診療に関すること::外科
胃癌、大腸癌の手術および手術治療成績について
外科 副部長 中瀬 有遠 |
日本では、癌にかかる人の数も高齢化に伴い年々増加傾向であり、その中でも胃癌・大腸癌は罹患率(病気になる確率)が高く、男性では1 位:胃癌、2 位:大腸癌、女性では2 位:大腸癌、3 位:胃癌となっています(2005年国立がん研究センター調べ)。つまり、胃癌や大腸癌は、かかってしまう可能性の高い一般的な癌であると言えます。当院でも胃癌や大腸癌に対する治療をたくさん行っていますが、今回はその手術法、治療成績についてお話します。
手術法:癌が粘膜内にとどまる早期癌については胃カメラや大腸カメラを使った内視鏡的粘膜下層剥離術(ESD)で切除できることがあり、当院でも消化器内科医により積極的に施行しております。外科では、ESDの適応とならない早期癌や進行癌に対して手術を行っています。手術法は開腹手術と腹腔鏡手術に分けられますが、当院では癌以外の疾患に対しても早期から腹腔鏡手術を導入しており、独自の手術器具を開発するなど腹腔鏡手術は特に力を入れている得意分野であります。腹腔鏡手術は、高度な技術と特殊なトレーニングが必要とされ、しばしば安全性や癌の根治性が問題視される場合もありますが、当院では単孔式内視鏡手術研究会世話人や内視鏡外科学会技術認定医を含む外科医全員が高い意識を持って日々トレーニングを行っており、確実な技術により安全で良質な手術を行っております。近年、胃癌および大腸癌に対する腹腔鏡手術適応症例の拡大により、全国的に腹腔鏡手術は増加しておりますが、当院の腹腔鏡手術率も増加傾向で、昨年は胃癌(図1)が61.5%で大腸癌(図2)では93.5%と、腹腔鏡手術が盛んな全国主要施設と同程度であり全国トップレベルといえます。さらに症例によっては単孔式手術やReduced port surgery という、より少ないキズでの腹腔鏡手術を積極的に導入しております。
手術治療成績(5 年生存率):当院で2004 年~2009年に手術を行った症例の胃癌および大腸癌の治療成績(5 年生存率:胃癌取扱い規約13 版、大腸癌取扱い規約7 版を使用)は、胃癌(図3)はStageⅠa:Ⅰb:Ⅱ:Ⅲa:Ⅲb:Ⅳ=95.5%:93.3%:58.7%:55.6%:38.4%:0% で、大腸癌(図4)はStageⅠ:Ⅱ:Ⅲa:Ⅲb:Ⅳ=90.3%:82.8%:78.9%:56.6%:12.5% です。当院の生存率は他病死症例を含んでおり、手術時の併存疾患(肝や腎、肺などの慢性疾患、心・脳の血管病変、糖尿病など)の有無や年齢などにも左右されるため、他施設との比較は一概にできませんが、全国の主要病院の手術治療成績と大きく変わりはありません。手術治療成績の向上には、適切な手術の施行はもちろん重要ですが、術後(補助)化学療法も適切に行われることも重要です。
つまり、早期癌は手術だけでほとんど治りますが、手術後の再発が心配される一部のStageⅡあるいはStageⅢの場合は再発予防としての補助化学療法が必要で、すでに肝や肺などの遠隔転移をともなうStageⅣでは癌の進行を抑える抗癌剤治療が必要となってきます。当院では外科医全員が、がん治療認定医であり、副作用対策なども含め常に最先端の情報を入手するように努め、看護師や薬剤師と連携して、その患者様に最適と思われる治療法を提案し、患者様に納得していただけるような治療を目指しています。
| Copyright 2013,08,30, Friday 08:02pm administrator | comments (x) | trackback (x) |