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尿管結石について

(この記事は2015年5・6月号の西陣病院広報誌『西陣病院だより』に掲載したものです)



腎臓・泌尿器科 医長  井戸本 陽子  


 尿が流れるところにできる結石をまとめて尿路結石と呼びます。結石のある場所によって腎結石、尿管結石、膀胱結石と呼び方が変わります。その中でも特に強い痛みを起こして患者さんを困らせるのが尿管結石です。

尿管結石の症状
 尿管結石では、脇腹や背中、腰などにとても強い痛みが出ます。血尿や吐き気を伴うこともあります。痛みの強さには波があって、痛み止めを使わなくても自然に痛みが和らぐこともあります。結石が膀胱に近づくにつれて痛みが下腹部に移動したり、頻尿や残尿感を感じることもあります。
 尿管結石の痛みはとても激しいのですが、結石が尿管を傷つけて痛むというわけではありません。尿管に結石が詰まって尿の流れが悪くなり、その結果腎臓に尿が溜まって腎臓が水風船のように膨らむことで、強い痛みを感じます。

尿管結石の検査・治療
 尿管結石の治療をするためには、まずは検尿やレントゲン、超音波検査などを行い、結石の位置や大きさを確認します。結石が非常に小さい場合やレントゲンに写りにくい場合は、CT検査を行うこともあります。
 大きさが5mm以下の結石は、自然に排出できる可能性があります。しっかり水分をとってたくさん尿を出すことで、結石を押し流すよう心がけます。結石の排出を促すお薬を使うこともあります。
 5mm以上の結石であれば体外衝撃波結石破砕術(ESWL)や内視鏡での治療を行うことがあります。
 体外衝撃波結石破砕術とは、体外で発生させた衝撃波を体内にある結石めがけて集中させ、結石を砕く治療法です。砕かれた結石は、尿とともに体外へ排出されます。
体外衝撃波結石破砕術の特徴
体に傷をつけることなく治療できます。
麻酔を使わずに治療ができるので、入院の必要がありません。
治療にかかる時間は、およそ1時間程度です。
1回の治療で結石を砕ききれない場合は、何度かくり返して治療を行います。

 内視鏡での治療は、経尿道的尿管結石砕石術と呼ばれています。尿道から内視鏡を膀胱内に入れて、さらに尿管内にまで内視鏡を進めてレーザーや超音波を使って、尿管の中の結石を割ります。全身麻酔または腰椎麻酔(腰から下の麻酔)で行います。この治療法も体に傷をつけることなく結石を割ることができますが、1週間程度の入院が必要となります。

尿管結石の予防
 まず、しっかり水分をとることが大切です。1日に1,500~2,000ml程度が目安です。摂取する水分の種類は特に決まっていませんが、糖分の多いものやコーヒーや紅茶、アルコールは過剰に摂取しない方が良いでしょう。お水やお茶が最も適していると思われます。
尿管結石 バランスのとれた食事も大切です。とりすぎるとよくないものは、シュウ酸(ほうれん草やタケノコに多く含まれます)や尿酸の多いものです。糖分や動物性タンパク質、塩分や脂肪のとりすぎも良くありません。しっかり摂取した方がよいものは、クエン酸やマグネシウム、食物繊維やカルシウムです。
 尿管結石はくり返しやすいのですが、日々の心がけによってある程度防ぐこともできます。しっかり水分摂取することや食生活の改善など、少し気をつけてみられてはいかがでしょう。

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C型肝炎の新しい治療法について

(この記事は2015年5・6月号の西陣病院広報誌『西陣病院だより』に掲載したものです)


葛西先生 内科部長・消化器内視鏡センター長
 葛西 恭一

 C型肝炎はC型肝炎ウイルス(HCV)に感染することにより引き起こされる肝臓病です。感染経路は過去の輸血や血液製剤、刺青、消毒が不十分な器具による医療行為などと考えられていますが、半数の方は感染経路不明です。HCV感染者は全世界で1億7000万人、本邦で150万~200万人存在すると推定されています。HCVに感染すると、20年~30年かけて慢性肝炎、肝硬変を経て肝臓癌を発症します。病状が進行する前にHCVを排除できれば肝癌の発症を防ぐことができますが、進行するまでほとんど自覚症状がありませんし、HCVが存在しても肝機能検査が正常の方もおられます。このため自分がHCVに感染しているかどうかわからない方がたくさんおられます。
 

 HCVには種類があり、日本人の感染者の70%が1型、30%が2型に感染しています。日本人に多い1型のHCVはインターフェロンが効きにくく、2型は効きやすい傾向にあります。HCVを体から排除することができる治療法はインターフェロン療法しかありませんでしたので、1型に感染している患者さんに対する治療は難しいものでした。しかし、薬剤の改良や投与方法の進歩により、以前は低かった1型に対するインターフェロン療法の治療成績は近年向上してきました。一方で、インターフェロンは副作用(発熱、倦怠感、うつ病、血球減少、皮疹など)が多くて強いため、治療したくてもできない方がたくさんおられるのが課題でした。C型肝炎特に、高齢者や女性、初期の肝硬変(代償性肝硬変)の方ではインターフェロンの投与量を減らさないと治療が続けられず、結局HCVを排除できないことが多くなっています。この様な方に対しては、肝庇護療法を行います。具体的にはインターフェロンの少量長期投与、瀉血療法、ウルソデオキシコール酸の内服、グリチル酸製剤の注射などですが、肝庇護療法はHCVを排除する治療ではありませので長期間治療を継続しなければなりません。

 2014年7月に、1型のHCVに対しインターフェロンを用いずにウイルスを排除する治療(インターフェロンフリー治療)が認可されました。2015年3月には、2型のHCVに対するインターフェロンフリー治療が認可されました。いずれも2種類の抗ウイルス薬を1型では24週間、2型では12週間内服するのみの簡便な治療で、奏効率は1型で85%、2型で97%と高率です。問題となる副作用はほとんど認められず、インターフェロンが効かない方や副作用で使えない方にも治療効果が認められます。治療費に関しては、インターフェロン治療と同様、インターフェロンフリー治療に対しても医療費の助成制度が適用される見込みです。

 健診等で肝機能障害を指摘されていても精密検査を受けたことがない方は、C型肝炎の可能性もありますので是非二次検査をお勧めします。HCVに感染していることがわかっている方で、インターフェロンフリー治療を希望される方は、当院内科外来または肝臓外来(水曜午後・予約制)にて御相談下さい。

インターフェロン治療

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旬の野菜 ふき

(この記事は2015年3・4月号の西陣病院広報誌『西陣病院だより』に掲載したものです)

ふき

 栄養科 管理栄養士 河本 久美子


 ふきは数少ない日本原産の野菜で、旬は春(3~5月)です。
 豊かな香りとほろ苦さがあり、春の訪れを感じられる山菜の一つです。葉がみずみずしく鮮やかな緑色の新鮮なものを選びましょう。


栄養メモ
 ふきに含まれる不溶性食物繊維は腸の運動を活発にして便の排泄を促す働きがあります。苦みや香りの成分であるポリフェノール類を含み、抗酸化作用が注目されています。


ふき

●ふきの煮物

1人分:
エネルギー 25kcal
塩分 0.7g
食物繊維0.7g
材料 (2人分)
  
作り方
(ふきのアク抜き)
ふきがお鍋に入る長さに切り、塩をまぶして板ずりしてから鮮やかな緑色になるまで熱湯で数分ゆでる。冷水にとり、皮をむいてからしばらく水にさらす。
(1) アク抜きしたふきを3~4cmぐらいに切る。
(2) だし汁に調味料を加え、ひと煮立ちしたらふきを加え、落し蓋をして弱火で煮る。
(3) 煮汁が半分弱ぐらいになったら火を止める。
(4) 器に盛って、花かつおを飾る。
 ふき100g
 花かつお少々
 だし汁200ml
 酒大さじ1/2
 みりん大さじ1/2
 淡口しょうゆ大さじ1/2

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スキンテアについて

(この記事は2015年3・4月号の西陣病院広報誌『西陣病院だより』に掲載したものです)


多氣主任 皮膚・排泄ケア 認定看護師
 看護部 主任 多氣 真弓

 「ベッド柵にぶつけて表皮が剥離したので、診てください。」
看護師からのこのような相談は、月に10件程度あります。この表皮が剥離した状態を皮膚裂傷(Skin Tear:スキンテア)と言います。スキンテアとは、主として高齢者の四肢に発生する外傷性創傷であり、摩擦単独あるいは摩擦・ずれによって表皮が真皮から分離(部分層創傷)、または、表皮および真皮が下層構造から分離(全層創傷)して生じる(Payna R & Martin M,1993)と定義されています。つまり、摩擦・ずれにより発生する外傷性創傷です。具体的には、皮膚がベッド柵に擦れて裂けた(ずれ)、車椅子等の移動介助時にフレーム等に擦れて皮膚が裂けた(ずれ)、医療用テープを剥がす時に、一緒に皮膚が剥がれた(摩擦)、更衣時に衣服が擦れて皮膚が裂けた(摩擦・ずれ)などが挙げられます。

高齢者の皮膚は、皮膚のバリア機能が低下し脆弱です。糖尿病や腎不全などの基礎疾患、ステロイド剤、化学療法、抗凝固剤や抗血小板剤によってさらに脆弱になります。そのため、毎日のスキンケア(皮膚の清潔の保持と保湿)が重要です。患者の皮膚の状態に応じて、四肢の皮膚を露出させないように、チューブ包帯やアームカバー、レッグウォーマーなどで保護します。また、患者の周囲の環境を整備しておくことも重要です。ベッド柵にカバーをしたり、患者の移動時にはスライディングボードを使うこともスキンテアの予防になります。

  患者の入浴時や清拭、更衣の際は患者の皮膚を大きく露出させます。特にスキンテアの発生の可能性が高くなる事を理解し、注意して行う必要があります。スキンテアが発生した場合は、出血のコントロールおよび創の洗浄を行い、可能であれば皮膚または皮弁を元の位置に戻します。創傷の深さに応じて、外用薬と非固着性ガーゼやドレッシング材で保護します。

 スキンテアは看護、介護者が、患者の皮膚が脆弱である事を十分に理解した上で、患者の日々の治療や看護・介護を行うこと、患者のベッド周囲の環境整備を行うことで予防できます。

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薬の分類あれこれ

(この記事は2015年3・4月号の西陣病院広報誌『西陣病院だより』に掲載したものです)


森本 卓志 薬剤部 主任  森本 卓志


 最近、「毒薬を紛失した」とか「向精神薬が盗難にあった」など薬に関係した事件や事故がニュースでみられます。
 では、この「毒薬」とか「向精神薬」とはなんでしょう。今回は薬の分類について紹介します。


薬は下記のようにいろいろな基準で分類されています。

● 「毒薬」「劇薬」「普通薬」 
 「毒薬」が一番毒性が強く、次が「劇薬」、「普通薬」の順になります。毒薬は、少量で、強い効き目が現れ、服用量に注意を払わないと、中毒や死亡することがあるので、病院でしか使用できません。また、病院では鍵のかかる場所で厳重に管理しています。
 普通薬は、比較的安全性の高い薬で、ドラッグストアなどでも売っています。
 とはいっても、『普通薬だから安全!』というわけでもありません。そこは薬ですので、やはり間違った使い方をすれば『毒』になることもあります。薬をのむ以上はしっかり服用のタイミングや服用量を守らなければいけませんね。

● 「麻薬」「覚せい剤」「向精神薬」 
 「麻薬」は「麻薬及び向精神薬取締法」、「覚せい剤」は「覚せい剤取締法」、大麻は「大麻取締法」によって薬の成分や取り扱い等が規制されています。間違った使い方をすると、習慣性や依存性が増し、連用による快感と中止による禁断症状を持つ薬です。モルヒネ・コカイン・コデイン・ヘロイン・大麻などがこれにあたります。
 モルヒネ等はがんによる強い痛みに対して汎用されますが、正しく使用すれば先に述べたような依存性等の有害な作用は出ることなく使用することができます。
 また、「向精神薬」は麻薬と同様に中枢神経系に作用して精神機能に影響を及ぼす薬物のうち、依存性があり、かつ乱用された場合に有害作用が麻薬、覚せい剤より低いものをいい、ある種の睡眠薬・精神安定剤・鎮痛剤が該当します。

● 「医療用医薬品」「一般用医薬品」 
 「医療用医薬品」は医療機関で医師の処方によって受け取れる薬で、「一般用医薬品」は薬局・薬店等で購入する事が出来る薬です。最近では、「スイッチOTC」と呼ばれ、医療用医薬品の成分を一般用医薬品に転用した製剤も販売されています。
 いずれも、医師や薬剤師の指導のもとに用法・用量をきちっと守って服用することが大事です。

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