診療に関すること::腎臓・泌尿器科
前立腺がんについて
(この記事は2016年9・10月号の西陣病院広報誌『西陣病院だより』に掲載したものです)
腎臓・泌尿器科 医長 大西 彰 |
前立腺は男性だけにあり、精液の一部を作っているクルミ大の臓器です。前立腺がんは年々増加しており、昨年男性で新たにがんと診断された数が、胃がん肺がんを抜いて1位となりました。ただし、進行が遅いことが多く、治療法も多数あるので早期発見早期治療が大切です。今回は前立腺がんの治療を中心にお話しします。
前立腺がんには大きく分けて3 つの治療法があります。
手術療法、放射線療法、内分泌療法です。前立腺がんの進み具合に応じて、最適な治療を選ぶことができます。
1,手術療法
前立腺内に限局しているがんのみが対象になり、基本的に前立腺をすべて摘出します。摘出後は膀胱と尿道を再吻合します。手術方法には、開腹手術、腹腔鏡手術の他に、2012 年に保険適用となったロボット手術があります。どの方法も一長一短ありますが、当院では開腹手術を行っています。ロボット手術は出血量や合併症(尿失禁や性機能低下)が少ないといわれており、今後急速に普及していくものと思われます。希望される方は大学病院などを紹介することも可能ですので、遠慮せずおっしゃってください。
2,放射線療法
手術と同じく転移のないがんが対象で、根治率は手術とほぼ同等です。放射線療法には、外照射療法と密封小線源療法があります。外照射は文字通り、体の外から患部に放射線を照射する方法です。周囲への不要な被ばくやダメージを減らすIMRT(強度変調放射線治療)という方法が最近の主流です。密封小線源は前立腺に線源を埋め込み、内部から放射線をあてます。下痢や皮膚症状などの副作用がより少なく短期間で治まります。これらは当院では行っておらず、希望される方は他院に紹介することになります。
また、さらにピンポイントに照射できる粒子線治療という方法がありますが、保険がきかず、現在は300万円程度の治療費が必要となります。
3,内分泌療法
すべての進行度のがんが対象となります。前立腺がんは、男性ホルモンの働きによって進行するので、その働きや分泌を止めることで進行を抑えることができます。
精巣から分泌されるテストステロンという男性ホルモンを抑制するのがLHRH アナログ(もしくはLHRH アンタゴニスト)という注射薬です。これに副腎から分泌されるアンドロゲンを抑制する、抗アンドロゲン薬の内服を併用する方法(CAB: combined androgenblockade)が広く施行されています。ほてりや骨粗しょう症、ED(Erectile Dysfunction:勃起不全)などの副作用はありますが、基本的には安全に施行される治療法です。ただし、ずっと効果が持続するわけではなく、治療が効かなくなる時が訪れますので、その際は飲み薬の変更などで対応します。2 年前に新規薬剤が相次いで使用可能となり、治療の選択肢が増えました。
前立腺がんは早期発見早期治療によって、完全に治すことができるがんです。気になる方は一度、腎臓・泌尿器科に受診してください。
| Copyright 2016,09,01, Thursday 12:00am administrator | comments (x) | trackback (x) |