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心血管病の早期発見早期治療に24時間血圧測定検査をご存じですか?

(この記事は2012年11・12月号の西陣病院広報誌『西陣病院だより』に掲載したものです)

心血管病
角田先生 循環器内科 医長 角田 聖



◆血圧は測るたびに違う数値が出ます

 血圧が高い人も低い人も、自分の血圧はどれが本当の数値なのだろう?機械が壊れているのでは?やっぱり病院の水銀血圧計で測るのが正しいはず!と思っている人は多いのではないでしょうか。血圧は測る時刻や測り方で変わってきますし、仕事の日と休日でも違うでしょう。測るたびに緊張してどんどん数値が上がってしまう人や、病院でドクターやナースの前で測るとすごく高いという人もいます。同じ人で同じ時刻でも、両手両足の血圧を同時に測ると、それぞれ別々の数値が出てくるものなのです。こんなに毎回、違う数値が出てきたら、何を信用すればいいのか、自分が高血圧なのかどうなのかも、わからなくなってしまいますね。

 たとえば30分おきに血圧計の前に座ってみると、どうでしょう。食事の前と後、運動の前と後、お風呂の前と後、すべて違う数値がでてきますが、すべてその人の血圧です。血液透析を受けている人は透析中に何度も血圧を測るので、血圧ってそもそも一定じゃないことをよくご存じだと思います。ですから血圧は同じ測り方、同じ測定条件で何回か測定し、得られた数値の平均値を参考にするのが一般的です。1回だけで判断せず、一日の平均、一週間の平均、一か月の平均が大事になってきます。



◆寝ている間も血圧は刻々と変わります

 血圧計を自宅に持っていて、朝と寝る前に家庭血圧を測ってくれている人も最近は増えてきました。でも血圧は起きているときだけ測定していれば十分なのでしょうか。夜中自分で血圧を測ることはできませんが、心臓が拍動しているかぎり血圧は測定できるはずですね。夜中寝ているときに脳卒中や心筋梗塞を発症して救急車で運ばれる人も少なくありませんから、睡眠時の血圧が高いか低いか知っておくことが、これからは必要かもしれません。血圧の測り方は、病院で測定する診察室血圧(外来血圧)、自宅で測る家庭血圧、朝晩通じて一日中血圧計を巻いておき、一定の時間ごとに自動的に測定する24時間血圧、などがあります。このうち睡眠時の血圧を測定できるのは24時間血圧です。



◆あなたはどのタイプ?

 一般に夜間睡眠時には血圧が低下します。このような人のことを専門用語でディッパー(低下型)といい、正常型とされています。一方、夜間の血圧が低下せず昼間と血圧があまり変わらない人をノンディッパー(非低下型)といいます。夜間に血圧が上昇してしまう人もいて、これをライザー(上昇型)といいます。このようなタイプの違いは10年以上前から専門家の間では知られており、ノンディッパーやライザーの人は高血圧性臓器障害の割合が多く、心血管事故の危険性が高いということがわかってきました。また、夜間の血圧が思ったよりも下がりすぎている人もいて、これをエクストリーム・ディッパー(超低下型)と呼んでいます。このような人は朝方の血圧上昇が激しい可能性があります。

 国の調べによると、現在日本人の高血圧の人は4,000万人ぐらいいて、そのうち病院で治療を受けている高血圧患者様は約半分で、治療がよく効いて血圧が安定している患者様はさらにその半分くらいと考えられています。自分は高血圧じゃないと考えている人も、24時間血圧のようないつもと違う測定法で調べれば、実は高血圧だったということがわかるかもしれません。(測定法によって高血圧の基準値は異なります。)早期発見早期治療はガンだけでなく、血圧でもいえることです。すでに高血圧の治療を受けている人も、夜間睡眠時血圧を調べ、ディッパーかそうでないかを知っておくことで、心血管病の予防に役立てることができます。

 当院でも24時間血圧測定を随時受け付けていますので、内科角田外来(水曜日夜診、木曜午前診、隔週土曜午前診)を受診いただくか、各科かかりつけの主治医の先生に頼んでみてはいかがでしょうか。




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心臓血管外科治療と外来開設のご案内

(この記事は2012年11・12月号の西陣病院広報誌『西陣病院だより』に掲載したものです)


髙橋先生 心臓血管外科 髙橋 章之


今まで透析患者様を中心に多くの西陣病院の患者様が京都第一赤十字病院の心臓血管外科で手術を受けられましたが、術後の通院が遠いなどのご不便をおかけしていました。また、心臓及び血管疾患に関しては整形外科や泌尿器科など一つの科の中で診断から治療までを一貫して行うわけではなく、診断から内科的治療・外科的治療までを循環器内科医と心臓血管外科医が相談・連携して診療にあたっていましたが、残念ながら西陣病院には心臓血管外科がなく、手術が必要と判断された場合は他の病院に受診しなければなりませんでした。特に入院中の患者様に関しては話を聞きたくても他院まで受診することが困難な方もおられました。このような理由から、外科的治療の可能性がある患者様に手術内容や危険性・メリットなどを説明したり、手術後のフォローを行う目的で9 月より第2 週と4 週の土曜日午前中に西陣病院循環器センターの一環として京都第一赤十字病院との連携で心臓血管外科外来を開設致しました。

 対象疾患としては弁膜症や狭心症などの心臓疾患、動脈瘤を初めとする大動脈疾患、閉塞性動脈硬化症などの末梢動脈疾患、下肢静脈瘤などの静脈疾患などを扱います。心臓疾患に関しては当院の循環器内科チームとの連携で治療方針を相談させて頂きます。一方で、動脈瘤や末梢動脈疾患、下肢静脈瘤などの疾患は必ずしもすぐに手術を行う必要はありません。

 大動脈瘤とは心臓から全身に血液を送る幹となる大動脈が部分的に“こぶ” のように膨れてしまう病気です。主に動脈硬化が原因でおこりますが稀に感染などにより急にできてしまうことがあります。その多くは無症状で、たまたま撮影したレントゲンやCT、超音波検査などで偶然見つかります。逆に症状がある場合は早期破裂による急死の危険性が極めて高く緊急手術の対象となる病気です。一旦できてしまった動脈瘤は自然経過や投薬で治ることはなく治療方法としては手術しかありません。手術方法に関しては以前から胸やお腹を切って動脈瘤の部分を人工血管で取り替える手術を行ってきました。以前に比べて手術成績も良くなってきており、今では胸部大動脈瘤で5 ~ 10%、腹部大動脈瘤では1 % 前後の危険性まで低下しました。また、最近では大きな傷を作らないでも治せるステントグラフトと呼ばれるカテーテル治療に準じた手術も増えてきています(但しこれは全ての患者様に行える訳ではありません)。更にこの両方のハイブリッド治療も選択肢に増えてきました。またすぐに手術が必要とならず定期的な受診によるフォローで経過を見ることもあります。それぞれのメリット・デメリットをその患者様一人一人に対して考え判断しなくてはなりません。

ステントグラフト
図1) ステントグラフトとはカテーテルを使って動脈瘤の内側に
金属骨格のついた人工血管を裏打ちして補強する方法

腹部大動脈瘤
図2) ステントグラフトで治療さ
れた腹部大動脈瘤

下肢静脈瘤
図3) 下肢静脈瘤は足の表面
の血管がこぶ状にふくれる病気



 下肢静脈瘤とは足から心臓に戻る方の血管(静脈)のうち皮膚に近い部分の静脈が“こぶ” 状に膨れる病気です。動脈瘤と異なり足の静脈瘤は破裂しても命にかかわることはありませんが、皮膚炎や血栓症を起こしたり、足がだるい・かゆい・むくむなどの症状が出てきます。治療方法は主に①足の静脈を抜去して静脈瘤を切除する、②レーザ治療、③薬の注射による硬化療法などであり、また必ずしもすぐに積極的な外科治療が必要でないケースも多々あります。

 心臓血管外科というと一般の方々からすると、かなり敷居が高い診療科のように思われがちですが、決して特殊な科ではありません。皆様が気軽に受診できて相談して頂ければと思いますので、何卒宜しく御願い申し上げます。


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経口(飲み薬)抗菌薬のおはなし

(この記事は2012年9・10月号の西陣病院広報誌『西陣病院だより』に掲載したものです)



岡本早織 薬剤部 薬剤師 岡本 早織


 抗菌薬(抗生物質)は、細菌を殺すことで感染症を治療するお薬です。抗菌薬はウイルスを殺す作用はなく、風邪の80~90%を占めるとされるウィルス性の風邪に対して直接効くわけではありません。しかし高熱、咳や痰が多い等症状の強い風邪では、細菌による二次感染を治療・予防するために抗菌薬が処方されることがあります。このほか皮膚感染症、呼吸器感染症、泌尿器感染症等様々な疾患に対して処方されます。

 皆様は、病院でもらった抗菌薬を、症状が良くなったために途中で飲むのをやめたことはありませんか?

 149例を対象に実施された経口抗菌薬の服薬状況の調査では、42%の患者様で服薬が中断されていました。さらに、日本は世界各国の中で、中国に次いで服薬コンプライアンス(服薬遵守=指示通りに服薬すること)の悪い国であるとの調査結果も公表されています。

 抗菌薬の服用中断による問題点は2つあります。1つは、また悪化したり治るまでの期間を長引かせる場合があること。もう1つは、『耐性菌』といって、抗菌薬が効きにくくなったり効かなくなった菌を増やしてしまうことです。






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「心臓血管外科外来」開設のご案内

(この記事は2012年9・10月号の西陣病院広報誌『西陣病院だより』に掲載したものです)


小田先生 内科主任部長・循環器センター長 小田 洋平


 拝啓 初秋の候、 益々ご清栄のこととお喜び申し上げます。

 また平素は当院に対しまして格別のご高配を賜り、厚くお礼申し上げます。

 最近は虚血性心疾患や不整脈、心臓弁膜症による心不全などの内科的治療が充実する一方で、当院では手術治療を行うことが出来ませんでした。そこで手術治療が必要な患者様のために、すこしでもお力になれるように、京都第一赤十字病院および京都府立医科大学附属病院心臓血管外科のご協力をいただき、平成24年9月から『心臓血管外科外来』を下記のように開設する運びとなりました。

 外来受診の対象症例は、心臓外科と胸部血管領域の全般、腹部血管(腹部大動脈瘤についてはステントグラフト治療適応の検討希望も含めて)、末梢血管疾患(閉塞性動脈硬化症や下肢静脈瘤など)、循環器内科的には外科治療を要する心疾患全般(狭心症、心筋梗塞、弁膜症など)となります。

 心臓や血管の手術の適応と考えられる患者様の診察を入念に行い、手術せず経過をみる場合の危険性や、手術の心配な点を詳しくわかりやすくご説明いたします。外来受診の結果、内科的治療を継続する場合には当院で引き続き治療を行い、心臓血管領域の外科的治療が必要な場合には主として京都第一赤十字病院心臓血管外科等で一貫した治療を行っていくことを想定しております。心臓血管外科領域においても各種疾患の早期発見がその後の治療を大きく左右することはご承知のとおりです。また手術予定の患者様だけでなく手術を迷っておられる患者様や手術後の合併症でお困りの方も受診していただいて結構です。少しでも疑わしい症例がございましたら、どうぞお気軽に紹介いただきたく、謹んでご案内を申し上げます。
  
敬具


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さまざまな内視鏡診療について

(この記事は2012年9・10月号の西陣病院広報誌『西陣病院だより』に掲載したものです)


葛西先生 内科部長・消化器内視鏡センター長 葛西 恭一


 消化器内視鏡センターは当院本館地下1階の画像診断センター内にあります。当院は日本消化器内視鏡学会の指導施設に認定されており、10名の内視鏡医(指導医 1名、専門医 6名)と8名の看
護師(内視鏡技師 3名)で日々内視鏡検査・治療を行っています。

 「内視鏡」とは太さ約1㎝、長さ約1mの柔らかいチューブで、体内の状態を体に傷をつけずに観察できる医療機器の総称です。体の様々な部分の観察に使用されますが、特に消化管(胃や大腸)の観察に最も広く使用され、発展してきました。

 現在当センターで行っている内視鏡診療について紹介します。



◆上部消化管内視鏡

 いわゆる「胃カメラ」と言われている検査でもっとも一般的な内視鏡検査です。平成23年度は年間約2,600件行いました。食道・胃・十二指腸を観察し、癌や潰瘍、ポリープ、胃炎などの診断に用います。最近では逆流性食道炎という病気が増えてきていますが、食習慣・生活習慣の欧米化が要因の一つと考えられます。胸焼けやゲップを自覚することが増えてきたと感じておられたら一度検査されることをお勧めします。また、最近NBIと呼ばれる特定の波長の光を用いて消化管を観察すると通常の光(白色光)では見えにくかった早期癌がより見えやすくなることがわかり、以前にもまして癌
をより早期に診断できるようになりました。(図1)早期の胃癌や食道癌は内視鏡切除が可能な場合が多いので、少しでも自覚症状のある方、自覚症状はなくても癌が心配な方は是非検査を受けて下さい。


◆下部消化管内視鏡

 肛門から内視鏡を挿入し、直腸から盲腸まで観察します。平成23年度は年間約1,200件行いました。日本人の大腸癌は増加傾向にありますが、早期発見できれば内視鏡切除や腹腔鏡下切除により治癒が期待できる疾患です。ただし、胃カメラに比べると、挿入時の苦痛が強いのではないかと不安に思っておられる方も多いと思います。当センターでは、患者様毎に異なっている大腸の形状、走向に対応するため、体内の内視鏡の形状が体外で確認できる内視鏡装置を採用しております。(図2)また、従来は内視鏡から「空気」を送り込むことにより大腸を膨らませて観察していましたが、現在は体内に吸収される「炭酸ガス(二酸化炭素)」を送り込む装置を用いておりますので術中、術後の苦痛はかなり軽減されます。これらの機器の進歩により安全で苦痛の少ない挿入を行っておりますので安心して検査を受けて下さい。また、胃カメラと同様にNBIや拡大観察による精密な検査が可能です。


図1
(図1)NBI拡大観察で確認できた
大きさ4㎜の早期胃癌

図3
(図3)内視鏡的に除去された総胆管結石

図2
(図2)体内の内視鏡の形状を右上のモニター画面で
確認しながら大腸内視鏡を挿入していきます。

◆胆膵内視鏡

 食物の消化に必要な「胆汁」と「膵液」は、胃の奥にある十二指腸から分泌されます。胆膵内視鏡検査は、十二指腸に挿入した内視鏡から胆管(胆汁の通路)と膵管(膵液の通路)に造影剤を注入してレントゲン撮影し、胆石症、膵炎、胆道癌、膵癌などの診断や治療を行います。平成23年度は約130件の検査を行い、総胆管結石の除去や胆管炎・黄疸を軽減させるチューブやステントの留置を多数例行っております。(図3)


◆腹腔鏡・内視鏡合同手術

 近年、より低侵襲な外科治療を目指して内視鏡医と外科医が合同で行う手術方法が開発される時代となり、実際に当院でもそのような手術を行っています(西陣だより2012年7・8月号で紹介しています)。今後この分野は更に発展するものと予想されます。


 消化器内視鏡センターは、より苦痛の少ない安全で確実な診断・治療を心懸けてスタッフ一丸となって努力していきますのでよろしくお願いします。



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