診療に関すること::内科
しのびよる非アルコール性脂肪性肝炎
(この記事は2006年5・6月号の西陣病院広報誌『西陣病院だより』に掲載したものです)
内科 葛西 恭一
脂肪肝とは、肝細胞内に中性脂肪を主とした脂質が貯留して重量として5%以上となった状態のことを指し、その原因には飲酒、肥満、糖尿病、薬物など、様々なものが含まれます。
習慣性の飲酒者(日本酒で1日平均3合、ビールで大瓶3本、ウイスキーならダブル3~4杯以上飲む人)では大部分に脂肪肝が認められます。
多くの場合は自覚症状がありません。飲酒による脂肪肝では、それが長期続くと脂肪肝にとどまらず、アルコール性の肝繊維症・肝炎を経て肝硬変にいたる場合があるので、禁酒ないし節酒の指導がおこなわれる場合が多いのですが、肥満による脂肪肝で肝機能異常の経度の人に対しては、一通りの食事指導や体重減量指導は行われるものの、あまり積極的な指導・治療がおこなわれていないのが現状です。
しかし、最近ではアルコールを飲まないにもかかわらず、アルコール性肝炎類似の経過をたどり、慢性に経過して肝硬変にいたる例があることが知られてきて、非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)と呼ばれています。肥満その他の原因で脂肪肝が生じた後、肝へなんらかのストレスが加わってNASHに移行するのだろうといわれています。単なる脂肪肝に比べてNASHでは病気が進行性であり、しかも治療に対する反応が悪いので、脂肪肝からNASHへの移行を予防する必要があります。
そのためには脂肪肝の原因疾患(糖尿病、高脂肪血症など)の早期発見・治療や肥満の改善などにより脂肪肝を治療することが重要です。治療は減量が最も重要と考えられています(但し、急激な減量はかえってNASHを憎悪させることがあるので、注意が必要です)。
現在、肝臓病ではB型肝炎、C型肝炎といったウイルス性肝炎が脚光を浴びていますが、これらは今後減少していくと予想されています。最近、生活習慣の欧米化に伴い、若い人で肥満の人が増えており、近い将来生活習慣病としてのNASHが肝臓病の中心として切実な社会問題となることが予想されます。
脂肪肝と言われたことがある方で「自分はアルコールを飲まないから大丈夫」と思っておられる方は、NASHの可能性がありますので、一度肝臓外来(毎週水曜午後)でご相談ください。
内科 葛西 恭一
脂肪肝とは、肝細胞内に中性脂肪を主とした脂質が貯留して重量として5%以上となった状態のことを指し、その原因には飲酒、肥満、糖尿病、薬物など、様々なものが含まれます。
習慣性の飲酒者(日本酒で1日平均3合、ビールで大瓶3本、ウイスキーならダブル3~4杯以上飲む人)では大部分に脂肪肝が認められます。
多くの場合は自覚症状がありません。飲酒による脂肪肝では、それが長期続くと脂肪肝にとどまらず、アルコール性の肝繊維症・肝炎を経て肝硬変にいたる場合があるので、禁酒ないし節酒の指導がおこなわれる場合が多いのですが、肥満による脂肪肝で肝機能異常の経度の人に対しては、一通りの食事指導や体重減量指導は行われるものの、あまり積極的な指導・治療がおこなわれていないのが現状です。
しかし、最近ではアルコールを飲まないにもかかわらず、アルコール性肝炎類似の経過をたどり、慢性に経過して肝硬変にいたる例があることが知られてきて、非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)と呼ばれています。肥満その他の原因で脂肪肝が生じた後、肝へなんらかのストレスが加わってNASHに移行するのだろうといわれています。単なる脂肪肝に比べてNASHでは病気が進行性であり、しかも治療に対する反応が悪いので、脂肪肝からNASHへの移行を予防する必要があります。
そのためには脂肪肝の原因疾患(糖尿病、高脂肪血症など)の早期発見・治療や肥満の改善などにより脂肪肝を治療することが重要です。治療は減量が最も重要と考えられています(但し、急激な減量はかえってNASHを憎悪させることがあるので、注意が必要です)。
現在、肝臓病ではB型肝炎、C型肝炎といったウイルス性肝炎が脚光を浴びていますが、これらは今後減少していくと予想されています。最近、生活習慣の欧米化に伴い、若い人で肥満の人が増えており、近い将来生活習慣病としてのNASHが肝臓病の中心として切実な社会問題となることが予想されます。
脂肪肝と言われたことがある方で「自分はアルコールを飲まないから大丈夫」と思っておられる方は、NASHの可能性がありますので、一度肝臓外来(毎週水曜午後)でご相談ください。
| Copyright 2006,05,01, Monday 10:10am administrator | comments (x) | trackback (x) |