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「心臓血管外科外来」開設のご案内

(この記事は2012年9・10月号の西陣病院広報誌『西陣病院だより』に掲載したものです)


小田先生 内科主任部長・循環器センター長 小田 洋平


 拝啓 初秋の候、 益々ご清栄のこととお喜び申し上げます。

 また平素は当院に対しまして格別のご高配を賜り、厚くお礼申し上げます。

 最近は虚血性心疾患や不整脈、心臓弁膜症による心不全などの内科的治療が充実する一方で、当院では手術治療を行うことが出来ませんでした。そこで手術治療が必要な患者様のために、すこしでもお力になれるように、京都第一赤十字病院および京都府立医科大学附属病院心臓血管外科のご協力をいただき、平成24年9月から『心臓血管外科外来』を下記のように開設する運びとなりました。

 外来受診の対象症例は、心臓外科と胸部血管領域の全般、腹部血管(腹部大動脈瘤についてはステントグラフト治療適応の検討希望も含めて)、末梢血管疾患(閉塞性動脈硬化症や下肢静脈瘤など)、循環器内科的には外科治療を要する心疾患全般(狭心症、心筋梗塞、弁膜症など)となります。

 心臓や血管の手術の適応と考えられる患者様の診察を入念に行い、手術せず経過をみる場合の危険性や、手術の心配な点を詳しくわかりやすくご説明いたします。外来受診の結果、内科的治療を継続する場合には当院で引き続き治療を行い、心臓血管領域の外科的治療が必要な場合には主として京都第一赤十字病院心臓血管外科等で一貫した治療を行っていくことを想定しております。心臓血管外科領域においても各種疾患の早期発見がその後の治療を大きく左右することはご承知のとおりです。また手術予定の患者様だけでなく手術を迷っておられる患者様や手術後の合併症でお困りの方も受診していただいて結構です。少しでも疑わしい症例がございましたら、どうぞお気軽に紹介いただきたく、謹んでご案内を申し上げます。
  
敬具


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心房細動に対する抗凝固療法について

(この記事は2012年3・4月号の西陣病院広報誌『西陣病院だより』に掲載したものです)


北村先生 内科 医長 北村 亮治

 みなさんは心房細動ってご存知でしょうか? この心房細動は、心房自体から1分間に約350~600の頻度で不規則な電気信号が発生し、心房全体が細かくふるえ、心房のまとまった収縮と弛緩がなくなる不整脈のことです。心房細動にはいくつかのタイプ(詳細は省略)がありますが、加齢とともに発症しやすく現在は約80万人いると推定されます。この不整脈が何故良くないかと言えば、一つは心房収縮がなくなるために心臓のポンプとしての働きが(約20%程度)低下した結果、うっ血性心不全を合併しやすいことが挙げられます。もう一点は心房から心室への血液がスムーズに流れず、一部は心房の片隅(左心耳)でよどみを生じて血栓を形成しやすく、その血栓が血流に乗って脳梗塞などを発症しやすいことです。

心房細動 このため、心房細動はうっ血性心不全及び脳梗塞に対する予防が非常に重要となります。そこで今回は脳梗塞予防に対する薬物療法についてお話したいと思います。この薬物療法には抗血小板剤療法及び抗凝固療法がありますが、バイアスピリン等の抗血小板剤の脳梗塞予防効果は、抗凝固薬であるワーファリンに比べて弱く、効果がなかったとする報告すらあります。このことから特に禁忌がなければワーファリンを中心とした抗凝固療法が主流と考えられています。

 一般に70歳以上の心房細動の方では、ワーファリンを内服していないと脳梗塞の発症率4.8%/年と言われ、これがワーファリン内服により0.9%/年に改善されるという報告があります。しかし、ワーファリンによる出血の合併症対策として定期的に血液検査で効果の強さ(PT-INR)を測定する必要があり、その結果によって内服量を変えるというように煩雑な一面もあります。また、食事制限(納豆、クロレラ等のビタミンKを多く含む食物)もあるのが難点です。

 一方で、2011年3月より新規の抗凝固薬であるダビガトラン(商品名:プラザキサ)が発売されました。この薬剤はワーファリンと同等以上の予防効果を持ち、定期的に採血を行う必要もなく、かつ食事制限も不要、また内服中止にてすぐに薬効が消失するために外科手術が行いやすいというメリットがあります。(透析中の方は使用不可)しかし、デメリットとして1日2回の内服であること(2012年3月までは2週間処方)、ワーファリンに比べて薬価が高く、また出血以外の消化器症状の発生が比較的多いなどの点が挙げられます。このため、PT-INRの安定している方では、ダビガトランへの変更の利益はないとも言われています。いずれにしても大事なことは薬剤をしっかり内服することです。

 現在でも新たな抗凝固薬が開発中で、臨床試験も進行しています。今後も治療薬の選択肢が増えるのは良いことと考えますが、動悸などもなく無症状で放置されている心房細動の方もいますので、何かありましたらいつでも気軽に循環器科の医師に相談して下さい。


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心不全について

(この記事は2010年7・8月号の西陣病院広報誌『西陣病院だより』に掲載したものです)

内科 副部長 中森 診

心不全とは、さまざまな原因により心臓の血液を送り出す能力が低下した状態です。心不全になると十分に血液を送り出せなくなるので、体に必要な酸素が不足して息切れがしたり、手足の血流が悪くなるといった症状が出ます。

心不全は大きく2つに分類されます。心臓には4つの「部屋」があり、その4つのうち、左側の部屋(左心房と左心室)の機能がわるくなったものを「左心不全」、右側の部屋(右心房と右心室)の機能がわるくなったものを「右心不全」といい、それぞれで現れる症状が違います。

左心不全は血液を肺から受け取って全身に送り出す力が弱くなるので、肺から来る血液が心臓に入りにくくなり、肺に水がたまりやすくなります。肺に水がたまると酸素を十分に取り込むことができなくなり、安静にしていても息苦しさが生じたりします。

右心不全では血液を全身から受け取って肺に送り出す力が弱くなるので、心臓に戻ってくるすぐ手前の肝臓が腫れたり、手足の静脈から戻ってくる血液が心臓に入りにくくなったりして全身の浮腫が起こります。
心臓また、急に心不全の症状が出てきたものは「急性心不全」、慢性的に心不全の症状がある場合は「慢性心不全」、慢性心不全から急に悪くなったものは「慢性心不全の急性増悪(ぞうあく)」といいます。

原因は、洞不全症候群や心房細動などの不整脈,高血圧症や心臓弁膜症による心臓への過負荷,心筋梗塞や心筋炎や心筋症などの心筋障害,貧血や肺気腫による低酸素状態,甲状腺機能低下症などの代謝異常などさまざまで、無症状の人から安静にしていても呼吸困難などの症状がある人まで、その程度もさまざまです。

診断は、まず胸部レントゲン検査,心電図検査,心臓超音波検査,血液検査などを組み合わせて行い、さらに詳しく調べる必要があれば、心臓CT検査や心臓カテーテル検査などを行います。

治療法は原因により違いますが、心不全の多くは徐々に進行してしまうため、①より長く生きられるように、②症状を緩和して日常生活をより快適に過ごせるように、この二つを目標に重症度に応じて治療します。

まず、減塩,減量,禁煙,アルコール制限など生活スタイルを改善し、それでも症状が改善しない場合には薬物療法が必要となります。心不全の治療に使われる主な薬剤は利尿薬,ベータ遮断薬,アンギオテンシン変換酵素阻害薬やアンギオテンシンⅡ受容体拮抗薬,強心薬などで、原因や症状に応じて使い分けます。

心臓の弁に障害があって心不全になっている人は弁の修復や人工弁に取り換える手術が必要なこともあります。冠動脈に狭いところがあって心不全になっている人は冠動脈ステント留置術や冠動脈バイパス術を行います。不整脈(徐脈)が原因で心不全になっている人はペースメーカー移植術を行います。より重症の患者さんの場合には心臓再同期療法,心臓縮小手術,心臓移植などの方法もあります。

最近息切れが強くなってきたと感じられる方は、心不全が原因の可能性もありますので、主治医の先生に相談されるか、内科外来を受診して頂いて、症状の軽い早い時期から治療を始めることが大切です。

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冠動脈石灰化について

(この記事は2009年11・12月号の西陣病院広報誌『西陣病院だより』に掲載したものです)


内科 医長 北村亮治内科 医長 北村亮治


動脈が肥厚し硬化した状態を動脈硬化といい、これによって引き起こされる様々な病態を動脈硬化症といいます。動脈硬化の最終像である石灰化は、血管壁の柔軟性と弾力を減少させ、最終的には血管脆弱性を招きやすい状態になります。このため、血管石灰化は糖尿病や慢性腎不全の症例において、虚血性心疾患や脳血管障害などを誘発する因子として注目されています。この中でも冠動脈石灰化は虚血性心疾患の検出や予後判定に有用であるという成績が多く報告されています。冠動脈石灰化は粥状動脈硬化のプロセスで生じ、正常血管壁には生じないと考えられています。従って、冠動脈石灰化を評価する意義は冠動脈硬化の存在とその重症度を評価することにあります。

マルチスライスCT(MDCT)を用いた冠動脈石灰化の検出及び測定は、造影剤を使用せずに比較的容易に短時間で検査が可能であり、X線の被爆という点を除けば、患者さんに苦痛を与えることなく施行できます。生活習慣病の予防と治療においては、動脈硬化の進展予防が重要であり、冠動脈硬化の一指標である冠動脈石灰化の測定は、動脈硬化の進展の程度の把握と虚血性心疾患の予防への動機づけに有用であると考えられます。したがって、糖尿病、高血圧、脂質代謝異常症、慢性透析の患者などを基礎疾患に持つ方々に検診の一環として冠動脈石灰化の測定を行うことは重要であると考えています。

また、ADLが低下し日常生活で虚血発作が誘発されにくく、無症候性虚血も多数存在する超高齢者患者にも、非侵襲的に簡便に低リスク患者群と高リスク患者群を同定できる冠動脈石灰化の測定は非常に有用と考えています。残念ながらMDCTには石灰化部位が冠動脈狭窄部位とは必ずしも一致せず、また、脂質が豊富で不安定な非石灰化プラークの検出などに課題を残しています。しかし、一般に冠動脈石灰化量(CACS)は冠動脈硬化重症度と相関するといわれており、CACSを算出することによって将来的な心血管事故の危険性を推定することができます。なお、冠動脈の狭窄部位の精査については、石灰化が高度な症例では造影剤を使用する冠動脈CTAより冠動脈造影法で確かめる方が良い場合もあります。

いずれにしても、虚血性心疾患の評価目的として冠動脈石灰化の測定をお勧めします。興味あれば一度循環器科の医師に相談して下さい。

 

図1 MDCTでの冠動脈石灰化
MDCTでの肝動脈石灰化

 

図2 冠動脈石灰化についてのコンセンサス
肝動脈石灰化についてのコンセンサス


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心房細動について

(この記事は2008年11・12月号の西陣病院広報誌『西陣病院だより』に掲載したものです)


内科医長 中森診 


 正常では洞結節が心臓のペースメーカーとなり1分間に50~100回興奮し、この興奮が心房全体に伝わり、房室結節という心房と心室の間を伝って心室まで伝わります。しかし、心房細動では洞結節からの規則正しい興奮がおこらないために、心房が1分間に約300~500回の速さで不規則に細かく震えてしまいます。その結果、心房から心室へ効率良く血液が流れなくなり、心臓のポンプ機能が低下し、脈が不規則になります。

 心房細動は、心臓に病気のある場合(心臓弁膜症、心筋梗塞、心筋症など)や心臓以外の病気のある場合(甲状腺機能亢進症など)におこりやすいとされていますが、明らかな原因のない場合も多く、飲酒が原因でおこることもあります。また、心房細動は年齢とともにおこりやすくなり、70歳を越えると5%以上の割合で心房細動が認められると言われています。

 この不整脈が発作的に起こると(発作性心房細動)、脈拍数が急に速くなったりリズムが乱れたりすることがあるので、胸部不快感や動悸・胸痛・息切れを感じ、外来を受診されることが多いのですが、心房細動であっても頻脈や徐脈でない場合は、自覚症状がなく心電図検査で初めて指摘されることもあります。

 心房細動で心臓に病気のある場合・頻脈や徐脈が強い場合などでは心不全に陥ることがあり、また、心房内の血液の流れが遅くなることが多く、心房内で血液に澱みが生じ血栓ができやすくなります。左心房に血栓ができると、突然左心房から血栓が剥がれて脳動脈に詰まり脳梗塞(心原性脳塞栓)をおこす可能性が高くなるため、心房内で血栓ができにくくなるような治療が必要です。

 心房細動の治療は、①心房細動を正常洞調律に戻す「リズムコントロール」②心房細動時の「レート(心拍)コントロール」③脳塞栓予防のための抗凝固療法の3つが中心です。

 1)リズムコントロールには抗不整脈薬や電気ショック・カテーテルを用いた手術などがあります。

 2)心房細動のレートコントロールは頻脈に対して心拍数を抑える治療が一般的で、心拍数が極端に低下する場合にはペースメーカーを植え込みます。リズムコントロールの治療で洞調律の維持が難しく心房細動が再発することもあり、レートコントロールとリズムコントロールのどちらが有効かは、塞栓症・心不全・生活の質(Quality of Life)などで未だに最終的な結論が出ていないのが現状です。

 3)脳塞栓予防のための抗凝固療法は一般的にワーファリンが有効とされ、血液検査でワーファリンの効き具合を確認する必要があります。適切にワーファリンを服用することによって約60%脳卒中の発症を減らすことができると言われています。

 心房細動は心電図検査で発見できる病気ですので、動悸・胸部不快感・胸痛・息切れなどの自覚症状があれば、心電図検査を受けることをお勧めします。

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