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便秘について

(この記事は2015年9・10月号の西陣病院広報誌『西陣病院だより』に掲載したものです)

便秘


薬剤部 薬剤師 辻 芙美


 便秘でお困りの方、多いのではないでしょうか。
 多くは、水分や食事摂取不足、ストレスなどにより腸の動きが低下することで生じます。しかし、がんやポリープなど腸の病気が原因となることもあり、血便や激しい腹痛、嘔吐を伴う場合は早めに受診することが大切です。また、薬の影響で便秘を生じる事があり、コデインリン酸塩を含む咳止めや、抗うつ薬、抗パーキンソン病薬、鉄剤、降圧剤(カルシウム拮抗薬)などが挙げられます。


◆便秘の予防

 生活習慣の見直しが重要です。3食規則正しく食事をとり、水分や食物繊維を十分とるようにしましょう。腸内環境を整えるため、乳酸菌を含むヨーグルトや納豆などの発酵食品を摂取することもお勧めです。また、適度な運動を心がけましょう。

 そして何より、我慢しないこと。便意をもよおした際はすぐにトイレに行くようにしましょう。


◆下剤について

 症状や目的によって使いわけます。

 酸化マグネシウム、マグミットは便に水分を含ませて軟らかくし、カサを増すことで腸運動を高めます。便が少量で硬い場合に良いでしょう。耐性を生じにくく、排便習慣をつける際にも効果的です。しかし、腎機能が低下している人は、マグネシウムが溜まりやすくなるため、注意が必要です。

 センノサイド、ヨーデル、ラキソベロンは腸を刺激して便を出しやすくします。便意が弱い、腸の動きが鈍いなどの場合に良いでしょう。しかし、腸を直接刺激するため、腹痛を伴うことがあります。また、耐性を生じやすく、連用により薬の量が増える可能性があり、便秘時のみ服用するなど、短期間の使用に留めるようにしましょう。

下剤 アミティーザは小腸での水分分泌を促進し、便を軟らかくします。副作用が少なく、腎機能が低下した人にも比較的安全に使用できますが、空腹時では吐き気が現れやすいため、食後に服用するようにしましょう。

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糖尿病の最近の診断、治療について

(この記事は2015年7・8月号の西陣病院広報誌『西陣病院だより』に掲載したものです)

糖尿病


  内科  矢野 美保




 平成24 年国民健康・栄養調査によると、「糖尿病が強く疑われる人」は約950 万人、「糖尿病の可能性を否定できない人」は約1100 万人と両者の合計は約2050 万人にのぼっています。糖尿病は、放置すると、眼・腎臓・神経などに細小血管合併症を引き起こします。また、脳梗塞や心筋梗塞などの動脈硬化症も進行させます。糖尿病について理解を深めていただくために、最近の診断・治療について説明します。

 まずは、糖尿病の診断ですが、2010 年より診断基準は変更されています。①空腹時血糖値126mg/dl 以上、ブドウ糖負荷試験(OGTT)2時間値200mg/dl以上、随時血糖値200mg/dl以上、②HbA1c 6.5%以上で、①が2 回、あるいは①+② が認められた場合に診断されます。また、HbA1c は2012 年4 月より日常臨床でも国際標準値に統一され、従来(JDS)の値に0.4%を加えた値になりました。2014 年からはNGSP 値のみの表記となっているため、以前の血液検査と比較するときは注意をしてください。

 日本人の2 型糖尿病患者さんを対象としたある調査において、過去1~2 ヶ月の血糖の平均値を反映する臨床検査値であるHbA1c が6.9% 未満であれば細小血管合併症の出現する可能性が少ないことが報告されています。また世界的には大規模な臨床研究が行われ、その結果に基づいて合併症予防のための管理目標値として、HbA1c 7% 未満を推奨しています。これに基づいて、2013年より、血糖の管理目標が下記のように変更されました。



 次に最近の治療薬の説明をします。昨年春より、SGLT2阻害薬が発売されています。血液中の過剰な糖を尿中に排出させることで血糖値を改善させる薬剤で、低血糖リスクの減少、体重減少効果が期待されています。ただし、高齢者や利尿剤を併用しているなど、脱水傾向になりやすい方には適しません。また、合併症としては、尿糖が多いための尿路感染、また、薬疹の報告なども認められています。現在すでに内服を開始しておられる方も、夏は特に脱水予防のために水分(お茶や水)補給をしっかりとしてください。

 インクレチン関連薬も現在、DPP4 阻害薬は内服、GLP-1 受容体作動薬は注射薬として発売されています。インクレチンとは食事を摂取したときに十二指腸や小腸から分泌されるホルモンで代表的なものにGLP-1 があり、血糖値が上昇すると膵臓からインスリン分泌を促す、高血糖時に血糖を上昇するグルカゴン分泌を抑える作用があります。インクレチンは体内でDPP4 という酵素によって分解され、その効果は数分しか持続しなかったため、DPP4 の働きを妨げてインクレチンの働きを助ける薬剤のDPP4阻害薬ができました。DPP4 阻害薬は以前、併用薬が限られていましたが、今はインスリンも含めて併用可能となっているものが多くなり使用しやすくなっています。DPP4 阻害薬、GLP-1 作動薬の中には週1回のものも最近でてきており、毎日の内服・注射が困難な方にも適応範囲が拡大しつつあります。インスリンも持効型のインスリンのうち、効果持続時間が24 時間以上のものも発売、今後、低血糖頻度が改善したインスリンも開発中です。

 どの薬を投与されている方でも、基本は適切な食事療法、運動療法が必要で、内服で血糖値が安定しているからといって食事療法を怠っていると、1年ほどしてから、効果がなくなるといった報告もあります。くれぐれも注意してください。

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腰部脊柱管狭窄症

(この記事は2015年7・8月号の西陣病院広報誌『西陣病院だより』に掲載したものです)


北中先生整形外科 医長 北中 重行



 腰部脊柱管狭窄症とは、少し難しい言い回しをすると、脊柱管を構成する骨性要素や椎間板、靭帯性要素などによって腰部の脊柱管や椎間孔が狭小となり、馬尾や神経根の絞扼性障害をきたして症状の発現した状態を言います。簡単に言うと、腰における神経の通り道が狭くなり症状の発現した状態です。


 典型的な症状は、間欠跛行(歩行で下肢の痛み・しびれ感・つっぱり感が出現し、前かがみで少し休むとまた歩けるようになる症状のこと)、下肢痛、下肢しびれ感であり、各症状は腰部の姿勢や動作で変化します。たとえば、臥位や座位で軽減し、立位や歩行で悪化、また、立位でも後屈で増悪し、前屈で軽快します。

 歩行することによって、硬膜管への圧迫力が増加することにより症状が悪化し、立ち止まって前屈することにより、硬膜管への圧迫力が減少するため、症状が軽減します。シルバーカーや自転車では、前屈の姿勢になるため、硬膜管への圧迫力が軽減し、普通に歩行するよりも症状が出にくくなります。



 治療法は、保存療法と手術療法に分かれます。初期治療の原則は保存療法です。

 保存療法では、薬物療法、理学療法、運動療法、神経ブロック療法などが挙げられます。軽度ないし中等度の症例では、保存療法は、最大70%の患者さんに、重度の症例では、33%の患者さんに有効とされています。

 保存療法が無効で、日常生活に支障を来す場合、手術療法が推奨されます。日常生活に支障を来すレベルが個々の患者さんで異なるため、患者さんそれぞれで手術適応が異なります。たとえば、5 分の間欠跛行を認める患者さんにおいて、痛みなく止まらずに歩きたいと望む患者さんに対しては手術適応ですが、基本的に家で過ごされ、歩くのはせいぜいトイレやお風呂程度で十分と言われる患者さんに対しては手術適応とはならず、そのまま保存療法で経過をみることもあります。しかし急速に進行する神経症状、筋力低下、膀胱直腸障害などは絶対的な手術適応となります。

 手術療法の成績は、4-5 年の経過で約75%の患者さんにおいて良好、8-10 年以上になると良好な成績を維持している患者さんは約65%と言われています。特に年齢による成績の差はなく、75歳以上の患者さんは、手術療法により65歳以上75歳未満の患者さんとほぼ同等の手術成績を期待でき、高齢という理由だけで、手術回避を強く勧める理由とはなりません。

 手術適応と判断された患者さんにおいて、罹病期間が長すぎると十分な改善を得られないことがありますので、保存療法が無効な患者さんは、適切な時期に手術を受けることが重要です。


 当科では、患者さんの意欲、意思を尊重し、保存療法、手術療法ともに積極的に行っておりますので、前述したような症状があれば、いつでもお気軽に御相談頂ければ幸いです。


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湿布薬の種類

(この記事は2015年7・8月号の西陣病院広報誌『西陣病院だより』に掲載したものです)



薬剤部 薬剤師 宇野 葵


 肩こり、腰痛、筋肉痛など私たちの生活のあらゆる場面で使用することのできる湿布薬。慢性的な痛みがある方は、日々使用していることも少なくないと思います。


   湿布薬は、主にパップ剤とテープ剤に分類することができます。

湿布薬


   またパップ剤には温感タイプと冷感タイプがあり以下のように使い分けられます。



 湿布薬は市販薬でも多数種類があり、また貼るだけという手軽で身近な薬です。しかし、薬に副作用はつきもの。含まれる成分に対して、アレルギーを起こして発疹が出ることがあります。貼っただけで症状が出るアレルギー性のかぶれと、貼った部分に紫外線が当たることで症状が出る光線過敏症があります。

 かぶれを予防するために、傷口や湿疹・発疹のある皮膚には使用せず、長時間貼ったままにしないようにしましょう。

 光線過敏症は、消炎鎮痛成分「ケトプロフェン」という成分が原因でなりやすいと言われています。貼っている間だけでなく、はがした後も成分が残っている可能性があり、少なくとも4週間は注意する必要があります。
 
これから紫外線が強くなり、薄着になる季節です。天候に関わらず、戸外に出る時は濃い色の服を着るか、サポーター等を着用し、紫外線が直接当たるのは避けるようにしましょう。


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C型肝炎の新しい治療法について

(この記事は2015年5・6月号の西陣病院広報誌『西陣病院だより』に掲載したものです)


葛西先生 内科部長・消化器内視鏡センター長
 葛西 恭一

 C型肝炎はC型肝炎ウイルス(HCV)に感染することにより引き起こされる肝臓病です。感染経路は過去の輸血や血液製剤、刺青、消毒が不十分な器具による医療行為などと考えられていますが、半数の方は感染経路不明です。HCV感染者は全世界で1億7000万人、本邦で150万~200万人存在すると推定されています。HCVに感染すると、20年~30年かけて慢性肝炎、肝硬変を経て肝臓癌を発症します。病状が進行する前にHCVを排除できれば肝癌の発症を防ぐことができますが、進行するまでほとんど自覚症状がありませんし、HCVが存在しても肝機能検査が正常の方もおられます。このため自分がHCVに感染しているかどうかわからない方がたくさんおられます。
 

 HCVには種類があり、日本人の感染者の70%が1型、30%が2型に感染しています。日本人に多い1型のHCVはインターフェロンが効きにくく、2型は効きやすい傾向にあります。HCVを体から排除することができる治療法はインターフェロン療法しかありませんでしたので、1型に感染している患者さんに対する治療は難しいものでした。しかし、薬剤の改良や投与方法の進歩により、以前は低かった1型に対するインターフェロン療法の治療成績は近年向上してきました。一方で、インターフェロンは副作用(発熱、倦怠感、うつ病、血球減少、皮疹など)が多くて強いため、治療したくてもできない方がたくさんおられるのが課題でした。C型肝炎特に、高齢者や女性、初期の肝硬変(代償性肝硬変)の方ではインターフェロンの投与量を減らさないと治療が続けられず、結局HCVを排除できないことが多くなっています。この様な方に対しては、肝庇護療法を行います。具体的にはインターフェロンの少量長期投与、瀉血療法、ウルソデオキシコール酸の内服、グリチル酸製剤の注射などですが、肝庇護療法はHCVを排除する治療ではありませので長期間治療を継続しなければなりません。

 2014年7月に、1型のHCVに対しインターフェロンを用いずにウイルスを排除する治療(インターフェロンフリー治療)が認可されました。2015年3月には、2型のHCVに対するインターフェロンフリー治療が認可されました。いずれも2種類の抗ウイルス薬を1型では24週間、2型では12週間内服するのみの簡便な治療で、奏効率は1型で85%、2型で97%と高率です。問題となる副作用はほとんど認められず、インターフェロンが効かない方や副作用で使えない方にも治療効果が認められます。治療費に関しては、インターフェロン治療と同様、インターフェロンフリー治療に対しても医療費の助成制度が適用される見込みです。

 健診等で肝機能障害を指摘されていても精密検査を受けたことがない方は、C型肝炎の可能性もありますので是非二次検査をお勧めします。HCVに感染していることがわかっている方で、インターフェロンフリー治療を希望される方は、当院内科外来または肝臓外来(水曜午後・予約制)にて御相談下さい。

インターフェロン治療

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