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スキンテアについて

(この記事は2015年3・4月号の西陣病院広報誌『西陣病院だより』に掲載したものです)


多氣主任 皮膚・排泄ケア 認定看護師
 看護部 主任 多氣 真弓

 「ベッド柵にぶつけて表皮が剥離したので、診てください。」
看護師からのこのような相談は、月に10件程度あります。この表皮が剥離した状態を皮膚裂傷(Skin Tear:スキンテア)と言います。スキンテアとは、主として高齢者の四肢に発生する外傷性創傷であり、摩擦単独あるいは摩擦・ずれによって表皮が真皮から分離(部分層創傷)、または、表皮および真皮が下層構造から分離(全層創傷)して生じる(Payna R & Martin M,1993)と定義されています。つまり、摩擦・ずれにより発生する外傷性創傷です。具体的には、皮膚がベッド柵に擦れて裂けた(ずれ)、車椅子等の移動介助時にフレーム等に擦れて皮膚が裂けた(ずれ)、医療用テープを剥がす時に、一緒に皮膚が剥がれた(摩擦)、更衣時に衣服が擦れて皮膚が裂けた(摩擦・ずれ)などが挙げられます。

高齢者の皮膚は、皮膚のバリア機能が低下し脆弱です。糖尿病や腎不全などの基礎疾患、ステロイド剤、化学療法、抗凝固剤や抗血小板剤によってさらに脆弱になります。そのため、毎日のスキンケア(皮膚の清潔の保持と保湿)が重要です。患者の皮膚の状態に応じて、四肢の皮膚を露出させないように、チューブ包帯やアームカバー、レッグウォーマーなどで保護します。また、患者の周囲の環境を整備しておくことも重要です。ベッド柵にカバーをしたり、患者の移動時にはスライディングボードを使うこともスキンテアの予防になります。

  患者の入浴時や清拭、更衣の際は患者の皮膚を大きく露出させます。特にスキンテアの発生の可能性が高くなる事を理解し、注意して行う必要があります。スキンテアが発生した場合は、出血のコントロールおよび創の洗浄を行い、可能であれば皮膚または皮弁を元の位置に戻します。創傷の深さに応じて、外用薬と非固着性ガーゼやドレッシング材で保護します。

 スキンテアは看護、介護者が、患者の皮膚が脆弱である事を十分に理解した上で、患者の日々の治療や看護・介護を行うこと、患者のベッド周囲の環境整備を行うことで予防できます。

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「うがい」のおはなし

(この記事は2015年1・2月号の西陣病院広報誌『西陣病院だより』に掲載したものです)



 薬剤部 主任 福本 郁子


  風邪やインフルエンザが流行する時期となりました。風邪の予防や病院にかかって処方されて、うがい薬を使用されている方も多いのではないでしょうか。今回は、「うがい」についてお話します。


 うがい薬には、①口腔内を消毒するもの、②口内炎など粘膜の炎症を抑えたり、傷ついた粘膜を修復するもの、と大きく2種類に分けられます。
 感染予防や治療には殺菌消毒剤、のどの痛みや口内炎などの炎症には抗炎症剤を使用します。



 うがいの方法
●のどに炎症がある時や口腔内を消毒する場合(下図参照)

(大正製薬HPより引用)

●抜歯後の消毒や口腔内に炎症がある場合
 まず、口の中の食べかすなどを洗い流す。その後、うがい液を口に含み、頬を左右前後にふくらませてうがいする。


 うがい薬を使わなくても、「水道水でのうがい」も風邪の予防効果が実証されています。外出から帰宅した時、飲食後、のどの不快感のある時など、通常のうがいには水道水で構いません。
 のどや口の中に炎症がある時・風邪の流行期にはうがい薬、それ以外の時は水道水でのうがい、と使い分けると良いでしょう。

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インフルエンザ 予防接種の時期が やってきました

(この記事は2014年11・12月号の西陣病院広報誌『西陣病院だより』に掲載したものです)



薬剤部 主任 牛嶋 麻紀


予防接種は、毎年しなければならないの?
 インフルエンザウィルスの遺伝子は変化しやすいため、ワクチンを接種していても十分な予防はできません。毎年、予防接種を受けることでインフルエンザ感染を予防したり、かかった場合でも症状を軽減することができます。

インフルエンザワクチンはどの程度効果があるの?
 インフルエンザワクチンの接種により、インフルエンザによる重篤な合併症や死亡を予防し、健康被害を最小限にすることが期待されています。
 しかし、あくまでもワクチン接種は予防対策であるため、手洗い人混みをさけるなどして対処しなければなりません。

インフルエンザ予防接種を推奨する人は どのような人?
●65歳以上の方
●60~64歳で、心臓、じん臓若しくは呼吸器の機能に障害があり、身の周りの生活を極度に制限される方
●60~64歳で、ヒト免疫不全ウイルスによる免疫の機能に障害があり、日常生活がほとんど不可能な方
 これらに当てはまる方は、インフルエンザにかかると重症化しやすく、またインフルエンザワクチンの接種による効果が認められているため、定期の予防接種の対象となっています。
 予防接種を希望する場合は、かかりつけ医師と相談のうえ、接種してください。

予防接種を受ける時期はいつ?
 インフルエンザの予防接種は毎年10月中旬頃から開始します。抗体(ワクチンの効果があらわれる)ができるまでには3~4週間かかります。インフルエンザが流行する1月までに抗体をつけておくとすれば、12月中旬頃までに予防接種を受けることをお勧めいたします。

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誤嚥性肺炎の予防と運動について

(この記事は2014年11・12月号の西陣病院広報誌『西陣病院だより』に掲載したものです)


リハビリテーション科 副主任
言語聴覚士 西村 豪文
肺炎は日本人の死亡原因の第3位であり、高齢者ではその死亡率は急激に上昇します(厚生労働省の平成23年度人口動態統計)。高齢者の肺炎の7割が誤嚥による肺炎です。


 普段、私たちは嚥下(飲み込む)という行為を何気なく行っていますが、食べ物を口から胃へ送り込むという一連の運動を行うためには、多くの器官が複雑に働いています。咽頭は、①口から食道へ至る飲食物の通り道②鼻から肺へ至る空気や声の通り道が交わっていて非常に複雑な働きをします(図1参照)。嚥下の際には、声帯や喉頭蓋(喉頭のふた)により気道の閉鎖が行われ、食物を気道に入りにくくして(図2参照)。しかし加齢や病気などにより、協調運動がうまく機能しなくなり、飲食物などが肺などに入ることを「誤嚥(ごえん)」といいます。誤嚥によって肺に細菌が繁殖して炎症を起こすのが「誤嚥性肺炎」です。しかし、誤嚥すれば必ず肺炎を起こすわけではありません。誤嚥をしても咳により気道から誤嚥物を出せたり、免疫力が高ければ、肺炎に至らない事も多いです。他にも誤嚥した細菌量、細菌の種類、肺の健康状態など種々の要因が誤嚥性肺炎を発症するかに影響します。ですから、日ごろからこれらの要素を良好に維持するように心がけることが大切なのです。



 飲み込みの際に気管を閉鎖する力、誤嚥物を気管から出すための喀出力(咳の強さなど)は、呼吸機能や声帯の閉鎖機能に影響されます。これらの機能を低下させないためには、日常生活での運動が重要です。例えば重たいものを持ち上げる時などには、無意識に息を吸い、胸を膨らませ、息が漏れないように声帯を締め、胸郭を固定します(一度やってみてください)。このことで腕は安定し、最大の力、瞬発力が発揮されます。この時には強力な声門閉鎖が行われており、身体の運動は声帯機能の維持強化にも繋がるのです。運動では体力維持も期待でき、免疫力向上にも繋がります。これに対し、寝たきりの生活では、胸郭や横隔膜の運動が阻害され、呼吸機能の低下を招いてしまいます。ベッド上中心の生活の方でも、呼吸機能や体力維持のためにベッド上で座位をとることや車椅子に乗車することは重要ですので、是非、行ってみてください。また、声帯をはじめ、呼吸機能の維持には、歌唱や会話、笑うことも重要です。こういった視点でみると、嚥下機能の維持のためには、ご家族や親しい方と、お出かけし、楽しくおしゃべりや、お食事をすることがなにより効果的かもしれません。


 「食べること」は、単なる栄養補給だけでなく、生きる楽しみの一つであり、“生きがい” に関わる問題です。嚥下障害・誤嚥性肺炎を「治す医療」も大切ですが、加齢や疾患の特性上限界があります。当院では、嚥下障害の患者さんの「生きがいを支える医療」を念頭においた対応を大切にしています。当科でも、昨年7 月に言語療法室開設後、嚥下障害の患者さんに対して言語聴覚士、理学療法士、作業療法士による専門的リハビリを行ってきました。当院では、栄養サポートチーム(メンバーは各科医師、看護師、管理栄養士、言語聴覚士、薬剤師、臨床検査技師など)により、専門的な医療サポートを行っています。嚥下障害でお困りの方は、まずは主治医にご相談ください。

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白内障について

(この記事は2014年11・12月号の西陣病院広報誌『西陣病院だより』に掲載したものです)



中司医師 眼科 部長 中司 美奈
白内障とは?

 白内障は、水晶体が白く濁ってくる病気です。目の構造はよくカメラのしくみにたとえられますが、水晶体はカメラでいうとレンズの役割をしている部分です。加齢により誰でも起こる病気で、60 歳代で約70%、70 歳代で約90%、80 歳代でほぼ100%の人に白内障による視力低下がみられます。
他にも先天性や外傷性、アトピー、糖尿病など基礎疾患に合併する白内障、薬剤や放射線による白内障もあり、若い頃から発症していることもあります。


・白内障の症状
 ごく初期の白内障はほとんど自覚症状が出ませんが、白内障が進行してくると実に多彩な症状が出現します。よくある症状は、眼がかすむ、夕方になると見えにくくなる、光がまぶしい、物が二重、三重に見えるなどです。このような白内障の症状がいくつも同時に出ている場合もあります。また、近視・遠視・乱視といった屈折度数が白内障によって変化しますので、眼鏡の度数がすぐに合わなくなることもあります。白内障が初期の段階から、強い症状を感じる人もいますが、白内障が進行してきても、あまり症状がでない人もいます。
白内障 白内障が高度になると瞳(瞳孔)の中が
 真っ白になります。


・白内障の治療
 では、白内障と診断されたら手術をしないといけないのでしょうか?白内障は加齢性の変化であり、白髪ができると同じように年齢とともに進行します。まだ自覚症状が出ていないような初期の白内障では手術の必要はありません。白内障進行予防の点眼薬がありますが、濁った水晶体を元に戻すことはできませんので、白内障が進行し、自覚症状が強くなってきたら、手術を行います。手術の時期に決まりはなく、基本的には患者さんが手術を希望される時に手術を行いますが、稀に手術を早めにされる方が良い患者さんもおられます。手術の時期は主治医とよく相談しましょう。


・白内障手術について
 白内障の手術は、局所麻酔で行われ30 分程度で終わります。合併症がなく、お元気な方は日帰り手術が可能ですが、手術当日はなるべく安静に過ごす必要がありますので、一人暮らしの方やご高齢の方、合併症のある方は入院されることをお勧めします。白内障の手術は、水晶体の濁りを除去し、眼内レンズを挿入します。通常、水晶体の濁りは超音波で削りますが、非常に進行した白内障では水晶体が硬くなってしまい、超音波で削れない場合がありますので、その場合は水晶体を塊のまま摘出します。手術翌日から、手術した眼も使っていただけますので、日常生活は普段どおりお過ごし頂けます。ただし、手術後1週間程度は洗顔・洗髪や激しい運動ができません。また、点眼治療が必要ですので、主治医の指示に従って点眼をしてください。


・眼内レンズについて
 白内障手術で白内障の濁りを除去した後、眼内レンズを入れることで眼内レンズがこれまでの水晶体の役割を引き継ぎます。眼内レンズには眼鏡やコンタクトレンズと同じような度数がついていますので、患者さんに合う度数を選んで挿入します。最近では多焦点眼内レンズと呼ばれる遠近両用眼内レンズを先進医療として選択できるようになりました。ただし多焦点眼内レンズを用いた手術を実施できる病院は決められており、また保険外診療となりますので手術に高額の費用がかかります。多焦点眼内レンズのメリット・デメリットもありますので、手術前に主治医とよく相談して、納得して手術を受けましょう。


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