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アルコールと薬の影響

(この記事は2014年7・8月号の西陣病院広報誌『西陣病院だより』に掲載したものです)

アルコール


薬剤部 薬剤師 辻 芙美


 アルコールと薬の関係は、アルコールを処理する能力、飲酒量、併用する薬の種類によって影響が異なるため、予測が困難と言えます。様々な影響がありますが、今回はその一部を紹介します。

 アルコールには中枢神経の抑制作用があります。そのため、抗うつ薬や睡眠薬、抗ヒスタミン薬など中枢神経に働く薬を服用している場合にアルコールを摂取すると、認知機能や精神運動機能の低下、眠気などが生じることがあります。眠れない時に、アルコールと一緒に睡眠薬を服用すると、朝まで睡眠薬の効果が残り、起床時にふらつくことで転倒する場合もあり危険です。また、アルコールには末梢血管拡張作用があり、降圧薬を服用している場合は、相乗効果により血圧が下がりすぎることがあります。他にも、アルコールは肝臓でブドウ糖の生成を阻害するため、インスリン製剤や血糖降下薬では低血糖が生じることがあります。

 また、薬がアルコールの代謝を阻害し、頭痛や吐き気、顔面紅潮などといった悪酔いの症状を引き起こすことがあります。一部のセフェム系抗菌薬を使用した時には、投与後7~10日まで出現しうるため、その間は飲酒を控える必要があります。

 アルコール摂取を考えるとき、ビール、ウィスキー、ワイン、日本酒等を思い浮かべますが、市販ドリンク剤にもアルコールが添加されており、医薬品とアルコールとの飲み合わせを考える場合には無視できません。購入時には、薬局の薬剤師に相談してください。

 他にもアルコールとの飲み合わせをもつ薬はたくさんあります。また、長期にわたりアルコールを摂取している場合は、薬の代謝酵素系が亢進し、薬が効きにくくなることもあります。

 アルコールと薬の飲み合わせは多岐にわたるため、薬を服用する場合は、飲酒は控えることが賢明です。気になる方は、医師、薬剤師にご相談ください。


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新しい作用を持つ糖尿病の薬のはなし

(この記事は2014年5・6月号の西陣病院広報誌『西陣病院だより』に掲載したものです)


岡本早織 薬剤部 薬剤師 岡本 早織
 糖尿病とは一言で言えば、血糖を下げるホルモンであるインスリンの作用が不足して血液中の糖分が多い状態が続く病気で、神経や網膜、腎臓に合併症を起こします。

 糖尿病治療薬には多くの種類があり、インスリンの効きをよくする等の効果をもつ薬がよく使われていますが、2014年4月~6月にかけて、従来とは全く異なる作用機序をもつ新薬SGLT2阻害薬が続々と発売されるので紹介します。

 SGLT2阻害薬は、腎臓の近位尿細管において糖の再吸収を司る輸送体であるSGLT2(Sodium-Glucose Transporter2)を阻害することで、尿中への糖の排出を促し血糖を低下させます。インスリンを介した作用を持つ糖尿病治療薬に比べて低血糖が起こりにくく、体重増加、肥満も起こらないとされています。ただし排出される尿量が増加し、多尿・頻尿の副作用につながります。

 また尿中の糖分が増えるため感染症を起こしやすくなり、腎盂腎炎、膀胱炎等の尿路感染症などの副作用につながります。

 また尿を介しての糖排泄のため、腎機能が低下している患者さんでは効果が出にくく、重度の腎機能障害・透析患者さんでは無効とされています。

 全ての糖尿病患者さんに適合する薬ではないので、効果と副作用を確認しながら大切に使っていく必要があります。どんなに画期的な新薬が発売されようとも、糖尿病治療は食事・運動療法が基本であることをお忘れなく…!

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そろそろお花見の季節ですね

(この記事は2014年3・4月号の西陣病院広報誌『西陣病院だより』に掲載したものです)


薬剤部 薬剤師 須山 奈見子

 日本を代表する花と言えば、やっぱり「桜」ですよね。日本書紀にもその名が見える桜は、古くから私達日本人にとって、無くてはならない最も愛すべき花の一つです。実はこの桜にも薬効があるのをご存知ですか?

 最も広く知られているのは、咳止めです。桜の樹皮のエキスである桜皮エキス(ロウヒエキス)は、現在でも、咳止めに含まれています。

 桜皮は江戸時代には民間療法として様々に応用され、食中毒、蕁麻疹、腫れ物などの皮膚病の治療、また解熱、解毒、排膿、咳止めとして知られていました。また、葉に含まれるクマリン配糖体が分解されると芳香物質が生じますが、これが桜餅の独特の香りです。

 八重ザクラの花にも桜皮と同じ成分が含まれていて、お酒に漬けて飲用すると、のどの痛み、美容やリラックス効果があると言われています。

 最近スーパーなどで目にする“桜茶” は桜の花びらで作ってありますが、桜の花びらのクマリンという成分は、二日酔いにも良いとされています。

 桜の樹皮を煮出した桜湯には、湿疹、打ち身などの炎症を抑える働きがあります。花びらを一緒に浮かべれば風雅な春の趣も楽しめますね。


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肺炎球菌ワクチンのはなし

(この記事は2014年1・2月号の西陣病院広報誌『西陣病院だより』に掲載したものです)


森本 卓志 薬剤部 院内感染予防委員 森本 卓志


 テレビコマーシャルや新聞広告で知っている方も多いと思いますが、厚生労働省の発表によると「肺炎」は悪性新生物(がん)、心疾患(心不全など)に次いで日本人の死因第3 位。しかも肺炎で亡くなる方の 95%以上が 65 歳以上だそうです。

 肺炎は細菌やウイルスなどが、からだに入り込んで起こる肺の炎症です。そして、日常でかかる肺炎の原因菌で最も多いのが、「肺炎球菌」とういう細菌です。「肺炎球菌」に対する免疫をつけるワクチンが肺炎球菌ワクチンです。

 現在、肺炎球菌感染症を予防するワクチンとしては、2歳以上で肺炎球菌疾患にかかるリスクが高い人および65歳以上の人を対象とした23価肺炎球菌多糖体ワクチンと、9歳以下の小児を対象とした13価肺炎球菌結合型ワクチンの2種類が発売されています。

 この23価肺炎球菌多糖体ワクチンは1回の接種で肺炎球菌の23種類の型に対して免疫をつけることができます。現在90種類以上の肺炎球菌の型が報告されていますが、この23種類の型で成人の肺炎球菌による感染症の80%以上がカバーできます。また、個人差はありますが、1回の接種で5年以上の効果が期待できます。

 ワクチン接種の副反応(期待される効果とは異なる作用)として、接種後に注射部位の腫れや、痛み、赤みなどがみられることや発熱や筋肉痛などがみられることがありますが、これらの反応は通常3日以内に自然に消失します。

 肺炎の予防には、うがい、手洗い、規則正しい生活などの日常的な感染予防が大切です。また、次のような方には成人用肺炎球菌ワクチンの接種が勧められています。
65歳以上の方
呼吸器に病気をお持ちの方(肺気腫(COPD)、喘息、結核感染後など)
糖尿病の方
慢性心不全、肝硬変などの肝臓病、免疫抑制剤による治療を受けている方

 西陣病院でも肺炎球菌ワクチン接種を行っています。ご希望の方は主治医にお尋ねください。


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お薬の飲み方のおはなし

(この記事は2013年11・12月号の西陣病院広報誌『西陣病院だより』に掲載したものです)



薬剤部 薬剤師 宇野 葵


 皆さん薬を服用される時は、水や白湯で飲んでいますか?外出先などで身近に水や白湯がないとき、それ以外の飲み物で飲んでいませんか?
 実は、薬は基本的に水や白湯で飲むことになっています。

 最近、水なしで服用できる口腔内崩壊錠が登場していますが、この場合でも少量の水で流し込む必要があります。多くの薬は、水なしで服用すると食道にくっついて薬がそこで溶け出し、潰瘍ができてしまうことがあります。では水以外の飲み物と薬の飲み合わせは…?


【牛乳】
 牛乳はカルシウムなど薬と反応しやすい成分が多く、注意が必要です。例えば、腸溶性製剤(胃で溶けず、腸に到達してから溶けるようにコーティングしてある製剤)は牛乳との併用で腸溶性が失われてしまいます。また制酸薬の中には、大量の牛乳と一緒に飲むと高カルシウム血症が起こることがあります。

【グレープフルーツジュース】
 降圧薬であるカルシウム拮抗薬(ノルバスクOD5mg、アダラートCR20mg、アダラートCR40mgなど)は小腸にあるCYP3A4という酵素で代謝されます。グレープフルーツジュースは小腸にあるCYP3A4を可逆的に不活化します。そのためグレープフルーツジュースを飲用するとカルシウム拮抗薬は代謝されないため、血中濃度が上昇してしまいます。つまり、薬効が強く出すぎてしまいます。また、グレープフルーツも同じ効果があるため避けた方が良いでしょう。


 水や白湯以外で服用しても問題ない場合もあります。牛乳とグレープフルーツジュース以外で気になる飲み合わせがあれば薬剤師に相談してください。

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