診療に関すること::外科
気胸と内視鏡(胸腔鏡)手術
外科医長 中瀬 有遠
呼吸が苦しい、胸が痛い、咳がでるなどの症状のときに、肺に穴があいて空気が漏れる状態になっていることがあります。それが気胸です。図1のように肺のパンクしたところから空気が漏れて胸腔という閉ざされた空間にたまるため、肺が圧迫されてしぼんでしまうので呼吸が苦しくなります。
図1 | 写真1 | 写真2 |
原因別に大きく①自然気胸、②外傷性気胸に分類されます。①は肺嚢胞(ブラ)や肺気腫などの肺疾患が原因で、②は交通事故などで胸部を打撲した場合や、転倒して背中や胸を強く打ったとき(スノーボードで転倒した時など)におこります。特にブラが原因となる自然気胸では長身で痩せている若い男性に多いという特徴がありますが、喫煙歴が長い高齢者は肺気腫などの肺疾患が気胸の原因になることがあります。
気胸が疑われたら胸部のレントゲン写真やCTなどで診断します。レントゲン写真(写真1)で肺が縮んでいたら気胸です。肺の縮み具合によりチューブを入れて胸腔内の空気を抜く必要があります。チューブを入れて空気を抜き、肺が広がったところで胸部CT(写真2)を撮影すると肺尖部(肺の先端)のブラ(矢印部分)がわかることがあります。空気漏れが続かなければチューブを抜くことが可能ですが、再発率は50%程度で、いつ再びパンクするかわかりません。一説ではストレスのかかる大事な時期に起こりやすいとも言われております。また、将来パイロットやダイバーなど(気圧の変化が激しい仕事)などになろうという方は気胸が発症した場合致命的になる可能性があります。そのため、治療の主流となっているのが内視鏡(胸腔鏡)下手術です。ブラとは写真3のように中が透けてみえるくらい膜がうすい風船のようなものです。こんなに薄いといつ破裂してもおかしくないですよね。手術では図2のように胸に2~3か所ぐらいの穴(約1~2cm)をあけて、内視鏡とマジックハンドのような手術器具を入れ、モニターを見ながら手術を行います。風船部分を写真4のような自動縫合器というホッチキスの針がたくさん並んだ便利な機械を使って切り取ります。手術は1~2時間ぐらいで、傷も小さく、さらに当院では皮下埋没縫合という抜糸の必要ない、きれいに治る方法で皮膚を縫っています。また、胸腔鏡での手術は体に与える負担や術後の苦痛も少ないので手術の翌日には歩くことも食事もでき、数日で退院できます。
写真3 | 図2 | 写真4 |
もちろん、このような手術は気胸を発症した全て方に適応となるわけではありません。開胸による手術をする方がよい場合もありますし、薬剤による胸膜癒着法など手術以外の治療法もあります。冒頭に述べました胸部症状がある方、以前に気胸と言われたが手術をしていない方、再発が繰り返し起こる方などは外科でご相談ください。
| Copyright 2010,05,12, Wednesday 10:10am administrator | comments (x) | trackback (x) |