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薬物溶出性ステントについて

(この記事は2007年7・8月号の西陣病院広報誌『西陣病院だより』に掲載したものです)


内科 北村亮治


 心臓病は日本人の死因の第2位です。その大半は、心臓に栄養と酸素を供給している冠動脈の内腔が狭くなる狭心症や、完全に閉鎖して筋肉の壊死をもたらす心筋梗塞などの虚血性心疾患です。

 この治療法には内科的にはカテーテル治療があります。細長い管の先端についた風船で狭くなった箇所を拡張して、その後ステントという筒状の金網のチューブを置いて内腔から支える方法で最近の主流になっています。

 従来のステントによる治療はすでに全世界で10年間以上の治療経過があるものの、20%~40%の頻度で血管内の再狭窄が起こり、再治療が余儀なくされているのが実情でした。このため、「再狭窄」を減らすことがステント治療において大きな課題となっていました。

 この再狭窄を本質的に解決すると大きく期待されているのが薬物溶出性ステントです。これは冠動脈ステントを構成するステンレスの金網の表面に再狭窄を予防する効果のある薬剤をコーティングしたものです。このステントの登場により再狭窄率は約3分の1にまで軽減されましたが、最近では問題点も指摘され出しました。

 従来のステント治療ではまれに血管内に血栓ができ、血管が詰まれば心筋梗塞など重大な結果を招く恐れがあります。血栓の予防のため、抗血小板薬(血液をさらさらにする薬)の服用が必要ですが、この薬には重い肝障害や血液障害、出血が止まりにくくなるなどの副作用があり、長期間の使用には危険が伴います。

stent 薬剤を塗っていない通常のステントでは、血栓ができる時期は治療の1か月以内の場合が大半で、抗血小板薬の使用期間も長くて3か月程度で済むことが大半です。ところが、薬剤溶出型の場合、血栓の発生率は0・1~1%弱と低いものの、1年以上たってから血栓が現れる場合があり、抗血小板薬の使用も3か月以上と長期化せざるを得ない場合があり、副作用の危険性も高まります。

 再狭窄率が低くなる利点をとるか、血栓予防薬の長期使用などの問題点を重視するか。これに対する結論は現時点では出ていないのが現状です。再治療の回避という生活の向上を求めるか、わずかな頻度であっても重篤な合併症である血栓症の増加を重視するかは難しい問題です。患者さんそれぞれによって選択が変わるとは思いますので疑問点がありましたら遠慮なく相談して下さい。また、患者さんの病状や冠動脈の状態によっては冠動脈バイパス手術のほうが良い結果を得られる場合もありますから、胸部の不快感、圧迫感、締め付け感などの症状があればすぐに受診してください。

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心臓CT検査 (虚血性心疾患の診断)

(この記事は2007年3・4月号の西陣病院広報誌『西陣病院だより』に掲載したものです)


内科 中森 診


虚血性心疾患は、心臓の筋肉に血液が十分にいかなくなる病気です。心臓には心臓を取り囲む冠動脈(冠状動脈)と呼ばれる血管から血液が送られていますが、様々な事情でこの冠動脈が狭くなり心臓に十分な血液がいかなくなってしまった状態を心筋虚血と言います。日本ではもともと少ない病気でしたが、近年食生活や生活様式の欧米化に伴い増加傾向にあります。

 虚血性心疾患には「狭心症」と「心筋梗塞」の2タイプがあります。冠動脈が狭まり心臓に十分な血液が供給されない為に胸がしめつけられたり急が詰まったりするような発作が起きるのが「狭心症」、冠動脈が一定時間以上塞がって血液が心臓に届かなくなったために心臓の筋肉が死んでしまう状態が「心筋梗塞」です。心筋梗塞の場合、激しい胸痛を自覚することが多いと言われていますが、胸全体・みぞおち・左肩・喉もと・背中の痛みや圧迫感として自覚することもあります。また、糖尿病の患者さんやご高齢の患者さんでは痛みや圧迫感を殆ど感じない方もいます。

 虚血性心疾患の診断には心電図、負荷心電図、心エコーが簡便でそれらの検査が外来で行われますが、虚血性心疾患を完全にとらえることは因難で、正確な診断をするためには心臓カテーテル検査が必要となります。心臓カテーテル検査は原則として外来ではなく入院していただき、動脈にカテーテルを入れて調べる検査です。

心臓CT画像 昨年10月から西陣病院では緊急の場合や虚血性心疾患が明らかな場合を除いて、まず「64列心臓CT検査」を行うようになりました。心臓CT検査とは、腕の静脈から注入された造影剤が心臓の血管に達したときに心臓を高速で撮影し、冠動脈の状態を調べる検査です。当院では1度に心臓を64スライス撮影することが出来る最先端の検査機器を用いています。検査は、まずCT検査室に入ってベッドに横になり、心電園モニターを付けます。その後、造影剤注射用の点滴をしてから、心臓を撮影する正確な場所を決めるために2~3回10秒弱の〝息止め〟をしていただいて心臓を撮影します。最後に造影剤を注入しながら15秒程息を止めていただき、その間に心臓を高速かつ精密に撮影します。この時にしっかり〝息止め″をして頂くことが冠動脈の状態を正確に診断する上で重要です。検査にかかる時間は約15分です。検査で得られた画像はコンピュータで処理された後、医師が診断します。

 冠動脈に動脈硬化の強い患者さんや、以前に狭心症の治療(ステント治療など)を受けたことのある患者さんでは冠動脈の状態を正確に判断することが難しい場合もありますが、心臓CT検査は心臓カテーテル検査に比べて入院の必要もなく、安全・迅速、かつ安価に外来で行うことが出来るため患者さんへのメリットは非常に大きいです。

 胸全体・みぞおち・左肩・喉もと・背中に痛みや圧迫感を感じる方、早足で歩いたり坂道や階段を上がったりすると症状が強くなる方は早めの治療が必要な場合もありますので内科外来を受診してください。

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