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鼠径ヘルニア 足の付け根がふくらんできたら (上)

(この記事は2006年5・6月号の西陣病院広報誌『西陣病院だより』に掲載したものです)


福本 兼久 医師西陣病院 外科 福本兼久

「ヘルニア」とは医学用語で「正常の位置にあるものが他の部位に飛び出してしまうこと」。腰、つまり椎間板ヘルニアを連想される人も多いかもしれませんが、今回ここでご紹介するのは「鼠径ヘルニア」、俗にいう「脱腸」です。



大人と子供で違う原因

ヘルニア図 鼠径ヘルニアは、足のつけ根 (鼠径部) がふくらむ病気です。これは、お腹の内側の膜 (腹膜)が鼠径部の腹壁の弱くなっている部分を通って袋状に飛び出し、そのなかに腸などの臓器が脱出することによって起こります。

 これは、タイヤの弱くなった部分から内部のチューブが突き出ているのに似ています。
ヘルニア…タイヤのイメージ 鼠径ヘルニアのできる原因は子供と大人でやや異なります。子供の場合は、本来ならば成長とともにふさがるはずの腹膜の袋がふさがらずに残ってしまうという先天的なもので、生後3ヵ月までに発見されたものは、自然に治ることもあるので、経過を見ることもありますが、生後5ヵ月からは手術が必要となります。また大人の場合は、腹壁の筋肉が加齢とともに弱まり、その弱くなった部分を通って腹膜の袋が出てきてしまうことが原因です。こちらは自然に治ることはなく、治療が必要です。



鼠径ヘルニアの症状
怖い「嵌頓(かんとん)状態」


ヘルニアの出るイメージ図 おもな症状は、立ち上がったりお腹に力を入れると鼠径部がふくらむこと。大きなものでは陰嚢まで達することがあります。このふくらみは、身体を横にしたり手で押さえると引っ込んでわからなくなることが特徴です。
 このように腸が出たり入ったりしているうちは、軽い痛みやつっばり、便秘が起きる程度で、強い痛みなどの症状はありません。しかし、恐ろしいのはお腹の外に出た腸(臓器)が飛び出したまま、戻らない(巌頓(かんとん)状態/上図)状態になってしまうこと。ふくらみが硬くなったり、激しい痛みや吐き気、熱などの症状が出ることもあります。
 すぐにはさまった腸 (臓器) を元に戻さなければ腸が腐ることもあるので、緊急手術が必要となります。
 次回は鼠径ヘルニアの治療法について詳しく説明します。



(続きの記事は こちら です)

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〝オシッコの出がおかしい〝と感じたら

(この記事は2006年3・4月号の西陣病院広報誌『西陣病院だより』に掲載したものです。森田医師は転勤のため、現在西陣病院で外来診療はしておりません。ご了承ください)


泌尿器科 森田 壮平

 前立腺肥大症とは尿道にコブが出来て排尿障害を起こす熟年男性の代表的な病気です。「最近、どうもオシッコの出方がおかしいな」と年配の男性が感じたときには、前立腺肥大症が疑われます。

 前立腺は、男性の膀胱の出口に尿道を包むようにあるもので、精液を造るのに重要な役割をする器官です。ところが、前立腺の内腺の細胞にもり上がりができ、これが増殖し肥大して、ミカンかリンゴほどの大きさの良性のコブになって、尿道を圧迫してしまうのです。そうするとオシッコがすっきりと出なくなる排尿障害を起こします。これが前立腺肥大症という病気です。

 50歳ぐらいから前立腺の内腺に結節ができる割合が高くなり、70~80歳台では10人のうち7~8人は大なり小なり前立腺肥大症の傾向があるといわれています。原因は男性ホルモンと何らかの関係があると考えられていますが、確かなことはわかっていません。

 さらに統計的に見ると体質や食べ物、生活環境も病気を引き起こす共犯者といわれています。従来「日本人には比較的少なく、欧米人に多い病気」とされていました。それが最近急増しているのは、食生活の欧米化も影響しているようです。

 症状としてはまず頻尿(オシッコが近くなること)、特に夜間の頻尿があります。少し進んでくると、「トイレに行っても尿が出始めるまでに時間がかかる」「尿線が細くなる、勢いが弱くなる」「尿が途中でとぎれる、最後の切れが悪い」「排尿が終わるまでに時間がかかる」などの状態が起こります。人によっては尿意を感じてからトイレに行くまでに我慢ができず、尿を漏らしてしまうこともあります。

 次の段階として、自分ではがんばって完全に排尿し終わったつもりでも、実際には尿が出切らずに膀胱に残ってしまうという「残尿」現象が起こってきます。そうなると膀胱が空にならないために、短時間で尿が満杯になってしまいます。このため、昼夜の区別なく頻尿となります。こうなると、ちょっとしたことが引き金となって、尿が一滴も出なくなる尿閉を起こしやすく、大変苦しむことになるのです。

 前記のような症状があれば泌尿器科で診察・検査をします。診察はまず問診の後、直接前立腺に触れてみる「直腸診」を行います。前立腺の大きさや固さ、形、表面の性状、押したときの痛みなどがわかり、前立腺がんや前立腺炎と区別することができます。さらに、残尿測定、前立腺超音波断層法、尿道膜胱造影、尿流量測定、膀胱内圧測定などを行います。

 治療法には、薬物療法・開腹手術・内視鏡手術・高温度治療法・ステント留置法などがあります。まずは薬物療法が主体ですが、臨床症状や前立腺肥大症の程度などにより治療法を選択します。

 前述のような症状に悩まれている方は一度泌尿器科を受診してみてください。

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またまた来ました“花粉の季節”

(この記事は2006年3・4月号の西陣病院広報誌『西陣病院だより』に掲載したものです)


薬剤科 三宅健文


 花粉症の四大症状は、くしゃみ、鼻水、鼻づまり、眼のかゆみ。人によっては口の中がかゆいと訴える人もいるようです。
花粉症かな? と思ったら、まずは病院へ行きましょう。皮膚テストや血液検査を受けることで、花粉症かどうかはもとより、どんな物質(花粉やダニ、ホコリなど)にアレルギーを起こしやすい体質かもわかります。ちなみに、皮膚テストや血液検査でアレルギーを起こしやすい物質がわかっても、実際に発症している人は約半数だと言われています。つまり、検査によって自分が花粉症予備軍なのか、予備軍なら相手は「スギ」か「ヒノキ」か、といったこともわかるということです。予防や対策を立てるうえでも検査を受けておくとよいかもしれません。


検査以外に病院でやってくれることは?


まずは予防

 最近では、花粉が飛散する2週間前から予め抗アレルギー剤を服用したり、症状が出る前に点鼻薬、点眼薬を使用することで、症状が出るのを遅らせたり、やわらげようとする予防治療が主流です。


それでも症状がでたら・・・

 症状を抑える内服薬や点鼻薬、点眼薬などさまざまな治療法で、出てしまった症状を軽くするしかありません。


こんなこと出来るみたいです

 花粉症は一度なると、なかなか治りにくい厄介なもの。そこで、「免疫療法」「減感作療法」など、アレルギー体質そのものを改善しようとする治療もあります。しかし、この治療には時間がかかり、少なくとも2~3年、長ければ10年も治療が続くこともあるとか・・・。しかし、そのかいはあるようで3年以上続けた人の6~7割は、症状を抑える薬を使わなくて済むようになるといわれています。


 花粉症はアレルギーの一種。元気なときは風邪がはやっても何でもないのに、疲れていたりすると風邪をひいてしまうように、体の抵抗力=免疫力が落ちると花粉症のきっかけになることも。まずは体をなかから整えましょう。その基本となるのは毎日の生活習慣です。
体の免疫力は睡眠不足やストレス、運動不足、食事の偏りなどによってガタンと落ちてしまいます。疲れたなと思ったら少し無理をしても休み、日ごろからバランスのとれた生活を心がけましょう。また、運動不足だと思ったらエレベーターを使わずに階段を上り下りする、遠回りの道で通勤するなど、少しでも運動量をあげてみてください。鼻の粘膜の血行も良くなり、鼻づまりが軽くなる効果もあります。

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ゆがんで見えませんか?加齢性黄斑変性という病気では

(この記事は2006年3・4月号の西陣病院広報誌『西陣病院だより』に掲載したものです。大原医師は転勤のため、現在西陣病院で外来診療はしておりません。ご了承ください)


眼科 大原 真紀

 加齢性黄斑変性は、欧米先進国において、50歳以上の高齢者の失明原因の第一位であり、国民の注目度の高い眼疾患です。病名が示す通り加齢が原因ですので、年を取れば誰にでも起こりうる病気です。加齢以外の原因は明らかにされていませんが、喫煙は危険因子の一つとされています。

 その発症を前もって抑えることができないため、現在でもさまざまな治療法が検討されています。日本においても、近年の急激な高齢者人口の増加に伴って患者数が増加しています。患者数は、男性のほうが多く、両目に発症する割合も20%程度にみられます。

 今回、加齢性黄斑変性症と自己チェックの仕方を紹介します。

 眼にはカメラのフイルムに当たる部分が存在します(それが網膜です)。その網膜の中に、物体を鮮明にはっきりと感じることのできる部分があり、そこを黄斑といいます。加齢性黄斑変性とは、その黄斑に年齢的な変化・変性が生じて起こる病気で、網膜やブルッフ膜(網膜の奥にある膜) の加齢性変化を基盤として発症します。この加齢性の変化によって脈絡腰 (ブルッフ膜のさらに奥にある膜) からの新生血管が進展し、その血管が危弱であるため、出血や浮腫を生じます。

 眼科受診をされた患者さんには、問診、視力検査、眼底検査、蛍光眼底造影検査(腕から造影剤の点滴注射を行い、眼底の血管を造影して病状を調べる検査)を行います。

 加齢性黄斑変性症の症状は、物を見る中心である黄斑が障害されるため、視野の中心が見えにくくなり、視力低下が生じます。

 治療は、内服薬、レーザー光線あるいは手術となる場合もあります。病気の状態により選択される治療法も変わります。なかなか、治療は難しいのが現状ですが、よりよい視力維持のためにも自己チェックを行い、少しでも異常を認めたら、眼科受診をしてください。


加齢性黄斑変性チェック 最後に自覚症状の自己チェック法について紹介します。右のような格子状の表を用いて、片目ずつ見え方に異常がないかを確認して下さい。表の中央の白い点を見つめて下さい。次のような症状 (線がぼやけて薄暗くみえてないか、中心がゆがんでみえてないか、部分的に欠けてみえてないかなど) がみられたら、加齢性黄斑変性の疑いがありますので眼科受診をお勧めします。

(チェックをされる方は右の画像をクリックしてから表示される画像を実際にご覧ください)

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麻酔科は手術患者さまの全身を管理

(この記事は2006年3・4月号の西陣病院広報誌『西陣病院だより』に掲載したものです)


麻酔科 岡山 容子

 麻酔科とはどんな科かをご存知の方はあまり多くないと思います。「麻酔科なんだから『麻酔』するんでしょ?」そうです。ですが、『麻酔』するだけで終わりでもないのです。

 西陣病院には麻酔科外来がありませんので、あまり患者様と接する機会も多くないのが現状です。ここで麻酔科について書く機会を頂きましたので、宣伝させていただきたいと思います。少々お付き合いください。

 西陣病院で行っている手術中の麻酔管理についてお話します。怪我や病気を手術により治そうとするとき、外科医はその手術の術野だけに集中できることが理想です。術野以外の患者さんの体全体、例えば血圧、脈拍、体温、尿量、血糖値などのことについて気にしながら手術をするのはとても困難です。

 ですが、実際にはもともと高血圧があったり、心不全があったり、人工透析を受けている方であったり、患者様は全くの健康体の方ばかりではありませんから、手術中にも患者様の状態に気をつける必要があります。

 また、健康に自信のある方でも、術中痛み止めが効いていなければ血圧や脈拍は上がりますし、出血が多ければ血圧が下がります。そういう、手術の進行以外のことに気を取られずに外科医が手術に集中できるように患者様の体の状態を安定させ、お守りするのが麻酔科です。

 外科(一般外科・整形外科・泌尿器科・眼科)の先生方は、「手術係」、そして、麻酔科は手術のために麻酔をし、そして患者様をずっと守る「患者様係」というほうが実態に近いと思っています。全身麻酔を受ける方が麻酔された後も麻酔科医は患者様のそばを離れることなく、あれこれと全身状態が安定するように気を配り、手術室を出るまでずっと患者様のそばについています。

 手術中の患者様は意識も記憶もありませんが、二人三脚の相棒として麻酔科をどうぞよろしくお願いします。

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