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感染制御チーム( ICT:Infection Control Team)

(この記事は2015年11・12月号の西陣病院広報誌『西陣病院だより』に掲載したものです)


副院長 柳田 國雄

 病院には多くの方が出入りされ、また入院されています。その中には感染症にかかっている方や子供さん、お年寄り、抵抗力の落ちている方などがおられます。そのような医療環境の中で感染が起きないように予防したり、院内での感染の発生をできるだけ早く発見し、拡げないように迅速に対応しているのが『感染制御チーム(ICT)』です。
 

 

 ICTは医師、看護師、薬剤師、臨床検査技師、臨床工学士など多職種から構成されており、各専門分野から知恵を出しあって、患者さんとその家族の方だけでなく、院内で働くすべての人、来院するすべての人を感染から守るための活動をしています。その活動としては、

(1)院内での感染発生動向に関する調査・報告・対応
(2)感染拡大(アウトブレイク)への迅速な調査と制御
(3)職員への感染管理教育、感染防止技術の周知・徹底
(4)抗菌薬の適正使用活動
(5)感染対策マニュアルの作成や改訂
(6)職業感染対策-職員のB型肝炎、流行性ウイルス感染症(麻疹・風疹・水痘・流行性耳下腺炎)などの抗体チェック・ワクチン接種推奨、針刺し事故対策
(7)感染症診療に関連する相談
(8)医療環境の整備
(9)地域や国内外での感染発生動向に関する情報提供(最近ではエボラ、MERS、デング熱、手足口病の流行など)
(10)感染症流行時の対応(インフルエンザ、ノロウイルスなど)

など多岐にわたっています。また、平成24年からは地域連携の感染対策として京都府立医科大学と京都市内の2病院と連携し、年4回合同でカンファレンスを行い、相互ラウンド(お互いの病院を訪問して評価し合う)なども行って感染対策業務のレベルアップを図っています。



 当病院では、すべての患者さんが病院内で新しい感染を起こさないように、医療環境の清潔を保ち、職員の感染教育を徹底し、抗菌薬の適正な使用を進めるよう努力しています。「すべての血液・体液(汗を除く)・排泄物はすべて何らかの病原体を持っている可能性があるものとして取り扱う」という標準予防策が院内感染対策の基本です。その最も大切で、簡便な感染予防手段はマスクと手洗いです。皆様にも、来院時や、病室への入退室時に意識して手洗いをお願いしたいと思います。目に見える汚れがあれば流水と石鹸での手洗い、その他は病室に備え付けの速乾性アルコール消毒剤で手を擦り合わせて手洗いをして下さい。

 しかし、そのような努力をしても抗菌薬が効きにくい、あるいは効かない菌が検出されることがあり、これらを『耐性菌』と呼んでいます。多くの耐性菌の病原性は弱いので健康な人にはあまり問題ないことが多いのですが、高齢の患者さん、抵抗力が落ちている患者さんには大きなダメージになることがあります。耐性菌の多くは、患者さん、家族、面会の方、医療スタッフなどの手を介して感染が拡がります。やはり、手洗いが大事ということです。、ICTは病院内の耐性菌の検出状況を把握し、それらが拡がらないように防いでいく努力をしています。適切な感染対策により、患者さんにとって安心な、その家族の方々や医療従事者にとっては安全な医療環境を提供できるようにこれからも努力していきたいと思います。

 今後とも皆様のご協力をよろしくお願いいたします。

 最後に、今年もインフルエンザの季節がやってきました!インフルエンザは普通の風邪とは違い、高熱や関節の痛みなどを伴い、高齢者や基礎疾患(糖尿病、慢性呼吸器疾患、抗がん剤や免疫抑制剤の使用など)のある方は重症化するおそれがあります。感染は、飛沫(くしゃみや咳)、接触(手指を介して)で拡がります。インフルエンザの感染を拡げないために、皆が「かからない」「うつさない」ことが重要です。その感染予防のためには「ワクチン接種」、「こまめな手洗い」「マスクの着用」などが重要です。インフルエンザワクチンは今季から含まれるウイルスのタイプが従来の3種類から4種類に増えました。効果が高まると考えられ、リスクの高いと考えられる方は是非接種をお願いします。

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腱板断裂について

(この記事は2015年11・12月号の西陣病院広報誌『西陣病院だより』に掲載したものです)


 整形外科 医長
 祐成 毅


 肩関節の回りには、肩を安定させて動かすために大切な腱板と呼ばれる筋肉があります。腱板は、前から肩甲下筋、棘上筋、棘下筋、小円筋の4つがあり、腱板断裂とは腱板のいずれかが切れた状態を言います。


 腱板断裂を生じる原因としては、主に外傷および加齢による変性があげられます。外傷には、転倒や転落での外力によるものから急激に腕に加えられた外力、重たいものをよく持つなど繰り返される小さな外力によるものまで含まれます。腱板の変性は40 歳頃から徐々に進行し、進みやすい生活習慣や疾患として、喫煙や糖尿病などが報告されています。

 腱板断裂を生じていても、症状のない方もおられます。ある調査では肩が痛くなったことのない50 歳以上の約20%に腱板断裂を認めたという報告もあります。しかし、病院を受診される方のほとんどは、何らかの症状を認めます。

 典型的な症状は、「肩が痛い」、「肩の動きが悪い」、「肩に力が入りにくい」の3 つです。痛みは、夜間に強くなったり、肩を動かしている途中で生じたりすることが多いですが、安静にしていても生じることがあります。

 画像診断では、レントゲン、超音波検査、MRI(図1)が有用です。特に超音波検査は、近年画質もきれいになり外来で侵襲なく簡便に行うことができますし、MRIもさまざまな撮像方法が開発され、診断能力が向上しています。当院でもそれらを取り揃えていますので、受診され必要と判断した場合は、検査を行います。

 腱板断裂は、小、中、大、広範囲と断裂の大きさによって4つに分類され、治療の方針に影響します。

 治療には保存療法および手術療法があります。一般的に、腱板が一度断裂すると断裂部位の自然治癒はなく、断裂の大きさも徐々に大きくなっていきますが、保存療法で症状が改善することもあります。痛みが強い時期には、痛みを伴う動作を禁止し、安静のために三角巾などで固定を行う場合があります。また、痛みの程度に応じて消炎鎮痛剤や筋弛緩剤、安定剤などの薬物療法、ヒアルロン酸やステロイドなどの関節内注射を行います。痛みが軽減してきますと、肩の保温につとめて頂きながら、肩を動かし、残っている腱板の筋力をつけるためのリハビリテーションを行います。保存療法で症状が改善した後も再発することが多いため、定期的に診察を受けて頂くことが大切です。

 保存療法で症状の改善がない場合や若年者、重労働者などの活動性の高い方では、手術療法が選択されます。小、中断裂に対しては、関節鏡を用いた鏡視下腱板修復術(図2)が主に行われます。1cm未満の小切開を4~5ヵ所行うだけの小さな侵襲で手術が可能です。大、広範囲断裂に対しては、関節鏡のみで対応可能な場合もありますが、多くは関節鏡を行った後、皮膚切開を1ヵ所4-5cm程度に延長して、直接腱板を見ながら修復します。修復の際、金属性あるいは吸収性のアンカーを、腱板が元々付着していた上腕骨に打ち込み、アンカーから伸びた糸を、断裂した腱板の断端にかけて縫合します。術後は、再断裂や疼痛の増強を防ぐために装具固定を行い、作業療法士によるリハビリテーションを受けて頂きます。上述した腱板の修復が困難なほど、腱板の状態が悪い場合は、手術可能な施設や適応は限られますが、平成26年から日本でも導入された人工逆肩関節全置換術(図3)を行うこともあります。

 腱板断裂は、よく知られている四十肩や五十肩と症状が似ており、様子を見て状態が悪くなる方もしばしばおられます。前述した症状がある場合は、ぜひ整形外科を受診して下さい。

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皮膚科で耳たぶへのピアスの穴あけをはじめました

(この記事は2015年11・12月号の西陣病院広報誌『西陣病院だより』に掲載したものです)


ピアス


皮膚科 部長  坂元 花景



 細菌感染の可能性もあるため、ピアスの穴開けは医療機関で行う方が安心です。

 医師が耳たぶに穴を開けます。ピアスは当院で用意している医療用ファーストピアス5種類からお選びいただきます。金属アレルギーをお持ちの方にも対応できる純チタンのピアスを使用しています(アレルギーが生じる可能性はゼロではありません)。また、耳の軟骨部や耳以外の部位への穴開けは行っておりません。未成年の方には、同意された親権者が付き添われている場合にのみ、施行いたします。ピアスの穴開け後の化膿などのトラブルは、保険で診察いたしますので御来院下さい。


ピアス

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薬の使用期限ってご存知ですか?

(この記事は2015年11・12月号の西陣病院広報誌『西陣病院だより』に掲載したものです)


安田早織 薬剤部 薬剤師 安田 早織


 食べ物に賞味期限や消費期限があるように、薬にもその品質を保証する『使用期限』が決められています。
 薬は、食べ物のように目に見えて腐敗することは滅多にありませんが、時間が経つにつれて有効成分が分解され、期待通りの効果を示さない可能性が出てきます。


薬

 市販薬の使用期限は製造から3年が目安になっています。通常、外箱・容器等に使用期限が記載されています。ただしこの使用期限は未開封のものであり、個包装されていない瓶入りの錠剤は開封後約半年、目薬は開封後約1ヶ月の間の使用にとどめるのが賢明です。

 使用期限を過ぎた薬や、いつ開封したかわからない薬は処分しましょう。1年に1回は救急箱の中身を点検して、整理することをお勧めします。


薬

 薬局や病院でもらった薬は、ほとんどの場合、使用期限の記載はありません。通常3年とするものが多いですが、なかには2年、半年といった短い期限のものもあります。

 湿気や光に弱い薬は、外装のアルミ袋から外せば使用期限内でも薬効が弱まってしまいます。特に、薬局で何種類かの薬を袋詰め(一包化)されたものは、一度開封されているため注意が必要です。湿度・温度(30℃以下、できれば15℃以下)に注意し、直射日光を避けて、乾燥剤を入れた缶等に保管しておくことをお勧めします。

 また、以前と同じ症状だから、前に処方された薬の残りを飲もうと、自分で判断することはとても危険です。症状は同じでも、その病気の原因が全く違うということもありますので、薬の調剤年月日から投与日数分までが薬の有効期限と考えるのが賢明です。

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慢性腎臓病(CKD)の治療って?

(この記事は2015年9・10月号の西陣病院広報誌『西陣病院だより』に掲載したものです)


小山先生 腎臓・泌尿器科 副部長兼
 透析副センター長
 小山 正樹

 慢性腎臓病とは自覚症状のないまま腎臓の機能がだんだん低下していく病気です。

 慢性腎臓病が進行すると、夜間尿、浮腫、貧血、倦怠感、息切れなどの症状が現れてきますが、これらの症状が自覚されるときは、すでに慢性腎臓病が進行している状態であります。また、一度機能が低下した腎臓はもとに戻りません。

 慢性腎臓病は進行していく病気ですが、その進行速度は患者さんによってさまざまです。近年、慢性腎臓病の進行を抑える方法がわかってきたことから、慢性腎臓病を早期に発見し、積極的に治療するための取り組みが日本のみならず世界中で始まっております。

 慢性腎臓病が進行し、透析療法が必要となる末期腎不全患者さんは30 万人を超え、なお増加傾向にあります。その予備軍である慢性腎臓病患者さんは、成人人口の13%、1330 万人と推定されており、慢性腎臓病は国民病と言えるほど頻度が高い疾患であります。

 慢性腎臓病があるか否かを知るためには2 つの検査があります。1 つは検尿検査です。尿に蛋白や血尿が出ていれば腎臓が傷んでいることを意味します。もう1 つは血液検査で尿に排泄される血清クレアチニン(Cre)という物資の血中濃度を測定することです。クレアチニン値は腎臓機能が悪化すれば、腎臓から尿に十分排泄されないので、血中濃度が上昇します。クレアチニン値は、年齢、性別、体重により正常値が異なりますので、これらを補正した計算式により、糸球体ろ過量(GFR)を推定します。この値が低下していれば、慢性腎臓病があるといえます。慢性腎臓病は、この2 つの検査である蛋白尿の程度および糸球体ろ過量によって、ステージ分類されます。

 慢性腎臓病の原因には、慢性糸球体腎炎などの腎臓の病気のみならず、糖尿病、高血圧、メタボリックシンドロームなども原因となります。慢性腎臓病の進行を遅らせるためには、日々の生活習慣の改善、食事療法や薬物療法による血圧管理、貧血改善、脂質代謝、電解質管理などを総合的に行うことが重要です。食事療法は、蛋白制限、塩分制限が基本になります。また、慢性腎臓病は高カリウム血症になることが多いため、生野菜や果物なのどの過剰摂取を控えていただく必要があります。

 慢性腎臓病の治療においては、患者さん1 人の力で治すことは難しく、また医師だけでなく、薬剤師、看護師、栄養士、ソーシャルワーカーなど皆で取り組んでいく必要があります。 当院においても慢性腎臓病への取り組みとして、慢性腎臓病教育入院を行っております。3 泊4 日の入院期間にて、何が原因で慢性腎臓病になったのか、何が慢性腎臓病にとって悪いのかなどについて各種検査を行い、今後の治療を検討します。また、食事指導、クスリ指導などから日常生活の注意点などについて、学習していきます。

 腎機能が悪いと指摘された方、蛋白尿ないし血尿を指摘された方は、一度腎臓・泌尿器科にご相談してください。手遅れになって透析が必要といわれる前に治療していきましょう。



◆CKD教育入院について

 当院では、CKD(Chronic Kidney Disease:慢性腎臓病)の患者さんに対してCKD教育入院を行っております。内容につきましては、ご自身のCKDの症状を正しく評価し、その病気についての知識と養生方法を短期間に修得していただきます。

 CKD初期段階では、自覚症状はほとんどありませんが、放っておくと腎臓のはたらきがどんどん悪化し、いずれ腎代替療法を受けなければならないことになります。通常コース(3泊4日:火曜日入院~金曜日退院)と、シャント作成コース(6泊7日:火曜日入院~翌週月曜日退院)の2コースを準備しております。


 かかりつけの先生に、「腎機能が少し低下している」「尿たんぱくが続いている」などの説明がありましたら、一度当院の腎臓・泌尿器科を受診してください。


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