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胆石症と急性胆道感染症

(この記事は2012年5・6月号の西陣病院広報誌『西陣病院だより』に掲載したものです)


稲垣先生 内科 医長 稲垣 恭和

 胆石症はきわめて頻度の高い疾患ですが、多くの方は無症状です。しかし一部の患者様は急性胆道感染症として発症することがあります。急性胆道感染症は急性胆嚢炎と急性胆管炎にわかれますが、胆嚢の出口(胆嚢頚部、胆嚢管)に石がはまりこんで発症するのが急性胆嚢炎、総胆管にはまりこんで発症するのが急性胆管炎です。急性胆管炎の方がより重症化する可能性があり、危険な病気です。本来肝臓で作られた胆汁は胆嚢に蓄えられ、胆嚢→総胆管→十二指腸に流れますが、石がはまりこむことにより胆汁の流れが悪くなり、胆汁うっ滞がおこり、腸内細菌が胆嚢、胆管に感染を起こすのです。最初におこる症状としては上腹部痛、発熱、嘔気、嘔吐などが多く、急性胆管炎では黄疸がでることもあります。重症化すると血圧低下や意識障害が起こることもあります。高齢者では症状が出にくいこともあり発見が遅れ易く注意が必要です。

※胆道とは、肝臓でつくられた胆汁(消化液 兼 不要な黄色色素の排泄物)が十二指腸に排泄されるまでの管の総称です。
 胆道には、胆管と胆のうがあります。胆管は、胆汁が通る管です。胆のうは、胆汁を貯めておく袋です。なくなっても生活に支障はありません。胆のうは食事を摂らない時間帯に胆汁を一時的に濃縮しながら貯蔵します。食事を摂って胃が動き出すと収縮して中に貯めていた胆汁を十二指腸に押し出します。
資料提供:日本イーライリリー(株) COUNSELING FILE(膵臓・胆道)


【診断】
 採血、腹部超音波検査、CT、MRI などで診断します。


【治療】

 基本は入院のうえ絶食とし抗生物質の点滴を行います。急性胆嚢炎の場合は重症度に応じて緊急胆嚢摘出術や経皮的胆嚢穿刺吸引術(PTGBA)、経皮的胆嚢ドレナージ術(PTGBD)などを行うこともあります。PTGBA は腹部超音波をみながら胆嚢に針をさし、感染した胆汁を抜く治療法であり、PTGBD は同様に胆嚢に針を刺し、胆嚢内にチューブを留置する治療法で共に有効な治療法です。急性胆管炎の場合は抗生物質だけで改善しないことも多く、できるだけ早く内視鏡をつかって胆管にチューブを挿入し胆管内の感染した胆汁を抜く必要があります。その後胆管炎が落ち着いた段階で内視鏡的に結石を除去します。急性胆道感染症は治療により改善しても再発することが多いため、胆嚢摘出術を行うことが勧められています。
ERCP (内視鏡的逆行性膵管胆管撮影)


 急性胆道感染症は重症化すると命に関わることがある疾患です。胆嚢結石をもっている方は腹痛、発熱などの症状があればできるだけ早く医療機関を受診するように心掛けてください。また症状がない方でも、胆嚢の石が総胆管に落ちていることもあり、そうなると高率に急性胆管炎が起こるため、1年に1度は腹部超音波などの定期検査を受けられることをお勧めします。



| Copyright 2012,05,01, Tuesday 10:00am administrator | comments (x) | trackback (x) |

 

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