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麻酔科術前診察外来を開設しました。

(この記事は2013年11・12月号の西陣病院広報誌『西陣病院だより』に掲載したものです)



麻酔科 部長 中川 博美


 近年、手術と麻酔の進歩により、高齢な方や重症な方でも手術を受ける機会が増えてきました。多くの皆様が何らかの全身疾患をお持ちですので、安全に手術を受けていただくためには手術が決まった時点から体調を整えていただき、手術や麻酔の準備を進める必要性が高まってきました。欧米では1990 年代半ばから、本邦でも大学病院を中心に2000 年代に入ってから麻酔科術前診察クリニックあるいは術前外来が開設され、ご入院前から麻酔管理の準備をはじめ周術期医療の安全に努めるようになりました。

 西陣病院でも2013 年5月に「麻酔科術前診察」を開設しました。麻酔専門医が麻酔管理に必要な問診を行い、日頃から常用されている薬を確認します。手術前には服用を中止する薬もありますので、受診の際には常用薬や「お薬手帳」をご持参ください。また、禁煙も確認しますので、ご理解とご協力をお願いいたします。次いで、簡単な診察と術前検査結果から重症度を評価し、手術と麻酔のリスクとともに麻酔管理法などを説明します。必要に応じて追加検査や特別な麻酔関連モニターを検討し、最善の状態で手術と麻酔を受けていただく準備を進めていきます。ご入院後には麻酔担当医が診察を行い、最終的な麻酔管理法を決定します。

 「麻酔科術前診察」は毎週月曜日の午前・午後(定期)と土曜日の午前(不定期)、完全予約制です。手術予定が決まり次第、該当科の医師が「麻酔科術前診察」を予約しご案内いたします。ご家族様からのご質問・ご要望にも喜んで対応いたしますので、どうぞ皆様ご一緒にご来院ください。

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経口補水液(ORS)で手術前の体調を整えましょう!

(この記事は2011年9・10月号の西陣病院広報誌『西陣病院だより』に掲載したものです)



麻酔科・手術室 部長 中川 博美


経口補水液 手術の成功のためには、手術を受けられる方ご自身でも体調を整えていく必要があります。手術前には、禁煙や断酒、十分な栄養摂取や睡眠、また、風邪をひかないなど体調管理に気をつけていただくことが大切です。そして、麻酔や手術の合併症を避ける目的で、手術の前日の夜からは食べたり飲んだりせずに点滴で水分や栄養を補給します。ところが、最近では、点滴の代わりに経口補水液(ORS: Oral Rehydration Solution)を用いた経口補水療法(ORT: Oral Rehydration Therapy)を行い、手術前の絶飲時間を短縮するようになってきました。

 経口補水液(ORS)とは、水分と電解質を素早く補給できるように塩分と糖分の濃度を調整した飲料です。スポーツ飲料に似ていますが、スポーツ飲料よりも糖分が控えられ脱水で失われる塩分が補充されています。ORSの歴史は、世界保健機関が1970年代にコレラ感染時の脱水症の治療にORSを推奨し、大きな成果を上げたことに始まります。その後、2003年にはアメリカ疾病管理予防センターがガイドライン「小児における急性胃腸炎の治療―経口補液、維持および栄養学的療法」において、軽度から中等度までの脱水症へのORSの使用を推奨するようになりました。我が国では、2002年頃から小児や高齢者の脱水症の治療だけでなく手術前後の点滴の代わりとしてORSが使用し始められ、最近では、手術からの早期回復にORSが有用であったと報告されるようになりました。

 西陣病院では、2010年の夏から麻酔科・外科・整形外科・泌尿器科・外科系病棟・手術室・栄養科・事務部の共同の取り組みとして、術前経口補水療法(ORT)を開始しました。術前ORTは術後の回復力を高め、安全性の向上・術後合併症の減少などを目指した術後回復力強化プロトコールの1要素でもあり、手術を受けられる方の順調なご回復を目的に行うものです。術前ORTが実施された方では点滴をした時のように痛い思いをせず、また、行動も制限されることがないので、手術の直前まで安全に快適に過ごしていただけるようになりました。ORSの水分・電解質の補給効果は点滴と同じ、あるいは、それ以上といわれていますので、より良い体調で手術を受けていただけるようになり、続く術中・術後の点滴療法もより適切に行えるようになりました。特に、もともと体内の水分保持量が少なく脱水状態に気づきにくいご高齢の方が手術を受けられる場合には、点滴よりも自然な形で水分を補給することができる術前ORTは大きな威力を発揮しています。

 この1年間で、すでに300名以上の方々に術前ORTが実施されました。多少、塩味が気になられた方もいらっしゃいましたが、約70%の方がORS全量を摂取され、約60%の方が「飲みやすかった」との感想をお持ちでした。そして、約80%の方が手術直前まで口渇や空腹を感じることなく、自由にくつろいで過ごされたご様子でした。「手術前に飲むものがあって助かった」、「次の手術でもORSを希望する」などのご意見も頂戴しました。なお、手術の内容やお体の状態によっては術前ORTが実施できない場合がありますので、適応判断は主治医や麻酔科医にお任せ下さいますようお願いいたします。


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手術室が増室、機器も充実。手術がより安全に、より高いレベルで!

(この記事は2009年7・8月号の西陣病院広報誌『西陣病院だより』に掲載したものです)


手術室部長・麻酔科部長 中川博美


西陣病院は平成16年より増改築に着手し、その最終段階として平成20年11月から手術室の増室・改修工事に取り組みました。その間、皆様方には多大なご理解とご協力を賜りましたこと、この場をおかりして深く感謝申し上げます。おかげさまにて手術室の工事も平成21年3月に無事完了し、4月より新手術室が稼動し始めました。

昨年度は外科系5科(外科・整形外科・泌尿器科・眼科・皮膚科)で約1200件の手術が行われ、10年前の手術件数の約1.5倍に達しました。これに伴い1手術室あたりの手術件数も600件を越えたため、手術室1室増室を含む大幅な改修工事が行なわれました。整形外科の人工関節手術をはじめとする清潔手術をより安全に行うことのできるバイオクリーン・ルーム、低侵襲な鏡視下手術に対応した一般外科・泌尿器科手術室、そして、局所麻酔での眼科・皮膚科症例中心の手術室と3室が機能分化しました。

天井つり下げ型モニターで鏡視下手術が快適に同時に、設備や機器もいっそう充実しました。各手術室ともHLED無影灯(日本初)が設置され、明るく良好な視野のもと深部臓器の手術でもより安全により正確に行えるようになりました。21インチ天井つり下げ型ハイビジョンテレビモニターシステムにより画質が格段に向上し、鮮明な画像が得られることでより繊細な鏡視下手術操作が可能になりました。鏡視下手根管開放術や経尿道的手術などでは、患者様のご希望により、この画面をご一緒にご覧いただけるようにもなりました。生理食塩水還流の最新式経尿道手術システムはより合併症の少ない安全な泌尿器科手術を可能にし、整形外科ではハイスピード・ドリル導入によって脊椎手術をより安全に短時間に行えるようになりました。また、どの手術室にも全身麻酔器と各種モニターが設置され、麻酔科専門医による全身麻酔が可能な体制がとれるようになりました。

一方、手術室滅菌部門では、日本医療機器学会認定第2種滅菌技士2名の有資格者によって、より厳格に洗浄・消毒・滅菌が行なわれるようになりました。各手術器具はウォッシャー・ディスインフェクターで均一洗浄・高水準消毒された後、物理的、生物学的、そして、個々の滅菌物には化学的滅菌インジケータを使用し、最先端のコンピューター監視システムのもとクリーン蒸気発生器付き滅菌装置を用いて手術器具の個別性に適した滅菌方法を選択することで、よりレベルの高い滅菌品質保証が行えるようになりました。

ハード面が充実した新手術室このようにハード面が充実した新手術室で、患者様により安全で良質な手術室医療をさらに高いレベルで提供できるよう、大学との連携も深めつつ、各科の医師はいっそう技術の向上に努めるだけでなく、看護師はじめすべての医療スタッフの一人ひとりもその役割と責任を自覚して「手術チーム」としてのソフト面もますます充実させるよう、日々、努力・精進してまいりたいと存じます。今後ともよろしくお願い申し上げます。

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麻酔科は手術患者さまの全身を管理

(この記事は2006年3・4月号の西陣病院広報誌『西陣病院だより』に掲載したものです)


麻酔科 岡山 容子

 麻酔科とはどんな科かをご存知の方はあまり多くないと思います。「麻酔科なんだから『麻酔』するんでしょ?」そうです。ですが、『麻酔』するだけで終わりでもないのです。

 西陣病院には麻酔科外来がありませんので、あまり患者様と接する機会も多くないのが現状です。ここで麻酔科について書く機会を頂きましたので、宣伝させていただきたいと思います。少々お付き合いください。

 西陣病院で行っている手術中の麻酔管理についてお話します。怪我や病気を手術により治そうとするとき、外科医はその手術の術野だけに集中できることが理想です。術野以外の患者さんの体全体、例えば血圧、脈拍、体温、尿量、血糖値などのことについて気にしながら手術をするのはとても困難です。

 ですが、実際にはもともと高血圧があったり、心不全があったり、人工透析を受けている方であったり、患者様は全くの健康体の方ばかりではありませんから、手術中にも患者様の状態に気をつける必要があります。

 また、健康に自信のある方でも、術中痛み止めが効いていなければ血圧や脈拍は上がりますし、出血が多ければ血圧が下がります。そういう、手術の進行以外のことに気を取られずに外科医が手術に集中できるように患者様の体の状態を安定させ、お守りするのが麻酔科です。

 外科(一般外科・整形外科・泌尿器科・眼科)の先生方は、「手術係」、そして、麻酔科は手術のために麻酔をし、そして患者様をずっと守る「患者様係」というほうが実態に近いと思っています。全身麻酔を受ける方が麻酔された後も麻酔科医は患者様のそばを離れることなく、あれこれと全身状態が安定するように気を配り、手術室を出るまでずっと患者様のそばについています。

 手術中の患者様は意識も記憶もありませんが、二人三脚の相棒として麻酔科をどうぞよろしくお願いします。

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