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おしりの病気は一人で悩まずに当院へご相談ください。

(この記事は2016年3・4月号の西陣病院広報誌『西陣病院だより』に掲載したものです)



福本医師 外科 副部長 福本 兼久

 皆さんは「おしりの病気」というとどんな病気が思いつきますか?おそらく、いぼ痔や切れ痔などはよく耳にする病気ではないでしょうか。
 実は、肛門の病気というと大きく分けて、1,痔核(いぼ痔)2,裂肛(切れ痔)3,痔瘻(あな痔)があります。それぞれ症状も原因も異なり、治療方法も異なるため、肛門科などの専門外来を受診し、早く適正に治療する事が大事です。
 痔は国民病とも言われ、3人に1人は患っているといわれるくらい、多くの人が悩まされている病気です。きちんと治療すれば治る病気ですので、一人で悩まずに是非当院の肛門科へご相談ください。では、これから肛門の病気について、少し詳しく説明します。


◆痔核(内痔核、外痔核)

 通称「いぼ痔」といわれ、痔の中で最も多いものです。肛門にいぼ状の腫れができたもので、肛門(歯状線)の内側にできる「内痔核」と外側にできる「外痔核」があります。

痔核

 内痔核の原因は、主に排便時のいきみ、便秘や下痢などで、肛門のクッション部分に負担がかかる事によっておこります。また、妊娠、分娩時のいきみなども原因となります。
 症状は、排便時に出血や違和感を感じる事がありますが、通常は痛みません。ひどくなると痔核が肛門の外に飛び出すようになります。更にひどくなると、飛び出した痔が戻らなくなります。まれに、嵌頓痔核という状態になれば泣き叫びたくなるくらいの激痛が走ります。
 痔の治療というと手術で切らないと治らないと思っている方が多いのですが、治療の基本は肛門内に挿入する薬や飲み薬を使いながら、生活習慣の改善、排便状況の改善です。これだけでほとんど症状がなくなる場合もあります。
 薬で症状が良くならない場合や、すでに痔が飛び出して戻りにくくなっている場合は手術による治療が必要です。 当院では、外来診察室で行うことのできる「ゴム輪結紮療法」やジオン注射という薬を注射して痔を固めて切らずに治す「硬化療法」、そして以前から行われている痔を切除する「結紮切除術」等の手術を行っており、それぞれの痔の状態に応じて手術方法を決定しています。「硬化療法」や「結紮切除術」は通常下半身麻酔で行うため、一泊二日の入院が必要ですが、「硬化療法」は局所麻酔を用いた日帰り手術も行っています。
 外痔核は、スポーツや排便時に強くいきんだことで、静脈の血が固まり血栓ができることが原因です。 座るのも辛いほどの激痛がありますが、坐薬や軟膏などで痛みが和らぎ、1ヶ月ほどで血栓は吸収されてなくなります。まれに血栓が大きく、吸収されない場合は、局所麻酔を用いて切開し血栓を取り除く場
合があります。


◆裂肛
 
 通称「切れ痔」といわれ、排便時に肛門の出口付近が切れて出血や痛みを伴います。
 20~40歳代の女性に多く、便秘や下痢、肛門の過緊張が原因でおこります。
 裂肛が繰り返しおこると排便時の痛みが強くなり、排便への恐怖心から我慢してしまい、便が硬くなるため、排便時に更に切れやすくなってしまうという悪循環になります。そうならないため、できるだけ早く排便状況を改善し、薬の治療を行いましょう。
 裂肛を繰り返すと、肛門ポリープができたり、肛門が狭くなったりしますので手術が必要となります。

裂肛


◆痔瘻

 通称「あな痔」といわれます。
 下痢などがきっかけで肛門陰窩といわれるくぼみに細菌が感染し、肛門内が化膿して肛門の内と外がトンネルでつながったものです。
 肛門の周りに膿みがたまった状態を「肛門周囲膿瘍」といい、肛門周囲の激痛や熱がでたりします。
 肛門周囲膿瘍でたまった膿みが、肛門近くの皮膚に貫通して膿みが外に出てきたものが痔瘻という状態です。
 痔瘻を完治させるには手術以外に方法はありません。
 膿みの出口となった皮膚の傷口がふさがっても、一旦できたトンネルはなくなりません。膿みが出なくなっても治った訳ではなく、痛みや腫れが再発する事があります。
 また、10年以上治療せずに放置していると、まれに「がん化」することがあります。

痔瘻

 肛門は非常に敏感で、異常があると不快感を強く感じる部位です。上記のような症状でお悩みの方は、できるだけ早く専門病院や肛門科を受診して下さい。
 また、長年、排便時出血を痔があるからと放置していたら・・・
 実は、直腸癌だったということも本当にあります!!
 おしりのことでお悩みの方は、一人で悩まずに当院の専門科を受診して下さい。
 早期診断、早期治療を行い、一日でも早くおしりの悩みから開放されるようにお手伝いさせていただきます。

 当院肛門科を受診希望の方は、お気軽に当院受付までご相談ください。
 なお、受付には肛門外来ではなく専門外来と掲示しています。


午前外来や夜診外来でも肛門診察を行っておりますので、ご都合に合わせて受診して下さい。


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直腸脱について

(この記事は2011年9・10月号の西陣病院広報誌『西陣病院だより』に掲載する予定のものです)


宮垣拓也 肛門外科 外科部長 宮垣拓也

 今回は、お尻の三大疾患であるイボ痔(痔核)・キレ痔(裂肛)・アナ痔(痔瘻)以外によく見られる、直腸脱のお話をさせて頂きます。高齢の方が多く住んでおられる地域柄、最近はこのような疾患にお悩みの患者様やそのご家族の方々が来院される機会が増えてきました。当科を「痔が出てるみたいなんです」「脱肛と思うのですが・・・」と受診され、お尻を診察させて頂くとびっくり、実は直腸脱だったというケースも稀ではありません。

 直腸脱とは、どんな病態をいうのでしょうか? 読んで字の如し、お尻から少し奥に入ったところの直腸が肛門の外側へ脱出する状態です。脱出した直腸が粘膜のみであれば不完全直腸脱、全層であれば完全直腸脱と呼びます。写真のように直腸が10cm近く飛び出してくる患者様(完全直腸脱)も珍しくありません。

腹腔鏡による直腸脱の手術前と手術後写真
直腸脱について_手術前直腸脱について_手術後
手術前(直腸が10cm以上脱出している) 手術後(直腸はきれいに還納している)
 この疾患は乳幼児から高齢の方まで広く見られますが、先に述べましたように高齢の方、特に女性の方に多く見られます。その原因は、肛門の周りを取り囲んで支持している肛門括約筋や肛門挙筋などの筋肉が発育不全であったり、年齢を重ねるにつれて緩んできたりするなど色々言われておりますが、正確な病因・病態はまだ完全には解明されておりません。また、便失禁・尿失禁、子宮や膀胱の脱出を伴うことも少なからずあります。

 さてその治療ですが、いきみの禁止や緩下剤・浣腸などで排便コントロールすることで軽快する症状の軽い不完全直腸脱は別として、お薬だけで治療するのは難しく残念ながら多くの場合は手術が必要となってきます。その手術もヒポクラテスの時代から現在まで多くの記録があり、100種類以上の手術法が報告されております。

 その中で現在は、手術法がアプローチ法により大きく分けて2種類に分類されております。お尻側からアプローチする経会陰手術と、お腹側からアプローチする経腹手術です。前者はお腹を開ける必要がなく、脊椎麻酔(下半身麻酔)で施行される場合が多いため手術侵襲が少ない利点がありますが、再発(手術して一旦収まっていた直腸がまた脱出してくる)率がやや高い欠点があります。後者は全身麻酔が必要で、お腹を開けるため手術侵襲がやや大きくなる欠点がありますが、再発はほとんど認めないという大きな利点があります。ややこしくなるのでここでは詳しく述べませんが、前者には人の名前がついた多くの手術法(欧米ではほとんど行われていないですが日本では一番ポピュラーなガント・三輪・ティールシュ手術の他、デロルメ手術、アルテマイヤー手術など)があります。また、後者も同様に多数の手術法がありますが、基本的には脱出した直腸をお腹の中から剥離し吊り上げて固定する操作を行います。

ガント・三輪・ティールシュ法(絞り染め式粘膜縫縮+肛門輪縮小術)・・・脱出した直腸粘膜・筋層を縫縮・短縮させた後、肛門周囲にテープ等を通し還納する。 直腸脱について_画像1

脱出した直腸貫通結紮徐々に還納
約4㎝脱出した直腸脱出した直腸粘膜・筋層を口側より順次貫通結紮し、縫縮していく(ガント・三輪法)縫縮された脱出直腸は、徐々に還納される
貫通結紮徐々に還納
ガント・三輪法終了後、肛門周囲皮下に全周性に太い糸を通し、肛門輪を縮小し、再発を防ぐ(ティールシュ法)手術終了時
 両者にはこのように、それぞれ利点・欠点があります。そこで両者の欠点を補うべく、手術侵襲がなるべく少なく、かつ再発率が低い手術法が考案されました。それが、腹腔鏡下直腸脱手術(直腸固定術)です。この方法は、従来お腹を10cm以上切開して行われていた手術を、腹腔鏡の補助下に行うためお腹には5mm前後の傷が3~4箇所しか残らず、整容性にも優れ、術後の痛みも軽度で体にかかる負担がかなり軽減されます。また、脱出した直腸の間膜をお腹の中で尾骨よりやや上の骨にしっかり固定するので、再発の心配もほとんどありません。当科ではメッシュなどの異物を使用せず、医療用のホッチキスを用いて短時間で簡便に手術を行うことで、なるべく体に負担がかからぬよう努力しております。
腹腔鏡でお腹の中を見た術中写真
直腸脱について_図2直腸脱について_図3直腸脱について_図4
直腸が肛門外へ脱出している直腸を剥離し吊り上げる直腸を骨に固定する
 侵襲が軽いと言われていた従来の経会陰手術は、お尻の周りに傷がつくため思った以上に痛みがあったり、お尻の周りを安静に保つため術後すぐに食事が再開できない場合があったりしました。その点この手術は傷が小さく、お尻の周りには傷がつきませんのですぐに食事が再開でき、入院期間も短期間ですみます。唯一の欠点は全身麻酔が必要なため、心肺機能に全身麻酔に耐えられないような問題がある患者様には行えないことです。

 このような腹腔鏡手術の良さが認識されるにつれ、当科では脱出する直腸が長い例や再発例にしか行っていなかったこの手術を、最近ではそれ以外の症例でも積極的に行っております。われわれは以前より、虫垂炎・ヘルニア・胆石症や胃癌・大腸癌などに対して、積極的に腹腔鏡手術を導入してきました。また、前三者の良性疾患を中心に、当科で開発した特殊な道具を使った手術を行い、なるべく傷が目立たぬよう整容性にも留意しております(詳しくは当院のウェブサイトをご参照下さい)。このように蓄積されたノウハウを、直腸脱手術にも充分に応用しております。

 この疾患にかかられるのは高齢の方が多く、病気の場所が場所だけに恥ずかしく、命にも関わらないため仕方がないものと諦め、人知れず我慢している方が多いと思われます。ただ、お尻から腸が脱出していると下着と擦れて出血したり痛かったり、便が漏れたり出にくかったり、またトイレの度に脱出した直腸を戻してもすぐ出てきたりするので生活の質が著しく低下します。手術というとすごく大仰なことと思われるかもしれませんが、積年の悩みが一気に解決する可能性がありますので一度お気軽に当科を受診して下さい。

 当科では平成20年の肛門外来開設以来、痔核・裂肛・痔瘻中心に多数の患者様のご相談に対応してきました。お尻の病気は若い女性だけでなく、老若男女を問わずかなりデリケートな問題ですが、放っておくと重大なことになる可能性があります。恥ずかしいお気持ちは重々承知しておりますが、そのお気持ちを大切にして真摯に対応させて頂きます。今まで人知れず悩み、やっとの思いで当科を受診し治療を受け「今まで何年も悩んでいたのはなんだったのか?」と漏らされる患者様も多くおられます。直腸脱に限らず、お尻の問題でお困りの患者様・ご家族がいらっしゃいましたら、お気軽な気持ちで当科を受診して下さい。いつでもご相談に乗ります。


肛門外来 受付時間:月曜日および金曜日の12:30から15:30まで

※肛門外来以外の午前・夜間診療でも受診可能です。

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優しく・痛まないように・安全に治すことを心がけています-肛門外来のご案内-

多数の患者様の強いご要望もあり、4月よりあらたに下記の時間帯で肛門外来を開始します。
お尻の問題でお悩みの方は、お気軽にご相談ください。

(この記事は2008年5・6月号の西陣病院広報誌『西陣病院だより』に掲載したものです)

肛門科(外科部長)  宮垣拓也

宮垣 拓也 医師  各種肛門疾患(痔核・痔ろう・裂肛等)に対して、薬物療法(飲み薬・塗り薬・座薬等)、注射療法(ホームページ「いぼ痔は切らずに治したい」参照)、手術療法を患者さんの病態に合わせて併用あるいは使い分けて治療にあたっています。出来るだけ痛みがないように、できれば入院せずにしても短期間で済むように工夫しております。これらの病気は非常にデリケートな問題をはらんでおりますので、恥ずかしさに配慮することや体への負担が少なくなるようにいつも考えています。

肛門鏡 肛門科外来の診療開始に伴い、最新式の肛門診察用テレビモニターシステムを導入しました。患者さんにもその場で自分のお尻の状態をしっかり見てもらい、今後の治療方針を話し合いながらじっくり考えて行きたいと思います。

 希望される方には患部の写真を提供します。

 お尻の問題でお悩みの方は、一人で悩まず、お気軽にいつでもご相談ください。詳しくは下記の西陣病院だよりのリンクページをご覧ください。


診 療 時 間 の ご 案 内
診   療    月曜日及び金曜日
受付時間    12時30分から15時30分
診察時間    13時より開始
担当医師    外科 宮垣 拓也
場   所    外科診察室(5番)

初診の際は、受付で「外科」もしくは「肛門科」とお申し付けください。尚、従来どおり午前診療、夜間診療でも肛門科の診察は行います。ご不明な点は受付までお尋ねください。


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いぼ痔は切らずに治したい いぼ痔の注射療法

(この記事は2007年9・10月号の西陣病院広報誌『西陣病院だより』に掲載したものです)


外科部長  宮垣拓也

宮垣 拓也 医師 本誌3・4月号で中瀬先生より肛門疾患全般についての説明がありましたので、今回は当院で本年4月から治療を始めた「いぼ痔の注射療法」についてのお話をしたいと思います。

 多くの方が悩んでおられる痔。前回お話があったように大きく分けると、肛門付近にいぼができる「いぼ痔(内・外痔核)」、肛門の皮膚が切れる「切れ痔」、肛門の周囲から膿が出る「痔ろう」があります。そのなかで最も多いのがいぼ痔。いぼ痔は、便秘などでいきんだ時に肛門に強い負担がかかり、肛門を閉める括約筋の内側にあって開閉を助ける粘膜下組織の「クッション」部分が腫れて生じます。直腸側にできるのが内痔核、肛門側だと外痔核と呼ばれます。

 新しい薬物注射療法は、内痔核が対象となります。これには、クッションが緩んで排便時に内痔核が肛門の外に出たり、出たままになったりするなど、従来は手術が行われてきたものも含まれます。使用する薬は「内痔核硬化療法剤」(商品名ジオン)で、平成17年に発売されました。

 治療は、括約筋を麻酔で緩めた後、痔核1個につき4か所に注射し、薬剤が全体に行き渡るようにします。注射に要する時間は10分から20分程度。主成分である硫酸アルミニウムカリウムが、炎症を起こしたクッション部分を繊維化させ硬くさせます。すると、緩んでいたクッションが縮み元の位置に戻るという仕組みです。痔核の中を流れる血液量も減少し、出血が止まります。注射後1週間から1ケ月ほどで、痔核が肛門から出なくなります。

 この注射療法は、痔核を切り取る手術に比べ、治療後の痛みや出血が少なく、平均入院期間も大幅に短縮されました。当院では1泊2日の入院が標準で、日帰りも可能です。治療費も手術の3分の1程度と経済的負担も大きく軽減されます。ただ、痔核を除去するわけではありませんので、再発率は手術に比べ高くなりますが、再発しても再度注射できる利点があります。

 注射療法が向かないのは、内痔核の他大きな外痔核もあるもの、痔ろう・切れ痔・肛門ポリープを伴うなどの症状がある人です。安全性の点で、子供や妊婦、授乳中の女性、透析患者さんにも勧められません。

 注射療法には、医師の技術も要求されます。薬が適切な場所に届かないと、直腸の筋層が壊死し、炎症などが起きる恐れがあるからです。そのため、専門医でつくる「内痔核治療研究会」の講習を受けた医師だけが、この薬を使用できることになっています。勿論、治療には保険が適用されます。

 いぼ痔の治療を受けるのは非常に恥ずかしいこととお察しします。ジオン注 注射前そのお気持ちはよくわかります。また、いぼ痔の治療はどうしても「切って治す」痛い、痛い手術のイメージがありますので二の足を踏まれるのだと思います。そのため、長年そのままにされ苦しまれておられる方が非常に多く、なかには十数年も痔を抱えて生活の不便さを感じながらも我慢されている方もおられます。いぼ痔も普通の病気と同じで早めに治療を受けることが大切です。長年我慢されてから治療を受けた方の多くは「もっと早く治療していればよかった」と感想を述べられます。また、患者さんの中には、一大決心をし、手術を覚悟していたのに、写真に示す通り注射療法で改善してしまったと、拍子抜けされる方も多くおられます。医学の進歩は目覚しく、ジオン注 注射後このように治療方法が進展し、従来なら手術が必要ないぼ痔でも切らずに治せる機会も増えてきました。

 われわれは患者さんの立場で接し、検査や診療、治療を行っています。恥ずかしさに配慮することや体への負担が少なくなるようにいつも考えています。

 いぼ痔は1人で悩まず、お気軽にいつでもご相談下さい。


読売新聞より読売新聞 (平成18年2月12日) 抜粋

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「おしり」に異常(痛い、血が出る、膿が出る)を感じたら

(この記事は2007年3・4月号の西陣病院広報誌『西陣病院だより』に掲載したものです)


中瀬 有遠 医師西陣病院 外科 中瀬有遠


日本人の4人に3人は「痔」の経験があるといわれ、また「痔」は虫歯の次に多いといわれるポピュラーな病気であり、当院にもたくさんの方が受診されます。「痔」 には①内痔核、②外痔核、③裂肛、④痔ろう・肛門周囲膿瘍があります。それぞれ症状や原因が異なるので治療方法も違います。


①内痔核:「痔」の中で一番多いのが内痔核です(約80%)。200703geka1

排便時の出血、排便後の違和感などの症状があります。一般的にまず肛門から入れる薬の治療を行います。薬で痔の症状がなくなれば手術の必要はありません。痔が飛び出して、出血がひどい、痛みが激しいなど日常生活に支障をきたすなら手術をおすすめします。当院では外来治療でできるゴム輪結紮術、あるいは入院していただき内痔核切除術を行っております。入院治療の場合、麻酔は肛門周囲が麻酔される仙骨麻酔で、手術は30分程度ですみますし、入院期間は1週間以内です。

②外痔核:肛門の外側にできる血栓 (血の塊)が原因で激しい痛みが起こります。外来で局所麻酔をして血栓を取り除くと痛みがほとんどなくなります。

③裂肛:いわゆる「切れ痔」で排便時に肛門が裂けて血がでます。繰り返しおこるようだと裂け目が治らない潰瘍状になったり、肛門が狭くなったりします。

④痔ろう・肛門周囲膿瘍:直腸と肛門の境目 (歯状線) にある、粘液を出すための小さなくぼみに大腸菌などが入り込み、肛門の周囲の′皮膚から膿がでるものを痔ろう、膿が皮下に溜まったものを肛門周囲膿瘍といいます。膿が溜まることで高熱がでることがあります。これらは薬では治らないので膿の通り道や溜まった部分を切開する必要があります。


 ①、②、③の痔の予防には規則正しい排便習慣を身につけることが大切です。便秘は特に肛門に負担がかかります。ストレッチ体操や腹筋運動、朝食を食べることなどは快便につながるのでおすすめです。ちなみに私は毎朝冷たい牛乳とヨーグルトで快便です。

 おしりは座ったり、排便したりと日常生活の中で大切な役割をしていて、少しの異常でも不快感が生じるデリケートな部分です。また、どんな病気でもそうですが、自己判断で治すよりも専門科 (西陣病院では外科)を受診して正しい治療法を行うことが大切です。とくに50歳を過ぎると直腸癌などのほかの病気が隠れていることもあるので気をつけてください。「おしり」に少しでも異常を感じたら外科を受診してください。

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