(この記事は2014年11・12月号の西陣病院広報誌『西陣病院だより』に掲載したものです)
| 眼科 部長 中司 美奈 |
白内障とは?
白内障は、水晶体が白く濁ってくる病気です。目の構造はよくカメラのしくみにたとえられますが、水晶体はカメラでいうとレンズの役割をしている部分です。加齢により誰でも起こる病気で、60 歳代で約70%、70 歳代で約90%、80 歳代でほぼ100%の人に白内障による視力低下がみられます。
他にも先天性や外傷性、アトピー、糖尿病など基礎疾患に合併する白内障、薬剤や放射線による白内障もあり、若い頃から発症していることもあります。
・白内障の症状
ごく初期の白内障はほとんど自覚症状が出ませんが、白内障が進行してくると実に多彩な症状が出現します。よくある症状は、眼がかすむ、夕方になると見えにくくなる、光がまぶしい、物が二重、三重に見えるなどです。このような白内障の症状がいくつも同時に出ている場合もあります。また、近視・遠視・乱視といった屈折度数が白内障によって変化しますので、眼鏡の度数がすぐに合わなくなることもあります。白内障が初期の段階から、強い症状を感じる人もいますが、白内障が進行してきても、あまり症状がでない人もいます。
| 白内障が高度になると瞳(瞳孔)の中が
真っ白になります。 |
・白内障の治療
では、白内障と診断されたら手術をしないといけないのでしょうか?白内障は加齢性の変化であり、白髪ができると同じように年齢とともに進行します。まだ自覚症状が出ていないような初期の白内障では手術の必要はありません。白内障進行予防の点眼薬がありますが、濁った水晶体を元に戻すことはできませんので、白内障が進行し、自覚症状が強くなってきたら、手術を行います。手術の時期に決まりはなく、基本的には患者さんが手術を希望される時に手術を行いますが、稀に手術を早めにされる方が良い患者さんもおられます。手術の時期は主治医とよく相談しましょう。
・白内障手術について
白内障の手術は、局所麻酔で行われ30 分程度で終わります。合併症
がなく、お元気な方は日帰り手術が可能ですが、手術当日はなるべく安静に過ごす必要がありますので、一人暮らしの方やご高齢の方、合併症のある方は入院されることをお勧めします。白内障の手術は、水晶体の濁りを除去し、眼内レンズを挿入します。通常、水晶体の濁りは超音波で削りますが、非常に進行した白内障では水晶体が硬くなってしまい、超音波で削れない場合がありますので、その場合は水晶体を塊のまま摘出します。手術翌日から、手術した眼も使っていただけますので、日常生活は普段どおりお過ごし頂けます。ただし、手術後1週間程度は洗顔・洗髪や激しい運動ができません。また、点眼治療が必要ですので、主治医の指示に従って点眼をしてください。
・眼内レンズについて
白内障手術で白内障の濁りを除去した後、眼内レンズを入れることで眼内レンズがこれまでの水晶体の役割を引き継ぎます。眼内レンズには眼鏡やコンタクトレンズと同じような度数がついていますので、患者さんに合う度数を選んで挿入します。最近では多焦点眼内レンズと呼ばれる遠近両用眼内レンズを先進医療として選択できるようになりました。ただし多焦点眼内レンズを用いた手術を実施できる病院は決められており、また保険外診療となりますので手術に高額の費用がかかります。多焦点眼内レンズのメリット・デメリットもありますので、手術前に主治医とよく相談して、納得して手術を受けましょう。