診療に関すること::腎臓・泌尿器科
心腎疾患 -腎臓と心臓の関係について-
(この記事は2011年3・4月号の西陣病院広報誌『西陣病院だより』に掲載したものです)
腎臓・泌尿器科 医長 小山 正樹 |
さまざまな原因で腎臓の働きが徐々に悪くなる病気を慢性腎臓病(CKD)といい、日本では、成人の25人に1人は慢性腎臓病の疑いがあると言われています。腎臓病が進行すると末腎不全へと進行し、透析治療が必要となります。これまで、慢性腎臓病の終末像は末期腎不全、透析療法であるとみなされていましたが、ところが、透析にいたる前に心筋梗塞、脳卒中などの心血管疾患(CVD)を高率に発症することが判ってきました。慢性腎臓病は、①蛋白尿などの検尿異常、②糸球体濾過率(GFR)60㎖/分/1.73m2と定義されています。慢性腎臓病の患者様は腎機能低下が無い患者様に対して、心血管疾患による死亡リスクは男性で3倍、女性で4倍ものリスクが高まります。
高血圧、糖尿病、高脂質血症、肥満などのメタボリックシンドローム、喫煙が慢性腎臓病発症の原因ですが、これらは心血管疾患発症の原因でもあります。これらの生活習慣病と加齢が原因となった血管病変が腎臓にきたものが慢性腎臓病でありますし、心臓・脳血管にきたものが心血管疾患であります。ゆえに慢性腎臓病と心血管疾患が密接に関連しています。また、慢性腎臓病の進行とともに貧血、高血圧、カルシウム・リン・カリウムなどの電解質異常、尿毒症物質の増加により、血管内皮機能障害を引き起こし、動脈硬化の進行を認めます。よって慢性腎臓病により、さらに心血管疾患の発症が高まります。
心血管疾患の予防のためにも慢性腎臓病の積極的な診断および治療が必要になります。慢性腎臓病患者様の高血圧は、食塩感受性であることから、塩分摂取量により大きく変化します。そのため、慢性腎臓病患者様では、高血圧・心血管疾患のためにも塩分摂取量を6g/日以下に制限することが非常に重要であります。血圧は130/80㎜Hg 未満を目標とします。尿蛋白が1g/日以上の場合には、さらに125/75㎜Hg未満まで下げる必要があります。24時間にわたる安定した降圧をめざすためにも、家庭血圧の測定が奨められます。慢性腎臓病治療の食事としては、蛋白制限が挙げられます。蛋白制限により慢性腎臓病の進展を防止することが知られていますので、1日に0.6~0.8g/kg×体重まで制限することが重要です。
生活習慣としては、喫煙は慢性腎臓病、心血管疾患ともに進行を進めますので、出来る限り禁煙されることをお薦めします。
心血管疾患を予防するためにも、早期に腎障害を発見し、治療を行うことが非常に重要であります。慢性腎臓病と診断された患者様は心機能の検査、心血管疾患と診断させた患者様は腎機能の精査をお薦めいたします。当院での慢性腎臓病の3泊4日の教育入院では、腎機能のみならず心機能検査も合わせて行っておりますので、こちらを利用していただくことも一考かと思います。 |
| Copyright 2011,03,01, Tuesday 12:00am administrator | comments (x) | trackback (x) |