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O脚矯正手術について

(この記事は2012年3・4月号の西陣病院広報誌『西陣病院だより』に掲載したものです)


大宝先生 整形外科 医長 大宝 英悟

 現在、膝の軟骨がすり減り痛みの出る、「変形性膝関節症」は症状のある患者様だけでも日本に1000万人いるといわれています。日本人の場合は、特に膝の内側の軟骨がすり減り、O脚変形をきたす内側型の変形性膝関節症が多く認められます。手術による治療法としては、これまで自分の膝関節を人工関節に丸ごと取り替える人工膝関節全置換術が最も多く行われてきました。日本中でも年間約5万件以上の手術が行われ、最も一般的な治療法となっています。しかし一方で、自分の関節を失うことに抵抗があり、手術に踏み切れない患者様が多いことも事実です。

 では、なぜO脚になると膝の内側が痛くなるのでしょうか?本来、正常の膝では自分の体重は膝の内側と外側でほぼ等しく支えられています。それが、O脚変形を生じると、体重をバランスよく支えることができなくなり、内側にばかり体重がかかることになっていきます。さらにそのストレスで内側の軟骨が傷んで、O脚変形が進行するという、悪循環が起こります。そのため、O脚による膝の内側の痛みが生じるのです。

 日本人に多いO脚による膝の内側の痛み対しては、これまでもO脚を矯正する手術が行われていましたが、術後のリハビリテーションが長期に渡り、患者様も医療者側も矯正手術を敬遠する傾向がありました。しかし、近年は矯正手術に用いる器具や、人工の骨が進歩し、術後のリハビリテーションの進みがかなり早くなっています。人工関節と異なり、自分の関節で歩くこともできますし、膝の曲がる角度が手術することによって悪くなることも基本的にはありません。

O脚矯正手術 具体的な手術の方法を簡単に説明します。膝関節の少し下ですねの骨の内側を切り、その切り口を適切な幅だけ広げます。そこに人工の骨を詰め、さらにスクリューとプレートを用いてずれないように固定します。O脚変形を矯正し、わずかにX脚にすることで内側にばかりかかっていた自分の体重を膝の外側に逃がすことができ、膝の痛みが改善します。術後は手術した足に体重をかけたり、膝を曲げる練習をしたり、リハビリテーションを行います。

 こういった方法で、O脚を矯正し、痛みを和らげることができるのです。しかし、どれだけ進行したO脚でも治せるというわけではなく、やはり比較的早期にO脚を矯正することで良い結果が得られることが多いです。O脚が進行し、膝の外側や、おさらの裏にまで変形が進んだ場合はこの手術で痛みをとることは難しくなります。

 膝の痛みでお悩みの患者様は多いと思います。これまで変形した膝の治療は人工関節の時代でしたが、これからは自分の膝を温存したままで、治療するという選択肢も広く受け入れられてくる時代だと思います。膝の痛みでお困りの患者様は、O脚矯正手術を含めた様々な選択肢から手術法を提案することができると思いますので、お気軽にご相談ください。


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腰椎の疾患について

(この記事は2010年1・2月号の西陣病院広報誌『西陣病院だより』に掲載したものです)


整形外科 医長 髙取良太整形外科 医長 髙取良太


腰椎に関わる疾患についてご紹介させていただきます。腰椎は体幹部と骨盤部をつなぎ、二足歩行を行う人間において非常に負担がかかる部位です。腰痛を経験されている方は非常に多いと思いますが、腰痛だけではなく、下肢にも症状を伴うことが多いことも特徴の一つです。

腰椎椎間板ヘルニア
頚椎と同様に椎間板が加齢などにより変性し、線維輪という椎間板周囲の組織に断裂が生じ、椎間板内部の髄核が後方に突出することで、神経根や脊髄を圧迫し、症状を引き起こします。20 ~ 40歳代、男性に多く、腰部や殿部、下肢にかけて痛みやしびれが生じます。治療法としては、痛みの強い急性期には安静、コルセット装着、痛み止めの使用、神経ブロックなどを行い、慢性期には運動療法を取り入れます。保存的加療が原則ですが、早期社会復帰を目指す場合、強い痛みが持続する場合、下肢の脱力、排尿障害などが生じる場合には手術加療を行います。手術では顕微鏡や内視鏡を用いて原因となったヘルニアを摘出し、神経の圧迫を除去します(図1)

腰部脊柱管狭窄症
加齢、労働などにより長年負担がかかった腰椎に起こる疾患で代表的な疾患が腰部脊柱管狭窄症です。50歳以降に多く発生し、変性、変形が進んだ椎間板、椎間関節、脊椎を支える黄色靭帯の肥厚などにより、脊髄の神経が通る脊柱管が狭くなり、神経が圧迫されて発症します。下肢の痛みやしびれが出現し、その症状のため長い距離を歩くことができなくなり、少し休息するとまた歩行できるという間欠性跛行が症状として特徴的です。また前かがみになると楽になり、逆に背中を伸ばす姿勢になると症状が悪化するのも特徴の一つです。進行すると下肢の脱力、排尿障害を生じます。治療としてはコルセット着用、運動療法、神経ブロックや神経の血流をよくする薬の内服などを行いますが、ゆるやかに進行していく疾患のため、歩行障害が進行し、日常生活に支障をきたす場合には手術加療を行います。手術では顕微鏡を用いて肥厚した黄色靭帯と骨の一部を切除して、神経の圧迫を除去する除圧術を行います(図2)。明らかな腰椎不安定性を認める場合には固定術を併用します。

当院では脊椎、特に腰椎に関する手術を数多く行っています。腰椎の手術と聞くと怖いものと誤解される方も多いと思いますが、低侵襲な手術を心がけており、手術翌日にはほとんどの方が歩行器で歩行しています。入院期間は術後のリハビリテーションを含めて約3週間です。保存的加療、手術療法に関わらず、腰痛、下肢痛などの症状が気になる方は整形外科外来を受診してみてください。

 

図1 腰椎椎間板ヘルニア術前、術後MRI
腰椎椎間板ヘルニア術前、術後MRI

 

図2 腰部脊柱管狭窄症術前、術後MRI
腰部脊柱管狭窄症術前、術後MRI


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変形性膝関節症に対する人工関節手術について

(この記事は2009年3・4月号の西陣病院広報誌『西陣病院だより』に掲載したものです)


整形外科 副部長 青盛克裕


変形性膝関節症とは

 年齢とともに、膝関節の滑りをよくしクッションの役割をはたす軟骨がすりへり、骨と骨が直接こすれ合い変形するために、膝に痛みや腫れなどが生じる病気です。

 女性に多く、65歳以上の方の約20%に起こり、国内では毎年90万人が発症していると言われています。原因は主に関節軟骨の老化と考えられます。

 あまり進行していない場合や、変形が膝関節の一部にだけ認められる場合は手術を行わない保存療法、あるいはほかの手術方法で症状がよくなりますが、破壊が進行した場合、人工膝関節を入れる手術を行います。


人工膝関節置換術

 人工膝関節は、生体材料(人の体の中に入れて問題ないもの)であるコバルトクロム合金、チタン合金、セラミックや超高分子ポリエチレンで作られています。大腿骨(太ももの骨)、脛骨(すねの骨)の破壊した関節面を切除して合金製の部品をはめ込みます。金属と金属が直接接触して傷がつき、細かい金属粉が出ないように金属と金属の間には超高分子ポリエチレンを挿入し、膝がなめらかに動くように工夫されています。膝蓋骨(お皿の骨)の関節面には超高分子ポリエチレンをはめ込みます。

 手術時間は通常2時間程度です。手術には感染を予防するため、特別なクリーンルームを使用したり、宇宙服のような滅菌されたマスクをつけて行います。

 ほとんどの患者さまは術後3週間以内に杖を使って歩くことができます。ほとんどの場合、痛みやこわばりが解消し、多くの日常的な動作ができるようになります。入院期間は約1ヵ月程度です。

 入院中に、退院後の日常生活動作、特に、入浴、階段昇降、畳での生活、トイレ動作について訓練します。

 退院後は、定期的に外来受診していただき、問題がないかチェックを行います。退院後は、手術前にできたことはほぼでき、自転車や車の運転は退院後数ヵ月でできるようになりますし、水泳やサイクリング、またゴルフやハイキングなどの山歩きもできるようになります。

 人工膝関節は膝関節の変形した患者さまに多くの恩恵をもたらしますが、長い年月が経過すると緩みが生じ、入替え(再置換)の手術が必要となる場合があります。しかし、再置換手術を受けることになっても、ほぼ元通りに復帰することが可能です。また手術の合併症として、わずかですが、感染、血栓症などの危険性もありますので、ひざの痛みでお困りの方は、手術について、専門の医師によく相談されることをおすすめします。

変形性膝関節症のレントゲン写真

変形性膝関節症1     変形性膝関節症2

人工膝関節置換術後のレントゲン写真

人工膝関節置換術後1     人工膝関節置換術後2

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頚椎の疾患について

(この記事は2008年3・4月号の西陣病院広報誌『西陣病院だより』に掲載したものです)


整形外科 医師 高取良太

 頚椎は7個の椎体(骨)と椎体間をつなぐ椎間板、椎間関節から主に形成されます(図1)。頚椎は頭部と体幹部をつなぎ、頭部を支える役割を果たすため、非常に負担がかかる部位です。頚椎に負担がかかると、交通事故などの外力に伴う頚椎捻挫や、慢性的な肩こりを引き起こす場合があります。今回、頚椎に関わるいくつかの疾患をご紹介させていただきます。

頚推椎間板ヘルニア

 椎間板が加齢とともに変性し、椎間板の-部が後方へ突出することで、神経根や脊髄を圧迫し、症状を引き起こします。30~50歳代に多く、頚部から肩、上肢にかけて、痛みやしびれが生じます。重度の場合には歩行障害や排尿障害が生じます。

頚椎症

 50歳以降に多く発生し、変性、変形が進んだ椎間板、椎間関節やそれに伴い骨が変形してできた骨柄(こつきょく)、肥厚した靭帯などにより、様々な症状をきたします。頚部、肩甲骨付近の痛みや肩こりなどの局所症状、片側の神経根を圧迫することによる頚部から肩、上肢にかけての痛みやしびれ(神経根症)、脊髄を圧迫することによる手足の運動障害や排尿障害(脊髄症)などが症状としてみられます。

関節リウマチによる頚椎病変

 関節リウマチは全身の関節に関節炎を生じる疾患ですが、約20~30%の患者さんに頚椎病変が生じます。特に環椎(第1頚椎)と軸椎(第2頚椎)をつなぐ環軸関節において、変形が徐々に進行し、環軸関節亜脱臼が生じます(図2)。この病変は頑回な後頚部痛などの症状や、進行すると脊髄圧迫に
よる脊髄症をきたす場合がありますので、専門医による診療が必要です。

 頸椎の疾患では、神経根や脊髄などの圧迫症状が出現した場合、手術による加療を必要とする場合があります。しかし多くの場合、鎮痛剤や筋緊張緩和剤などによる薬物療法や神経ブロック、姿勢の指導、体操、筋力訓練などによる運動療法や頚椎牽引、温熱刺激、電気刺激などによる物理療法といった治療法が有効ですので、ぜひ一度整形外科外来を受診してみてください。
頚椎

| Copyright 2008,03,01, Saturday 09:00am administrator | comments (x) | trackback (x) |

 

股関節痛でお悩みの方に

(この記事は2007年5・6月号の西陣病院広報誌『西陣病院だより』に掲載したものです)


整形外科 牧之段 淳


 股関節は球状の関節であるため曲げ伸ばしだけでなく、回旋(捻り)もできる自由度の高い関節です。一方、球状であるために、体重を受ける面が小さく一旦関節軟骨が擦り減ると疼痛も強く、日常生活動作が制限され外出もままならなくなることも少なくありません。


 治療は減量や杖をついて股関節の負担を少なくするなど生活習慣を見直すことが基本です。膝関節が変形して痛む場合、ヒアルロン酸を関節内に注射することで痛みが軽くなりますが、股関節には保険が適応されておらず、なかなか優れた保存療法がないのが現状です。一般的に60歳以上であれば人工関節を考慮します。人工股関節置換術により股関節痛から解放されると言っても過言ではありません。手術の翌日から歩行器を用いて歩き始め、約3~4週間後に一本杖で退院が可能です。術後3カ月もすれば特に目立った痛みは訴えられなくなります。

 一方、人工股関節にも幾つかの問題点があります。

 第一に耐久性です。人工関節も十数年も経過すると骨とインプラントとの間に機械的な緩みが生じてしまうのです。現在では15年間程度もつようになっています。60歳で人工股関節置換術を行うと75歳頃に再び人工関節の緩みが生じ、再度入れ換え手術が必要となる見込みとなります。女性の平均寿命が85歳なので当院では再置換術をしなくて済ませるよう70歳以上の方に人工関節をお勧めしています。

 第二の問題点は約4%で脱臼を生じることです。人工股関節置換術の手術方法にはいくつかの進入法があります。全国的には後側方から進入する施設が多いのですが側方や前方から進入する方が術後の脱臼が少ないと言われています。当院でも後側方進入法を行っていたのですが最近外側進入法に変更しております。手術中にインプラントを設置した時点で脱臼傾向がないか確認するのですが、以前に増して相当安定感があるとの手応えを得ています。今のところ外側進入法で脱臼を生じたことはありません。脱臼があまり気にならないので主治医としても安心して退院を勧めることができるようになりました。

 その他稀ですが肺梗塞という重篤な合併症があります。当院では術後早期に足をつくことが大切と考え手術翌日から起立歩行を開始したり、術後抗凝固剤を内服していただいており予防に努めています。手術前には予め御自身の血液(自己血)を貯えておきますので自分の血液を戻すだけでいわゆる輸血(他家血輸血)はほとんど必要ありません。

 整形外科にはさまざまな手術がありますが、人工股関節置換術は除痛効果や術後早期に歩行が開始できるなどの観点から切れ味の鋭い手術との印象を持っています。股関節痛でお悩みの方は毎週木曜日13時から股関節外来を開いておりますので御気軽に御相談下さい。




続き▽

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