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麻酔科は手術患者さまの全身を管理

(この記事は2006年3・4月号の西陣病院広報誌『西陣病院だより』に掲載したものです)


麻酔科 岡山 容子

 麻酔科とはどんな科かをご存知の方はあまり多くないと思います。「麻酔科なんだから『麻酔』するんでしょ?」そうです。ですが、『麻酔』するだけで終わりでもないのです。

 西陣病院には麻酔科外来がありませんので、あまり患者様と接する機会も多くないのが現状です。ここで麻酔科について書く機会を頂きましたので、宣伝させていただきたいと思います。少々お付き合いください。

 西陣病院で行っている手術中の麻酔管理についてお話します。怪我や病気を手術により治そうとするとき、外科医はその手術の術野だけに集中できることが理想です。術野以外の患者さんの体全体、例えば血圧、脈拍、体温、尿量、血糖値などのことについて気にしながら手術をするのはとても困難です。

 ですが、実際にはもともと高血圧があったり、心不全があったり、人工透析を受けている方であったり、患者様は全くの健康体の方ばかりではありませんから、手術中にも患者様の状態に気をつける必要があります。

 また、健康に自信のある方でも、術中痛み止めが効いていなければ血圧や脈拍は上がりますし、出血が多ければ血圧が下がります。そういう、手術の進行以外のことに気を取られずに外科医が手術に集中できるように患者様の体の状態を安定させ、お守りするのが麻酔科です。

 外科(一般外科・整形外科・泌尿器科・眼科)の先生方は、「手術係」、そして、麻酔科は手術のために麻酔をし、そして患者様をずっと守る「患者様係」というほうが実態に近いと思っています。全身麻酔を受ける方が麻酔された後も麻酔科医は患者様のそばを離れることなく、あれこれと全身状態が安定するように気を配り、手術室を出るまでずっと患者様のそばについています。

 手術中の患者様は意識も記憶もありませんが、二人三脚の相棒として麻酔科をどうぞよろしくお願いします。

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COPDについて

(この記事は2006年1・2月号の西陣病院広報誌『西陣病院だより』に掲載したものです。武藤医師は転勤のため、現在西陣病院で外来診療はしておりません。ご了承ください)


内科 武藤 敦子


 息切れ、咳や痰が続く、動くとドキドキすることがある、なかなか動悸がおさまらない、風邪をひきやすくなった等の症状が最近ありませんか?

 最近COPDが増えています。

 COPDとは Chronic(慢性) Obstructive(閉塞性) Pulmonary(肺) Disease(疾患)、息をするときに空気の通り道となる『気道』に障害がおこり、ゆっくりと肺機能が低下していく病気です。以前は『肺気腫』や『慢性気管支炎』とされていた病気をまとめてCOPDと呼ぶようになりました。ありふれた症状で始まり、ゆっくりと進行するので、異常を感じて受診したときには重症になっている場合が多い『肺の生活習慣病』です。

 COPDの最大の危険因子は喫煙です。COPDの80~90%は喫煙が原因といわれています。他には受動喫煙、喘息症状、大気汚染、遺伝的要因等があげられます。

 はじめは風邪でもないのに軽い症状(咳や痍等)があるなどしますが、自覚症状がない場合もあり本人も気づかないうちに進行していきます。繰り返しになりますが、異常を自覚して受診するころには、すでにある程度進行しており重症になっていることが多いのです。

 一度壊れた肺胞は元に戻りません。適切な治療を受けずに放置すると、ゆっくりと肺の機能が低下していき、行動や生活が著しく制限されたり、心臓や消化器など全身に障害があらわれ、最後は呼吸不全や心不全、重い肺炎を起こします。

 COPDで苦しまないためには、予防(禁煙)と早期発見が一番です。禁煙することによってすこしでも病気の進行をやわらげることがわかっています。心当たりのある方は肺機能検査をうけて出来るだけ早く発見し、正しい治療を受けて悪化を防ぐことが大切です。

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変形性膝関節症について

(この記事は2005年11・12月号の西陣病院広報誌『西陣病院だより』に掲載したものです)


整形外科 青盛 克裕

 変形性膝関節症とは、年齢とともに、膝関節の関節軟骨がすり減って、膝の痛みと変形が来る病気です。女性に多く、65歳以上の方の約20%にあるといわれ、原因は関節軟骨の老化と考えられます。

 最初の症状は立ち上がりの時の痛み、階段での痛み、正座ができないということが多いです。その後、関節の動きが悪くなったり、時に関節に「水」がたまったりして徐々に進行します。通常、膝の関節の内側の軟骨が痛むことが多く、すり減ってきますので膝がO脚変形をして、歩行障害を来します。

 治療には保存療法 (手術をしない治療法) と手術療法があります。比較的初期の変形の軽いときは保存療法で痛みをコントロールできますが、進行すると手術を受けた方がよい場合が多くなります。

 保存療法には次のようなものがあります。

1、運動療法‥膝関節周囲の仙肋肉を鍛えることによって痛みを和らげる方法です。将来、手術を受けることになっても、そのときまでにできるだけ筋肉の力を保っておくということは重要です。

2、装具療法‥足の裏につける、外側が厚くなった中敷き(足底板)や、支柱付き膝装具なども効果が認められています。

3、関節注射‥ヒアルロン酸ナトリウムの関節内注射も徐痛効果があります。ヒアルロン酸はもともと関節液中に存在するものですが、変形性関節症ではその量が減ることが知られています。
 これを注射で補って関節の滑りをよくすることにより、痛みを取る効果があります。

4、薬物療法‥膝関節に炎症が起こり、「水」がたまったりすることがあります。そういうときは消炎鎮痛剤が有効ですが、長期に飲むと胃潰瘍などの副作用が出ることがあります。湿布などの外用薬も併用します。

 また膝関節には歩行をしているだけで体重の約3倍の力がかかるといわれており、変形性関節症の予防や進行を止めるためには、体重をコントロールすることが重要です。

 また手術療法には次のようなものがあります。

1、関節鏡視下手術‥軽度から中程度の症例に適応があります。内視鏡で観察しながら半月板変性断裂部を切除したり、滑膜を切除したりします。

2、骨切り手術‥骨切りを行い、O脚の膝を矯正し、痛んだ膝内側の負担を減らす手術です。痛みを取る効果が人工関節に比べ劣り、術後リハビリにも時間がかかるなどということがあり、変形の強い患者さんの場合は人工関節の手術をお勧めします。

3、人工膝関節置換術‥傷んだ軟骨、骨を人工膝関節の形に合わせて薄く削り、金属、ポリエチレンでできた人工関節を自分の骨の上にしっかりと固定する手術です。約25年の歴史があり、日本でも年間約35000件の手術が行われています。手術治療の中で最も痛みをとる効果が高く、また変形の矯正が行え、安定した手術です。

 変形性膝関節症の診断には、レントゲン撮影などの検査が必要です。膝の痛みでお困りの方は一度整形外科専門医を受診して御相談ください。

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検尿(蛋白尿)について

(この記事は2005年9・10月号の西陣病院広報誌『西陣病院だより』に掲載したものです)


泌尿器科 小山正樹

 蛋白尿は、学校検尿、職場検尿などの集団検尿、健康診断や病院での尿検査にて発見されることがあります。正常人でも微量(80mg/日)の蛋白尿は認められますが、尿検査において「1+」以上が認められたとき、成人で1日150mg/日、小児で1日100mg/日を越える場合を蛋白尿としています。

 蛋白尿の原因は多数ありますが、すべてが異常というわけではありません。蛋白尿は病気でない生理的蛋白尿と病的蛋白尿に大きく分類されます。生理的蛋白尿は、腎に病気がないにもかかわらず出現する蛋白尿をいいます。起立や腰椎後屈によって出現する起立性・体位性蛋白尿や高熱時に出現する熱性蛋白尿などがそうです。また、激しい運動後の蛋白尿もそうです。これらの蛋白尿は治療を必要としない蛋白尿です。

 病的蛋白尿は、腎臓が原因となるものと腎臓以外が原因となるのがあります。腎臓以外が原因となるものは、血液中に異常な蛋白が大量に出現し、糸球体において濾過されて尿中に出現したものです。多発性骨髄腫、溶血に伴うへモグロブリン尿、筋肉崩壊に伴うミオグロブリン尿、あるいは白血病などの血液病において認められます。これら蛋白尿はこれらの病気の治療をおこなうことにより消失します。

 腎臓が原因の蛋白尿は、糸球体が原因であることが多いです。糸球体が障害され、糸球体の蛋白透過性が亢進して、主としてアルブミンという蛋白が尿中に漏れでるものです。糸球体腎炎、ネフローゼ症候群などがあげられます。1日の蛋白尿量、血液検査、腎臓超音波、腎生検等の検査をおこないます。腎生検は、腎臓の組織学的な病型や障害の程度を明らかにするためにおこないます。1日1g以上の蛋白尿が認められる場合は腎生検をおこなう必要があります。

 治療は薬物治療、食事療法になります。薬物治療としては、ステロイド、免疫抑制剤、抗血小板薬あるいは抗凝固薬を用います。また、合併症としておこる高血圧症、高脂血症に対して治療薬を投与します。高血圧自体が腎機能の悪化させる原因ですので、高血圧の治療は非常に重要です。130/80mHg程度の血圧が目標になります。食事療法は蛋白と塩分の制限になります。規則的な生活を送ることも大切です。過激な運動や労働は避けるのが望ましく、風邪を含めた感染症は悪化させる原因となりますので、うがいや手洗いなどの予防も大切です。

 腎臓の機能は、慢性的に機能が低下するとなかなか良くなりません。腎機能低下を防ぐためにも、どのようなタイプの蛋白尿かを判別するためにも早めに専門医のいる病院に受診し検査することをお薦めします。

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西陣病院外科の紹介

(この記事は2005年9・10月号の西陣病院広報誌『西陣病院だより』に掲載したものです。掲載時より年月が経過しておりますのでスタッフの変更等ございます。ご了承ください。)


外科部長 宮垣拓也


 当院は昭和9年に西陣地区の福祉事業施設として創設されましたが、外科の歴史は比較的新しく、本格的に稼動し始めるのは、昭和62年に中村隆一先生(昭和39年卒)が常勤医(副院長兼外科部長)として赴任されるまで待たねばなりませんでした。
以後、日本外科学会・日本癌学会等を主宰した伝統ある京都府立医科大学旧第一外科の流れを汲む消化器外科学教室の協力を得て、徐々に形を整え、10年間中村先生をサポートしてこられた北尾善孝先生 (昭和60年卒)が平成14年以降二代目部長として、ますます当科を発展さすべく頑張ってこられましたが、残念ながら平成17年の3月をもちまして退職されました。尚、両先生には現在も非常勤医として外来診療をお手伝いして頂いております。

 スタッフはこの4月から責を担うことになった宮垣拓也(昭和61年卒)、福本兼久 (平成6年卒)、高木剛(平成7年卒) と紅一点、水田有紀 (平成14年卒)の4名です。
(水田医師は平成18年3月に転勤のため現在当院では勤務しておりません。平成18年4月より中瀬有遠医師 (平成8年卒)が着任しております。)
卒後10年から20年の脂がのりきった外科医中心で、チームワークも抜群、皆ベッドサイドに張り付くことを厭わない頼もしい仲間です。

 「良い医療とは、患者さんの命を助けることなんだ。そして、臨床家をやる限りは、1年365日、1日も休まず患者さんを診続けること。例えば、金曜の夜から月曜の朝までね、休みなんかとって患者さんから目を離していたら、患者さんどんどん死んじゃうわけ…。医者が患者さんをちゃんと診ていくということが大切なんだ。」

第106回 日本外科学会会長 幕内雅敏先生の言葉です。こういったことが求められ、3Kとも5Kとも言われる外科を志願する医学生は年々減る一方ですが、我々は「現場に神宿る」ならぬ「ベッドサイドに神宿る」 の精神で日夜診療に励んでいます。

opim1 診療の中心は言うまでもなく手術。消化器癌を主に過不足のない手術を目指し、症例を選び積極的に鏡視下手術も行っています。地域柄、80歳以上の高齢者の手術も日常茶飯事(90歳を超える方も稀ではありません) で、透析患者さんの手術も多く、苦労も多いのですが、皆さんがにこやかに元気で退院されるのが何よりの喜びです。その笑顔を見ると今までの苦労も吹き飛び、外科医冥利につきます。4月以降、地域の先生方のお力添えもあり、手術症例も飛躍的に伸び、気を引き締め頑張っていきたいと思っています。また、残念ながら手術だけでは治るのが難しい患者さんも少なからずおられ、化学療法 (副作用が少なく効果的な抗癌剤治療)、緩和医療(症状コントロールをきちんとして、肉体的苦痛は勿論、精神的、社会的苦痛をできるだけ緩和していく治療) も大きな柱と考えています。

 以前、東京で日本医師会創立50周年記念大会が催されました。その中で元東大学長の森亘先生が「美しい死 品位ある医療のひとつの結果」と題して特別講演をされました。森先生は病理学が専門。「優に千を数える」解剖の体験をもとに 「必要にして十分な治療を施された遺体にはそれらが見事に反映され、それなりの美しさが感じられる」なぜか「その疾患の結末として起こるべくして起こった変化の集まりであり、大きな修飾は感じられない」からで「節度ある医療であり、品位ある医療である」「節度ある医療は、知識、技術、教養、品位を併せ持った医師によって初めて下しうる。今日の医師にはこうした高度の素質が求められている」と訴えられ、非常に感銘を受けました。

 こういった治療、手術ができるよう、個人は勿論のこと、チーム (チームとはつくづく一人の人間だと思っています) として精進して参りたいと思いますので、患者様、地域の先生方には、ご指導、ご鞭漣のほど何卒宜しくお願い申し上げます。

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