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消化器センター外科部門についてご紹介します

(この記事は2012年7・8月号の西陣病院広報誌『西陣病院だより』に掲載したものです)


福本先生 外科 副部長 福本 兼久



 当院では、消化器疾患(食道・胃・大腸・肛門・肝臓・胆嚢・膵臓などの疾患)をより専門的に診断し高度な治療を提供するため、2012年4月より消化器センターを開設いたしました。

 近年の内視鏡(胃カメラ・大腸カメラなど)や画像診断の進歩は目覚ましく、従来では発見できなかったような様々な病気を診断することが可能となっており、さらに専門的かつ高度な治療法が必要とされるようになってきました。当院では以前より積極的に専門的な診断、治療に取り組んできましたが、今後も消化器内視鏡センターや画像診断センターなどの連携によるさらに高度な医療を目指して消化器センターを開設する運びとなりました。また、当院は、患者様に最良の医療を提供することを病院の基本理念として掲げており、その精神に基づき、治療方針について透析センターや循環器センターなどと頻繁に意見交換を行い、透析患者様や循環器疾患など様々な合併症をお持ちの患者様に対しても、迅速で的確な質の高い医療を提供できるよう頑張りますので、宜しくお願い申し上げます。



◆当院での消化器疾患治療

 消化器疾患といいましても、非常にたくさんの種類の疾患が含まれており、例えば胃がんや大腸がんなどでも内視鏡で切除ができるものから外科手術で摘出術が必要となるような場合もあります。また、比較的よく聞く病気として、胆石や胆嚢炎,膵炎、虫垂炎、痔、ヘルニアなど、がん以外の疾患もたくさん消化器疾患に含まれ、この中でも手術による治療が必要となる場合もあります。このように様々な疾患を消化器センターでは担当することになりますが、その中でも今回は外科的な治療(いわゆる外科手術)についてご紹介させていただきます。


◆当院での手術症例

  昨年度に当院で行われた外科手術症例は全418例で、主な疾患としては胃がん;17例(腹腔鏡手術8例)、結腸・直腸がん;46例(腹腔鏡手術40例)、胆石など良性胆嚢疾患;70例(腹腔鏡手術67例うち単孔式腹腔鏡手術37例)、肝・胆嚢・膵臓腫瘍;7例、虫垂炎;31例(単孔式腹腔鏡手術30例)、鼠径・大腿ヘルニア;90例(腹腔鏡手術34例)、イレウス;12例、肛門疾患;62例(痔核硬化療法32例)、直腸脱;6例(腹腔鏡下直腸固定術1例)でした。

 これらの疾患すべてを消化器センターが担当することとなり、様々な臓器の疾患について、的確な診断と治療が必要であることがわかっていただけると思います。

 消化器センターでは、これら多種多様な疾患それぞれに対して更なる高度で良質な医療を目指して日々取り組んでおり、外科治療としてより低侵襲な手術方法を積極的に行っています。


◆腹腔鏡手術 ~より低侵襲な手術を目指して~

 当院では平成21年より手術室をリニューアルし、LED無影灯や腹腔鏡手術用のハイビジョンモニターやハイビジョンカメラ(腹腔鏡)を導入し、様々な疾患に対して積極的に腹腔鏡手術を行っています。(「西陣病院だより」2009年7・8月号掲載、中川医師(麻酔科)の記事もご参照ください。)

画像1
胃噴門部粘膜下腫瘍
画像2
腹腔鏡で見た胃
(胃内は内視鏡で観察中)
画像3
切除される粘膜下腫瘍
 腹腔鏡手術はすでに十数年前より導入しており非常に低侵襲な手術方法ですが、当院では数年前より、腹腔鏡手術の中でもより小さな、少ない傷で行う、単孔式手術(傷が1カ所)、Reduced Port Surgery(傷が2~3カ所)、Needle scopic Surgery(細径手術器具を用いてより小さな傷で行う腹腔鏡手術)を胆石、鼠径ヘルニア、虫垂炎をはじめ胃がん・大腸がんにも症例を選んで導入し、根治性と低侵襲性の両立を目指しています。今回、詳しい手術方法の説明は省略しますが、詳細は「単孔式腹腔鏡下胆嚢摘出術について -傷の無い手術を目指して- :「西陣病院だより」2010年5・6月号掲載、宮垣医師」を参照してください。

 また最近は、外科医と内視鏡医が協力して手術を行うような腹腔鏡・内視鏡併用胃部分切除など、さらに低侵襲な手術も行われるようになってきており、今後は消化器センターと他の診療科との連携が必須となる新しい医療が求められています。この様に、より高度に専門化された医療に対応できるよう新たに消化器センターを設立しましたが、当院の理念である地域に密着した良質の医療を提供することを決して忘れず、当院を受診された患者様や当院へご紹介頂いた先生から更に信頼していただける病院を目指してこれからも日々精進していきますので、宜しくお願い申し上げます。


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胆石症と急性胆道感染症

(この記事は2012年5・6月号の西陣病院広報誌『西陣病院だより』に掲載したものです)


稲垣先生 内科 医長 稲垣 恭和

 胆石症はきわめて頻度の高い疾患ですが、多くの方は無症状です。しかし一部の患者様は急性胆道感染症として発症することがあります。急性胆道感染症は急性胆嚢炎と急性胆管炎にわかれますが、胆嚢の出口(胆嚢頚部、胆嚢管)に石がはまりこんで発症するのが急性胆嚢炎、総胆管にはまりこんで発症するのが急性胆管炎です。急性胆管炎の方がより重症化する可能性があり、危険な病気です。本来肝臓で作られた胆汁は胆嚢に蓄えられ、胆嚢→総胆管→十二指腸に流れますが、石がはまりこむことにより胆汁の流れが悪くなり、胆汁うっ滞がおこり、腸内細菌が胆嚢、胆管に感染を起こすのです。最初におこる症状としては上腹部痛、発熱、嘔気、嘔吐などが多く、急性胆管炎では黄疸がでることもあります。重症化すると血圧低下や意識障害が起こることもあります。高齢者では症状が出にくいこともあり発見が遅れ易く注意が必要です。

※胆道とは、肝臓でつくられた胆汁(消化液 兼 不要な黄色色素の排泄物)が十二指腸に排泄されるまでの管の総称です。
 胆道には、胆管と胆のうがあります。胆管は、胆汁が通る管です。胆のうは、胆汁を貯めておく袋です。なくなっても生活に支障はありません。胆のうは食事を摂らない時間帯に胆汁を一時的に濃縮しながら貯蔵します。食事を摂って胃が動き出すと収縮して中に貯めていた胆汁を十二指腸に押し出します。
資料提供:日本イーライリリー(株) COUNSELING FILE(膵臓・胆道)


【診断】
 採血、腹部超音波検査、CT、MRI などで診断します。


【治療】

 基本は入院のうえ絶食とし抗生物質の点滴を行います。急性胆嚢炎の場合は重症度に応じて緊急胆嚢摘出術や経皮的胆嚢穿刺吸引術(PTGBA)、経皮的胆嚢ドレナージ術(PTGBD)などを行うこともあります。PTGBA は腹部超音波をみながら胆嚢に針をさし、感染した胆汁を抜く治療法であり、PTGBD は同様に胆嚢に針を刺し、胆嚢内にチューブを留置する治療法で共に有効な治療法です。急性胆管炎の場合は抗生物質だけで改善しないことも多く、できるだけ早く内視鏡をつかって胆管にチューブを挿入し胆管内の感染した胆汁を抜く必要があります。その後胆管炎が落ち着いた段階で内視鏡的に結石を除去します。急性胆道感染症は治療により改善しても再発することが多いため、胆嚢摘出術を行うことが勧められています。
ERCP (内視鏡的逆行性膵管胆管撮影)


 急性胆道感染症は重症化すると命に関わることがある疾患です。胆嚢結石をもっている方は腹痛、発熱などの症状があればできるだけ早く医療機関を受診するように心掛けてください。また症状がない方でも、胆嚢の石が総胆管に落ちていることもあり、そうなると高率に急性胆管炎が起こるため、1年に1度は腹部超音波などの定期検査を受けられることをお勧めします。



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普段何気なく使用している目薬。皆さんは正しい使い方をご存じですか?

(この記事は2012年5・6月号の西陣病院広報誌『西陣病院だより』に掲載したものです)



 薬剤部 薬剤師 青木 芙美


 緑内障など成人の目の病気が多く発症してくる40~60代の男女1,200人(病院で複数の目薬を処方された経験のある人)を対象に、点眼方法に関する調査を行った結果、3人に1人が目薬をさし過ぎ、94.2%が点眼後に“目をパチパチさせている”や37.2%が十分間隔を空けずに複数の目薬を点眼しているなど、点眼滴数、点眼後の行動、点眼の間隔について正しく点眼できていない実態が報告されています。
目薬



◆目薬は1滴だけで本当に効果があるの?

目薬の1滴は約50μlで、瞼の中に貯めておける涙の量は約30μlと言われており、1滴だけでも瞼の限界を超えています。つまり、1滴で効果が期待できます。


◆点眼後は目をパチパチさせると良い?

 目をパチパチさせると目薬を外に追い出すことになり、目薬の十分な効果が得らません。点眼後は目を閉じ、目薬を眼球(患部)に行き渡らせることがポイントです。 


複数の目薬◆目薬が2種類以上ある場合は?

 2種類以上の目薬を使用する場合は、間隔を5分以上あけて点眼しましょう。
 続けて点眼すると、先に差した目薬の効果が減弱します。点眼薬の種類によって、水溶性⇒懸濁性⇒油性の順に点眼すると良いのですが、医師の指示がある場合は指示に従ってください。




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心房細動に対する抗凝固療法について

(この記事は2012年3・4月号の西陣病院広報誌『西陣病院だより』に掲載したものです)


北村先生 内科 医長 北村 亮治

 みなさんは心房細動ってご存知でしょうか? この心房細動は、心房自体から1分間に約350~600の頻度で不規則な電気信号が発生し、心房全体が細かくふるえ、心房のまとまった収縮と弛緩がなくなる不整脈のことです。心房細動にはいくつかのタイプ(詳細は省略)がありますが、加齢とともに発症しやすく現在は約80万人いると推定されます。この不整脈が何故良くないかと言えば、一つは心房収縮がなくなるために心臓のポンプとしての働きが(約20%程度)低下した結果、うっ血性心不全を合併しやすいことが挙げられます。もう一点は心房から心室への血液がスムーズに流れず、一部は心房の片隅(左心耳)でよどみを生じて血栓を形成しやすく、その血栓が血流に乗って脳梗塞などを発症しやすいことです。

心房細動 このため、心房細動はうっ血性心不全及び脳梗塞に対する予防が非常に重要となります。そこで今回は脳梗塞予防に対する薬物療法についてお話したいと思います。この薬物療法には抗血小板剤療法及び抗凝固療法がありますが、バイアスピリン等の抗血小板剤の脳梗塞予防効果は、抗凝固薬であるワーファリンに比べて弱く、効果がなかったとする報告すらあります。このことから特に禁忌がなければワーファリンを中心とした抗凝固療法が主流と考えられています。

 一般に70歳以上の心房細動の方では、ワーファリンを内服していないと脳梗塞の発症率4.8%/年と言われ、これがワーファリン内服により0.9%/年に改善されるという報告があります。しかし、ワーファリンによる出血の合併症対策として定期的に血液検査で効果の強さ(PT-INR)を測定する必要があり、その結果によって内服量を変えるというように煩雑な一面もあります。また、食事制限(納豆、クロレラ等のビタミンKを多く含む食物)もあるのが難点です。

 一方で、2011年3月より新規の抗凝固薬であるダビガトラン(商品名:プラザキサ)が発売されました。この薬剤はワーファリンと同等以上の予防効果を持ち、定期的に採血を行う必要もなく、かつ食事制限も不要、また内服中止にてすぐに薬効が消失するために外科手術が行いやすいというメリットがあります。(透析中の方は使用不可)しかし、デメリットとして1日2回の内服であること(2012年3月までは2週間処方)、ワーファリンに比べて薬価が高く、また出血以外の消化器症状の発生が比較的多いなどの点が挙げられます。このため、PT-INRの安定している方では、ダビガトランへの変更の利益はないとも言われています。いずれにしても大事なことは薬剤をしっかり内服することです。

 現在でも新たな抗凝固薬が開発中で、臨床試験も進行しています。今後も治療薬の選択肢が増えるのは良いことと考えますが、動悸などもなく無症状で放置されている心房細動の方もいますので、何かありましたらいつでも気軽に循環器科の医師に相談して下さい。


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O脚矯正手術について

(この記事は2012年3・4月号の西陣病院広報誌『西陣病院だより』に掲載したものです)


大宝先生 整形外科 医長 大宝 英悟

 現在、膝の軟骨がすり減り痛みの出る、「変形性膝関節症」は症状のある患者様だけでも日本に1000万人いるといわれています。日本人の場合は、特に膝の内側の軟骨がすり減り、O脚変形をきたす内側型の変形性膝関節症が多く認められます。手術による治療法としては、これまで自分の膝関節を人工関節に丸ごと取り替える人工膝関節全置換術が最も多く行われてきました。日本中でも年間約5万件以上の手術が行われ、最も一般的な治療法となっています。しかし一方で、自分の関節を失うことに抵抗があり、手術に踏み切れない患者様が多いことも事実です。

 では、なぜO脚になると膝の内側が痛くなるのでしょうか?本来、正常の膝では自分の体重は膝の内側と外側でほぼ等しく支えられています。それが、O脚変形を生じると、体重をバランスよく支えることができなくなり、内側にばかり体重がかかることになっていきます。さらにそのストレスで内側の軟骨が傷んで、O脚変形が進行するという、悪循環が起こります。そのため、O脚による膝の内側の痛みが生じるのです。

 日本人に多いO脚による膝の内側の痛み対しては、これまでもO脚を矯正する手術が行われていましたが、術後のリハビリテーションが長期に渡り、患者様も医療者側も矯正手術を敬遠する傾向がありました。しかし、近年は矯正手術に用いる器具や、人工の骨が進歩し、術後のリハビリテーションの進みがかなり早くなっています。人工関節と異なり、自分の関節で歩くこともできますし、膝の曲がる角度が手術することによって悪くなることも基本的にはありません。

O脚矯正手術 具体的な手術の方法を簡単に説明します。膝関節の少し下ですねの骨の内側を切り、その切り口を適切な幅だけ広げます。そこに人工の骨を詰め、さらにスクリューとプレートを用いてずれないように固定します。O脚変形を矯正し、わずかにX脚にすることで内側にばかりかかっていた自分の体重を膝の外側に逃がすことができ、膝の痛みが改善します。術後は手術した足に体重をかけたり、膝を曲げる練習をしたり、リハビリテーションを行います。

 こういった方法で、O脚を矯正し、痛みを和らげることができるのです。しかし、どれだけ進行したO脚でも治せるというわけではなく、やはり比較的早期にO脚を矯正することで良い結果が得られることが多いです。O脚が進行し、膝の外側や、おさらの裏にまで変形が進んだ場合はこの手術で痛みをとることは難しくなります。

 膝の痛みでお悩みの患者様は多いと思います。これまで変形した膝の治療は人工関節の時代でしたが、これからは自分の膝を温存したままで、治療するという選択肢も広く受け入れられてくる時代だと思います。膝の痛みでお困りの患者様は、O脚矯正手術を含めた様々な選択肢から手術法を提案することができると思いますので、お気軽にご相談ください。


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