(この記事は2017年5・6月号の西陣病院広報誌『西陣病院だより』に掲載したものです)
腎臓・泌尿器科 副部長
乾 恵美
新年度が始まりました。ゴールデンウィークを過ぎますと、そろそろ健診のシーズンの到来です。皆さん、きちんと受診しておられるでしょうか?
◆尿潜血について
皆さんは健診で尿検査を受けられたことがあると思います。尿検査を受けていただくポイントは、検査前には激しい運動を控えていただくこと、検査では出始めの尿(初尿)はコップに取らずに捨てた中間尿を採取することです。初尿には尿道や陰部内外からの細菌や混入物が混じることがあるためです。
さて、その結果で、“尿潜血が陽性ですね”、“尿に血が混じっています”と言われた事はなかったでしょうか?
ここでは成人の尿潜血についてお話ししたいと思います。これは、尿が作られる通り道、すなわち尿路のどこからかで尿に血液が混じった状態です。尿潜血の陽性率は数% ~ 20%台までと報告によって様々です。また、陽性率は女性に多く、加齢とともに上昇していく傾向にあります。
◆尿潜血の原因
尿潜血が陽性になるのはどういった疾患が原因なのでしょう?腎実質の疾患である腎炎、腎臓~尿道までの尿の通り道にできる尿路結石、膀胱炎などの尿路感染、ナットクラッカー現象などの血管による疾患、やせ型の方に多い遊走腎、男性なら前立腺の疾患、そして注意しておかないといけない悪性腫瘍などが挙げられます。過度の運動や女性ならば月経血の混入、こういったことも原因となります。尿潜血の原因を調べるには、やはり医療機関での精査が必要になってきますので、自覚症状が無くても是非、受診をしていただきたいものです。特に“目に見えて赤いおしっこ”が出たときは、肉眼的血尿といって、まず何らかの病気が見つかることが多いですので、そのままにしておいてはいけません。特に煙草を吸われる方は、膀胱癌など悪性腫瘍の可能性も出てきます。
◆検査について
精査は健診結果を持参のうえ、医療機関、特に泌尿器科に受診をお勧めします。検尿を再検した上で、必要に応じて腹部のレントゲン検査、CT、超音波検査、採血検査などを進めていきます。やはり怖いのは悪性腫瘍ですので、尿に“悪い細胞”が混じっていないか調べる尿細胞診や、さらに必要に応じて膀胱鏡検査も行います。 最近では痛みの少ない、柔らかいスコープを用いる医療機関が多く、侵襲の少ないものになってきています。
◆最後に
“ 私はいつも健診で尿潜血が陽性だから、体質なんです。だから精査には行っていないです。”とおっしゃる方をしばしばお見かけいたします。
確かに精査をしても何も見つからない事もよくあります。でも、“いつもの陽性”に隠れて、いつの間にか新たな病気が出現していた、なんて事もあるかもしれません。だから私は“健診で尿潜血を指摘されたら、以前から指摘されていても、また結果を持って受診してくださいね”と、お伝えするようにしています。
最後に、ビタミンCをたっぷりの食品やサプリメントを摂取した後は、尿潜血が偽陰性を示す事もありますので、検査前日にはお控えくださいね。