液透析を主として泌尿器科が担当しており、5人の泌尿器科医が常勤しています。もちろん透析だけではなく、一般的な泌尿器疾患の診療も幅広く行っています。

 では泌尿器科と聞いてイメージされることはどんなことでしょうか。男性だけが受診する診療科のように思ったり、性病を主体に扱ったりするようなイメージ(偏見です!)をもたれたり…そんなことも多いのですが、実は女性にもなじみの深い診療科なんです。

 というわけで、今回は女医による、女性のための、女性泌尿器科の紹介です。

 トイレが近くて心配でおちおち外出できない。おしっこのことが心配で長時間のバス旅行に安心して行くことができない。夜中何度もトイレに行かなくてはならずにゆっくり寝られない。こういった悩みを抱えている女性は実はとても多いのですが、恥ずかしいから、年齢のせいだからとあきらめていたりするようです。確かに、男性医師には少し相談しづらいかもしれませんね。

 恥ずかしいからなどの理由で受診をせずに我慢をしている「隠れ」患者さんが特に多いのが尿失禁です。

 実は、40歳以上の女性の40%が尿失禁の経験があるといわれています。おしっこが漏れないように尿道を支える筋肉が、妊娠・出産で傷んでしまうため、重い荷物を持ったり、くしゃみをしたはずみに尿が漏れる「腹圧性尿失禁」になりやすいのです。治療には骨盤底の筋肉を鍛える体操や、薬の内服、手術などがあります。手術は数日の入院で可能で、合併症も少なく、治療効果も高いため、今後はさらに広まっていくものと考えられます。

 「腹圧性尿失禁」のほかには「切迫性(せっぱくせい)尿失禁」というものもあります。これは突然強い尿意がおきて、トイレまで走っていかなくてはならなかったり、間に合わずに漏れてしまったりするものです。このような症状で悩む方が多いことが近年注目されて、新しい薬が開発されてきています。

 そのほかに女性になじみの深い泌尿器科疾患は膀胱炎でしょうか。女性は一生のうちに-度か二度は膀胱炎になるといわれています。というのも女性は尿道が男性より短く、外部から細菌が侵入しやすい構造になっているため、膀胱炎になる確率が男性よりずっと高いのです。膀胱炎は内科でも治療していただけますが、-年のうちに何度も膜胱炎を繰り返すような方は、背景にほかの疾患が隠れていることもあります。一度泌尿器科での精査をお勧めいたします。

 また女性も当然のことですが膀胱癌、腎癌になることがあります(泌尿器科の癌で女性がかからないのは前立腺癌です。女性は前立腺がないですから。)どんな癌にでも言えることですが、癌の治療で-番大切なことは、早期発見・早期治療です。早くに見つかれば、癌は完全に治すこともできる病気なのです。逆にいえば、見つかるのが遅かったがために手遅れになることもあるわけです。血尿など気になる症状がある方は、早めの受診をお勧めします。

 この秋から外来を担当させていただくことになりました。これまで恥ずかしくて泌尿器科を受診できなかった方や、上記のような症状はあるもののどこに相談したらいいか分からなかった方、ささいなことでも構いませんのでご相談くだされば幸いです。

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心臓超音波検査の紹介

(この記事は2008年9・10月号の西陣病院広報誌『西陣病院だより』に掲載したものです)

臨床工学検査科 主任 光岡敏明

 心臓超音波検査とは人の耳には聞こえない高い周波数の音(2.5~10MHz)を利用した検査法で、体表面から心臓の動きや、大きさ、血液の流れを描出、計測することにより客観的な心機能評価が出来る検査です。通常、心エコーと言われています、検査に用いられている超音波は安全で痛みも無く、副作用もないので繰り返し検査が可能です。

検査の目的
心臓はポンプの役割をしている臓器で、全身に血液を送っている左心房、左心室、肺に血液を送っている右心房、右心室の4つの部屋と逆流を防ぐ4つの弁(大動脈弁、僧帽弁、三尖弁、肺動脈弁)から成り立っています。これらの形や大きさ、機能が保たれているか、異常血流が無いかを観察する事により、種々の心臓病(心臓弁膜症、先天性心疾患、心筋梗塞、心不全、等)の診断や重症度の評価、経過観察、治療方針、治療効果の判定など幅広い目的で検査を行います。また、手軽に検査が行えるため検診やドック等の循環器疾患のスクリーニング検査としても有用です。

お体に当てる筒状のもの
プローブ(超音波を送受信する部分)と呼んでいます。超音波検査では検査部位や用途に応じてこのプローブを使い分ける必要があります。超音波の周波数が高ければ分解能の良い画像が得られますが、超音波の減衰も大きくプローブから遠い部分の画像が不鮮明になります。心エコーの場合は2.5~5MHzのセクタ型というプローブを使用します。セクタ型プローブは浅部の視野は狭いのですが、深部にいくにしたがい扇状に広がり肋間から心臓を観察するのに適しています。また心臓の動きをリアルタイムに観察することが出来ます。

検査方法
検査時は大きく胸をだして仰向けか左側臥位になっていただきます。手と足に心電図の電極も付けさせていただきます。超音波の通りを良くするため、胸の一部に検査用のジェルを塗り、部屋はやや暗くして検査を行います。

検査時間
1人15分~30分程です。心疾患により計測や観察するところが沢山ある場合や、肥満、やせすぎ、肺疾患等で心臓が見えにくい場合では更に時間がかかることがあります。

心臓超音波検査を受けられる患者様へ(生理検査室より)心臓超音波検査
● 検査による痛みはありませんが、プローブを胸に強く押し当てた時に痛みを感じることがありましたら、検査担当者にお伝え下さい。
● 検査は胸を大きく出してもらいますので身軽な服装でご来院下さい。
● 腰痛等で長時間横向きの姿勢がとりにくい方、検査中に気分が悪くなられた方、トイレに行きたい、寒い等があれば検査担当者にお伝えください。
● 検査結果の説明は原則として行いません。検査結果の説明は担当医よりお聞き下さい。

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あなたの足は健康ですか?

(この記事は2008年11・12月号の西陣病院広報誌『西陣病院だより』に掲載予定の記事です)

透析センター フットケア委員 西村陽子

人の身体が成長していく中で、「歩けるようになること」は、とても重要な過程です。五体満足であれば「歩くこと」はごく当り前で、あまりにも日常的なことであるため、「歩けなくなったら…」ということを考える機会はあまりないことです。
糖尿病、高血圧といった生活習慣病により、足の末梢血管の動脈硬化が進みます。そこに老化・喫煙・飲酒などといった因子が重なり、症状が重篤化していく場合があります。小さな傷を「いつか治る」「痛くないから大丈夫」と何も処置もせずにいると、その傷は徐々に大きくなり、潰瘍ののちに壊死となり足を切断しなければならないといった状態になってしまいます。

フットケア

そうならないためにも、日頃から自分の足を診てあげましょう。見るといっても、どこをどのように見たらいいのか分からない人もおられますよね。そこで、見るポイントと注意点をお話します。
一つ目は水虫です。有名なのは指の間が、ジュクジュクして痒くなったりしてくるものです。(写真左)しかしそれだけではありません!足の裏がカサカサしてきたりするのも、水虫が原因によって起こるものもあります。(写真右)足の裏が見られないという方は、手鏡を使うと見やすいですよ。

趾間型白癬角質増殖白癬








二つ目は巻き爪です。巻き爪は履いている靴の種類、爪の切り方で起こっていきます。

巻き爪
巻き爪にだからといって、自分で処置をしないでください!
傷口から感染する危険がありますので、必ず医師にご相談ください。



「足を見る暇がない」「習慣がない」と思う方もおられると思いますが、日常生活の中で足を見る機会はいくつかあります。靴下をはいたり、脱いだりするとき・お風呂に入って体を洗うとき・お風呂からあがって体を拭くとき、あとそれ以外でも意識はしていなくても自分の足を見ているときはありませんか?

日頃足を見ていることで、いつもと違う変化に気づくことにつながり、足病変の早期発見につながります。まずは、自分の足を診ることから始めましょう。

気になる点や、足の症状でお困り事があれば、主治医または看護師にご相談ください。

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がんによる有痛性骨転移の疼痛治療について

(この記事は2008年9・10月号の西陣病院広報誌『西陣病院だより』に掲載したものです)

化学療法外来 がん治療認定医 宮垣 拓也(外科)

 骨に転移したがん(骨転移)は、骨を徐々に壊すなどして痛みを引き起こします。こうした痛みを取り除く方法には、転移した部分の骨を切除する手術や体外から照射する放射線治療、骨転移の進行を抑える薬や鎮痛剤、抗がん剤の治療などがあります。
 ただし、、骨転移は広がり、数も多くなると、手術や放射線の体外照射での対処が難しくなります。鎮痛剤や抗がん剤なども、量を増やせば胃腸障害、吐き気、眠気などの副作用が大きくなる恐れがあります。こうした多発骨転移の新たな対処方法が、2007年11月新たに保険適用になった「ストロンチウム-89」という放射線を発する薬の注射です。

 当院でもがんの多発骨転移の痛みに苦しまれる患者さんに対して、「ストロンチウム-89」(商品名:メタストロン注)による疼痛治療を本年5月より開始しました。京都府内ではこの薬品が使用できるのは当院を含めて4施設のみです(平成20年5月現在)

ストロンチウム89放射性医薬品「メタストロン注」とは

 メタストロン注(一般名:ストロンチウム-89)は物理学的半減期50.5日のベータ線(放射線)を放出する核種(アイソトープ)であり、同族体のカルシウム(Ca)と類似した体内動態を示すことから、骨転移病巣など骨の代謝の活発な部位に選択的に集積する特徴があります。したがってこのお薬が骨転移病巣に多く集積することから、そこから放出されるベータ線により骨転移による疼痛緩和効果をもたらします。





(画像はクリックすると大きく表示されます)

 このような特徴から、放射線治療の内用療法として使用され、標準的鎮痛薬では除痛が不十分で、外部放射線照射治療が適応困難な多発性骨転移における骨性疼痛の緩和に適しています。

 欧米では放射線内用療法剤として前立腺がんや乳がんなどの骨転移による疼痛緩和に広く用いられており、現在、世界41カ国で承認され使用されています。
また、ストロンチウム-89から放出されるベータ線(放射線)は透過性が低く、治療を受ける患者様も不必要な放射線被ばくを受けず、医療スタッフや家族などの周囲の人にも影響を及ぼしません。
放射性医薬品の使用については医療法その他の放射線防護に関する法令関連する告知及び通知により厳重に管理することが義務付けられおります。当院は1985年民間病院でははじめて、国内でも8番目にPET装置を導入しており、これらの放射線医薬品の安全な取り扱いに精通している放射線科医、スタッフが多数居りますので、ご安心して受診ください。

 我々はがんの痛みに苦しまれている患者さまに対してこのような放射線療法のみならず、つらい症状を少しでも緩和する手術療法、鎮痛薬・鎮痛補助薬や抗がん剤等をバランス良く投与する薬物療法など、全ての治療法の長所短所を加味した上、病態が違う個々の患者さんにとって何が一番いいのか常に考えながらそれらの治療法を組み合わせ、患者さんの痛みに対して奢らず真摯に対応する気持ちを大切に治療にあたっておりますのでいつでもお声をかけて下さい。


受診について

 ・詳細については担当医師 福本(外科)よりご説明させていただきます。
  一度お電話ください。

   連絡先: 地域医療連携室
       電話 461-8800(代)
       FAX 465-7327

 ・最初の紹介時に持参していただきたいもの
    診療情報提供書
    骨シンチグラフィ(最近撮影されたもの)
    血液検査データ
 ・初回診察時には本人さまだけでなく、出来れば家族の方も一緒に来院ください。


適応について

 本治療を行うには、以下のすべての基準を満たすことが必要です。
 ・組織学的及び細胞学的に固形がんが確認されていること
 ・本薬投与前に骨シンチグラフィで多発性骨転移が認められること
 ・骨シンチグラフィの取込み増加部位と一致する多発性疼痛部位を有すること
 ・非ステロイド性抗炎症薬(NSAID)やオピオイド及び従来の鎮痛補助剤では疼痛コントロールが不十分であること
 ・外部放射線治療の適応が困難な状況であること
 ・本薬の臨床的利益が得られる生存期間が期待できること
 ・十分な血液学的機能が保たれていること

有痛性骨転移における非観血的疼痛緩和法
有痛性骨転移における非観血的疼痛緩和法

(クリックすると画像が大きくなります)


前処置および投与後の患者さま・家族の方への説明(骨の痛みの治療Q&A 参照)

 ・本薬投与前後において、骨髄の働きを調べるため定期的に血液検査をします。
 ・本薬投与前2週間はカルシウム剤を使用しない。
 ・この薬の副作用で骨髄の機能が低下し、以後の治療に影響が出る場合があります。
 ・本薬投与後一過性に痛みが増強することがあります。
 ・骨髄機能を低下させる抗癌剤治療は本薬投与前後の一定期間はさける必要があります。
 ・妊娠している方や妊娠の可能性がある方は投与できません。
 ・患者様の周囲に居られる方が放射線に被ばくすることはほとんどありませんが、血液や排泄物などの取扱いには注意が必要です。最初の診察時には本人およびご家族や介助される方には説明いたします。
 ・本薬は抗腫瘍効果を示す明確な証拠はないため骨転移部位の腫瘍に対する治療を目的として使用できません。


 がんの痛みに苦しまれる患者さんおよび患者さんを支えておられるご家族・先生方や看護師さんの、少しでもお役にたてるよう、当院では小冊子『がんの痛みのコントロール』・リーフレット『がんの痛みのことがわかる本』を作成、配布しております。 

冊子「がんの痛みのコントロール」の紹介
リーフレット「がんの痛みのことがわかる本」
  
続き▽

| Copyright 2008,07,16, Wednesday 03:00pm administrator | comments (x) | trackback (x) |

 

多量飲酒のもたらす病気

(この記事は2008年7・8月号の西陣病院広報誌『西陣病院だより』に掲載したものです)

内科医長 金光大石(だいすけ)

 身体に負担をかけない適正飲酒量というのをご存知ですか?

 お酒に強い人と弱い人との差は、アルコールを代謝する力の体質的な差に原因があります。

 体内に吸収されたアルコールは肝臓に運ばれ、アルコール脱水素酵素によってアセトアルデヒドという物質に分解されますが、このアセトアルデヒドを代謝・分解する能力は遺伝的体質によって違います。アセトアルデヒドは強い毒性物質で、体内に多く残ると気分不良や二日酔いの原因になります。

 総じて、日本人は欧米人と比べてこのアセトアルデヒドを代謝・分解する能力が弱いとされています。日本人の場合の適正飲酒量は、日本酒では1合(=180cc)と言われています。お酒に含まれるアルコール量は、お酒の種類によって違いますが、日本酒1合に含まれるアルコール量は23gで、アルコール量から他のお酒に換算すると、ビールでは大びん1本、あるいは350mL缶1.5本、焼酎ではコップ1杯、あるいはお湯割り2杯、ウイスキーではシングルロックで2杯、ワインではクラス2杯に相当します。お酒は飲酒回数を重ねて訓練すれば強くなるわけではありません。お酒に対する強さ、弱さというのは体質で変わらないのです。

 適正飲酒量を超えた多量飲酒は様々な病気の原因となります。肝臓では肝細胞障害の原因となり、肝臓の繊維化が進行すると最終的には肝硬変となります。肝硬変になると全身倦怠感、食欲低下、腹部膨痛感等の症状が慢性的にみられ、病気がある程度進行すると、全身の浮腫(むくみ)、腹水、黄痘、食道静脈癌(食道の血管にこぶができ、破裂すると大量出血を来たします)などの症状がみられるようになります。

 また、膵臓でも膵臓の細胞を障害し、急性膵炎、慢性膵炎のどちらの原因にもなります。急性膵炎では基本的に絶飲食、点滴治療の入院治療が必要となり、重症例では死亡することもあります。慢性膵炎では慢性的な上腹部痛、背部痛を生じ、さらに病状が進むと、消化吸収不良による下痢、体重減少、糖尿病の合併がみられるようになります。以上のような肝臓病、膵臓病だけでなく、アルコールは胃腸や神経にも障害を及ぼします。いずれにしても、アルコールで起こる病気はQOL(Quality Of life:生活の質)を大きく下げてしまいます。楽しく飲むはずのお酒で大切な健康を害する事がないように、くれぐれも適正飲酒量を超えないように注意しましょう。

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