診療に関すること::内科(消化器内科)
胃食道逆流症について
(この記事は2007年5・6月号の西陣病院広報誌『西陣病院だより』に掲載したものです)
内科 葛西恭一
口から飲み込まれた食物は、喉を過ぎると食道という細い管を通った後に胃の中に入って消化が始まり、栄養分・水分が腸で吸収され、便となって肛門から排泄されます。
胃食道逆流症(GERD)とは、噴門部(胃の人り□)が緩むことにより胃酸などの胃内容物が食道へ逆流するために自覚される症状のことで、逆流性食道炎とも呼ばれます。症状としては「胸焼け」が代表的で、「げっぷ」「食事がつかえる感じ」「胃のもたれ」などを自覚されることが多いです。これらの症状以外に、「胸の痛み」、「背部の痛み」、「咳」、「喉の不快感」 など様々な症状として自覚されるため、循環器科や呼吸器科、耳鼻咽喉科を受診されることもしばしばあるようです。肥満傾向の人、コルセットなどにより腹部を圧迫している人や、腰が曲がった高齢者などに多く、特に飲酒後や甘いもの・脂の多いものを食べた後、食後にすぐ横になると症状が出やすいと言われています。
以前は高齢者に多い病気と考えられていましたが、近年の生活習慣の欧米化に伴い20歳代や30歳代の若年者に発症することも多くなってきています。GERDの患者様を胃カメラで観察すると、噴門部は緩み、食道粘膜は炎症を起こして潰瘍を形成し、重症の場合は出血を伴うため吐血の原因になる場合もあります。
治療法としては、第一に生活習慣の改善が挙げられます。
・体重を減らすこと、
・食後すぐに横にならないこと、
・コルセットなどによる腹部の圧迫に注意すること、
などが必要です。夜間に症状が強まる場合は、なるべく頭の位置を高くすることで胃酸の逆流を少なくすることができます。薬物治療としては胃酸を弱める薬(プロトンポンプ阻害剤など)の効果が高く、GERDの患者様の大半に投与されています。
しかし、生活習慣の改善が不十分な場合は薬を減らしたり中止したりすると再び症状が出てくることが多く、長期間投与が継続される場合があります。薬物治療の効果が乏しい場合や中止が出来ない場合、外科手術が行なわれることがありますが極めて稀です。
また、ごく一部の施設では胃カメラを用いて緩んだ噴門部を縫うことが可能となってきましたが、まだ一般病院には普及してはいません。
最近、〝食道に炎症所見を認めない胃食道逆流症(NERD)″が注目されるようになってきました。詳しく検討してみると、NERD患者様のおよそ半数はプロトンポンプ阻害剤の効果がないといわれています。この場合は胃酸ではなくストレスや不安、緊張などが原因とされ、食道運動の低下や食道粘膜の知覚過敏を生じていると考えられています。このため、消化管運動機能改善薬や抗不安薬などが効果を示す場合も多いようです。
GERDやNERDは近年増加してきておりその診断は比較的簡単ですが、画一的な治療法には限界があるため患者様ごとに最適な治療法を検討していく必要があると考えています。「胸焼け」や「げっぷ」などの症状があるかたはGERDの可能性がありますので一度消化器内科受診をお勧めします。
内科 葛西恭一
口から飲み込まれた食物は、喉を過ぎると食道という細い管を通った後に胃の中に入って消化が始まり、栄養分・水分が腸で吸収され、便となって肛門から排泄されます。
胃食道逆流症(GERD)とは、噴門部(胃の人り□)が緩むことにより胃酸などの胃内容物が食道へ逆流するために自覚される症状のことで、逆流性食道炎とも呼ばれます。症状としては「胸焼け」が代表的で、「げっぷ」「食事がつかえる感じ」「胃のもたれ」などを自覚されることが多いです。これらの症状以外に、「胸の痛み」、「背部の痛み」、「咳」、「喉の不快感」 など様々な症状として自覚されるため、循環器科や呼吸器科、耳鼻咽喉科を受診されることもしばしばあるようです。肥満傾向の人、コルセットなどにより腹部を圧迫している人や、腰が曲がった高齢者などに多く、特に飲酒後や甘いもの・脂の多いものを食べた後、食後にすぐ横になると症状が出やすいと言われています。
以前は高齢者に多い病気と考えられていましたが、近年の生活習慣の欧米化に伴い20歳代や30歳代の若年者に発症することも多くなってきています。GERDの患者様を胃カメラで観察すると、噴門部は緩み、食道粘膜は炎症を起こして潰瘍を形成し、重症の場合は出血を伴うため吐血の原因になる場合もあります。
治療法としては、第一に生活習慣の改善が挙げられます。
・体重を減らすこと、
・食後すぐに横にならないこと、
・コルセットなどによる腹部の圧迫に注意すること、
などが必要です。夜間に症状が強まる場合は、なるべく頭の位置を高くすることで胃酸の逆流を少なくすることができます。薬物治療としては胃酸を弱める薬(プロトンポンプ阻害剤など)の効果が高く、GERDの患者様の大半に投与されています。
しかし、生活習慣の改善が不十分な場合は薬を減らしたり中止したりすると再び症状が出てくることが多く、長期間投与が継続される場合があります。薬物治療の効果が乏しい場合や中止が出来ない場合、外科手術が行なわれることがありますが極めて稀です。
また、ごく一部の施設では胃カメラを用いて緩んだ噴門部を縫うことが可能となってきましたが、まだ一般病院には普及してはいません。
最近、〝食道に炎症所見を認めない胃食道逆流症(NERD)″が注目されるようになってきました。詳しく検討してみると、NERD患者様のおよそ半数はプロトンポンプ阻害剤の効果がないといわれています。この場合は胃酸ではなくストレスや不安、緊張などが原因とされ、食道運動の低下や食道粘膜の知覚過敏を生じていると考えられています。このため、消化管運動機能改善薬や抗不安薬などが効果を示す場合も多いようです。
GERDやNERDは近年増加してきておりその診断は比較的簡単ですが、画一的な治療法には限界があるため患者様ごとに最適な治療法を検討していく必要があると考えています。「胸焼け」や「げっぷ」などの症状があるかたはGERDの可能性がありますので一度消化器内科受診をお勧めします。
| Copyright 2007,05,01, Tuesday 10:10am administrator | comments (x) | trackback (x) |