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C型肝炎の新しい治療法について
内科部長・消化器内視鏡センター長 葛西 恭一 |
C型肝炎はC型肝炎ウイルス(HCV)に感染することにより引き起こされる肝臓病です。感染経路は過去の輸血や血液製剤、刺青、消毒が不十分な器具による医療行為などと考えられていますが、半数の方は感染経路不明です。HCV感染者は全世界で1億7000万人、本邦で150万~200万人存在すると推定されています。HCVに感染すると、20年~30年かけて慢性肝炎、肝硬変を経て肝臓癌を発症します。病状が進行する前にHCVを排除できれば肝癌の発症を防ぐことができますが、進行するまでほとんど自覚症状がありませんし、HCVが存在しても肝機能検査が正常の方もおられます。このため自分がHCVに感染しているかどうかわからない方がたくさんおられます。
HCVには種類があり、日本人の感染者の70%が1型、30%が2型に感染しています。日本人に多い1型のHCVはインターフェロンが効きにくく、2型は効きやすい傾向にあります。HCVを体から排除することができる治療法はインターフェロン療法しかありませんでしたので、1型に感染している患者さんに対する治療は難しいものでした。しかし、薬剤の改良や投与方法の進歩により、以前は低かった1型に対するインターフェロン療法の治療成績は近年向上してきました。一方で、インターフェロンは副作用(発熱、倦怠感、うつ病、血球減少、皮疹など)が多くて強いため、治療したくてもできない方がたくさんおられるのが課題でした。特に、高齢者や女性、初期の肝硬変(代償性肝硬変)の方ではインターフェロンの投与量を減らさないと治療が続けられず、結局HCVを排除できないことが多くなっています。この様な方に対しては、肝庇護療法を行います。具体的にはインターフェロンの少量長期投与、瀉血療法、ウルソデオキシコール酸の内服、グリチル酸製剤の注射などですが、肝庇護療法はHCVを排除する治療ではありませので長期間治療を継続しなければなりません。
2014年7月に、1型のHCVに対しインターフェロンを用いずにウイルスを排除する治療(インターフェロンフリー治療)が認可されました。2015年3月には、2型のHCVに対するインターフェロンフリー治療が認可されました。いずれも2種類の抗ウイルス薬を1型では24週間、2型では12週間内服するのみの簡便な治療で、奏効率は1型で85%、2型で97%と高率です。問題となる副作用はほとんど認められず、インターフェロンが効かない方や副作用で使えない方にも治療効果が認められます。治療費に関しては、インターフェロン治療と同様、インターフェロンフリー治療に対しても医療費の助成制度が適用される見込みです。
健診等で肝機能障害を指摘されていても精密検査を受けたことがない方は、C型肝炎の可能性もありますので是非二次検査をお勧めします。HCVに感染していることがわかっている方で、インターフェロンフリー治療を希望される方は、当院内科外来または肝臓外来(水曜午後・予約制)にて御相談下さい。
| Copyright 2015,05,01, Friday 12:00am administrator | comments (x) | trackback (x) |